1、インポテンツとは
インポテンツは、一般には性行為の時の男性性器の勃起不能の状態を指す言葉として、用いられている。医学界では、わが国では泌尿科を中心として「性欲、勃起、射精、オルガスムのうち一つ、あるいはそれ以上の不全」な状態をインポテンツとする考え方が広くおこなわれている。これに従えば、性欲・セックスそのものが低下している場合や、十分に勃起していながら射精やオルガスムの得られないもの(実際には、このような状態を遅漏などとしてインポテンツとは別とする考え方もある)も含まれていまう。
インポテンツは後に述べるように、生殖器などを中心とした身体器官の障害よりも、心理的問題によって生じる場合の方が多く、従って精神医学の領域でも治療の対象とされている。その精神科領域でのインポテンツの一般的定義は「性行為が完了するまでの間に、男性が勃起をし、またその勃起を持続するのに障害が続くか反復すること」とされている。
この定義では性行為に際して勃起しないか、勃起しても性行為が完了するまで勃起が持続しない状態が一定期間続くか、性行為の度に勃起しない状態を指すことになり、これは現在一般社会で用いられているインポテンツの意味にだいたい一致する。
本章でもこのインポテンツの定義に従って論を進めることとする。
2、インポテンツの原因
インポテンツは身体上の障害によっておこる器質的インポテンツと、主として心理的原因によっておこる機能的インポテンツに大別される。最近までは心理的機能的インポテンツが九〇パーセント近位と考えられていたが、最近の医学的検査法の発達により、従来身体的異常が発見できぬために心理的なものと考えられいた事例にも身体的障害が発見されるようになってきた。しかしそれでもインポテンツ全体の五〇ないし六〇パーセントは心理的原因によるものと推定されている。
一、器質的インポテンツ
外傷、腫瘍、出血などによって脳や脊髄などが損傷を受けるとインポテンツに陥ることがある。その他に何らの原因で陰茎への血管が詰まって血流が傷害された場合や、脳、下垂体、睾丸などの疾患でホルモンの分泌に異常が生じた場合にもインポテンツの原因となり得る。
さらに年齢を重ねるに従って性欲や勃起力が衰えてくることはよく知られているが、その程度には個人差が極めて大きい。
極めて稀ではあるが先天性奇形として陰茎欠損症がある。一般に若い男性の中には、自分の陰茎が標準より小さすぎるのではないかと不安を抱いているのも少なくないが、実際には陰茎が勃起した状態で五センチ以上あれば性交・セックス上は問題がないとされている。
性拒否&セックスレス&オーガズム&インポテンツ関連性は
差し込み文書
勃起した状態でペニスが五センチ以上あれば性交・セックス上は問題がないとするが、はたしてその短小ペニスで女性が感じとるセックスには欲求不満を抱かせることは容易に想像できる。
つまり、パートナーから前戯(陰核、陰唇、膣口、乳首、尿道口、Gスポット、耳、首からなる約8部位〉それらへの性感帯に十分な愛撫もなく独りよがりであったり、更に、女性のいうセックスの中心(子宮頸)とする接触感が無ければ最終的に満足しえるオーガズムへ達することは不可能である。
子宮頚は「外子宮口(噴門)はウズラの卵より少し小さい、接触感は鼻頭」という柔らかさであり、そこにペニス亀頭が程よく強弱を加えながら愛撫することにより、子宮頸に当たることによって女性は究極オーガズムを感じるのである。
男女双方その感・触覚はコリコリとダイレクトに感じ取ることができる。このようなペアリングが一般にいう性的相性がとても合っていると自称するペアー達である。
しかしペニス挿入によってオーガズムに達せられるのはある調査によれば二〇パーセント程度であると報告されている。男性器が大きいサイズであったとしてもこの様なことになるのか? ただ言えること、女性は排卵期に最も性欲を望み女性ホルモンを分泌し、子宮頚噴門を開き子宮微細運動を行い精子を向か入れる生殖行動が盛んであることにも関係していると性医学者は突き止めている。
女性が結婚に望むのはヒューマンセクシュアリティー(人間の身体の一部としての性器や性行動だけでなく、他人との人間的なつながりや愛情、友情、思いやり、包容力など人格と人格との触れ合いのすべてを含む幅広い概念)がある程度満たされるパートナーと結婚して子供を産み育て、ファミリーを持ちたいという願望からであって、男性が望むようなセックスが中心でないのである。よって四年も経てば色気は早々と冷めていくのだと思う。
