著書 河野美代子
Ⅲ 避妊・中絶
精子は熱に弱いって本当ですか
Q 友達が「生理中に妊娠するのか聞いて!」と言われましたので、書きます。友達の木綿子は、彼氏に、「生理中はやっても妊娠しない」と言われたそうです。どうなんでしょうか? それからお湯。精子は熱に弱いって本当ですか? お風呂でやっても妊娠しないとか‥‥。
(東京都/白鳥麗子)
俗説信じないで! 膣の中は一定の温度
A 白鳥さん。女性の身体はいつでも妊娠する可能性を持っているのです月経中でも同じなのです。もちろん、妊娠しにくいとは言えますが、「絶対しない」とは言えないのです。精子は子宮の中で延々と生き続けます。そして、卵子が出てくるのをじっと待っているのです。そこで一週間も生きていたなら、排卵に間に合うことは、十分に考えられることなのです。
それから、あなたは、すでにさまざまな「避妊法」を知っているだろうと思うのですが、その中に「お湯法」とか、「お風呂法」とかがあるのですか? 情けないことを言わないでください。お風呂であろうと、厳寒の吹雪の中でセックスしようと、膣の中は一定の温度です。十分に妊娠する可能性はあるのです。
妊娠に関して、さまざまな俗説が流れていることは知っています。いずれもあまり馬鹿馬鹿しくて呆然とするのですが、でもひょっとして、こんなことを信じ込んでしまう人たちがいたら大変です。避妊と言うのはそんなに甘いものではないのですよ。「セックスイコール妊娠」そう考えるべきなのです。
なぜ、こんな風に、妊娠しやすい時、しない時、と考えるのでしょうか。それほど「妊娠」は、嫌なことなのでしょうか。そうではなくて、やはり「避妊」が話し合いにくいのではありませんか。言い出しにくい、語り合えない、そんな関係のままでセックスする人たちがあまりにも多いのです。女にとって、妊娠って、大変なことでしょうか?
それを話し合うこともなく、びくびくしながら体だけ触れ合ったって、そんなにいいセックスになるのでしょうか。もっと確実な知識を持って、十分にコミュニケーションのとれる間柄でのセックスこそ! と思います。
彼の避妊法が心配
Q 今、私は付き合っている男性がいます。もちろん性的な関係もあります。最近は私が説得してフィルムで避妊をしていますが、はじめはコンドームを使用することをどうしても嫌がりました。彼はちゃんと外出しができる人で、私の妊娠の事もちゃんと考えてくれて、一度も中で出されたことはありません。
でも、行く前に出る透明の液にも精子が含まれていることを知ったので、万が一のことを考えると怖くて、彼に言いました。
そうしたら彼が言うには、精子が出る弁があって、自分はちゃんとその弁が開くのが解るから大丈夫だと言うんです。私はそんな話は聞いたこともなかったので、気になって色々調べましたが、詳しいことは分かりません。彼の言う“弁”とは何なのか、その弁が開くとか開かないとか、その仕組みを教えてください。
二つ目は薬のことです。妊娠のごく初期なら、薬だけで堕ろすことができるという話をちらっと聞きました。もしそんな薬が本当にあったら、詳しく教えていただけますか。私の家は、大学生になるまでは男女交際も禁止という厳しい家庭なので、もしものことあったら一日、病院に入院などということはできないのです。もちろん、友達の家へ泊るなどの外泊も禁止なので、妊娠はとても怖いのです。
(S子)
コンドームプラスもう一つの避妊法を
A S子さん、なぜ彼はコンドームをつけるのをいやがるのでしょうか。おそらく、コンドームをつけると感度が鈍る。より気持ち良くなりたいと言うのでしょうね。それも女性の立場からすれば、たまらんなあと思います。弁なんて知りません。尿と精液が共に出ない仕組みにはなっていますが、精子が出る弁なんて聞いたこともありませんよ。
それに薬で中絶ができるなんて、そんなこともありません。あくまでも、初期の人工中絶は子宮内の?爬(そうは)でなされるものです。膣外射精の妊娠率は私のクリニックのデータでは、29%。しかも、彼女たちのすべてが「彼は大丈夫と言ったのに」と嘆きます。近いうちに貴女もそうなってしまう可能性はありますね。びくびくしながら、それでもセックスはしたいですか。
もちろん、コンドームをきちんと使っても、10%の妊娠率はあります。ですから、コンドームだけでも不安ですよね。コンドームにプラスもう一つの、何かの避妊法を併用する、それくらいの慎重さが必要でしょう。フィルムはとても不確実。私の所でのデータでは、フィルムの妊娠率は57%です。
フィルムはあくまでもコンドームと併用するものです。
あなたのようにどうしても彼の協力を得ることができない。それでもセックスはしたいという人に、低用量のピルは必要なのかもしれませんね。でも、そんな使われ方が増えるのも、哀しいことだなあと思います。
あなたはこんなに妊娠を恐れ、不確実な避妊でビクビクしながら、よく彼とのセックスを続けますね。この状態が続けば、おそらくいつかは妊娠という事態になってしまうでしょう。中絶が無理なら出産することになってしまいますが、それでいいのでしょうか、もう一度、それらの事をきちんと、彼と話し合うことが必要ではないでしょうか。
失敗しない避妊法を教えて!
