男性も女性も年を取ると、性生活に満足できないだけではない。パートナーが自分に愛情や注意を向けてくれないという不満を抱くようになっていく。それなら配偶関係への献身が弱まったことを意味するものだ。時が経つにつれ愛情が薄まっていくという不満は、男性より女性に根強く存在する。トップ画像

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

献身の低下

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

献身の低下

男性も女性も年を取ると、性生活に満足できないだけではない。パートナーが自分に愛情や注意を向けてくれないという不満を抱くようになっていく。それなら配偶関係への献身が弱まったことを意味するものだ。時が経つにつれ愛情が薄まっていくという不満は、男性より女性に根強く存在する。パートナーが愛情を表現してくれないことを不満に思う女性の割合は、新婚では八パーセント、結婚四年目で一八パーセントである。それに対して男性では、新婚で四パーセント、結婚四年目でも八パーセントでしかない。

 また、新婚女性の五四パーセントは、自分が話しかけても夫が返事をしてくれないことがあると不満を述べており、結婚四年目ないし五年目になるとその割合は八〇パーセントにも達する。

妻が注意を向けてくれないという不満を抱く割合

 男性の場合、妻が注意を向けてくれないという不満を抱く割合は、一般的には女性より少ない。しかし、年を経るにしたがって割合が増加していくという点では女性と同じであり、結婚当初は一八パーセントだったのが、四年目には三四パーセントにのぼっている。

 献身の低下は、配偶者の感情の軽視にも反映されている。新婚女性の三五パーセントは、自分の感情を夫が軽視することを不快に思っているが、結婚四年目になるとその数字は五七パーセントに跳ね上がる。男性でも同じ不満を抱いているのは、結婚一年目で一二パーセント、四年目で三二パーセントである。

 こうした変化は、結婚してから時間が経つにつれ、配偶者への献身の度合いが少しずつ低下していくことを示している。この現象は男女双方に起こるが、男性より女性にとって、より深刻な問題になっている。

夫が愛情表現や関心といった形で献身を示してくれなくなる

 女性は、夫が愛情表現や関心といった形で献身を示してくれなくなることを、より不満に思っているが、その一方で男性は、妻からの献身の要求がエスカレートすることに悩まされている。新婚男性の二二パーセントは、妻が一緒に時間を過ごすように要求し過ぎると訴えており、結婚四年目になると、三六パーセントが妻の過大な要求に対して憤慨やるかたない思いを抱いている。

 しかし、女性の場合、同じ悩みを訴えているのは新婚でわずか二パーセント、四年目でも七パーセントにすぎない。同じように、新婚男性の一六パーセント、結婚四年目の男性の二九パーセントが、妻が自分に関心を向けるよう要求し過ぎるという不満を抱いているが、女性で同じ不満を述べているのは、それぞれ三パーセントと、八パーセントでしかない。

 パートナーからの献身の要求がエスカレートすることに悩まされている割合は、女性より男性の方が多いのだ。

 そうした変化は、パートナーへの献身のもうひとつの指標でもある、男性が妻を繋ぎとめてようとする姿勢の移り変わりにも見られる。進化的な視点からいえば、男性が配偶者を繋ぎとめるために最大の労力を費やすのは、配偶者が若く、繁殖的価値が高い場合である。

価値の高い配偶者を失う

 価値の高い配偶者を失うことは、繁殖するうえで極めて大きな損失だからだ。それに対し、女性が配偶者を繋ぎとめておこうとする努力は、本質的には配偶者の年齢に左右されない。

 女性にと違って、男性の配偶者としての価値は、年齢が二〇歳から四〇歳になっても、基本的には下落することはない。資源を獲得する能力は、むしろ年を取るにつれて向上する場合が多いからだ。夫を繋ぎとめておこうとする女性の熱意の強弱は。夫の年齢よりも、夫が価値がある資源を提供してくれるかどうかによって決まる。

 男性と女性のこのような行動の違いは、私が中心となって行ったある調査から見て取ることができる。その調査は、夫と妻のそれぞれ配偶者を繋ぎとめるためにどんな方法を用いているのかを調べるもので、二〇歳から四〇歳までの新婚夫婦を対象に、一九種類の戦術の使用頻度を答えてもらった。

 戦術の中には、贈り物をしたり、たえず心遣いをするといったポジティブな刺激から、脅しや暴力といったネガティブな刺激までが含まれている。どの戦術を使っているかの回答が得られると、回答者の年齢、その配偶者の年齢、結婚後どれくらい経っているかといった因子との相関が分析された。