上述のように女性の性はたいへんデリケートである。体調や、精神的安定などに加えて性的欲求を昂らせる前戯〈クリトリス・小陰唇・膣入口〉他等々を丁寧に優しくソフト感覚で愛撫し、膣入り口にあるスキーン腺・バルトリン腺から女性ホルモン分泌液を大量に出るほどパートナーを感じさせようという姿勢が必要ではないでしょうか。
ただし、素手での愛撫は爪や指のささくれ部で傷を負うので、指サック、コンドームを使いましよう。
多くの妻たちは子ども達がいて家族が形成されると、安堵感みたいな空気からして性欲減退というものが現れ、夫により前戯に時間をかけて愛撫を受けたいという情欲・ゆとりはほぼ無いというのが現実かと思います。また、多くの男性たちが苦痛でしかないセックスを強要している場合が多くある。
このような状況下では性拒否、セックスレスが心因的ストレスとなりインポテンツの原因となる。パートナーの性拒否によって引き起こされるセックスレスからくるインポテンツとなるケースが多いように思われる。
わが国の夫婦の性は、とても貧しいアダルトビデオ等から誤った数々の性知識をもって、夫の独(ひと)りよがりなセックスを続けてきた結果がこうなのです。
「妻を喜ばせてやろう」という意識を持っていますか? 回数ではありません。妻にとって、心も体も解放される素敵なセックスが展開されれば好きになるでしょう。苦痛でしかないセックスであれば、したくないのは当たり前ですよね。
仮性インポテンツ(性行為中での中折れ)改善方法
(一)ひとつ目は、ペニス挿入によって亀頭から膣の締まり具合が伝わらない、女性ホルモンの分泌も感じられないとなれば男女双方とも意味のないセック ス(快感を伴ない)を行っている。いわば義理、或いはいまの結婚生活を保ちたいという感情しかないである。従って、いくらパートナーがイク振りをしても刺激が乏しく性行為中に中折れしてしまう、男は自信を失いインポテンツとなっていく。
(二)二つ目は加齢によって男なら自然発生的に誰でもいつかはやってくるものである。それが六〇代なのか七〇代なのかそれとも八〇代なのか個人差がある。
心地よいセックスなら女性はいくら齢を重ねても女性ホルモン分泌は可能であり心地よさを感じオーガズムに達する。
男性のペニスが短小であっても、加齢による中折れであったとしても先述「ヒューマンセクシュアリティー」に富んだ気持ちで臨むセックスならパートナーからセックスを望むでしょう。
心地よいセックスを望むならノーブルウッシングB型(膣温水洗浄器)を用い
前戯で完全にパートナーをオーガズムに導き達してあげるということです。仮性インポテンツの男には挿入時間に限界があり勃起したら素早く射精に至らなくては中折へと陥ってしまう。
中折れのひとつの原因は膣の収縮が弱い。いわゆる緩々であることで、ペニス全体・亀頭への刺激が乏しいから中折れが起きる場合もある。
従って膣にソフトノーブル(避妊用具)入れることで、上記図のようにペニスが膣内のテント状に拡がっている処にぺニスを押し込む形となり強力な圧迫感と共に快感がえられる。
それでも、中折れが起こるなら、女騎乗位ならさらにペニス圧迫感は増し数分以内に射精に至り、パートナーも男性をオーガズムに達っせられることを最高の喜びと感じられるでしよう。
また、膣へのペニス挿入困難な場合は、アダルト商品ペニスリングあるいはラテックス製(文具用)のゴムバンドを二重にし、ペニスを勃起させてから二・三本ペニスの根元に差し入れる。ペニス内海綿体血液の逆流防止することで、ある程度は勃起を維持できる方法でもある。
ただし、長時間締め付けているとさしさわりがある例えば一時的に「排尿困難」例あり、対処法は「温熱療法、自然治癒」。自己責任において行って下さい。さらに詳しくは「オーガズムの定義」より閲覧
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二 機能的インポテンツ
機能的インポテンツの大部分は心理的要因によるものである。それはほとんどの場合その男性のもつ不安、恐れ、羞恥心などが主な原因であり、このような感情はその場の現実的状況や彼のもつ性について道徳的倫理観や劣等感などから生じたものである。
これら心理的要因よるインポテンツは、その発生状況から次のように分類できる。
(イ) 新婚インポテンツ