Q SEXはたとえコンドームを付けていたとしても完璧な避妊とはいえません。だから、より妊娠しづらい時期や、失敗しないための心得を詳しく教えてください。
(宮城/泉ヶ岳の男の子)
安全日っていつですか?
Q 安全日について教えてください。一度何かの授業で習ったけど、良く解りませんでした。学校の授業では実用的な教え方はしないのかもしれないけれど、それではどこで教えてもらえるのでしょうか。私は他に当てがないので、河野先生にお尋ねします。
(岡山/K)
女の体はいつだって「危険日」
A 「避妊」については、ほとんどの人がきっといつかは切実になる時が来る。時期はそれぞれ違うでしょうが、子どもを何人か産んだ後かもしれないし、前かも知れない、または、間を開けたい時かも。必要になった時にちゃんとした実行ができるようになって欲しい、これが私の持論です。
「泉ヶ岳の男の子」さん、確かに貴方の言うように、コンドームを使っても、百%確実とは言えません。私の持っているデータでは、コンドームを毎回使っている人でも、10%の妊娠がありました。使ってても破れてしまったという人もあります。だから、私は、どうしても妊娠して困る人は、必ず何かもう一つの方法と併用を、と言っているのです。
例えばコンドームをつけたまま膣外射精するとか、コンドームとフィルムを同時に使うとか。あるいは、
=差し込み文書「コンドームと『ソフトノーブル避妊用具』
さらに『ノーブルウッシング膣内温水洗浄器』
併を用いるとか」
=
そこで、あなたの言っている「妊娠しずらい時期」、Kさんの言う「安全日」の話ですね。
あなたは安全日にのみ、コンドームを使ってセックスすれば完璧じゃないかと考えているのではないでしょうか。それはやめてください。なぜなら「女性はいつでも妊娠する可能性を持っている」、これが正しいからです。
確かに、ホルモン的に成熟した女性は、ほぼ一ヶ月に一回排卵します、そして、その卵は、48時間以内に受精する能力を失います。だから排卵して三、四日たった後は、もう妊娠はしないはずですよね。
でも、それが甘いのです。女性の身体は機械ではないのです。機械だって、時々は故障するのに、ましてや女性の排卵とか、月経とかは、ホルモンによって起きるもの。それも、脳から出るホルモンに左右されるものなのですから、ちょっとした性的刺激でたくさんのホルモンがでたり、ちょっと憂鬱(ゆううつ)だとホルモンが出なったり。そんなことは生身の身体では、しょっちゅう起こることなのです。
「安全日」「危険日」で、本当にどれだけ膨大な数の女性たちが泣いてきたことか。今日も、「生理の予定日の三日前だから、大丈夫と思って避妊しなかった」と、ひとりの女性が泣いて帰りました。
「K」さん、安全日なんて、知らなくていいのです。「いつも危険日」と考えて、一回も欠かさず、避妊することですよ。あえて言うなら、毎日欠かさず基礎体温をつけて、しっかり高温期になって、四日たてば、もう排卵もすんだと考えてもいいでしょう。体温も測らないで、「もうすんだはず」と考えるのは、もってのほかです。
妊娠しない「安全日」はありますか?
Q SEXをする際、女性に関して避妊具なしでも妊娠しない一般に言われている「安全日」は本当にありますか? あるとすれば、具体的にいつ頃をさすのでしょうか? また、排卵され、精子と合体しなかった卵子は、黄体ホルモンのような形でか、それとも月経という形で排出されるのかも教えてください。お願いします。
(高2/T子)
「安全日」なんてありません!
A まだ妊娠しては困るのに妊娠してしまう人の多くが、あなたが知りたがっている「安全日」「危険日」を信じてしまった人たちなのです。
私は、若い人たちがいい加減な知識で行動をとり、その結果、女性が可哀そうなことになってしまってきているのを散々見てきました。そして、いい加減な知識を与えた大人に怒っています。
はっきり言って、「安全日」「なんてありません。女性の身体はつねに妊娠する可能性があると考えなければならないのです。その理由はまず第一に、子宮の中に入った精子は、大変長く生き続けるのだということです。少なくとも五日間は生き続け、卵子が出てくるのをじっと待ち続けています。だから、月経が終わったら、もうすぐに妊娠の可能性があります。
理由の第二は、これが最も大切なことなのですが、排卵だの月経だのは、大変微妙なホルモンに左右されます。ちょっとしたことで、例えば少し悩んだり、体調を崩したり、性的に興奮したり(ドキドキしただけでも)で、容易に狂ってしまうのです。
だから、月経前だから妊娠しないだろうと思ったら、ちょうどその時、排卵したなんてよくあることなのです。
だいたい、「安全日」なんて考え方がおかしいのです。それは「避妊」しないでセックスしたい、という大変いい加減な、ずぼらな欲望に毒されているのだとさえ思われます。
いいですか。セックスするなら、自分は今妊娠してもいいのか、よく考えること。そしてまだ妊娠して駄目なのなら、とにかく一回も欠かさず厳重に避妊すること。ずぼらは一度たりともしないこと。それができないようなセックスはしないこと。それが原則です。
それから、受精しなかった卵子は二日もすれば消えてなくなってしまいます。子宮や腹膜から吸収されてしまうのですよ。
たった一度の性交でも妊娠、避妊を甘く考えないで!
