新しい女性を目の前にした男性が性的に興奮し、複数の女性と関係する意欲をかき立てられる現象をクーリッジ効果と呼ぶのは、このエピソードからきている。トップ画像

クーリッジ効果

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

クーリッジ効果

多くの女性と性交するという適応上の課題に対するもう一つの心理的解答は、男性が女性によって欲望をかき立てられる現象、いわゆる「クーリッジ効果」に関係している。

 この名称は、次のような逸話に由来している。合衆国第三十代大統領カルヴィン・クーリッジとその夫人が、新たに建設された国営の農場を別々に見学した。鶏舎を通りかかったクーリッジ夫人は、オンドリがメンドリと交尾しているのを目にとめ、オスはどれくらいの回数その務めを果たすのかと訊ねた。

「一日に何十回もです」案内の係員がそう答えると、クーリッジ夫人は言った、「そのことを夫に教えてあげてちょうだい」。次にクーリッジが鶏舎を訪れたとき、係員がオンドリの精力絶倫ぶりを話して聞かせると、大統領はこう訊ねた。「それは、いつも同じメンドリを相手にしているのかね?」「いいえ」係員は答えた。

「一回ごと違う相手ですが」それを聞いた大統領は、こう言った。「そのことを妻に教えてやってくれ」。新しい女性を目の前にした男性が性的に興奮し、複数の女性と関係する意欲をかき立てられる現象をクーリッジ効果と呼ぶのは、このエピソードからきている。

 クーリッジ効果は哺乳類全般に広くみられるものであり、何人もの研究者が観察している。ネズミ、羊、牛などのオスで、この効果は確認されているのだ。ある実験では、雄牛のいる囲いの中に雌牛を入れ、交尾がすんだのちに別の雌牛を入れ替えてみた。同じ雌牛をそのまま入れておくと雄牛の性的反応は急激衰えていったが、新しい雌牛を入れた場合には雄牛の反応は衰えることなく持続した。

 新しい雌牛を前にすると、雄牛は射精に至るまで興奮を維持しつづけ、その反応の強さは、八頭め、一〇頭め、あるいは一二頭めの場合でも、最初の雌牛に対するのと変わらなかったのである。

 新しい相手によって欲望がかき立てられる現象は、それを妨げようとさまざまな工夫をしても、依然として観察される。たとえば、すでに交尾を終えた雌羊に布をかぶせ、新しい雌羊に見かけようとしても、雄羊はけっしてだまされない。

 すでに交尾したメスに対する性的反応は、新しいメスへの反応に比べ、例外なく低いのだ。こうした性的衝動の減衰は、メスが交尾を終えているという事実そのものからもたらされた効果ではない。新しいメスが他のオスと交尾を交尾している場合でも、新たな性衝動の高まりが観察されるからである。

 さらに、交尾を終えたメスをいったん他所へ連れて行き、あらためてオスに引き合わせた場合にも、オスは相変わらず興味を示さなかった。オス箱の程度のトリックに騙されたりはしないのだ。

 人間の男性にクーリッジ効果が作用することは、万国共通の現象である。先進諸国では、男女関係が長くつづくにつれ、パーセントと性交渉を持つ頻度は確実に低下していくのがふつうだ。

 結婚後一年が経過すると、セックスの頻度は最初の一ヶ月にくらべ約半分になり、その後も緩やかにではあるが低下していく。ドナルド・サイモンズの言を借りれば、「妻への欲望が衰えていくのは、ひとつの適応である‥‥それは、他の異性へ目を向けることを促すからだ」。

 人間の浮気行動は、さまざまな形態をとる。大部分の文では、男性は女性にくらべ、婚外セックスを求める比率が高い。キンゼイ報告によれば。男性の五〇パーセントが配偶者以外との情事を行っているのに対し、女性では二六パーセントにすぎなかった。とはいえ、この差は徐々に縮まりつつあることが、さまざまな調査から明らかになっている。

 既婚の男女八〇〇〇人を対象としたある調査によれば、男性の四〇パーセントと女性の三六パーセントが、少なくとも一度は浮気をしたことがあると答えている。灰と・リポートは、実に男性の七五パーセント、女性の七〇パートナーが不倫を行っていると推定している(ただし、この調査はサンプルの選び方に信頼性がないことで有名ではあるが)。

もっとサンプルの信頼性が高いものとしては、男性の九八二人と女性一〇四四人を対象としたハントの調査があるが、この調査では浮気を行っている率を、男性では四一パーセント、女性では一八パートナーとしている。

このように調査によって数字はさまざまであり、また男女間の差も縮まりつつあるように見えるが、それでもなおすべての調査が、浮気の比率と頻度において性差が存在することを示している。男性は女性にくらべ、より高い頻度で、より多くの相手と浮気しているのである。

 アメリカにおけるスワッピング(夫婦交換)は、ほぼ例外なく、夫の意志で始められており、妻から望むことはほとんどない。集団セックスも、主に男性主導で行われている。

 インドのムリア族のある男性は、男がさまざまな相手を求める欲望を、次のように説明している。「だれだって、同じ野菜を毎日食べたいとは思わないだろう」。また、南アフリカのクガトラ族の男性は、自分がふたりの妻に対して抱く性欲について、こう語っている。

「私はふたりの妻を同じょうに好ましく思っている。だが、どちらかひとりに三日続けて寝ると、四日目には疎ましく感じてしまうのだ。その後でもうひとりの妻の所へ行くと、自分がより情熱的になっていることが解るし、妻も魅力的に見える。とはいえ、実際に彼女の方が魅力的だというわけではない。その証拠に、彼女と過ごした後で、もう一度さっきの妻の方に戻ると、また新しい情熱がわいてくるからだ」

 人類学者トマス・グレガーは、アマゾンのメヒナク族の男性の性的感情について、次のように述べている。「女性の性的魅力は、『味気ない(マナ)』から『心をそそる(アウイリンテイヤ)』にまで分けられている…・残念なことに、配偶者のセックスは『マナ』であると見なされている。対照的に、愛人とのセックスは、ほぼ例外なく『アウイリンテイヤ』であるとされる」。
 
 アルフレッド・キンゼイは、こう述べている。「もし社会的な制約というものがなかったら、人間の男性が、その生涯を通じて多数のセックス・パートナーを求め続けるだろうことに疑問の余地はない…・それに比べて女性は、多様なパートナーを得ることに対する関心はずっと低い。
 つづく 性的な空想 

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。