リズ・ブルボー 著 浅岡夢二 訳
〈真の許し〉は、あなたに何をもたらすか
許しがもたらす恩恵の一つとして、問題となっている人の関係が大幅に改善されるということがあります。相手を、まったく別の角度から見られるようになるのです。相手を責めていたために見えなかった相手の長所がたくさん分かるようになり、相手に会って話をすることに、何のぎこちなさも感じなくなるでしょう。
もう一つの恩恵は、あなたのエゴがあなたを支配しなくなるので、それまで仮面をつけるごとにブロックされていた自然なエネルギーが再び戻って来ることです。実際、これまでは、自然なエネルギーがながれず、あなたはそれを大幅に失っていたのです。でも、今や、自分自身で人生の方向を決めるようになったので、あなたは、そのエネルギーを、自分の
願いやニーズを表すために使うことが出来るでしょう。
これまで見てきたマリの例でいうと、娘と母親を許すにはかなりの勇気と謙虚さが必要でした。しかし、その結果得たものがあまりにも素晴らしかったので、彼女はその後も、機会を見っけては許しの実践を行ったのです。マリは、〈拒絶による傷〉と〈不正による傷〉に、心地よい香りのする妙薬を塗ることが出来ました。そのおかげで、傷がどんどん治っていったのです。
私たちが、自分のニーズをきちんと聞くようになれば、それは全く同じことが起こるでしょう。ハートに従って、小さい決意、あるいは大きい決意をするたびに、私たちの魂の傷は癒されていきます。自分に対して愛の行為をするたびに、私たちはエネルギーを取り戻し、人生の重荷から自由になるでしょう。
私の場合、ムシェットに由来する多くの思い込みは、背中に負ったリックサックに詰まる、大小さまざまな重い石のように感じられました。あるいは、私の恐れや思い込みが、囚人の足につけられているのと同じ、とても太い鎖のように感じられたのです。
いま、あなたは、自分の恐れを受け入れて、それらと直面しつつあります。もう、それらが、あなたの人生を支配することは無くなるでしょう。あなたは、背中のリックサックに入った、たくさんの重い石から解放されるのです。したがって、あなたは、それまで石を運ぶのに使っていたエネルギーを自分の中に取り戻し、自分を愛するために、自分のニーズを満たすために使うことが出来るのです。
傷が徐々に治ることによる恩恵
肉体の変化
傷が小さくなればなるほど、あなたの肉体に変化が現れます。人によっては、非常に速くそれが現れるでしょう。私は、二日間のワークショップの最中に変化が出てくる例を何度も目にしています。ある人は、ウェストが数センチも細くなりました。別の人は、猫背が完全に治りました。さらに別の人は、消え入るような〈逃避する人〉の声が、ごく普通の自然な声に戻りました。
とはいえ、ほとんどの場合、変かは徐々に現れるでしょう。一つのワーク、あるいはそれ以上のワークの結果、自分の肉体に現われた変化を報告してくれた人はたくさんいます。
・男性の場合、肩とおなかの肉が落ち、バランスの取れた肉体になりました。女性の場合、腰や骨盤のあたりの肉が落ちました。(これらは、いずれも〈裏切りによる傷〉が治った場合)。
・ある女性たちは、足のサイズが、ワンランクないしツーランク大きくなりました。その結果、より地に足が着くようになったのです。(〈拒絶による傷〉が癒された場合)
・何人かの男性たちは、ペニスが大きくなりました(〈拒絶による傷〉が癒された場合)
・何人かの人たちは、からだの柔軟性が増しました(〈不正による傷〉が治った場合)
・他には、背筋が伸びた人たちもいます(〈見捨てによる傷〉が癒された場合)
次に、私が個人的に体験したことを書いておきましょう。
・以前、上半身に着るものより、下半身に身に着けるものの方が、サイズが大きかったのですが〈裏切りによる傷〉、現在では、上下とも同じサイズのものを着ています。
・片方の乳房が、もう一方乳房より小さかったのですが〈拒絶による傷〉、小さいほうがおおきくなって、現在では両方とも同じ大きさになっています。
・髪の毛が薄かったのですが〈見捨てによる傷〉、現在ではボリュームを増して濃くなっています。
・骨は、普通、老年にさしかかると細く、弱くなるものですが〈拒絶による傷〉、私の場合、逆に太く、強くなってきています。