「避妊」――セックスしても妊娠しない方法。「避妊」について、私はいったい何回、高校生の皆さんに訴えただろうか、と思います。これは、とても大切なことなのです。すべての人が「避妊」をちゃんと学んで、しっかりした大人になることは、私の悲願なのですから。
そもそも、私たち人間は生殖動物なのです。「性交」によって、妊娠――子孫をつくる動物の一種なのです。言い換えれば、妊娠する手段なのです。この事が皆さんわかっていません。望むにしろ、望まないにしろ、たった一回のセックスだって、妊娠するのですよ。
「まさか私が妊娠するなんて」「そんなにたくさんしたわけじゃないから」「妊娠なんて考えてなかった」…。これは、本当に日常的に、いつもいつも私のクリニックで繰り返されている言葉なのです。
まず、セックスは、妊娠と直結するものなのだということを知らなければなりません。でも、私たち人間は、知恵を持っています。「セックスしても妊娠しない方法」を数々編みだしています。コンドーム、膣外射精、ペッサリー、IUD(避妊リング)、ピル(経口避妊薬)、フィルム、膣錠、基礎体温法、オギノ式(定期禁欲法)バイプ・カット、卵管結紮(けっさつ)…。
差し込み文書=[平成21年11月特許取得避妊用具(ソフトノーブル)膣温水洗浄器(ノーブルウッシング)は平成24年Googleリスティング広告から発売し、購入し使用された結果。今日まで妊娠した、不具合などの報告はありません。ソフトノーブル通販提供]。
皆さんの多くが、これらのことばは聞いたことがあるだろうと思います。でも、言葉は知っているだけでは、何にもなりません。実行しなければ。それも確実に。これが実に甘いのです。
しかし、ここに挙げた避妊法の多くは、若い人たちには、無意味であるということを知って下さい。子どもを何人も産んで、もうこれ以上は、という人たちなら、パイプ・カットや卵管結紮の永久不妊の手術を受けることも、産婦人科に行って、IUDを入れてもらったり、ペッサリーの指導を受けることもできるでしょう。でも、これからの若い人たちには、無理なことなのです。
それにフィルム、膣錠、膣外射精…・ひどく不確実で、妊娠率も30%以上。ましてや、オギノ式――安全日、危険日なんて、女性の身体は機械ではあるまいし、常に変動するホルモンに影響される生身の身体なのです。いつ排卵するか計算できるものではありません。それに、精子は、子宮内で延々と生き続けているのですから。
「2011年月刊誌 wiuh 引用」
となると、もうおわかりでしょうね。コンドームを確実使うこと。一回も欠かさず、性交の最初から最後まで、それでも、百%大丈夫なわけではありません。コンドームを使っていても、一年間に10%の人が妊娠するのですから。だから、コンドームプラスもう一つ。膣外射精するとか、あるいは、
差し込み文書=
”ソフトノーブル”そして、ノーブルウッシングをもいる=あるいは合わせてフィルムを使うとか。それらと併用して、はじめてほぼ確実に避妊できると考えても良さそうです。
避妊って、これくらい厳しいものなのです。甘いものではありません。何より大切なことは、そこまでできる関係であるか、ということでしょう。二人でしっかり話し合って、きちんと実行できる間柄であってこそのセックスだ、と思うのです。
避妊とか性感染予防・コンドームの二つの役割
避妊とは、甘いものでなく、とても厳しいものだということは、わかって頂けたでしょうか。ずっと続くのだということも。子どもを何人産んだ後の、性的にベテランの人の人工中絶だって、受ける女性にとっては、辛いことには変わりはないのです。
さて、そこで、ここではその続き、コンドームのお話です。若い間の避妊は、とにかく、コンドームをきっちりと一回も欠かさず使うこと。それでも万一のことを考えて、プラスもう一つ。「コンドームプラスもう一つ」がちゃんとできること。それが何より大切だと、しつこいほど言い続けたいのです。
ところで、私は、診療の場で、避妊があまりにいい加減で「コンドームを使っているのだけれど、使わないこともある」という人が大変多いことが不思議だったのです。どうして、みんなこんな怖いことができるのだろうと。そして、その原因の一つは「安全日」神話の間違い。そして、もう一つは「コンドームがない」時でも、「無いのだったらしない」とはならず、なくても突っ走ってしまうのだとわかりました。
ある時期、患者さんたちみんなに、「コンドームは、誰が何処で手に入れるのか」を尋ねたのです。そして、わかりました。コンドームを買うことは、とても難しいことが。私は、自動販売機の設置など、もっと誰もが買いやすい状況ができるべきだと思っています。
こんなことを言うとすぐに、「河野は、高校生にセックスを奨励している」何て言う人が現れます。でもそれは絶対に違う。彼らは「コンドームがあるからセックスしよう」では決してなく、「なくともやっちゃう」、これが何より問題なのですから、それに、私たちの頃と違って、今若い人たちは、HIVなどSTD(性感染症)の予防を真剣に考えなければなりません。
