従属の強制と資源の支配による抑圧は、女性の性行動と繁殖を支配しようとする男性の欲求から生じると言うのだ。人間の性戦略は、こうしたフェミニスト的な見方の多くの部分と符合する。 トップ画像

フェミニストの見方

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

フェミニストの見方

パトリシア・ゴワティ、ジェーン・ランカスター、バーバラ・スマッツといった進化主義的フェミニストたちが指摘するように、性差が進化によって生み出されたということは、フェミニズムにも影響を及ぼさずにはおかない。大多数のフェミニストたちの教義によれば、家父長制――大まかに定義すれば、男性が資源を支配し、女性が身体的・心理的・性的に従属している体制――こそが、男女間の争いの最大野原因である。

 従属の強制と資源の支配による抑圧は、女性の性行動と繁殖を支配しようとする男性の欲求から生じると言うのだ。人間の性戦略は、こうしたフェミニスト的な見方の多くの部分と符合する。

 世界中で、男性は実際に資源を支配している。資源のみならず、ときには性的な威圧や暴力を使って女性を抑圧している。男性が女性を支配しようとするのは、主として性行動と繁殖の面である。そして、女性も時として、この抑圧構造を維持するのに協力することがある。

 性戦略に対する進化的な見方は、男性による資源の支配と、女性の性行動を意のままにしようとする試みが、いかにして成立し、維持されてきたかについて、価値ある洞察を提供してくれる。

 性戦略から得られる注目すべき論理的帰結のひとつは、世界各地で男性による資源の支配が行われるようになったのは、部分的には、女性の配偶者選択の傾向に起因しているということだ。

数千世代にわたって受け継がれてきた

 数千世代にわたって受け継がれてきたこうした傾向のために、女性は資源と地位をもつ男性を好み、そうしたものを欠いた男性を嫌うようになった。われわれの祖先のうち、そうした資源を持たない男性は、配偶者となる女性を惹きつけられなくなってしまった。

 このように、女性の配偶者選択の好みは、男性同士が競争する際の基本となるルールを規定した。その結果、現代の男性は、資源と地位を重視するのみならず、それを得るためにリスクを冒すよう促す心理メカニズムを祖先から受け継ぐことになった。

 この目的を最優先にしなかったり、ライバルを打倒するために計算されたリスクを背負うとしない男性もまた、配偶者を惹きつけることができなくなった。

 男性の主要な戦略のひとつに、他の男性と手を結ぶことがある。そうした組織的な協力によって、資源とセックスの獲得競争において他の男たちを圧倒するだけの力を持つことが可能になる。動物の世界でも、ヒヒやチンパンジー、イルカなどでそういった緊密な協力関係を見ることができる。

 たとえばバンドウイルカのオスは、互いに協力してたくさんのメスを集めることで、単独では不可能なほどの繁殖的成功を収めている。われわれに最も近い霊長類であるチンパンジーでも、オスたちは結束して、他のオスたちとの闘争や群れの中での地位争い、メスの獲得競争に勝利しようとする。

 オスのチンパンジーが、他のオスの助けを借りることもなく群れのボスの座にまで上りつめることは稀である。仲間を持たない一匹狼のオスは、他のオスたちのグループからよってたかって攻撃されたり、ときには殺される危険さえある。

 人間の男性もまた、互いに協力し合うことで、大きな獲物を狩ったり、大規模な集団内で権力を手にしたり、他の男たちのグループからの攻撃に備えたり、女性を獲得したりする。こうした共同活動から得られる生存および繁殖上の利益が、人類の進化史を通じて男性に大きな淘汰圧を及ぼし、他の男性との協力を促してきた。

 一方、祖先の女性たちは、大きな獲物を狩ることもなければ、他の部族に戦争を仕掛けることも、隣の集落から男性を強奪してくることもなかったので、協同をうながす淘汰圧を男性ほど受けなかった。

 女性もまた、親族の世話するために他の女性たちと協力はしたが、自分の親族集団を離れて、夫および親族と暮らすようになると、以前の協力関係は弱まるのがふつうだった。バーバラ・スマッツは、男性どうしの協力関係が緊密なものたいし、女性の協力関係が比較的弱かったことが、歴史において、男性を女性よりも優位に立たせるのに一役買ったのではないかと考えている。

 女性が、野心的で社会的に成功した。資源をもつ男性を配偶者に選びたがる傾向と、男性の競争的な配偶戦略は、足並みをそろえて進化した。そうした競争的な戦略には、リスクを進んで背負ったり、地位を争ったり、ライバルを陥れたり、同盟を結んだりとかいった、女性が望むような次元で他の男性を圧倒しようとする一連の努力が含まれる。

