リズ・ブルボー 著 浅岡夢二 訳
〈裁き〉と〈傷〉を混同しない
あなたがどの仮面をつけているかを特定するためには、裁きと傷をしっかり区別する必要がある、ということをここで確認しておきましょう
ここで、上司との関係がうまくいっていないルネの例を見てみましょう。上司は、ルネに話しかける時、彼女を見ることさえしません。ルネよりもきれいな、シュザンヌという別の従業員が気に入っているのは明らかです。ルネは職場でますますネガティブな感情を持つようになり、家に帰ってからも職場の事が気になって仕方がありません。その日に起こったことを考えてばかりで、カンタにすっかり支配されています。
・【どうして上司は私に対してあんなふうに振る舞うのか、私にはまったく理解できない。私は、一生懸命、彼のために尽くしているのに】
・【どうして、上司はシュザンヌばかり誉めるのかしら。仕事が出来るようにシュザンヌを支えているのは私なのに。誉められるべきは私だって、どうしてシュザンヌは上司に言わないのだろう? 上司の誉め言葉に対してあんなふうに微笑んでいる。なんという偽善者! それなのに彼女は、私が同僚なのですごく恵まれている、なんて言っている。私が彼女をこれからも助けることを期待して私にそう言っているということを、私はちゃんと知っているのだから】
・【緊急の用事が入ったとき、残業するのはいつも私。上司は、シュザンヌに残業させることなんて、これっぽちも考えていないんだから】
・【今日は、もう最低だったわ。上司はこう言った。「ルネ、今日はまた特別きれいだね」私を、頭からつま先までジロジロ点検しながら。それから、上司とシュザンヌは目を見あわせて、明らかに、私を馬鹿にするような顔をした。そんなことを言うんだったら、いっそ黙っていてほしいくらいだわ。彼と私が一緒に働き出してから、こんな不快なお世辞を言われるのは初めてよ】
・【私はこの仕事を辞めようと思っている。拒絶され、侮辱されることに、私はもう我慢できない】
こうした状況が、〈侮辱による傷〉を刺激しているとルネが考えるのは当然でしょう。確かに、そうした状況は侮辱的だと言えます。ところが、活性化しているのは別の傷なのです。
では、上司との関係をまず見てみましょう。上司の前で、ルネが明らかな反応を見せず、すべてを心の中に抑え込んでいるのを見れば、上司の振る舞いが、彼女の〈拒絶による傷〉を刺激しているのは明らかです。彼女は、〈逃避する人〉の仮面をつけているのです。彼女は、身を引いて、自分の中に閉じこもっています。自分の心の中のいちばん深い所でどの様に裁いているか、ルネはまったく意識化できていないのです。それは、こういう内容です。
・もちろん、私はシュザンヌと比べたら、全然きれいしゃない。私は超ダサイのだから、上司がシュザンヌを気に入るのは当然だわ。
・彼の態度に私がすごく傷ついているって、どうして言えないのだろう。なんて私は臆病なの、今日だって、あのわざとらしいお世辞に次のように答えることもできたはず。「この二年間、ほかの日には別の言い方をしていただいて感謝しています!」そんな言い方をしたら、確かにイヤミだし、無礼だと思う。だけと、少なくとも、私が他人から笑われてばかりいる怖がり屋じゃないってことは示せたはずだわ。
・シュザンヌが電話で知り合いとおしゃべりをしていたり、爪を磨いたり、仕事をしている振りをしたりしているときに、上司は仕事をすべて私に押し付けてくる。そんな時は、「ノー」つて言おうと何度決心したか分からない。それなのに、私って、本当にだめな人間だわ。
こんなふうに、ルネは絶えず自分を拒絶しています。そしてカンタに責められるのです。
苦しまないために、〈否認〉を使っている、そして、そのせいで、自分が本当に思っていることを意識化できない、という事実に気づかない限りルネは自分を変えることはできないでしょう。