どうも、世間では、間違って捕らえられていると思うのですが、エイズは決して、“ふしだらな人”がなる病気ではないのです。現在、セックスによってHIVに感染している人たちでも、ただ単に予防しきれなく感染したに過ぎないのです。それでも、相手が感染していると解らなかったから。わかっていたら、誰だって防衛するはずですよね。これからあなたたちは「相手が感染していると分かっている場合、または感染しているか否か解らない人とセックスする時、必ずコンドームを使うこと」。これが予防の大原則だと思います。
差し込み文書=コンドーム使用後、膣挿入温水洗浄器(ノーブルウッシング)用いると=性感染症予防する上でより効果的であることは言うまでもありません。
HIVは、うんと感染しにくいウィルスです。陽性の人とのセックスでも、確実にコンドームを使っていれば、感染を防ぐことが出来るのです。社会には、夫婦のどちらかがHIVに感染していてもコンドームを使いながら、懸命に生きている人たちは、たくさんいるのです。
このように、コンドームについては、とても大切なことなのに、教育現場では、コンドームなど教えるべきでないという声も強いことを、とても残念に思います。だって、みなさんは今高校生でも、いつかはみんな大人になるわけだし、いつかはセックスもするだろうし、その時のためにも、確実な知識を持っていてほしいのです。いざとなった時、何もわからないままでは、本当に遅すぎるのですから。
将来、子どもが出来なかったら‥‥
Q 一年半前、七月に子どもを中絶してしまいました。相手は付き合っていたわけではなく、単なる遊び友達のような人でした。その人の車の中でシンナーをやって、そのままされちゃったって感じなんです。そのせいで妊娠、相手に話すと「本当にオレの子?」と言い、同意書も書いてくれなくて、当然お金も出す気がないみたいです。もし今後、子どもが出来なくなったら、どうすればいいでしょう?
(東京。高2/K・M)
つらい思い、繰り返さぬ決心
A 人工中絶を受けてから、もう一年半たっているのですね。その間、あなたの中で、このことはどう解決されているのでしょうか。こんな風に手紙を書いてやっているのですから、きちんと決着されないまま引きずっているのでしょうね。中絶の手術を受けた人の後遺症としては、身体的なものと、しんどい体験をしたことを総括しきれないで、いつまでもしんどさを引きずってしまう精神的なものがあります。
身体的に最大のものは、あなたが心配している「不妊」になってしまうというもの、中絶に伴って炎症を起こすと、卵管がふさがったり、癒着(ゆちゃく)を起こってしまったりするものです。実際、私の診察室に来られる不妊症の患者さんたちの中には、以前受けた中絶の手術が明から影響していると思われる方もあるのです。だから、医学的には「初めての子は産む」のが原則です。
もっとも、医学の進歩と共に、今では中絶の手術も昔ほど危険ではなく、後遺症も残さないようになってきています。きちんとした手術を受け、後の薬もちゃんと服用し、術後の注意を守っていれば、それほど恐れるものではありません。
あなたがどうなのかは、これから今の時点では解らないですよね、将来、子供が欲しいという状況になって、でもなかなかできないとなれば、その時に初めてわかるのです。もしそうであれば、その時の不妊の治療を受けるのです。この分野も、体外受精を含めてずいぶん医学が進んでいます。
中絶には、そんな危険性があると分かっていても、でも、例えばあなたのように、とても生むことのできない妊娠をしてしまった方もあるわけですよね。たとえ不妊になったとしても、それでも中絶しなければならないというだけの理由があるわけですよね。中絶するには、そう自分で納得できることが何より必要なのです。精神的な後遺症を引きずらないためにも。
今や、私のクリニックでは、高校生の中絶も全く珍しいことではなくなってきています。でも、あなたのようなセックスをして妊娠・中絶はほとんどありませんよ。こんなのは、中学生までのこと。高校生になると、やはり恋愛の中で、彼氏とのセックスでの妊娠・中絶となっています。こんな情けない男と、危ないセックスをしてしまったことについては、もう、十分に総括できているでしょうね。
私がいつも心がけているのは、中絶しなければならないのであれは、それは仕方ないけれど、その立ち直りに向けてのケアをすることなのです。なぜそんなことになってしまったのか、自分の行動を振り返ることです。そして、二度とこんな思いはしないように、繰り返さないように、決心することです。
それが立ち直りのために一番大切なことなのです。あなたそれは大丈夫なのでしょうね。一年半たって、今はもう、十分大人なのでしょうから。
もっと自分を大切にしてください。今後あなたにも彼氏ができるかも知れません。その時のためにも、女性は妊娠するか体ということをしっかり知っておいてください。あなたがたまたま運悪く妊娠してしまったのではなく、たとえ一回でも、セックスがあると妊娠するのだと。
