ハタオリドリと同じように、人間の女性もまた、望ましい「巣」をもつ男性を好む傾向がある。進化の歴史の中で、女性が直面せざるを得なかった課題の一つは、長期間にわたって配偶関係を築く意志のある男性を選ぶことである。  トップ画像

配偶者を選ぶ

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

配偶者を選ぶ

 世界のどんな文化においても、男女が、周りにいる異性すべてに同等の欲求を抱くことはない。一部の異性だけが配偶者の候補とされ、それ以外には関心は向けられないのがふつうだ。われわれ人間の性的欲求は、その他の欲求とはまったく同じ過程を経て成立したからである。たとえば、生き残るためには、どの食物を摂ればいいのかとい問題を考えてみよう。

 自然界には果物、木の実、肉から、土、砂利、有毒植物、小枝、排泄物にいたるまで、人間が口に入れようと思えば入れられるものが数多く存在する。もし人間が味の好みというものを持たず、周りにある物を手当たり次第に口にしていたら、ある者は、たまたま熟れた果物や新鮮な木の実などなどの栄養分とカロリーに富んだ食物を摂り、また別の者は、腐った肉や果物などを食べる羽目になっただろう。
 その結果、人類の祖先のうち、栄養のある食物を好んで食べていた者だけが生き残ったにちがいない。

 実際に、われわれの食べ物の嗜好(しこう)は、子の進化のプロセスを確証するものとなっている。人間は、脂肪、糖分、タンパク質、塩分に富んだ食物を好み、逆に苦みや酸味があったり、毒性のあるものを避ける。

 こうした食物の好みは、生き残るための基本的な課題の答えだった。われわれが現在も、この嗜好を忠実に受け継いでいるのは、それが先祖にとって重大な適応上の課題を解決してくれたからなのだ。

 配偶者を求めるわれわれの欲求もまた、適応上の目的と呼んでいいものに根差している。しかし、その機能は、ただ生き残れる事に限られていたわけではない。はるか昔、われわれの先祖がどんな暮らしを営んでいたかを想像してみよう。火を焚いて暖を取り、家族を養うために動物を狩り、木の実や果物、香草を摘む。さらに、危険な獣や敵対する部族から身を護らなければならない。

 そんな状況のもとで、ろくに食料も集められず、狩の技術ももたず、浮気者で怠慢で、身内に暴力をふるう人間を配偶者に選んだりしたら、いったいどうなるだろう。たちまち生存は脅かされる、子孫を残せなくなるに違いない。逆に、食料をたくさん調達することができ、家族を保護し、家族のための時間とエネルギーを注ぎこむような配偶者は、大きな価値を持つ。

 かくして、われわれの祖先のうち、賢い配偶者の選択をした者だけがうまく生き残り、多くの子孫を残すことが出来た。その結果、どのような配偶者が望ましいかという明確な欲求が進化していった。彼らの子孫であるわれわれは、現在、そうした欲求を受け継いでいるのだ。

 ヒト以外の多くの生物種も、ある特質をそなえた配偶者を好む傾向を進化させている。アフリカに生息するハタオリドリの一種ズグロウロコハタオリはその好例だろう。このハタオリドリのオスは、近くにいるメスがいるのを見つけると、自分のつくった新しい巣の下に逆さにぶら下がり、翼を激しくばたつかせてメスの注意を巣に引き付けようとする。

 このディスプレィがメスの目に留まると、メスが巣にやって来て中に入る。メスは10分間ほどかけて、嘴(くちばし)でつついたり引っ張ったりしながら、巣の材質をチェックする。その間、オスは近くにいて、メスに向かってさえずりつづける。検査の過程で、この巣は求める基準に達していないとメスはそこから離れて別のオスの巣へ向かう。自分の巣が何羽ものメスから次々と拒否されると、オスは巣を壊して、新しく作り直すことになる。

 ハタオリ鳥のメスは、すぐれた巣をつくれるオスを配偶者に選ぶことによって、将来生まれてくるヒナを保護し、養い育てるという問題を解決しているのだ。そうした配偶者を好むメスは、特定の選択基準をもたず、手近くにいるどのオスとも交尾するメスに比べ、子孫を残すうえで有利になる。そのため、優れた巣を作るオスを配偶者に選ぶ傾向が進化していったのである。

 ハタオリドリと同じように、人間の女性もまた、望ましい「巣」をもつ男性を好む傾向がある。進化の歴史の中で、女性が直面せざるを得なかった課題の一つは、長期間にわたって配偶関係を築く意志のある男性を選ぶことである。祖先たちのうち、衝動的で飽きっぽく、浮気な男を配偶者に選んでしまった女性は、他の男なら与えてくれたはずの食糧や援助、保護のないままに、一人で子どもを育てるはめに陥ったはずだ。

 一方、ひとりの女性と安定した関係を持とうとする、頼りがいのあるタイプの男性を配偶者に選んだ女性は、子どもを無事に育てあげ、子孫を繁栄させる確率が高い。かくして、数千世代を経るうちに、安定した関係を築くつもりがあり、また築けそうに見える男性を好む傾向が、女性の中で進化させたのと、まったく同じだった。

 特定の食物を好むことが生き残るうえで重要な問題を解決したように、特定の配偶者を好む傾向は、子孫を残すうえで重要な問題を解決したのだ。

 とはいえ、人々がいつも、長期にわたる配偶関係に拘束されることを望むとは限らない。男も女も、短期間の浮気やつかのまの関係、ゆきずりの情事に身を投じることがある。そうしたときには、異性に対する好みは変化し、劇的に異なったものになることもある。人間の場合、ほんの短期間だけの恋愛相手を望んでいるのか、それとも長期にわたるパートナーを必要としているのかと言うことは、異性を選択する際の大きな要因のひとつである。

 どんな性戦略をとるかは、この決定に大きく左右される。本書では、男女が一般的に、どのような特徴をそなえた異性を好むかを実証するとともに、男性と女性で異性への要求が異なることの進化的な意味を明らかにする。異性を求める目的が、その場限りの(カジュアル)セックスから、安定した配偶関係の構築へと移行したとき、どのような変化が生じるのかも探っていく。
 つづく 配偶者を惹きつける 

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