身体的能力や運動能力の優秀さをディスプレィする。新婚の夫婦および大学生のカップルを対象とした調査によれば、男性は女性にくらべ、恋愛の戦術の一部として、自分の身体的な強さを誇示することが多く、また運動能力の優秀さをアピールする率も50パーセント近く高かった。 トップ画像

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

身体的能力のディスプレィ

本表紙
デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

身体的能力のディスプレィ

現代の男性は、女性を惹きつけるための戦術のレパートリーのひとつとして、身体的能力や運動能力の優秀さをディスプレィする。新婚の夫婦および大学生のカップルを対象とした調査によれば、男性は女性にくらべ、恋愛の戦術の一部として、自分の身体的な強さを誇示することが多く、また運動能力の優秀さをアピールする率も50パーセント近く高かった。

 さらに、強さと運動能力のディプレィは、女性が行なった場合より男性が行なった場合のほうが、はるかに効果的だと判断されている。筋肉を盛り上げてみたり運動神経の良さを自慢したり重い物を持ち上げてみたりすることは、男性側の誘惑戦術において、より大きな役割を担っている。

 大学生が、さまざまな誹謗戦略の有効性について下した評価は、身体・運動能力のディスプレィが、配偶者よりも一時的なセックス・パートナーを惹きつける場合には効果的であることを示している。

 ライバルの体力や運動神経をけなす戦略は、永続的な配偶者を得ようとする場合より、カジュアル・セックスの場合には効力を発揮するのである。ライバルが肉体的にひ弱だと中傷したり、スポーツの試合でライバルを打ち負かしたり、力で圧倒したりすることは、いずれも長期的な戦術としてより短期的な戦術として有効だと見なされた。

 この調査結果は、スポーツマンの男性は平均以上に女性にもて、カジュアル・セックスを楽しむことができるという通念を裏書きするものといえる。

 ヤノマモ族では、男性の社会的地位は、他の何にもまして、格闘や斧をふるっての決闘、近隣との村との戦争などで示される身体的な能力を重視して決定される。そうした身体的能力によって勝ち取られた地位は、その男性がより多くの女性を獲得することにつながり、より大きな繁殖上の成功を手にすること意味する。

 実際、他の男立を殺すことで自分の肉体的優越性を立証した「ウンカ」と呼ばれる勇者たちは、ウンカでない男たちよりも多くの妻をめとり、多くの子供を儲けているのである。

 つまり、身体的能力や運動神経のディスプレィは、伝統的な社会と現代の西欧社会の両方で女性を惹きつける大きな要素であり続けているのだ・身体的能力の誇示が、永続的な配偶者よりも短期的なセックス・パートナーを惹きつけるうえで有効だという事実は、女性が短期的な性関係を結ぶ相手の男性からの保護を求めているからだという仮説を裏付けてくれる。
 
男性の性戦略のレパートリーのなかで、ある戦術がどれほど効果的であるかは、女性が何を求めているかによって決定されるのだ。

自信と虚勢のディスプレィ

男らしい自信のディスプレィは、男性が女性を惹きつける上で有効であるが、結婚相手よりもカジュアル・セックスのパートナーを惹きつけようとする時により大きな効果を発揮する。

 前述した大学生対象の調査によれば、自信たっぷりに振る舞ったり、マッチョさを見せつけたり、自分の才能を見せつけたりすることは、未来の妻よりもセックス・パートナーを誘惑する際に役立つと見なされているのだ。

 自分を誇示したり虚勢を張ったりすることは、シングルズ・バーにいたある女性が語ってくれた次のようなエピソードからも読み取れる。
わたしは、隣のテーブルで女友だちと喋りながら、ジン・トニックを飲んでいたの。そのとき、ボブが入ってきた。彼は、まるで店のオーナーみたいに、にこやかに、自信たっぷりに歩いてきたわ。