もし妊娠して困るのであれば、しっかりした話し合いと、確実な避妊が必要なのです。そんなこともできないような間柄でのセックスは絶対すべきではないのです。その上で、自分は不妊になったのではないかなんて、今、どうだかわからないことを悩んでも仕方ないことです。その時はその時で治療を受けようと。それでいいんじゃありませんか。すんだことにいつまでもこだわって生きるより、前向きにしっかり生きて行った方がいいと思います。
知らずにシンナー、おなかの赤ちゃんが心配
Q 私は現在18歳なのですが、三か月前、高校を中退しました。原因は、いま付き合っている彼との間に子どもが出来たのと、学校に通ってても何の目的もなかったからです。
ここで先生に質問したいんですけど…・半年前まで私はすごく悪くて、シンナーorタバコがザラでした。夜から朝までゾクと遊んでたりもしました。その時もお腹の中に赤ちゃんがいたのですが、そんなことも全然知らず、今まで引きずってきました。
いまではもう七ヶ月になるので中絶することもできないから、産むことを決心したし、彼も納得してくれたので、二人で育てていこうと思うのですが、昔のシンナーやタバコがおなかの赤ちゃんに影響しますか? とても心配です。教えてください。
(小山内 晶)
妊娠前のシンナーなら心配ない
A 高校を中退して、赤ちゃんを産もうとしているのですね。で、昔のシンナー、タバコの影響が心配とのこと。あなただけでなく、妊娠して、赤ちゃんを産もうとする人の多くが、さまざまな心配をします。知らなくて飲んでしまったお薬の事とか、食べ物の中に農薬が残っていないかとか、胸のレントゲンを撮ったのだけれどとか、虫歯の治療をしたのだけれどとか…。それらのほとんどが、心配しても仕方ないことなのですけれど、本人にとっては、とても深刻ですよね。
あなたのシンナー、タバコは何時頃までの事でしょうか。あなたは今、妊娠七ヶ月。「半年前まで、シンナー、タバコはざらでした」と書いてありますけど、妊娠に気づいた後は、どうしましたか? 妊娠月数は特別な数え方をしますので、あなたの言う、妊娠七ヶ月とは、約五ヶ月前の受精なのです。もしここ五ヶ月、シンナーを断っているなら、まったく心配いりません。
私も、かつてシンナーをやってた何人もの赤ちゃんを取り上げましたけど、まったく問題はありませんでしたよ。タバコは妊娠中は控えた方がいい。というのは、赤ちゃんの体重が少し小さめになることが多いからです。赤ちゃんに奇形を起こすという意味ではありません。
妊娠中、シンナーを続けたらどうなるか‥‥は、ほとんどデータがなくわかりません。でも、あなたの手紙の文面では、今はもうしていないようなので、心配はないと思います。今さらそんな心配するよりも、今後の希望を持った方がいい。いろいろツッパったけど、でも、赤ちゃんができたとたん、二人で必死に働いて、がんばって、楽しく子育てをしている若者たちを、私はたくさん見てきました。子育てって、大変なことであるけど、でも、すごく生き甲斐ができることでもあります。ぜひ頑張ってください。声援を送っていますよ!
「中絶」について教えて!
Q 河野先生にお願いがあります。「中絶」のことはなんとなくわかりますが、詳しくは解りません。あいまいに覚えている人もきっといると思うのです。中絶とはどんなこと(手術内容)をするか、費用はいくらくらいかかるのかetc、教えて欲しいのです。雑誌よりも、河野先生の方が信頼できるので、お願いします。
(宮城・高3/コロ助)
人工中絶で知っておいてほしいこと
A 「中絶」について知りたいのですね、高校生ともなれば、ちゃんと知っておくことも必要でしょうね。私も中絶について皆さんに言っておきたいことはたくさんあります。
人工中絶とは、生めない、生んでも育てられない妊娠をしてしまった女性の救済手段としてあるものですね、法律的には「母体保護法」に定められています。時期としては、現在では、21週まで(22週未満)。この内、妊娠11週までが、いわゆる初期中絶、12週からは中期中絶となります。
ただし、この妊娠週数の数え方を知らない人がとても多いのですが、わかっているのでしょうか。妊娠週数とは、受精から、すなわち性交のあった日から数えるのではありません。最終月経の開始日を0週0日として数えます。
だから、来るべき月経が遅れ始めたら、すなわち性交から二週間で、もう四週(妊娠二ヶ月)ということになります。これをちゃんと知っていないから、若い人たちの中には、病院に来るのが遅くて、予想以上に大きくなっているのに、愕然(がくぜん)としてしまうことが多いのです。
初期中絶と中期中絶と比べるなら、これはもう全然違います。初期であれば、静脈麻酔で眠っている間に、子宮口を拡げて中を掻(か)き出す、いわゆる?爬(そうは)という方法で出来ます。
4週から12週(初期中絶のむ方法「?爬」)妊娠11週までの人が受けている手術。前日子宮口付近にラミナリア(水を含んで膨らむ海藻でできた物質)を入れておき、一晩かけてゆっくり子宮口を拡げる。当日は全身麻酔のうえ、キュレットという道具で子宮内を掻きだす。さらに、吸引器で吸い取る場合もある。
現在では、殆どの病院で吸引法といって、細い管で子宮内容を吸い取る方法で、あまり体に負担をかけないでできるようになっています。費用は、地域によって異なりますが、だいたい八万から十五万円くらいでしょう。