・乳房の上部がくぼんでいたのですが〈拒絶による傷〉、それが解消しました。
・関節炎によって指が変形し始めていましたが、それがすっかり改善しました〈不正による傷〉。
とはいえ、肉体が変化することを、あまり期待すべきではありません。そのための、何か特別な手法があるわけではないのです。心が本当に変わった時に、肉体も自然に変化することがあるということです。ですから、あなたは、肉体には本来の情盾を取り戻す力があるということを、信頼しているだけでいいのです。大事なのは、あなた自身が、肉体の中で生きていることに心地よさを感じることです。
肉体の変化が、必ずしも、傷の消滅を示唆するわけではありません。大切なのは、あくまでもあなた自身が心でどう感じるか、ということなのです。
関連する傷の解消
私たちは、比較的目立ちやすい〈裏切りによる傷〉と、〈不正による傷〉を治そうとする傾向がある、ということに私は最近気づきました。ところが、それらの傷が治ると、同時に、〈見捨てによる傷〉や〈拒絶による傷〉も癒されることが分かったのです。というのも、後者の二つの傷は前者の二つの傷の背後に、密接に結びついた形で、隠されているからです。
多くの人たちが、年を取ると、弱々しく、小さくなっていくのは、実は、〈見捨てによる傷〉や〈拒絶による傷〉認めて受け入れているからなのです。これらの二つの傷は、年と共に、表側に、浮かび出て、〈裏切りによる傷〉や〈不正による傷〉よりも目立つようになります。
ですから、私たちは、一生を通じて、自分を愛し、本来の自分自身に戻るようにしければなりません。そんなふうにすれば、年をとっても相変わらず、活動的な人生を送ることが出来るでしょう。
体の不調の解消
傷がなくなるまでに、どれくらい時間がかかりますか、あるいは、傷がなくなるとどんな感じがしますか、といった質問をよく受けます。でも、私たちは、生きている限り、感情を持ちますし、傷と結びついた恐れを持つでしょう。とはいう、私たちが目指すべきなのは、傷によって支配されない生き方です。
たとえば、あなたが、〈不正による傷〉があることを示唆する、背筋の通った、引き締まったからだを持っているとしましょう。あなたが、もし、年をとるにつれて、自分自身に関する内側のワークを行わないとしたら、あなたはやがて、〈硬直〉に由来する、関節炎、膝の強ばり、足の強ばりなどに苦しむようになるでしょう。体のあちこちの関節が硬直し、便秘に悩むことになるかも知れません。
一方、あなたが、ワークをしっかり行って、〈頑固の人〉の仮面をそれほどつけないようにすれば、あなたは右にあげた不調に悩まされることはなくなるでしょう。あるいは、それらすでに現れている場合、それらは徐々に解消されていくでしょう。
あなたは、〈頑固な人〉に特徴的な、まっすぐで、確固たる姿勢を続けるかもしれません。それでも、あなたは、厳格すぎて、自分を閉ざした人に感じられる、異常ともいえる〈頑固さ〉をみせることはないでしょう。
同じことは、ほかのすべての傷に関しても言えるのです。たとえば、〈侮辱による傷〉があるために、体重が大幅に超過している人でも、内側のワークをしっかりやった場合、体型はそれほど変わらなくとも、体重超過によって引き起こされる問題を感じることなく、安らぎに満たされて生きていることが分かるでしょう。だいたい、〈標準の体重〉などというものは、もともとなかったのです。そんな基準は、生命保険会社が勝手に作ったものにすぎません。
〈正常〉とか〈平均〉などという概念は、人間が作ったものでしかありません。
それが、すべての人の〈自然〉であるとは限らないのです。私たちは、そのようなものに踊らされるべきでありません。
愛に基づく行動を一回するごとに、私たちの傷が小さくなり、考え方や行動の仕方に変化を生じてきます。身近な人たちの方が、私たち自身よりそのことに気づきやすいでしょう。私の場合。まず気づいたのは、私の子どもたち、それから、ワークショップで接するクライアントたちでした。たとえば、私自身は自分の変化を自覚していないのに、参加者から、彼らに接し方が、前よりもずっと優しくなった、などと言われるのです。そうした指摘は、私たちの人生にちょっとした幸せをもたらしてくれるでしょう。