ボブと目が合ったとき、私は笑いかけた。そうしたら、彼は私のテーブルにきて座り、乗馬が趣味何だって話し始めたの。馬の牧場も持っているってさりげなく話したわ。お酒がラスト・オーダーになったころまで、自分の馬がどれだけ高価かって話を続けてて、今度いっしょに乗馬しようと誘われたの。それから、ボブはこう言ったわ。「なんなら、いまから馬に乗りにいってもいいけどね」。

時間はもう午前二時だったけど、私は彼といっしょにバーを出て、そのあとセックスしたの。ボブが本当に馬を持っていたかどうかは、結局わからなかったけど。

 男性が自信に満ちていることは、地位と資源を示すシグナルである。一例を上げれば、新婚のカップルを対象にした調査で、自分に自信があると答えた男性は、あまり自信がないと答えた男性よりも、収入がかなり高い傾向が見られた。

 したがって自信は、一時的なセックス・パートナーをうまく獲得することへとつながりやすい。やはりシングルズ・バーの常連である別の女性は、こう語っている。

「いかに自信ありげに見える男っているのよ。どうすれば女を誘えて、いい気分にさせられるかを知ってそうな男がね。でも、いざそういう男と付き合ってみると、期待外れもいとこなの。最初は強気に振る舞うくせに、それが長続きしないのね。そのくせしつこく付きまとうから、トイレに行くか、友達とおしゃべりすると言って逃げ出すことになるんだけど」。

 女性は、本物の自信と見せかけだけの虚勢とを鋭く見分けることが多く、ほんとうの自信に満ちた男性により強く惹かれる。さらん、別の研究が示すところによれば、自分に自信のある男性は、たとえ身体的魅力に欠けていても、魅力的な女性に積極的に近づいてデートに誘う傾向がある。
 逆に、自分の自信のない男性は、初めからチャンスがないものとあきらめてしまい、魅力的な女性には近づこうとしない。

 とはいえ、男性がどれだけ自信をディプレィするかは、フィードバックによっても決定される。たとえばシングルズ・バーで、声を掛けた女性たちに立てつづけに肘鉄を食らった男性は、徐々に誘い方が弱気になっていく。

 女性からの拒絶は、恨みや敵意といった下向きのサイクルをもたらし、ある場合には戦術全体の放棄につながる。シングルズ・バーにいたある男性は、その日声を掛けた三人目の女性に拒絶されたあとで、こう語っている。

「ここでうまく女をひっかけるには、鋼鉄の睾丸(ボール)が必要だよ」。明らかに、女性から拒絶がもたらす心理的な痛手と自信の喪失は、自分の性的テクニックを見直したり、より性的魅力の乏しい女性に目を向けたり、状況が好転するまで新しいアプローチを控えるといったことへとつながる、ある種の心理メカニズムを起動させるらしい。

 男性が女性を誘うのに用いるもうひとつの戦術は。自信ありげに装うことである。前述しただましの戦術に関する調査によれば、男性は一時的なセックス・パートナーを誘惑するために、自分を格好よく見せようとしたり、ふだんよりも男性的にふるまったり、女性が傍にいるときにはことさらに意志の強さを見せつけたりする。

 男性がそうした誇示行動に出る理由はただひとつ、カジュアル・セックスの機会を確保するためである。

 こうした自信や虚勢のディスプレィは、異性を惹きつけるためにだけ行われるわけではない。集団内での地位や名声を高めるために、他の男性に向けてディプレィされることもある。たとえば、男子学生は、仲間に向かって、セックス・パートナーの数を実際よりも多めに吹聴したり、自分がどれだけ女性にもてるか、どれだけ豊富な性体験を重ねてきたかを大げさに自慢したがる。

また、実際よりも自信ありげに行動したり、度胸のよさを見せつけたり、仲間内で大きな顔をしたりもする。男性が自分の性体験を誇張したり大言壮語をしたりするのは、他の男性と地位を競うためでもある。