12週から22週まで(中期中絶の方法)前の日からラミナリアをいれるのは初期中絶と同じだが、人工的に陣痛を起こして生むので子宮を収縮させる薬、プレグランディンを3時間おきに子宮口付近に入れていく。陣痛を伴って生むのは、ふつうの出産と同じ。
最後に子宮内に残ったものを?爬する。この方法には最低でも3-5日の入院が必要。何より小さな赤ちゃんを産むのだから、役所に死産届けを出すことになる。
中期になると子宮口を拡げたうえで、陣痛をつけて生むことになります。三日から五日間の入院が必要となり、費用も三十万から四十万円と、かなり高額となります。それに、死産届けを役所に届けて、火葬・埋葬許可を出してもらう等の手続きが必要となります。(これらの手続きは産婦人科で手配してくれますし、死産の事実は戸籍には載りません)。
22週これ以後は中絶できない。いかなる理由でも中絶はできない。もし行えば、本人も医師も堕胎罪に問われる。
初期でも中期でも、現在の日本の法律では、「同意書」に本人と相手の男性のサインと印鑑が必要となっています、ですから、レイプで相手が不明という場合以外は、自分の一人の意思だけでなく、彼の意思も一致しなければ、中絶はできないのです。これらの事を知ったうえで、大切なのは、次の事だと思います。
第一に、若者たち接して思うのは、性交を持つ間柄でありながら、妊娠について、話し合われていないということです。セックスって、妊娠に直結した行為であるにもかかわらず、現実に起こることとして、捕らえていない、甘いのです。だから、妊娠して初めて、うろたえることになってしまうのです。事前の話し合いと、もし、妊娠して困るのであれば、確実な避妊の実行ができなければならないはず。
第二に、もし万一、妊娠したんじゃないかと思ったら、早く行動をとること。愚図ぐずと一人で悩むのではなく、さっさと産婦人科に行って、相談すること。妊娠しているのかどうかだけでなく、今、何週なのかという時期を知ることが大切です。中絶しなければならないのであれば、中期より初期の方が、うんと心身の負担は軽くすむからです。
第三に、もし、中絶したのであれは、一刻も早く立ち直ること。人工中絶を受けたからといって、それで人生のすべてが駄目になってしまうわけではないのです。とてもつらい経験をしたのだから、それを今後、プラスの方へ生かしていかなきゃ。
まず、彼との今後の関係をどうするのか。つき合いは続けるのか、別れるのか。続くのであれば、今後セックスはするのか、否か、自分も本当に望んでいるのか、否かの確認。もし、するのであれば、じゃあ、今後の避妊はどうするのか。彼とそれらの事をどう話し合ったのか。
要するに、中絶なんて、一回で十分。二度と繰り返さないために、相手との関係を含めて、今後の生き方を考えることが、立ち直りのための第一歩だと思う。
ピルを生徒にどう教える?
Q 菅直人厚相の時代に、近々、低容量ピルを認可すると、発表があったと聞きました。「ピル」については、副作用の問題、女子のみに避妊の責任を押し付けるなどの問題もありますが、効果はほぼ百%で、男の方は非常にラクというメリットもあります。これから何十年と性生活を営む高校生には「ピル」を性教育にどう扱えばよいと思われますか。
(K・T教論)
避妊の原則はあくまでも「二人で!」
A 経口避妊薬「ピル」についてお話します。これまでわが国では、中容量のピルしか認可されていません。それも、避妊の目的ではなく、月経不順や過多月経の治療薬として認可されているのを、医師の裁量でも避妊薬として投与しているのが現状です。
今、世界で、ホルモンの量をギリギリまで落とした低容量のピルが約三千万人に使われていると言われています。ピルのメリットは何と言っても、きちんと飲んでさえいれば、ほぼ百%の避妊を得ることが出来ることです。他の方法では、とてもここまでの高い避妊率を得ることはできません。ですから、女性にとって、絶対に妊娠しては困る時には、ピルが最高の避妊ができるということがあげられるでしょう。
わが国では、低容量のピルが認可されそうになっては、先延ばしされます。とっくに臨床試験もすんでいるのですが、厚生省の許可が下りません。その理由として「エイズの拡大を防ぐ」ということが表向きと言われています。ピルが認可されると、人びとがコンドーム使わなくなるだろう。そうすると、HIVの感染の機会が増えるだろうというものです。性道徳が乱れるのでは、というものです。
私は、これらは、とてもおかしな論だと思っています。確かにピルは、性感染症の予防には役立ちません。あくまでもセイファーセックスはコンドームが主役です。でもパートナー同士、二人とも病気をもっていなくとも、避妊が必要な人たちはいるわけですから。その人たちが確実な避妊法としてピルを選んでもいいはずです。
今、世界的には、避妊は「ピル」で、性感染症の予防は「コンドーム」でという役割をはっきりさせることが必要だと言われています。避妊に失敗して人工中絶を受けるよりは、ピルを飲んで防衛する方が、はるかに心身の負担は軽いはずですから。女性の側の避妊の選択肢が増えるという意味で、私は低容量のピルは早く認可すべきだと思っています。
