性生活の悩みをどうするか?
「行きづまった性生活」
女と男の人生相談=ダン・カイリー著=近藤裕=訳
いちばん大事な性器は、股の間でなく両方の耳の間(頭 )にある、と言われています。
自分の体や自分自身に対してネガティブな思いを抱いて いたり、相手に対する警戒心があるときに性行為をしても、あなたの体は性的に反応しないのが普通です。
統計的に言って、二人の関係がうまくいっていない状態の性生活の半分以上は、なんらかの性的問題を抱えていることが分かります。たとえば、前戯が足りないことの不満とか、インポテンツや不感症などといった問題があるということです。私の臨床では、このパーセンテージはもっと高いと言ってよいでしょう。
どのような問題であれ、性生活の悩みを感じておられる方のために、次に示すような「性生活の振り返り」をしてみることをすすめます。また、さほどの問題がないと思っている方も、現在の性生活の状態を振り返り、改めるべきことがあるかどうかを見出すのに役立たせて欲しいと思います。
「性生活を振り返り」
一、 一時的に休止すべきか?
自分たちの性生活の内容が不健康な状態になっていると感じられたら(たとえば、喜びよりも、心に痛みを感じる)、性生活はいっさい中断し、しばらくその悩みから解放されるべきです。性の営みはまったく自然な行為ですが、かといって、自然に完璧な性生活を営めるものではないのです。ですから、不自然な性生活は止めてもよいのです。
二、 知るべきことを知っているか?
性生活の問題点の多くは性生活上の知識を知らないために生じます。次のことを知っているでしょうか?
・女性は男性よりも性的刺激に対する反応が遅い。これは、おそらく男性の反応に対する責任が女性にあると考えられているためでしょう。男性の反応に対して心を奪われていると自分自身の反応が規制されてしまいます。
・男性よりも女性の方が、セックスのパートナーとの性格的一致を重視します。
・不感症に悩む女性の方は、非社会的で、厳格な人生観を持った専業主婦に多くみられます。
・充実した性生活を送っている女性の多くは、母親との関係において葛藤の少ない幼少期を過ごしている。また、父親も育児にかかわり、両親の関係も円満で、平和で秩序に満ちた家庭生活を体験している。
・妊娠と出産においての女性の役割を先に学んだ女性の方が、男性の役割を先に学んだ女性よりも性生活に満足する度合いが高い。
・常時オルガィズムを経験している女性の方が、そうでない女性よりも自慰行為に対してポジティブな態度を持っている。
・体重、乳房の大きさ、クリトリスの大きさ、容姿の美しさなどといった身体的構造と女性のオルガィズムの経験との相関関係はない。
また、母親の性生活に対する態度、性生活の内容、生理(メンス)の頻度、妊娠経験などは、娘の性の体験、不倫傾向、自慰行為とはまったく関係がない。
三、 罪責感をもっていますか?
性生活にまつわる罪責感の分析をしてみましょう。自分勝手な欲望を満たすために利用されているかどうかが分かります。(結婚生活では性的搾取が許されてよいということはない)
まず、自分のこれまでの性生活を振り返り分析します。「自分の性の在り方について、どの程度罪責感を抱いているのか?」と考えてみてください。
多くの女性はかなりの罪責を感じ、悩んでいます。たとえば、「あの男性とのセックスを楽しんだりしたらいけない」「オーラル・セックスをしたいと思うのは、私はけがらわしい女だから」「いやな男とのセックスをどうしても止められないので、後味の悪さをいつも感じている」といった状況には罪責感がひそんでいます。
次に性の在り方に対するあなたの倫理観を振り返りましょう。性生活に対する強度の罪責感に悩まされているとしたら、それは、おそらく、あなたの倫理観か非常に高すぎるからだと思います。
潔白すぎる倫理観から次のような考えが生じます。「オーラル・セックスはけがわらしく、そんなことをするのは罪である」「女性はセックスを楽しむものではない」「性欲は動物的本能であって、女性は性的衝動に身を委ねたりしてはいけない」など。
このような罪責感や高度の倫理観を抱いている人は、性生活の問題に悩みを感じたとしても不思議ではありません。また、性生活を振り返り改善しようという意欲も妨げられてしまいます。つまり、倫理観が合理的なものでない限り、罪責感から解放されることは、ほとんど考えられないと言ってよいでしょう。
ある研究によると、性生活に対する高度の倫理観を持ち、罪責感を強く感じる女性ほど、男たちの誘惑の言葉に騙されやすいということです。反して、合理的な倫理観を持っている女性は男性に利己的に利用される率が低いということです。つまり、まず自分の性的存在としての事実を受け容れ(第二章を見よ)、合理的な倫理観を持つことにより、不必要な罪責感から解放されない限り、性生活にまつわる悩みは絶えないのです。
性的に成長することは、何人の男に抱かれたとか、一度のセックスで何回オルガィズムを経験できるかによって測られるものではありません。むしろ、自分の性的態度を検証する自由の度合いによって測られるものです。また、自分の体をどのように使い、楽しむかを決めるうえに必要な知識を十分にもっているかどうかによって決められるのです。
四、 性生活の態度を変える必要がありませんか?