彼女は、自分の外で起こっていることしか見ていないのです。さらに、上司が彼女の仕事ぶりに満足しており、だからこそいちばん重要な仕事を彼女に任せている、という事実に気づくことができません。上司が彼女を解雇しないということ自体がその証拠なのですが、彼女の眼は、まったくそこに向きません。
上司とのあいだで起こっている〈拒絶〉の問題は、彼女と父親とのあいだで起こった拒絶を反映しているのです。あるいは、学校やその他の場所で起こった、異性の先生とのあいだで経験した拒絶を反映しているのです。〈拒絶による傷〉と〈不正による傷〉は、もともとは、同性の親とのあいだで作られたものです。しかし、異性の親との良くない関係に、同性の親が介入して助けてくれない時、異性の親によって、この二つの傷は活性化されるのです。
ルネが、もし、攻撃的な態度で上司に反応したとすれば、そのときは、〈裏切りによる傷〉が活性化されているのです。その場合。上司が、彼女を信頼して大事な仕事を任せているということ、しかも、彼女を誉めて、彼女に感謝の思いを上手く伝えることができない、ということをルネは理解していないのです。
人間関係における傷は、幼いころ、親とのあいだで起こった愛情関係に原因があります。
職場で作る傷は、あらゆる〈学び〉の形態に関連して作った傷と、つながっています。
次に、ルネとシュザンヌの関係を見てみましょう。ルネがシュザンヌに対抗しないのは、〈拒絶による傷〉が原因だと考えられます。シュザンヌとの関係で〈不正〉を経験しているのは事実ですが、〈拒絶による傷〉があまりにも優勢なので、ルネは典型的な〈逃避する人〉となってしまうのです。もし、ルネが自己コントロールを失って、シュザンヌに対してあからさまに怒りを向けたとすれば、その時は〈拒絶による傷〉よりも〈不正による傷〉が優勢になっていると言えるでしょう。
もし、ルネが、上司の態度をもうこれ以上許せないという理由で仕事を辞めたとしたら、〈拒絶による傷〉があまりにも大きな苦しみを味わせるので、苦しみに直面するよりもその場から〈逃避〉することにした、ということになるでしょう。
傷に、苦しむほとんどの人と同様に、ルネもまた、彼女を苦しませているのは、状況や他人であると思っています。そして、それは、彼女を乗っ取っているカンタの反応である、ということがどうしても分からないでしょう。そのために、〈内なる神〉とつながって自分自身の人生を創り出すことが出来ないのです。
結論を言いましょう。どの傷が活性化しているかを突き止めることが何よりも大事だということです。そうすることによって、あなたは初めて、過去の出来事との関連づけを行い、次の章で説明される。癒しの次の段階に進むことが出来るからです。
ますます増えている傷
離婚が、戦争が、そして、肉体的または精神的な病気がますます増えていることを見れば、私たちの社会には多くの苦しみがあって、しかも、それが日に日に拡大していることがよく分かるでしょう。それらの苦しみを麻痺させるお手軽な手段は、アルコールやドラッグであり、事実、それらの消費はどんどん伸びています。
ある精神科医から聞いた話ですが、老人たちに見られる精神異常に、現場の医師たちは、まったくお手上げの状態だそうです。それらの病気を、アルッハイマー、あるいは、パーキンソン病と診断できない場合、脳細胞の変質によって起こるそれらの病気を治療するのですが、と尋ねたところ、手の打ちようがないので、さまざまな試みをとにかく行って、ただその結果を待つしかない、ということでした。
医学がすごく発達したのに、どうして病人がこんなに増えるのだろう、と多くの人たちが思っているはずです。私がどうかと言えば、それは、私たちが医学に頼ってばかりいて、自分の生き方の責任を引き受けていないからだ、と考えるのです。
ここで、エゴが非常に重要な一面を指摘しておきましょう。
私たちは、自分の人生を自分で創り出すことができる、ということを