ただ、避妊はあくまでも二人でするもの。パートナー同士で、きちんと話し合って、どの方法をとるのか、選択すべきものです。女性がピルを飲むと、確かに男性は楽でしょうが、そんなことのために、女性が毎日ピルを飲むように押し付けられてはたまらんなあと思います。
どう教えたらいいか迷う「ピル」
Q 私は高校で家庭科を担当する教員です。『月刊ジュ・バンス』の河野先生の連載や、『さらば、悲しみの性』を授業や日頃の指導の参考にさせていただいています。
さて、質問ですが、低容量のピル解禁が近いと、マスコミでも最近話題になっております。この点について、以前、連載の中で先生は「ピル解禁が望まれる」ということを書いておられました。私は、授業で「避妊」を扱った時、ピルについては必ずしもいいことではないと教えてきました。
理由は、避妊が女性任せになり、男性の避妊意識が低下する恐れがあること、厚生省も懸念しているコンドーム使用率の低下と、性感染症の問題です。特に最初の危惧について、次の男性との作文をご覧ください。
これは同僚が「保健」の授業で避妊について見せたビデオの感想です。「僕は何もしなくていいピルに賛成!」というのは、普通の男子高校生の正直な気持ちです。一方、私の身近にも、女子生徒の妊娠や人工中絶の現実があります。
このような現状で、ピルについてどう捉えていけばいいのか、自信が持てません、先生の考えをお聞かせください。
(北海道/江口凡太郎)
男には「ピル、バンザイ!」
避妊は昔からいくつかの方法が考えられていたが、それは避妊率も低いものだった。今はいろいろな方法があり、また避妊率もすごく高いものになっていることが解った。またコンドームがポピュラーであるが、これからはピルが解禁されれば、日本での避妊方法の、一番の方法になると思う。
「自分はピルの使用に賛成したいと思うのでごわす」。これが僕の意見である。ピルは、女性が使用(飲む)するので、男の僕は何もしなくても良いので、コンドームよりぜんぜんラクなので、男性からすると、かなりナイスである。オレ的には「ピル」バンザイなのだ。
(一男子高校生)
避妊の選択肢増えることは歓迎!
A ピルについて、もう少し話したいなと思っていたところに、タイムリーにお手紙が届きました。
しかも、男子生徒の感想までついています。かれは、あなたの心配をずばり語っていて、とても面白いです。
もし、彼に恋人ができたら、きっと彼は彼女から振られてしまうでしょう。「俺はコンドームを使うのが嫌いだから、君がピルでも飲めよ」と言われて、素直に従う女性がいたら、彼女もとても情けないですね。
でも、私は、低容量ピルの解禁を早くしてほしいと思っています。避妊は女性にとっても深刻なもの。もし妊娠して産めないのなら、妊娠は恐怖なのです。そしていざ、それが現実となって人工中絶を受けなくてはならなくなった時の彼女のつらさは、想像を絶するものがあります。そして、二度とこんな思いはしたくないと思うでしょう、
性感染症はコンドームで予防できますが、絶対に妊娠しない、百%確実な避妊法はピルしかないのです、コンドームの妊娠率は一年で85%といわれています。一年以内に百人中15人もの女性が妊娠してしまうのです。だから、私は、若い人たちにコンドームプラスもう一つ、例えばコンドームを使いながら膣外射精をするとか、基礎体温をつけて高温になってからのみコンドームを使ってするとか、コンドームと同時に、避妊フィルム使うとか。
あるいは、差し込み文書=ソフトノーブルC&Dいずれか(ほぼ全ての精液を体外へ排出『かつ際立って性的アクションに優れている』)併用する=。それを毎回欠かさずきちんと実行して初めて百%に近づく、それくらい厳しいものだと語ってきました。コンドームを使うだけではダメなのです。
避妊は、あくまでもカップルの二人で話し合って、実行するもの、でも、若い人たちの実態はとてもそんな状況ではありません。「妊娠したらどうする?」「妊娠しないためにどうする?」何と話し合いすらなく、行動が先行しています。結局、彼がコンドームを使ってくれればラッキー、使ってくれなければビクビクドキドキ。その結果、自分がシンドイ思いをするはめになる。私は後輩の女性たちのそんな姿がとてもかわいそうで、はがゆくて、私まで惨めになってしまいます。
もし、カップルで話し合って、その結果、確実な避妊をしたいから、または、人工中絶を受けて、もう、あんな思いは絶対したくない。だから、ピルを飲みたいと言って女性が来たなら、私は喜んで処方するでしょう。もし「男が楽だからピルを飲めと言われてきたので」と言って来たなら、「もう一度話し合っておいで」と追い返すでしょう。
性感染症の予防と避妊は混同すべきではありません。世界の流れは「避妊は確実なピルで、性感染症の予防はコンドームで」というものです。男子生徒たちに「自らの防衛のためにもコンドームを使うこと」と、しっかり教えることが必要と思います。
