思春期の内なる衝動の目覚めに始まり、生き残った配偶者に資源が最終的に遺贈されるまでの一生を通じて変化していく。男女どちらも、時間的な変化がもたらす課題を解決するための心理メカニズムを進化させてきた。 トップ画像

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

一生添いとげるために

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

一生添いとげるために

人間の配偶行動は、思春期の内なる衝動の目覚めに始まり、生き残った配偶者に資源が最終的に遺贈されるまでの一生を通じて変化していく。男女どちらも、時間的な変化がもたらす課題を解決するための心理メカニズムを進化させてきた。そのメカニズムは、繁殖的な価値や所有する資源、地位、配偶の機会などの変化に反応してはたらく。変化は男性と女性とでは異なったかたちで生じ、その一部は不愉快なものである。

女性が繁殖年齢に入るのは男性よりも約二年早いが、繁殖能力の喪失は男性に比べて二〇〜三〇年早く起こる。子供のいない女性が、繁殖可能な年数が残り少なくなり、いわば生物学的な時計の針音が徐々に高まっていくにつれ、焦燥感を覚えるようになるのは、ある特定の文化が押し付けた恣意的な思考習慣ではなく、繁殖という現実に則した心理メカニズムの反映なのだ。

女性の繁殖的価値の変化は、

その女性自身の性戦略を左右するだけでなく、夫や配偶者候補といった、彼女をとりまく社会環境にいる男性たちの性戦略にも影響を及ぼす。女性が若いうちは、夫が厳しくガードし、うまく獲得できた価値ある繁殖資源を死守しようとする。夫のガードの厳しさは、妻の浮気の可能性を封じると同時に、場合によっては夫の献身を示す指標と見なされる。

結婚当初には、夫婦の性生活は活発なのがふつうで、妻に関心を示すライバルが存在することにより、さらに促進されていると思われる。しかし年を重ねるにつれ、女性の繁殖価値の低下と軌を一にして性交の回数も減少していく、強い嫉妬の発露もしだいに見られなくなる。男性は徐々に不満を抱くようになり、妻に愛情を向けなくなっていく。

女性は夫が監視を示さなくなるのを不快に思い、ないがしろにされていると不平を言うようになり、同時に男性は、妻から時間と関心を振り向けろと要求されることに対して不満を募らせる。

女性が年を取るにつれ、男性はガードをゆるめるので、浮気する女性の割合はしだいに高くなっていき、繁殖可能年齢の終わりに差し掛かるころにピークに達する。

男性の場合、浮気の最大の動機はさまざまな相手とセックスしてみたいという欲求である

しかし女性は、より感情的な動機から浮気に走る。それはおそらく、まだ繁殖が可能なうちに別の配偶者を見つけようとする努力の表れなのだろう。女性は今の夫と別れるのが早ければ早いほど、配偶市場における自分の値打ちが高くなることを知っているようなのだ。

 閉経後の女性は子供や孫の世話に労力を注ぎ、自分で直接子供を産むのではなく、子孫たちの生き残りと繁殖を助けるようになる。女性は、繁殖期間が短いことを、早期の迅速な繁殖という戦略で埋め合わせていのだ。

男性の一生における変化は

男性の一生における変化は、チンパンジーのオスの場合と同じく、配偶および繁殖の状況に応じてさまざまである。年とともに地位と名声を高めていく男性は、配偶市場においてずっと価値が高い。しかし、資源と名声を手に入れそこねた男性は、しだいに配偶市場からはじき出されてしまう。既婚男性の約半数は、一生のうち何度かの婚外セックスを経験するが、そうした情事は妻とのセックスを犠牲にして行われることになる。
さらに、多くの男性は一生を通じて新しい配偶者を求め続けおり、年をとった妻と別れて若い女性と再婚したりする。

しかし女性は、より感情的な動機から浮気に走る。それはおそらく、まだ繁殖可能なうちに別の配偶者を見つけようとする努力の表れなのだろう。女性は今の夫と別れるのが早ければ早いほど、配偶市場における自分の値打ちが高くなることを知っているようなのだ。

 これまでの学者たちは、年をとった男性が若い女性を求めることはあさはか男性のエゴや精神的・性的な未成熟、「男性版の閉経」や若者文化といったもので説明しようとしてきた。しかしそれは、長い進化の歴史をもつ、普遍的な欲求にほかならない。

男女の一生を通じた配偶者の違いが生みだした顕著な副産物の一つは、男性が女性よりも早死にする傾向である。これは、配偶者獲得に必要な資源や地位を手に入れるために、男性が大きなリスクを背負ったり同性のライバルと競争したりすることから予測できる結果だ。

そうやって男性が配偶市場から少しずつ姿を消していくと、しだいに女性に対する男性の割合が少なくなっていき、結果として女性の余剰が生じる。配偶市場に再び参入した女性たちにとっては、年を経るごとに婚姻の機会が縮小していくのである。そのため、男女双方が、こうした男女比の変化に応じて配偶戦略を変更していく心理メカニズムを進化させてきた。

このように、男性も女性も一生を通じて様々な変化を体験するが、にもかかわらず、現実に50%近くの男女が、幾多の試練を乗り越えて一緒に暮らし続けるという事実には注目すべきだろう。遺伝子を共有しているわけでもないふたりが、生涯を通じて利害を一致させつづけるということは、人類の配偶者行動の進化史においてもっとも驚嘆すべき偉業である。

われわれ人類は、男女間に軋轢を生じさせる心理メカニズムを進化させてきた一方で、異性との協調を可能にするメカニズムをも進化させたのだ。たとえば、国際的な調査の結果、男性も女性も年をとるにつれて配偶者の容姿をあまり重要視しなくなり、かわりに頼りがいや思いやりといった永続的な資質に価値を見出すようになることがわかっている。

このような資質は、幸福な結婚生活や子供への投資のために欠くべからずものだ。そして、この男女間の戦略的協議を可能にする心理メカニズムは、不和をもたらすメカニズムとまったく同じく、人間の配偶行動の適応的な論理から生じてきたものなのである。
つづ 10 調和をもたらす鍵