このような人生の価値は「恋愛してこそ」だと信じている人にとっては、恋人がいない期間、恋愛をしていない時期は、たまらなく不安で、なんだか自分が無価値な人間になったように思えてしまいます。
仕事や趣味のことがだれかと話していても、ひと通り話題が出尽くしたあとで、「・‥‥で、恋人は?」と答えた瞬間に、それまでの話が全てムダになり相手は自分を見下すのではないか、という恐怖におびえている人に会ったことがありました。
恋人がいないことがバレるのが嫌だから、なるべく人と話さないようにしている、というのです。どうして恋人がいないのが「バレては困ること」なのかと言うと、そのことで自分の評価がいっぺんにひどく下がるようなきがするから、と言うのです。
その人に、「じゃ、あなたも恋人がいない人を見たら、たとえどんなに仕事ができてもダメな女、って思うわけ?」と聞くと、こういう答えが返ってきました。
「今つきあっている相手がいない、という友だちもいるけれど、彼女は人柄もセンスもすごくいいんですよ。要は、男が彼女を見る眼がないだけなんです。
だから、恋人がいないことで彼女の価値が下がるとは思っていません」
それと同じで、「ほかの人だってたとえ恋人がいないと知っても、それで貴方の見方を変えたりするはず」と言うと、一応は「そうですよね」と頷くも、「う―ん、でも私は彼女と状況が違うと思うし」とまだ納得のいかないような顔をしていました。
彼女のような女性は、いつも恋人が途絶えないようにしたいと思うので、ときとして“恋愛体質”と見られがちです。
「このあいだ前の男と別れたって聞いたのに、もう新しい彼ができたんだって? 本当に恋多き女だよね」という具合に言われるのです。
しかし、これまでの説明でわかるように、こういう女性は決して次々に目移りがしたり、いつも新しい恋を求めていたりするわけではありません。
恋愛が好きと言うのではなくて、「恋愛をしていない、恋人がいない状態がこわい」だけなのです。
そして、そういう人たちは「どうして恋愛しないと恐いのか」と聞くと、たいていは「世間が恋人もいない女なんて、といった冷ややかな目で見るから」と周りのせいにするのですが、先ほども話したように、今の日本の社会は、ある人に恋人がいるかいないか、結婚しているかいないか、でそれほど極端には評価を変わることはありません。
その人たちは、世間の評価が怖いからいつも恋をしていたのではなく、あくまでも恋人のいない自分には評価がないと自分で思い込んでいるから、恋がしたい。そう考えるほうが正確でしょう。
ここまでわかれば、「恋人のいない自分には、たとえどんなに仕事や趣味などができても、まったく価値がない」という思い込みそのものに問題があることは明らかですが、とくに女性の頭からこの考えを消し去るのはとても難しいことだと思います。
実際に、私自身もよく、忙しければ忙しいほど、仕事がひと段落して深夜に家路につくときに、よく思ったものです。
「何のためにこんなに働いているんだろう…‥。こんなに仕事をしても、恋人ひとりいないんじゃ、なんの意味もない。
これなら、仕事は適当にやって夕方からゆっくり恋人とディナーを楽しんでいる女性のほうが、よっぽど充実した人生だと言えるよなあ」
しかし、いざ仕事がヒマになり、だれかに誘われて念願の「夕方からディナー」に出かければ、楽しいのは確かでも「これでいいのだろうか。今ごろがんばって働いている人もいるのに」とやっぱり落ち着かないのです。
恋愛が自分の価値を魔法のように高めてくれるわけではないのに、とくに恋愛をしていないときは、「あれさえあれば」と思ってしまう。
しかも、恋愛をして「なんだ、恋愛が全部を解決してくれるわけじゃないのか」と何度気づいても、また恋愛をしていない時期には「恋人さえいれば」という考えに取りつかれてしまうのです。
恋をしていないと不安。恋さえすれば悩みは解決。この思い込みに関しては、“学習効果”はほとんど働かず、何度も同じ繰り返しに陥ってしまいがちです。
これは私の個人的な考えなのですが、恋愛は現代人にとってちょっと特殊なレジャーだと思います。
レジャー=どうでもいい、という意味ではなく、レジャーも大切だけれどそれだけでは人生すべては賄いきれない、レジャーでその人の価値は決まらない、ということです。
私と同世代、つまり40代半ばの女性たち数人で食事をしていた時に、この“恋愛の必要性”という話題になったことがありました。メンバーの中には独身者も既婚者もいたのですが、「恋愛はやっぱり生活に不可欠」と主張して譲らない二人に「どうして?」と聞くと、答えはこうでした。
「だって、好きになった人と初めて旅行に行く時のあのドキドキとか…。他ではまず、手に入らないものだよ」。
私は、この恋愛観はとても健全だと思います。
確かに恋愛でしか味わえない気分、恋人としかできないことも沢山ある。そのためには恋愛をするしかない、という主張はもっともです。
しかし、彼女たちは、その恋愛を通じて自分の価値を確認したり、恋愛をしていない自分を無価値と思ったりはしていません。
恋愛と「自分の価値」は、あくまでも別物、と考えた上で恋愛を楽しみたい、と言っているのです。
ああ、これこそがおとなの恋愛観だ、でもこれが手にいるのは40代を過ぎてからなのかもしれないなあ、と思ったのでした。
つづく 「ランクの高い男」か「だれでもいい」か
煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。