性生活の態度を変えるには時間が要ります。しかし、次のような態度に洗脳することは、すぐにでもできます。「私には、自分の体を楽しむ権利がある」「私の倫理観は、私の成長・健康のために用をなすものでなければならない」このような態度を自己教示法で、一日に何回も自分に言い聞かせます。やがて、自分の性生活をおくせず振り返り、再評価することができるようになるでしょう。さらに、あなたの倫理観の合理的基盤を改め、罪責感を減少できるようになると思います。
五、 ネガティブな考えをコントロールできますか?
性的自虐行為に導くような考えを持っているかどうか振り返ってみます。そうです自虐行為です。男たちの性的欲望の犠牲になっているという不満を抱いている女性の多くは、自分を偽った態度をとっているからです。
ところで、性的機能障害は主に完全主義的な考え方に原因があるとされています。この完全さを求める思いは、性行為の前に、その最中に、そして、その後に、まるで自動的に生じます。そして、性行為の健全な営みを妨げとなります。たとえば、性行為の前に次に記すような思いをあなたは抱くことがありませんか?
・意図的にコントロールしなければならない。
・彼を喜ばせてあげなければいけない。
・楽しむべきものである。
・楽しんでいることを行動で示さなければならない。
・私の方から、こうして欲しいと望んだりすべきでない。
・こうしたら、彼に嫌がれるに決まっている。
・こんなことをするのはよくないことだ。
・彼は、私のことをなんと思うんだろう。
このような思いを抱いていれば、性行為に没頭し、心から楽しむことができないのは当然です。また、相手から拒まれ、嫌われてしまうのでないかという思い惑いに悩まされます。
次のような思いが、性行為の最中に浮かんでくるかどうかチェックしてみてください。
・感じないと思う。
・なかなか<いかない>…・たぶん<いかない>んじゃないかしら。
・裸になっても彼はエキサイトしない…おそらく、私が魅力的でないからだわ。
・オルガィズムを経験できない! 女として失格だわ!
こういった思いが、男性による拒絶感を募らせてしまうのは言いまでもありません。さらに、性的機能の働きを妨げてしまいます。また一方、われ知らず性的欲望に没頭してしまう女性は、次に示すような思いに、性行為の後に、とらわれます。
・なんて、嫌らしいんだろう!
・なんて、私はけがらわしい女なんだろう。
・こんなことを我慢する必要なかない!
・きっと、彼は私のことを嫌になるにきまっているわ!
・二度と私を抱きたいとおもわないわ!
これまで記してきたような思いにとらわれてしまう女性には、男性に受け容れたいという強い願望があると考えられています。また、性的問題に背を向け、なかなか問題を解決しようとしないようです。そして、性的障害にいつまでも悩まされているのです。
このような自動的に浮かんでくるネガティブな思いによって、性的に満足できないという悩みを持っている人は、意図的な自己教示の方法『=女と男の人生相談= (4) 自己認識の修正エクササイズを見よ』によって、もっと合理的な考えが抱けるように洗脳する必要があるでしょう。たとえば、「彼を喜ばせてあげなければいけない」という思い込みを、「彼を喜ばせたい。喜ばせることができる」と言い換えます。「女として失格だわ!」という思いを、「男として資格のある男性と一緒にいる資格がある」と言い換えるのです。
自分にとって不健全な思いから解放されるとか、少なくとも、それを認識し、コントロールできるようになれば、自分の性生活に関する問題の実態が明らかになり、また、解決することも可能となります。
そのような状態になれたら、次に、性生活の充足をもたらす活性化プログラムを応用することをすすめます。
性の営みには優しさと、親しみ合いが必要です。さもないと障害が生じます。完璧(?)なオルガィズムを懸命に求めるあまり、セックスは人的交流のデザートであって、メイン・コースでないことを忘れてしまうのです。
(性生活の活性化プログラム)を紹介する前に一つのケースを次の回=女と男の人生相談= (7)紹介しましょう。
つづく コミュニケーションの改善方法