若い男性が性行為におよぼうとした時に突然に発症する。新婚旅行など、初めてのパートナーとの性行為の時に、失敗してはならぬという緊張感や恐れ、またパートナーを傷付けないかという不安などの心理によって生じる。従って性行為の回数を重ねるにしたがってインポテンツは回復する。
しかし後述するように本人に男性としての心身の自信の乏しさやパートナーの不注意な言葉で彼の自尊心が傷ついた場合は回復が遅れる場合が多い。特に過去に性交の経験のない男性がインポテンツに陥った場合(一次性インポテンツ)は性交経験のある場合(二次性インポテンツ)よりも回復しにくいことが多い。
以下に具体的事例を示すが本人の匿名性を保つために社会的背景などの事実は症状特徴を曲げない範囲で実例は変えてある。
事例 二八歳、銀行員、見合結婚。結婚までオナニーの経験はあるが女性との性交は未経験。
結婚後の最初の性行為では勃起はしたが緊張のために妻に挿入前に射精してしまった(早漏)。そのことに関して何も妻は言わなかったが、自分の性的経験のなさと性能力について妻がどう思ったか不安になり、同時に自信も失った。
その後一ヶ月間は性行為を何回か試みたが、勃起はしても挿入する前に萎えてしまう状態が続いた。そこで医師に相談の結果、その助言に従って自分の性経験の無さを妻に話し彼女の協力を得ることに成功した。
同時に普段の日常生活でも、二人で外食したりコンサートに行ったり、日常会話でもできるだけお互いの意思感情の交流が濃くなるようにつとめた。その結果、性行為の時も特別の緊張感も無くなりリラックスした雰囲気のまま性交・セックスを行うことが出来るようになりインポテンツは回復した。
(ロ) 神経症性インポテンツ
自分の性器の大きさや性能力への強い劣等感とか性病感染への不安など、特定の不安や恐怖感のために性行為の時に勃起が不十分になったものである。
青年期などに友人先輩などから自分の性器が小さいとからかわれて強い劣等感を抱くようになったり、過去の性行為での性病感染の不安が解消していなかったり、自分のオナニーの回数や方法が常人と違って異常ではないかと一人で強く悩んでいたりする。
また成年でも心臓病や高血圧などの病気を持っている時に、医師に性行為を止められていない程度でも、性行為中に心臓発作や脳卒中が起こることをひどく心配している場合にはインポテンツになるものもある。
事例 二四歳、工員。三ヶ月後に結婚することになったが、彼女との性的経験はなかった。
会社の慰安旅行で先輩から強引にソープランドに誘われて断り切れずに同行した。性病の予防には特別に用心したつもりであったが、旅行から帰ってから陰部のかゆみが続くようになった。やがてオナニーでも快感が乏しくなり、そのうち空想やポルノ写真などの刺激では勃起しなくなった。
泌尿器科を受診したが性病はなく、神経性のものと診断された精神科を紹介された。精神科では、彼が以前から性能力に劣等感をもっていたことで、ソープランドに行ったことで婚約者に強い罪悪感を抱いていたことなどが明らかになり精神療法の結果これからの劣等感や罪悪感が消失すると共にインポテンツは回復した。
(ハ) 精神病性インポテンツ
精神分裂症をはじめ、いろいろの精神病でインポテンツがおこることがあるが、最もよくみられるのは、うつ病である。うつ病ではインポテンツはほとんど必発の症状のひとつである。うつ病は、別名を感情病と言われるように気分が落ち込んで沈うつとなり、今まで楽しんでいたものにも興味がなくなり、何事も面白いと感じなくなる。
思考力も鈍り決断力も低下し、考えることは悲観的で物事を悪い方にばかり考えるようになり、自分をつまらぬものと評価するようになる。仕事や勉強をしなくてはという気持ちばかりあっても行動に移す気力もなくなってくる。
同時に全身の倦怠感、不眠、食欲不振、体重減少、便秘、頭痛、口渇、胸部や腹部の不快な圧迫感などの症状と共に、男性の場合は性欲減退、インポテンツがおこる。
事例 三四歳、公務員。五年前に結婚し、妻との間に三歳の長男がいる。元来仕事熱心で几帳面な性格であったが、新しい部署に移って三ヶ月目ごろから全身倦怠、不眠が出現し、次第に仕事の能率も低下し性生活の回数も少なくなった。
内科医の診察を受けたが特に異常は見つからなかった。元来の仕事熱心さで懸命に頑張ったが、仕事の能率は上がらず自信を失いがちになり、夫婦生活でも妻の求めに応じられなくなり、時に仕事を辞めたいと洩らすようになった。
生気の乏しくなった夫を心配して妻に伴われて精神科を受診した彼は、職場でも家庭でも十分に責任を果たせない自分の不甲斐なさを時に涙を浮かべて述べる状態であった。さっそくにうつ病に対する薬の服用と精神病法で、約二ヶ月の入院治療の後本来の気力と体調を回復しインポテンツも消失した。
