貞節のディプレィは、女性の誘惑戦術のなかでも、進化的な意味で大きな重要性をもつことになる。この戦術は、女性がその場限りのセックスではなく、長期的な関係を望んでいることを示すと同時に、嘘偽りなくひとりの男性だけに献身することをアピールするのである。トップ画像

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貞節のディプレィ

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

貞節のディプレィ

男性は、長期的な配偶関係においた、相手の貞節を重視する。そのための貞節のディプレィは、女性の誘惑戦術のなかでも、進化的な意味で大きな重要性をもつことになる。この戦術は、女性がその場限りのセックスではなく、長期的な関係を望んでいることを示すと同時に、嘘偽りなくひとりの男性だけに献身することをアピールするのである。

新婚の男女と大学生を対象にした調査は、貞節のディプレィが効果的であることをはっきりと裏づけている。一三〇種類の誘惑作戦のうち、「貞節を守る」「他の男性とはセックスしない」「献身的に振る舞う」の三つは、七点満点で六・五以上という高い評価を受けて、永続的な配偶者を獲得する際にはもっとも効果的であることを示されたのである。

貞節を示すシグナルは、配偶関係における献身を意味する。男性にとっては、遠い祖先の時代に直面した、繁殖上の最大の課題の一つ――配偶者に間違いがいなく自分の子どもを産ませること――への解決策となる。

永続的な配偶関係における貞節の重要性は

女性がライバルを誹謗する戦術から間接的に知ることが出来る。大学生を対象とした調査によれば、女性が配偶者市場でライバルを蹴落とそうとするとき、最も有効な戦術は、、「あの女は、ひとりの男だけに尽くすタイプじゃない」と告げ口することだった。

おなじように、ライバルを移り気だ、尻軽だと中傷したり、たくさんの男と寝ていると言いふらすことなども、女性が用いる誹謗の戦術のうち、有効度が上位一〇パーセントに入ると、評価されている。新婚の男女を対象にした調査でも、ライバルが移り気だと中傷する戦術は、男性よりも女性が用いるほうがはるかに多かった。

とはいえ、男性がカジュアル・セックスを求めている場合には、この戦術が逆効果になることもある。かつてメイ・ウエストはこう述べている。「男性は過去に男性経験が豊富にある女を好む。歴史が再び繰り返されるのを期待しているからだ」。一時的なセックス・パートナーを求めている男性は、ふつう女性の側の男性経験など気にしないだけでなく。むしろ男性経験の豊富な女性を望む傾向がある。
 
 そのほうがセックスできるチャンスが高まるからだ。したがって、ライバルの女性の男出入りが激しいと中傷することは、男性が一時的な性関係を求めている場合には、期待どおりの効果を得られない。

 だが、男性が配偶者を求めているときには、ライバルの貞操観念を誹謗する戦術はきわめて効果的なものとなる。女性が性戦略のレパートリーのなかから中傷戦術を選んだ場合、その効果は状況によって大きく左右される。もし女性が男性の意図を読み誤れば、ライバルを貶めようとする目的を全く果たせないことになる。

 男性が短期的と長期的という二重の性戦略を用いていることが、女性側の戦術の選択を困難にしている。女性は男性がライバルに寄せている関心がその場限りのものか永続的なものなのかを見抜き、それに応じて誹謗や誘惑の戦術を修正しなくてはならない。もし推測を誤れば、自分の意図とは正反対の効果をおよぼしかねない。リスクか大きいのだ。

 さらに、大部分の女性にとっては、男性がライバルと結婚するのはもちろん、ただセックスすることも好ましくない。かくして、ライバルの貞節を中傷する戦術は、男性が永続的な配偶者だけを求めているという確証が得られないかぎり、きわめて危険なものになる――そして、そんな男がいるかどうかはかなり疑わしい。

 婚姻市場においては、男性は女性が性的に奔放であることを嫌い、ライバルを蹴落とそうとする女性がそれを利用しようとする。この事実は、女性の性的な放縦さを非難する言葉の豊富さからも読み取ることが出来る。

 男性の場合、ロサーリオやドン・ファンのような漁色家をあらわす言葉は、女性の場合に比べて数は少ないし、批判的なニュアンスも薄い。それどころか、非難より羨望と讃嘆の念が込められていることすらある。