男性は高い地位を求めて争うものであり、価値ある資源、とりわけ性的な資源を入手できることは、より高い地位を示すシグナルだからだ。セックスの分野で優位に立つことによって、他の男性に畏敬の念を抱かせることができるのなら、男性の社会的地位は、どれだけ魅力的な女性を手に入れられるかを示すものとなる。

こうした戦略が、主にカジュアル・セックスにおいて採用されるという事実は、前に述べた「セクシーな息子」仮説の正しさを裏付ける状況証拠となるだろう。男性が虚勢を張ったり性体験の豊富さを自慢したりすることは、自分があらゆる女性を性的に魅了できることを宣伝する効果がある。

オスのクジヤクが飾り羽をディプレィする場合と同じで、そうした自信たっぷりに男性は、女性にもてる息子を創り上げる遺伝子を次の世代にもたらしてくれそうに見えるのだ。かくして、自信と虚勢のディスプレィは、男性の誘惑戦術において重要な部分を占めることになった。

この種の誘惑ディスプレィと同様に、他のオスに逆用されることもある。一例を上げれば、ウシガエルのオスは、メスを惹きつけるために、池のほとりで大きく、よく響く唸り声をあげる。メスはオスのコーラスに注意深く耳をかたむけ、やがてそのなかから一匹を選んで近づいていく。啼き声がおおきく、よく響くほど、より強くメスを惹きつけることができるからだ。

他のオスより身体が大きく、健康で力強いオス程、声を大きく響かせることが出来るからだ。より小柄な、弱いオスは、そうした優位のオスの傍らで静かにじっとしている。啼き声も立てず、メスを誘おともしない。

だか、優位のオスの啼き声に惹かれてメスが近づいてくると、静かにしていたオスが隠れ場所から飛び出して来てメスを奪い取り、すばやく交尾する。「衛星作戦」もしくは「空巣戦略」と呼ばれるこの方法は、ライバルの誘惑戦略を利用する好例である。

人間もまたそうした戦略を用いており、ウッディ・アレンの映画に出てくる次のシーンはそれをユーモラスに表現している。映画では、精子の紛争をした男たちが、いちはやく卵子ら到達しようと争っている。逞しい精子立かは互いに殴り合って戦い打ち倒したのはいいが、自分も疲れ果ててへたり込んでしまう。そこでウッディ・アレン扮するやせっぽちの精子が、隠れていたカーテンの影から出て来て、一目散に卵子の元へ突進するのだ。

大学生を対象とした調査でも、実際にこの衛星戦略もしくは空巣戦略を使う場合があることがわった。大学生の男女50人ずつに、すでに決まった恋人がいる相手を誘惑しようとする場合に、どんな戦略を用いるかを質問したところ、もっと頻繁に使われているのは次のような戦術だった。
まず、そのカップルと友人になるふりをして近づき、機会をうかがって目的の異性を誘惑するのである。

 もっと珍しい騙しの戦術として、オスがメスのふりをするというものもある。オンタリオ湖沼に棲むサンフィッシュは、小さなオスがメスに擬態して、優位なオスのなわばりに侵入する。そうすれば攻撃されにくくなるからだ。ひとたび縄張りに入ると、小さなオスはメスが残していった卵に素早く受精させ、かくしてなわばりの主であるオスをまんまとだます。

 人間の場合は、たとえば、ふだんは本心を見透かされないようにホモセクシャルを装い、優位な男性がいない隙を狙って女性を誘惑するといった戦術はまず見られない。ただ、それに似た戦術を観たことがあるという回答が、数人の大学生から寄せられたことは興味深い事実である。

 いずれにせよ、ウシガエルやサンフィッシュと同じように、人間もまた衛星戦略や空巣戦略を使って、同性のライバルの誘惑作戦を逆手にとっていることはたしかだろう。
つづく 容姿の改善