自分が、ゆっくりとですが、確実に変化を遂げていることが分かるからです。
ここでも、大事なのは、決して〈期待〉を持たないことです。なぜなら、それは〈コントロール〉を意味するからです。あなたの人間性のあらゆる面、特に、傷つきやすい部分を、可能な限り受け入れれば、結果は、ごく自然に現れてくるはずなのです。
それぞれの傷に特有な恐れが消えるにつれ、あなたの態度や振る舞いは必ず改善されていきます。それらの恐れについて、さらに詳しく接明をしておきましょう。
〈逃避する人〉が持つ〈パニック〉への恐れ
あなたが、自分を、本当にだめな人間、何の役に立たない人間だと思う時に、この恐れを感じることになるでしょう、その時、あなたは、暗い穴の中にいる気分になり、支えてくれるものが何もなく、今にも自分が消えてしまいそうな感じがするでしょう。カンタの最初の反応は、あなたに〈逃げる〉ように指示することです。夢想の世界に逃げ込む、その場に固まる、その場から逃げ出す、ドラッグに頼る、眠る、働く、とにかく何でもいいのです。
現在まで上手に隠されてきたこの恐れを、あなたが感じ取ることは、たぶん難しいでしょう。パニックに陥っては、そのたびに逃げているとしたら、あなたはその恐れを見たり、その恐れを感じたりするのは、すごく難しいと思います。パニックに陥りそうだという大きな恐れを、感じ取っている余裕は、あなたにはないはずです。
恐れが隠されていればいるほど、恐れはますます大きくなり、
あなたは、ついに限界が来る日まで、その恐れに直面することはできません。
〈拒絶による傷〉を癒すことにより、恐れに襲われて支配されるのではなく、次に述べる段階に行くことで、あなたは、自分に対して、〈存在する権利〉を与えることができるようになるでしょう。
・深い深呼吸を何度か繰り返します。もし可能なら、水を飲んでください。
・あなたの中にある恐れを静かに観察してください。すると、それが、現実のものではないことが分るでしょう。その恐れは、想像上のものでしかないのです。あなたが傷による苦しみを感じないように、あなたを支援しようとして、あなたを〈反応〉させるのがカンタなのです。
・あなたを守ってくれようとしたカンタに感謝しましょう。この恐れがあるために大事なニーズに耳を貸すことが出来なくなっていること、でも、これからはしっかりニーズを満たしして、なおかつ、その結果は自分で引き受けることにする、ということをカンタに伝えてください。
・あなたのニーズを満たすために行動してください。それは、あなた自身への愛の〈しるし〉なのです。自分自身に繰り返し愛を与えることによってしか、あなたは傷を小さくすることができません。
〈依存する人〉が持つ〈孤立〉への恐れ
自分は愛されていないと思い込み、大きな悲しみを感じ、一人きりであることに大きな苦悩を感じる時、あなたは孤立への恐れ感じているのです。そんな時、カンタの最初の反応は、あなたに次のように指示することです。「八方美人になってみんなの機嫌を取りなさい。自分のニーズなど聞いてはなりません。身近な人の要求を何でも受け入れなさい。まわりの関心を引くために病気になりなさい。まわりから認められないときは、あなたの計画を放り出しなさい」などなど。
あなたが、次の行動をするとき、あなたは、この恐れを感じないかもしれません。すなわち、頻繁に外出する、長時間にわたって電話をする、一人きりになるや否や、さびしさを満たすためにテレビをつける、などなど。孤独なるのが怖くて、気に入らない人間関係を続けてしまうこともあるでしょう。あるいは、〈操作する人〉がしゃしゃり出て来て、あなたを〈自立した人〉のように振る舞わせるかもしれません。そのことによって、あなたは、一人きりでも大丈夫、自分は誰も必要としない、と思い込ませようとするのです。
〈見捨てによる傷〉が癒されると、恐れに支配される代わりに、〈逃避する人〉のところで述べた段階を、素早く通過することが出来るようになるでしょう。
そして、自分の本当の力を知ることが出来るようになるのです。
つづく
〈マゾヒスト〉がもつ〈自由〉への恐れ
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