 女性の場合は、それとは全く対照的だ。たとえば、ジョン・バースの小説『酔いどれ草の仲買人』では、女性が使う誹謗の言葉の多種多様さが描かれている。あるイギリス人女性が、フランス人の女性に対し、その人格をおとしめる罵言雑言を投げかけるのだが、そこで使われている言葉は、淫売(ハーロット)、売女(ホーア)、牝豚(ソー)、淫乱(ボード)、尻軽女(ストローガール)、売春婦(タンブラー)など、実に五〇以上にもおよぶ。

 そのあとフランス人女性が、フランス語で同じくらい長々とののしりかえす。実生活と同じく、小説のなかでも、婚姻市場におけるライバルの魅力を色褪せさせるには、その身持ちの悪さを攻撃するのが早道なのだ。

 その場の状況の重要性は、うぶで異性を寄せ付けない振りをして誘惑する場合にも示される。好意をもつ相手に冷たく、近寄りがたいように振舞う戦術は、男性が用いる場合より女性が用いた方がより効果的である。また、カジュアル・セックスの場合より、永続的な配偶者得ようとする場合に、その効果はさらに大きくなる。

 こうした結果は、男女双方の性戦戦略ごとに整合している。結婚相手を得ようとする場合、身持ちを固くする戦術は女性にとって有効にはたらく。その戦術が価値と貞節を意味するものと受け取られるからだ。男性から見れば、たやすくこちらの誘いに応じる女性は、他の男からの誘いにも簡単に応じるはずで、そうした女性がいくら貞節をディプレィしようとしても、それは見せかけに違いないことになる。

 一例を上げれば、男子大学生を対象にした調査では、たやすくセックスに応じる女性は、配偶者としてはふさわしくなく、また性病にかかっていそうだという回答が得られている。誘いやすいということは、配偶者としての価値の低さと性的な放縦さを強く示すシグナルだとされているのだ。

 また別の調査によれば、容易に異性を寄せ付けない作戦は、相手をうまく選んで用いさえすれば、配偶者獲得の戦術として最も効果的であることが解っている。女性が、大分部の男性には冷たい態度を取りながら、ある特定の男性だけに応じるのである。たとえば、ある女性が、狙った男性以外のあらゆる男からの誘いを公衆の面前ではねつけたとする。

この場合、身持ちを固くする戦術は、ターゲットとなる男性に、その女性は婚姻市場における「掘り出しもの」であり、長期的な貞節が期待できると信じさせる効果をもたらす。配偶者獲得に成功する女性は、求める男性以外の前では、冷淡に振る舞うものなのだ。

身持ちを固くする

身持ちを固くすることは、大きな価値を意味すると同時に、資源を提供しようとする男性の意志を試し、その男性に貞節を尽くすことを伝える役割を果たす。女性がたやすく男になびかなければ、ひとたびその女性を妻にしたとき、他の男に誘惑されないだろかという確信をより強く抱くことができる。

身持ちを固くすることが、長期的なパートナーを誘惑する手段として、有効である理由は、男性に二つの繁殖上の利点を提供できる点にある。ひとつは婚姻市場における価値の高さであり、もうひとつは自分のひとりにしかセックスを許さないという保証だ。

女性が過去にカジュアル・セックスを数多く経験している場合、貞節で献身的に見せるのは難しい。配偶者誘惑の戦術は、社会的な真空状態の中で展開されているわけではないからだ。世間の人々は、他人の性的な評判について大きな関心を抱いている。

ゴシップ・コラムニストやワイドショー司会者、およびそうした番組の視聴者たちは、誰が誰と寝たといった事を興味津々で、その細部まで知りたがっている。

そうして、ひとたび性的にだらしがないという評判が立つと、配偶者としての価値が損なわれるため、女性はそういう噂を立てられないように気を付けなければならない。

われわれ祖先が暮らしていたような小さな社会集団の中では、一度評判に傷がつくと、なかなか回復されることがなかっただろう。また、そうした小さな部族集団のなかでは、セックスに関するうわさが立たないようにすることなど事実上不可能である。

たとえば、アチェ族では、だれがだれと寝ているかを全員が知っており、隠すことなどできない。男性の人類学者がアチェ族の男性に、だれとだれが関係しているかを訊ね、その一方で女性人類学者がアチェ族の女性に同じ質問をしてみたところ、両者の答えはみごとに一致していたという。

とはいえ、現代社会では、人々の移動が激しく、また都市生活では匿名性が高いために、新しい環境で過去を隠して再出発し、評判を築き直すことが可能だ。こうした社会環境のもとでは、過去に多くの男性遍歴を経ていたとしても、配偶者を得るために貞節をディプレィする妨げにはならないだろう。
つづく 性的なサインを送る