心理学者ジェィ・ベルスキーと共同研究者たちは、親の育て方が乱暴だったり、冷淡だったり、不十分だったりした場合に、あるいは資源の供給が不安定だったり両親の中が険悪だったりする環境下で育てられた場合、その子どもは将来、若いうちに子供をつくったり、配偶者を容易に変える傾向が見られると述べている。 トップ画像

文化的な差異

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

文化的な差異

人間の多様性の中でも、文化的差異は最も興味深く、謎めいた部分だといえる。たとえば、結婚相手の純潔性といった点をとってみても、社会が違えば、考え方は劇的に異なる。中国では、男女を問わず、大部分の人々が、純潔性は配偶者に欠くことのできない資質だと見なしている。

一方、スウェーデンやノルウェーなどのスカンジナビア諸国では、配偶者が純潔かどうかは重要でない。こうした文化差異は、配偶行動のあらゆる理論に疑問を投げかけている。

進化心理学は、配偶戦略の差異を説明するために、幼時体験や子供の育て方といった環境的要因に目を向けている。心理学者ジェィ・ベルスキーと共同研究者たちは、親の育て方が乱暴だったり、冷淡だったり、不十分だったりした場合に、あるいは資源の供給が不安定だったり両親の中が険悪だったりする環境下で育てられた場合、その子どもは将来、若いうちに子供をつくったり、配偶者を容易に変える傾向が見られると述べている。

 反対に、資源が豊富で、夫婦仲のいい家庭に生まれ、親の気配りと比護を受けてしっかりと育てられると、永続的な配偶戦略を取りやすくなり、子供をつくるが比較的遅く、夫婦の絆が強くなるという。

つまり、不安定で先行きが不安な環境で育った子供は、ひとりの配偶者だけを頼るのは危険であることを学ぶ。そのため、早い時期から性生活をスタートさせ、複数の短期的な配偶者から手っ取り早く資源を獲得しようとする傾向が生じる。

対照的に、親が確実に資源を提供してくれる安定した家庭で育った子供は、多くの投資をしてくれ、信頼できる配偶者を惹きつけようと望むので、永続的な配偶戦略を取りやすくなる。

安定した家庭で育った子供に比べ、早く思春期に達して性的関係を持つようになりがち

両親が離婚した子供たちを対象にした調査から、この理論を裏付ける証拠が得られている。そうした子どもたちは安定した家庭で育った子供に比べ、早く思春期に達して性的関係を持つようになりがちで、セックス・パートナーの数も多い。

文化によって純潔性の価値が異なることは、幼時体験に応じ配偶戦略が変化することからも説明できる。中国では結婚は長続きするのがふつうで、離婚は極めて少ない。そのため、親は子どもに対し、長期にわたって多くの投資を行うことになる。

ところがスウェーデンでは多くの子どもが婚外子として生まれ、離婚も日常茶飯事なので、長期にわたって投資を続ける男性の数が少ない。こうした幼時体験のために、中国人とスウェーデン人は、人間の性戦略のレパートリーのなかから、それぞれ異なった戦略を採用することになったと考えられる。

幼時体験がどれくらい影響を持つかは、今後さらに研究が必要だ。ただ、男女どちらも、性戦略のレパートリーとして、カジュアル・セックス戦略と永続的な配偶戦略の両方を備えているという見方は、現実の証拠によって裏付けられている。その戦略メニューからどの戦略を選び出すかは、少なくとも部分的には、文化ごとに異なる幼時体験によって決定されるのだろう。

乱婚的なアチェ族と、一夫一妻制が比較的強いヒウィ族とのあいだの違いもまた、生戦略の文化的差異を示す好例である。この二つの部族が異なる性戦略をとるようになった決定的な要因は、おそらく男女比の違いにある。アチェ族の男女比は、男性一人にたいして女性約一・五倍である。一方ヒウィ族では、正確な割合はわからないが、男性の方が女性より多い。

アチェ族の男性は、対象となる女性の数が多いので、ヒウィの男性が考えられないほどセックスの機会に恵まれることになる。彼らはそうした機会を利用していることは、配偶者を取り替えたり、その場限りの情事を行う頻度が高いことからも明らかだ。

アチェ族の男性は、ヒウィ族の男性に比べ、短期的な性戦略によって成功を収めやすいのである。反対にヒウィの女性は、アチェの女性に比べ、男性から多くの投資を確保しやすい。ヒウィの男性は、資源を提供しなければ、配偶者を惹きつけたり繋ぎとめたりできないからだ。

文化による性戦略の違いを理解するうえで、最も重要な要素は、人間が進化させてきた配偶メカニズムだ。セックスの機会や、環境から得られる資源の量、男女比、永続的な関係をどれだけ重視するかなどは、文化によってそれぞれ違う。

われわれが進化させてきた心理メカニズムは、そうした文化的なインプットに対応して機能する。配偶行動の文化的差異とは、人間の性戦略レパートリーのなかから、少なくとも部分的には、文化的インプットに応じて選びだされた戦略の違いを反映したものなのだ。現在生きている人間のひとりひとりが、性戦略のレパートリー一式を、繁殖面で成功を収めた祖先から受け継いでいるのだ。
つづく 競争と軋轢

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。