(二)その他の心理性インポテンツ
住宅事情から隣室の家族やアパートの隣人に性行為の様子を知られないかという不安でインポテンツに陥った例がある。また妻との間の愛情の冷却のためになったものもある。これらは場所を変えたり、妻以外の女性との性行為ではインポテンツは起こらない。さらに避妊具を使用したため、その違和感から発症したものもある。
その他には性倒錯(同性愛、マゾヒズム、サディズムなど)のために女性との通常の性行為が不能となる例もある。
3、インポテンツの男性の性格特徴
欧米の研究者によると、インポテンツの男性には性的問題だけでなく、精神医学的問題(症状ないし疾患)を持つものや性格障害を示すものが多いとされている。
我が国ではインポテンツなど性的問題についての研究そのものが非常に少ないが、その中で機能的な性障害(インポテンツの他に早漏や射精不能などを含む)をもつ男性で性格障害の顕著なものを、次の二型に分類している。
第一のタイプは未熟型で自信がなく、男性性が未確立な性格である。多くの場合依存的でありながら、それを抑圧し、劣等感が強いのにそれを認めまいとして背伸びをしている。社会人としても一応は適応している者もあるが、一般に適応性の低い人が多い。
第二のタイプは情緒欠乏症型で、情緒的理解力に乏しく愛情交流とか快楽的な楽しみとかに関心がない。しかし社会人としては職業上はしっかりと仕事熱心である。
これらの人が常に性機能に障害を持っているわけではないし、性機能障害の人がすべてこの二つの性格障害であるわけではない。むしろ新婚インポテンツに分類されるものの多くは性的未経験からくる不安緊張によるインポテンツがもっとも多い。
筆者は、これら新婚インポテンツの男性を含めた心因的インポテンツの男性を三二例に矢田部・ギルフォード性格テスト(YGテスト)をおこなって、同じ年齢層の男子神経症患者(五〇名)と健康男子学生(七五名)の結果を比較検討したことがある。このYGテストはあらかじめ用意された質問への回答結果から情緒安定社会適応外向型、社会適応性、向性の特徴をみるものである。
その結果は、男子学生では情緒安定社会適応外向型がもっとも多く、あまり好ましくないとされる情緒不安定社会不適応外向型や情緒不安定内向型が、それぞれ一〇%であった。
同じく対照とした神経症患者では情緒不安定内向型が圧倒的に多く、ついで情緒不安定社会不適応外向型も二五%を占め、ちょうど男子学生と対称的な結果を示した。
一方インポテンツ患者では、情緒不安定内向型の二五%がもっとも多く、最も少ないのが情緒安定社会適応外向型で一六%あり、各性格類型がほぼ均等に分布し全体的には男子学生群と神経症患者群の中間的な分布傾向を示した。
しかし性格類型上あまり好ましくないとされる情緒不安定社会適応外向型と情緒不安定社会適応内向型の両方で全体の四四%近くとなり、これは男子学生と比較して二倍以上の多さである。
また心因的インポテンツ患者の自己評価による性格特徴では、内気および神経質がそれぞれ六〇%、次いで内向的が五三%と多く社会的には内向傾向が顕著である。その一方で負けず嫌い、真面目という自己評価がそれぞれ三〇%弱あり、この結果から生真面目でゆとりがなく、対人関係や社会適応は内向的で自尊心の傷付きやすい性格像がうかがわれる。
4、インポテンツで病院を訪れる男性(患者)と女性(妻)の態度
結婚を控えた未婚の若い男性や二次的なインポテンツに陥った中年既婚男性などは、本人が悩んで自発的に診察に訪れることがある。しかし多くの場合、特に新婚インポテンツの男性の場合には妻の強い勧めで仕方なく受診する傾向がある。
その場合も本人だけが病院に来ることは稀で、妻に伴われて来る場合と本人の親に伴われて来る場合が半々の割合である。しかも本人に積極的に治そうとする気持ちがあまり見られないものもある。むしろ診察を受けることで、妻やその関係者に対して治そうと努力しているように見せようとしているとしか思えない場合もある。
なかには本人の親が、本人の頭は狂っていない、精神面は清浄でるとの証明を得ようと医師に強く求める場合もある。このような例について関係者によく話を聞いてみると、病院に診察を受けに来るまでに、既に本人と妻の間には、それぞれの関係者を巻き込んで抜き差しならぬ感情的対立が生じていることが多い。その典型的な経過は次のようなものである。