エゴは認めようとせず、問題は外からやって来ると信じています。そのため、問題の解決策を、必ず、私たちの外で探すのです。
さらに、製薬会社が巨大になり、途方もなく多くの薬を製造するので、私たちの感覚が麻痺してしまっているのです。薬に頼ることでも私たち人間は、自分自身で責任を取ることを忘れています。問題に正面から立ち向かおうとしないのです。
問題の責任を引き受けない限り、それらの問題は、
さらにおおきなものとなって、私たちのところに戻って来るでしょう。
どんな医者も、また、どんな薬も、あなたを決定的に治すことはできません。たとえ手術を受けようとも、あるいは、どんな薬を飲もうとも、問題は必ず私たちのもとに戻って来るでしょう。
医学や薬によって、確かにしばらくのあいだ、苦痛が和らぐことはあるでしょう。しかし、それらは、必要に応じて、機嫌を決めて、使うべきだと思います。医学、薬、各種セラピー、その他の外部からの支援は、真の癒しはむあなたの内側から起こる、とあなたが本当に知った時、初めてその効果を発揮するのです。あなたがそれを引き受ければ、癒しの過程が始まるでしょう、この本の主要な目的は、あなたが自分で責任を引き受けられように支援することなのです。
あらゆる肉体的な病気は、あなたの魂の癒されていない傷によって引き起こされる
苦しみの反映である、ということを忘れてください。
もし、あなたが、魂の傷ですごく苦しんでいるとしても、それを治す力は、あなたの内部にしかないのです。大きな傷があることは、あなたが幼いころから苦しんだという事実によって。また、自分にはとてもそれを解決することができないだろうと感じた事実によって、知ることが出来るのです。さらに、あなたは、親しい人たちよりもあなたの方が苦しんでいるし、誰も貴あなたを助けることはできない、と感じたはずです。トンネルの向こうに光を見ることが出来なかったのです。
すでに指摘したことですが、〈拒絶による傷〉が引き起こす苦しみが最も大きく、そのために、人びとは、その苦しみを否定して、何も感じないようにするのです。しかし、人びとがその苦しみを抑圧すればするほど、それは巨大なものとなって、後で必ず、その人の所に戻ってくるのです。時間が経つにしたがって、その苦しみは、強迫的な不安に姿を変えて、あるいは、きわめて重篤な病気に姿を変えて、あなたの元に戻って来るでしょう。
もし、あなたが、極めて重大な傷によってひどく苦しんでいるとしたら、その傷は、数多くの転生を通して作られてきた可能性が高いと言えます。それぞれの転生で、あなたの魂は、傷が癒されるのを強く願っているのですが、残念ながらそうはいきませんでした。それは、あなたが、人生の主導権をエゴに引き渡してきたからです。だからこそ、各転生を通して、傷が大きなものとなってきたのです。あなたが、傷の手当てをしっかりせずに、ただ絆創膏を貼って隠しているだけでは、傷は時間とともに深刻になるだけでしょう。
傷が大きければ大きいほど、あなたは、決意、勇気、力、そして根気を必要とするのです。それらを総動員して、あなたの傷に立ち向かい、あなたの人生の指導権を取り戻す必要があるのです。決意することが、最も大切な段階です。決意さえしっかりすれば、時に勇気が足りないとしても、あなたは、目的に達するための方法を必ず見つけることが出来るでしょう。目的地さえはっきりしていれば、あなたは〈内なる神〉からの支援を必ず受けられるはずだからです。
本章を読んだ後で、実生活に適用したいと思ったことをノートに書き出してください。
つづく
第九章 〈真の許し〉が起こす人生の奇跡
エゴに支配された夫婦生活・性生活は倦怠感・性の不一致となる人が多い、新たな刺激・心地よさを付与し。避妊方法とし用いても優れた特許取得ソフトノーブルは夫婦生活での性の不一致を改善し、セックスレス及びセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。