 その結果、夫が妻を繋ぎとめようとする努力の強弱と頻度は、妻の年齢と密接に関係していることが分かった。三〇代半ばから後半の妻を繋ぎとめようとする努力は、二〇歳前半から半ばの妻に向けられる努力に比べると、明らかに少なかった。若い妻を持つ男性は、他の男を寄せ付けまいとする行動をとりやすい。

他の男たちの目の前で妻の身体に触って見せたりする

彼らは、自分の妻はすでに結婚しているということを他の男性に対してアピールしようとし、他の男たちの目の前で妻の身体に触って見せたりする。あるいは、結婚指輪など既婚者であることを示す装身具を妻に身に着けさせる。年配の妻を持つ男性に比べて、若い妻を持つ男性は、妻に関心を示す他の男たちに対して激怒したり、暴力で脅したりすることが多い。

 対照的に女性は、夫が年配だろうと若かろうと、繋ぎとめようとする努力に変わりはない。夫の年齢に関係なく、同じように夫を監視し、夫の時間を独占しようとし、容姿を美しくするための努力を続けるのだ。

 このように、女性が配偶者を繋ぎとめようとする努力の強弱は配偶者の年齢とは無関係であり、それは、男性が妻の年齢に応じて、繋ぎとめるために割く努力と変えるのと、あざやかな対照をなしている。

 この男女間の差異に対する最も説得力ある説明は、女性の繁殖能力は年ともに衰えていくということだろう。かりに、配偶者を守ろうとする熱意の減退が、他の機能の老化とおなじように、たんに歳をとるにつれ気力が衰えてきたという理由によるものなら、減退の進行は繋ぎとめる側の年齢と直接関係しているはずである。

 だか、これまでの調査によれば、本人の年齢は男女とも、配偶者を繋ぎとめようとする努力の指標とはならない。年齢が高くなるにつれて熱意は衰えはするか、その幅はわずかなものでしかない。また、男性が配偶者を繋ぎとめようとする情熱が、結婚後月日を重ねるにつれて減退するなら、結婚生活の年数が増えるのに比例して熱意は衰えていくはずだ。

 しかし、調査によれば、配偶者を繋ぎとめようとする意欲の強さと結婚年数の間には相関は見られなかった。つまるところ、男性が女性を繋ぎとめようとする熱意に女性の年齢が及ぼす影響についての、最も有効な説明は次のようなものだろう。すなわち、女性は年齢によって価値が変化するので、男性は年を取った妻に対しては若い妻に対するほどガードする意欲を示さないのである。

 こうした行動パターンは、カリブ海に浮かぶトリニダード島の人々に見ることができる。人類学者マーク・フリンは、四八〇人を定期的に観察し続けた結果、妊娠能力の高い(若くて、その時点で妊娠していない)妻を持つ男性は、妻と過ごす時間が長く、妻と言い争いをしたりライバルの男性と喧嘩する頻度が高いことを発見した。

 対照的に、妊娠能力の低い(年を取っていり、すでに妊娠していたり、子供を産んだ直後だったりする)妻を持つ男性は、妻と過ごす時間が短く、他の男性たちとも仲良くしていた。このことから人類学者フリンは、男性が配偶者を守ろうとする姿勢の強弱は、配偶者の繁殖能力に大きく左右されていると結論している。

女性を隔離する習慣が根強く残っている中東の社会では

 女性を隔離する習慣が根強く残っている中東の社会では、大人の女性はベールで顔を覆い隠さなくてはならないが、身体を隠すことを最も厳しく強いられるのは初潮を迎えたばかりの若い少女たちであり、年を取るにつれてこの慣習はしだいに緩和されていく。

 また、夫が妻の不倫に気づいたり、その疑念に苛まれて、怒りのあまり殺してしまうという事件は、妻がまだ若い場合にもっとも多く起こる。このことは万国共通であり、夫の年齢に関係ない。

 二〇歳未満の女性が嫉妬に狂った夫に殺される頻度は、二〇歳以上の女性の二倍以上にのぼる。これは、まだ若い妻を他の男に奪われるのを防ごうとするあまり、極端な戦略に走る例である。妻が年を取るにつれて、配偶者を自分のものにしておこうとする意欲は減退していく。
つづく 婚外セックスの頻度の変化