もし、性感染症を持っていない人同士のセックスであれば、病気の予防なんて必要ない、でも、そういうカップルでも避妊が必要なことはあるのです。多くの夫婦がそうであるように、そんな人たちの避妊の選択肢が増えることは歓迎したいのです。
10代の妊娠受信者統計から見えたもの
一九九〇年十一月十九日に今のクリニックを開業して以来、九五年八月までの10代の受診者について、調査し、統計を取りました。その調査の一部を、皆さんにご紹介したいと思います。
全受診者一五、三六一人、うち10代の受診者は二、三八三人でした。このうち、10代の妊娠は五四一例。それらの結果(「10代の妊娠の転帰」)を見てください。三三九例(七二・八%)が人工中絶に終わっています、高校生の妊娠は一六九例。そのうち、八五・三%が人工中絶となっています。
表1 全性交経験者の(1637人)
避妊別例数と妊娠数、妊娠率 非避妊数 全性交経験者
人数 200 400 600 800人
コンドームなし 196人 51.0% 188人 384人
コンドーム
(不完全) 241人 35.8% 433人 674人
(コンドーム完全)40人 10.0% 360人400人
膣外射精 43人 28.7% 150人
フィルム 4人 57.1% 3人 7人
オギノ式 1人 50.0% 1人 2人
IUD 0 0% 2人 2人
ピル 0 0% 2人 2人
不明 1人 6.3% 15人 16人
他の産婦人科受診 統計は、
また、10代の性感染症は、やはりクラミジア感染症86例と一般多いですが、二番目に性器ヘルペス38例これは症状が激烈でとても苦しく、またはいったんそのウィルスに感染すると一生持ち続け、何度も再発を繰り返す厄介なものです。このヘルペスの感染症がとても増えているのは心配です。三番目尖圭コンジローマ29、四番トリコモナス膣炎21、五番淋病疾5、六番毛じらみ2 七番梅毒1 計182例
10代の妊娠の転帰(541例)
○1人工妊娠中絶339例(72.8%) ○2分娩93例(20%) ○3自然流産30例(6.4%) ○4子宮外妊娠3例(0.6%) ○5胞状奇胎1例(0.2%)経過不明(転院含む75例)
高校生の妊娠の転帰(169例)
○1人工妊娠中絶134例(85.3%) ○2分娩16例(10.2%) ○3自然流産7例(4.6%) 経過不明(転院を含む)12例
さて、性交の経験年齢はどんどん低年齢化し、今回のデータでも、受診した高校生の性交経験率は51.7%にもなっていますが、でもその内容は本当に悲惨なもの
なのです。いつも私は「なぜ? どうして?」の繰り返しばかりです。性交する人が増えても、それに伴って「望まない妊娠」や、「性感染症」を防ぐ力が伴っていないのではないでしょうか。
通り一編の知識は持っていても、それをきちんと実行するだけの力がないのです。妊娠した人の避妊がどうあったかという上記(表1)を見ると、「避妊していなかった」「コンドームを使ったり使わなかったり、不完全な使い方をしている」「膣外射精」――これで妊娠の91.5%を占めています。当然、妊娠すべくして妊娠したということでしょう。また、これは性感染症にかかるのももっともだと言えます。
では、それぞれの避妊法のいったいどれだけが妊娠してしまうのかという上記 表1 全性交経験者の(1637人)
見てください。妊娠していなかったという人たちの妊娠率が51.0%、コンドームを不完全に使っている人の妊娠率が35.8%、膣外射精の妊娠率が28.7%、これらに対して、コンドームをいつも確実に使っている人たちの妊娠率は10.0%と低くなっています。
勤務医の時代に同じような統計をとったことがあります。それに比べると、コンドームを使っている人がとても増えています。でも、使っていても、この表のように「つかったりつかわなかったり」という、いい加減な使い方をする人たちが圧倒的に多いという現実は、いったい何なのでしょう。なぜきっちり使わないのでしょうか。
私は、どうしても妊娠しては困る時には「コンドームプラスもう一つ」を毎回きっちり併用すること、そこまでできるか、できる関係であるかということがとても大切なのだということを言い続けています。その言葉の意味がわかって頂けるでしょうか。
私は、若い者は、または高校生の間はセックスなんかはしてはいけないのだという論のもとに、避妊や性感染症の予防の方法などきっちり教えない教育の問題を見ます。いま現在は、セックスなんか関係ない、興味ないという人たちでも、きっといつかは性の現場に出会う時が来るだろう。その時のためにも、すべての若者たちがちゃんと学んでほしいと思っています。
学ばないまま、力を持たないままに実行することの悲しさを、私は嫌というほど見てきました。
「セックスはしていけません」と言い続ければ、それが若者たちを望まない妊娠や、性感染症から守ることになるのだとは考えません。それよりきちんと学んで力をつけて欲しいと思っています。
高校生の皆さん、皆さんにはそれぞれの力が備わっていますか。その上で、ちゃんと避妊や病気の予防について話し合い、実行できる、そんな関係の中でのセックスこそ、と思うのですが、いかがでしょうか。
つづく l Ⅳマスターベーション包茎性器の大小