 このような、男性と女性が共進化させてきた心理メカニズムが相まって、男性に資源の支配権をもたらすような状況を作り出したのだろう。

男性による資源支配の起源は

たまたま好奇心をそそるだけの、歴史における副次元的な脚注ではない。それどころか、現在でも大きな意味を持ちつづけているできごとなのだ。なぜなら、男性による資源の支配がいまだに続いている主要な理由のいくつかを明らかにしてくるからである。

 現在でも、女性は資源を持つ男性を求め、資源のない男性は無視しつづけている。この傾向は、世界各地の数万人に及ぶ人々を対象にした複数の調査で、くりかえし同じように示されている。日常生活においても、こうした傾向は数え切りないほど目にすることが出来る。

 どの年代を取って見ても、女性が結婚相手に選んだ男性は、相手に選ばなかった同年代の男性よりも収入が高い。また、夫とよりも収入の多い女性は、そうでない女性に比べて離婚率が二倍に達する。

 さらに、現在でも男性は、女性から好かれるのに必要な資源や地位を得るために、互いに結束して他の男たちと競争しつづけている。もともとは、男女間の資源の不均衡や女性の配偶者選択傾向、男性の競争戦略といったものを生みだす源泉となったこうした力は、現在に至るまで資源の不均衡を維持しつづけるにも寄与しているのだ。

フェミニストと進化論者が行きつく結論は

男性が女性を支配しようとする努力の中心にあるのは、女性の性行動を支配しようとする意志なのだ、という点では一致している。どうしてそうしたことが起こるのか、なぜ女性の性行動を支配することが男性の最大の関心事なのかは、人類が進化させてきた性戦略から説明できる。
 
 人類進化の歴史において、女性の性行動を支配できなかった男性――配偶者となる女性を惹きつけられなかったり、浮気を阻止できなかったり、妻を繋ぎとめることに失敗した男たち――は、上手く支配できた男性に比べ、繁殖成功度が小さかった。

 現在生きているわれわれは、上手く配偶者を獲得し、妻の浮気を防ぎ、自分の元に繋ぎとめておけるだけの利益を提供できた祖先の男たちの、長く途切れることのない連鎖の末裔なのだ。そして同時に、有用な資源を提供してくれる男にセックスを許してきた祖先の女たちの、長い連鎖から生み出されたものでもある。

 ただ、フェミニストたちの理論は往々にして、あらゆる男性が、女性を抑圧するという共通の目的のために団結していると見なしがちである。だか、人間の配偶行動の進化は、そうしたシナリオが現実にはあり得ないことを示している。

 男性も女性も、最大の競争相手は同性のライバルたちだからだ。男性は、他の男たちを出し抜いて資源を支配することに最大の努力を払う。自分以外の男の価値が低くなるように、彼らから資源を奪い、高い地位や権力から追い落とし、誹謗中傷をくりかえす。

 現実に、殺人事件全体の七〇パーセントまでか、男性が男性を殺害したケースで占められているという事実は、男性が背負っている同性間競争の莫大なコストの一端を示すものだろう。男性が女性に比べ平均して六年も早く死ぬことも、男性どうしの競争に伴うひとつの証拠といえる。

 女性も、同性のライバルからダメージを受けられずにいられるわけではない。女性たちは、高い地位にある男性を捕まえようと争い、妻のいる男性とセックスしたり、他の女性から夫を奪おうとしたりする。

 また、ライバル――特に短期的な性戦略を用いている相手――を誹謗したり罵倒したりもする。男性も女性も、同性のライバルたちの性戦略の犠牲にされるのであり、何らかの共通の目的のために同性のメンバーがことごとく結束することなど、まずありえない。

 さらに男女とも、異性の戦略のおかげで利益を得ることがある。男性は、妻や姉妹、娘、愛人など様々な女性たちのために資源を提供する。また、ひとりの女性が地位と資源を備えた男性を配偶者に選んだなら、彼女の父親、兄弟、息子たちはみな利益を得ることになるだろう。

 つまり、個人一人一人が、男女双方の特定のメンバーと重要な利害を共有し、それ以外の男女とは敵対関係にあるのだ。これは、男性もしくは女性が、異性を抑圧するために同性のメンバー全員と手を結ぶというフェミニストの見方とは正反対だ。同性のメンバーが結束した策謀という単純極まりない見方は、まったく現実的な裏付けがないのである。

 現在、男性の性戦略は、男性による資源の支配を助長するものとなっている。しかし、そうした戦略が編み出されてきたのは、女性の欲求の進化と無関係ではない。ただ、このように分析したからといって、男性が資源を支配しているのは女性のせいだなどと言っているわけではない。

 そうでなく、男女間の調和と平等が実現されるとしたら、男性と女性は、着実に進む共進化のプロセスは、遠い昔、欲求の進化と共に始まり、現在でも、われわれの配偶戦略を通じて進行し続けている。
つづく 配偶戦略の多様性 

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