デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之
ホモセクシュアルはどんな配偶者を好むか
男性が配偶者の外見を重視するのは、なにも異性愛者(ヘテロセクシュアル)に限ったことではない。同性愛者(ホモセクシュアル)の関係は、配偶者を求める欲求の性差を進化論的に説明するうえで、避けて通れない難題である。
ホモセクシュアルの男性は、女性だけでなく男性のパートナーを求めるところが違うだけで、その他の点では、異性愛の男性と多少なりとも似たパートナー選びの傾向を備えているのだろうか? それとも、かれらのパートナー選びの基準は、むしろ女性の方に近いのだろうか? あるいは、男女どちらとも異なる独自の傾向を持っているのか?
男性全体のなかに占めるホモセクシュアルの比率は、いかなる文化、いかなる時代においても正確には知られていない。正確な数字を出すことを困難にしているひとつの原因は、ホモセクシュアルの定義があいまいである点にある。
性科学者アルフレッド・キンゼイの推定によれば、男性の三分の一以上は、人生のある時期になんらかの同性愛的行為を行ったことがあり、特に思春期に経験することが多い。
しかし、同性の相手だけに強く執着する人々は、それよりずっと数が少ない。一般的な推定によれば、男性では三ないし四パーセント、女性の場合にはわずか一パーセントにすぎないのである。このようにならかの同性愛行為を経験した人々の数と、同性のパートナーだけを強く求める人々の数に顕著な隔たりがあるという事実は、パートナー選びの心理的傾向と、実際の行動とのあいだには大きな違いがあることを示唆している。
ほんとうは女性のパートナーを求めている男性でも、うまく女性を惹きつけられなかったり、刑務所に収監中で女性に近づけない状況に置かれているような場合代用として同じ男性をセックス相手に選ぶこともありうる。
なぜ一部の人々が自分と同性の相手に強い欲求を感じるのか、その理由は明らかになっていないが、推測離されている。一例として、いわゆる血縁淘汰理論によって説明しようとする考え方がある。
この理論によれば、同性愛の傾向は、自分が子どもを作るよりも、遺伝的に近い関係にある近親を援助するほうが良い結果を得られるような状況下で進化してきた。たとえば、われわれの祖先の男性に、女性を惹きつける魅力に欠けていた者がいたとする。そうした人間にとっては、自分自身の配偶者を獲得しようと努力を続けるよりは、その労力を自分の妹の子供に投資した方が有効なはずだと言うのだ。
とはいえ、こうした理論も、いまのところ裏付けとなる証拠はない。同性愛傾向の起源は、いまだに謎に包まれたままなのだ。
それにたいし、ホモセクシャルがどんなパートナーを好むのかは、かなりわかっている。さまざまな調査の結果、ホモセクシャルの男性は、パートナーの若さと容姿をきわめて重要視することが明らかになっているのだ。ウィリアム・ジャンコウィアクと共同研究者たちは、男女双方の同性愛者と異性愛者を対象に、ある調査を行った。
さまざまな年齢の男女の写真をひとそろい見てもらい、それぞれの身体的魅力度をランク付けさせるのである。同性愛者の男性と異性愛者の男性はともに、年齢の若いほうがより魅力的だと判断する傾向があった。
それとは対照的に、女性の場合は同性愛者も異性愛者も、パートナーの魅力度を判断する際に年齢という要素はほとんど考慮していなかった。この調査結果から、次のように推測ができる。同性愛の女性がパートナーを選択する基準は、異性愛の女性とかなり共通しており、ただ求めるパートナーの性別が異なるだけである。
おなじように、同性愛の男性は、異性愛の男性と似た基準でパートナーを選んでいる。
心理学者ケイ・ドゥーとランデル・ハナは、ホモセクシャルのパートナー選択について、より包括的な研究を行っている。彼らはアメリカ東海岸と西海岸の複数の新聞から、異性愛者の男性、異性愛の女性、同性愛の男性、同性愛の女性がそれぞれ同数になるように、合計八〇〇件の個人広告を収集した。次に、容姿、経済力、性格などの特性を分類し、どのグループで、どの特性がどれだけの頻度でアピールされ、求められているかを集計した。
同性愛の女性は、パートナーの容姿をあまり重要視しないという点で、異性愛の女性と似た傾向を示している。パートナーの容姿について条件をつけている個人広告は、異性愛の女性では一九・五パーセント、同性愛の女性では一八パーセントにすぎない。
対照的に、異性愛の男性の四八パーセント、同性愛の男性の二九パーセントが、身体的魅力のあるパートナーを求めている。また、これら四つのグループのうちで、同性愛の女性は、自分の肉体的魅力を誇示することが最も少ない。同性愛の女性の個人広告のうち、自分の魅力について触れているものは、わずか三〇パーセントにすぎないのである。
それに対し、異性愛の女性では六九・五パーセントが自分の魅力をアピールしており、同性愛の男性では五三・五パーセント、異性愛の男性でも四二・五パーセントがそうしている。
個人広告でパートナーを応募する際、応募してくる人間に写真を送って来るよう求めているケースも、異性愛の女性では三五パーセント、同性愛の男性では三四・五パーセント、異性愛の男性では三七パーセントにおよんでいるが、同性愛の女性ではわずかに一六パーセントにすぎない。
女性の同性愛は、パートナーの身長、体重、目の色や体形といった身体的特徴を気にかけることが少ないとう点でも、他の三つのグループが求めている同性愛の女性は、全体のわずか七パーセントとでしかない。それに対して、異性愛の女性では二〇パーセント、同性愛の男性では三八パーセント、異性愛者の男性では三三・五パーセントが、特定の身体的特徴をもつ相手を求めている。
また、同性愛の女性のうち、自分の長所として何らかの身体的特徴をあげているのは四一・五パーセントにすぎないが、異性愛の女性では六四パーセント、同性愛の男性では七四パーセント、異性愛の男性では七一・五パーセントに達する。
以上の事実から、同性愛の男性と異性愛の男性は、ともに容姿を重要視している点では異性愛の女性に似ているが、異性愛の女性にくらべ、身体的特徴を気にかけないという点では異なっており、それは自分を売り込む場合でも、相手に条件として望む場合でも変わらない。
これほど組織的なものではないが、別のいくつかの研究からも、男性の同性愛者が若さと容姿を重視することが明らかにされている。同性愛者の配偶市場を調査した研究によれば、どのパートナーが望ましいかを決定する鍵になっているのは身体的魅力であることが多い。
同性愛の男性は、衣服や身だしなみ、健康状態といったものをきわめて重視する。そしてもうひとつ、ある人間の魅力を判断するうえで大きく影響するのが年齢である。ゲイの世界では若さがものを言うのだ。
社会学者フィリップ・ブラムステインとペッパー・シュウォルツは、同性愛・異性愛をとわらず、男性は女性にくらべ、パートナーの容姿によって欲望をかき立てられやすく、それはすでに決まったパートナーをもつ人間でも変わらないことを発見した。
調査の対象としたのは。みなならかの配偶関係を築いている人々だったが、それでも同性愛の男性の五七パーセント、異性愛の男性の五九パーセントは、自分のパートナーがセクシーに見えることが重要だと感じていた。
一方で、女性の場合は、同性愛者で三五パーセントに過ぎなかった。こうして見てくると、同性愛の男性と異性愛の男性は、求める相手の性別を除けば非常によく似たパートナー選びの傾向を備えていることがわかる。どちらも、容姿を重視し、さらに美しさを判断する基準を若さにおいているのである。
つづく
美の基準はメディアが決める?
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