独身時代はマスターベーションの経験はあるが女性との性経験はない。(中には体験があるというものもいるが、あってもいわゆる風俗営業の女性との性経験が一回程度である)また女性との恋愛経験もほとんどない。
周囲の勧める見合いで配偶者を決めているが、婚約時も自分の方が積極的にデイトをせず、数回食事をする形式的交際で互いに理解し合うような情緒的で親密な会話もほとんどない。
新婚旅行における初めての性行為は緊張感から早漏で終わってしまう。その直後から彼の心に失敗した恥ずかしさや妻にどう思われているかという不安が生じ、二人の間はよそよそしくなり緊張感が生じる。
その後も何回か性行為を試みるが、妻の方も緊張感が強く、性行為は二人にとって親密さを増すものではなく、単なる義務感による堅苦しい雰囲気に包まれたものとなり、遂には性行為を始める直前には勃起してもすぐに萎えてしまうか、初めから勃起しなくなる。やがて妻は彼女の親などの関係者にその状況を伝え、その結果、彼の方は同性愛か精神異常すら疑われて精神科の診察に至るのである。
このように一方的な受け身の態度で病院を訪れる男性に比べて、女性(インポテンツの夫の妻)の態度は極めて対称的である。結婚後数ヶ月間(精神科などの専門医を訪れるまでには二、三ヶ月ないし半年、中には一年以上経過しているものも多い)一度でも性行為が完遂されず、最近では彼女から求めても避ける夫は女性(自分のように若くて健康な)に性的関心のない変質者か精神異常者ではないかとさえ疑い、インポテンツの治療よりも精神異常の有無の診断を求める者もいる。
彼女たちの多くに共通しているのは一種の被害者意識である。性交を拒否されたと感じて男性(夫)に攻撃的な女性と、その非難攻撃をかわそうと守勢で受身的な(時には二人の共同生活での家事などに対する妻への不満を述べる者もいる)男性の感情的亀裂は第三者である医師の前で明白となる。
このような状況の男女の家庭生活では夕食後でもなごやかなくつろぎの雰囲気はなく、夫は一人でテレビを見るか自分の仕事をし、妻も別の事をし、時に交わされる会話はごく事務的なものに限られる。休日も二人そろって外出したり、食事、買い物を楽しむなどの情緒的交流は乏しい。専門医を訪れる頃には妻は実家に戻ったままの状況の場合も多い。
このような二人にとっては、性行為が二人の情緒的交流を深める手段であったり、あるいは交流が深まった結果としての自然の行為であるという考え方は、最近ではほとんど見られない。
換言すれば結婚当初の性行為の失敗や不満足は、その後の共同生活を通じ相互の理解と親密さに基づく協力によって充足されて行くものであり、そのような相互の受容的な忍耐強さが備わっている男女の関係では、未経験による性行為の失敗がインポテンツに発展することはない。
結婚生活の男性の性の不能から、短期間のうちに互いを傷つけ合い、遂には結婚生活そのものを破局に至らしめる不幸には何故生じるのであろうか。もう一つは最近の一部のマスコミにみられる異常に誇大化され歪んだ性の情報に振り回された結果であろう。もう一つはそのような情報に簡単に影響を受ける若い男女の未熟さである。
それは男女関係の中で必要な男性性と女性性の未確立ないし歪みであろう。インポテンツの男性に見られる専門医受信時の消極さは、同時に性行為の経験の乏しさや未熟さを相手の女性に悟られまいとする自己愛的なものに基づく回避的態度の表れであろう。
最近、女性の積極性と対比して指摘される男性の強さの欠如の一端を示しているともいえる。真の男性の強さとは性能力に代表される肉体的な強さではなく、女性への優しさ、思いやりを伴う心の強さであることは当然である。
一方、夫の性的不能を主訴に妻の方から専門医を訪れる事例は一九七〇年頃から増えてきているように思われる。これはわが国での女性の社会的進出の増大と時期的に一致するが、夫の性の不能を一方的に男性のみの原因として攻撃する一部の女性の態度は、女性の積極性の歪んだ表現とも言えよう。
この数年、筆者のもとには、夫との性行為を拒否する女性側の性の不能の症状を訴える事例が時々見られるようになった。これは今後極めて注目すべき現象ではないかと考えられる。結婚生活での女性とは一方的に相手からの行動、指示を期待するだけのものであってはならないのは当然であるが、その中心は相手の成長、成熟を援助する指示的態度であろう。
横山茂夫
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