どんな肉体的特徴を備えた女性が魅力的かという基準は、文化によって多岐にわたっており、豊満な体形が好まれる場合もあればスリムな体形が好まれることもあり、肌の色が明るい方が魅力的とされる場合もあれば、浅黒い肌が好まれることもある。 トップ画像

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体形

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

体形

容貌の美しさだけがすべてではない。身体の他の部分の特徴も、女性の繁殖能力を判定するうえで豊富な手掛かりを与えてくれる。どんな肉体的特徴を備えた女性が魅力的かという基準は、文化によって多岐にわたっており、豊満な体形が好まれる場合もあればスリムな体形が好まれることもあり、肌の色が明るい方が魅力的とされる場合もあれば、浅黒い肌が好まれることもある。

目や耳、あるいは性器など、身体のどの部分を重視するかという点も、文化によってさまざまである。アフリカの南西部に居住するコイ(ホッテントット)族の一支配者であるナマ族では、長い大陰唇が性的に魅力あるものとされる。

そのためナマ族の女性たちは、大陰唇を引っ張って伸ばし、より魅力的に見せようと努力する。また、多くの文化では、男性は、女性の大きく引き締まった乳房に魅力を感じるが、東スーダンのアザンデ族ウガンダのガンダ族など少数の文化では、長く垂れ下がった乳房の方がより魅力的であるされる。

美の基準のうち、文化によってもっとも差異が甚だしいものは、スリムな体形と豊満な体形のどちらを好むかという点だろう。この違いは、体形がどんな社会的地位を示しているかに関係している。

オーストラリアのアボリジニのような、食物が不足気味の社会では、太っていることは裕福さと健康、及び子供時代に十分な栄養を与えられていたことを意味している。一方、現在のアメリカや大部分の西欧諸国のように、食物が豊富に存在する社会では、肥満と社会的地位の関係は逆転する。

裕福な人々が、すすんでスリムな体形を保とうとするからだ。したがって、男性が、どの程度の体脂肪率をもった女性を好むかという生得的な基準を進化させていないことは明らかだ。むしろ男性たちは、なんであれ高い社会的地位を示す特徴を重視する傾向を進化させてきた。こうした傾向は文化によって差異はあるものの、その違いは予測できる範囲内におさまっている。この傾向は明らかに、自覚的な計算もしくは意志とは無関係に存在しているのだ。

心理学者ポール・ロージンとその共同研究者たちは、太った体形をスリムな体形のどちらが望ましいかについて、男性と女性のあいだに意識の大きな違いがあることを明らかにした。彼らの調査では、まずアメリカ人の男女に、「きわめて肥満している」から「きわめて痩せている」までの九種類の女性の写真を見せた。

女性の被験者には、その九種類のなかから、彼女たちが理想とする体形と、男性がもっとも望んでいる思われる体形の両方を選んでもらった。その結果、どちらの場合でも、女性たちが選んだ体型は平均よりも痩せ型のものだった。

一方、男性の被験者に望ましい女性の体形を選ばせると、多くの男性は痩せても太ってもいない平均的な体形を選んだのである。つまり、アメリカ人女性は、男性は?せた女性を好むものだと実際以上に思い込んでしまっているのだ。この発見は、男性が華奢な女性を好むという通説をくつがえすものだった。

このように、男性がどのような体型を好むかは一概に言えない。ただ、ひとつだけ普遍的な好まれる特徴が存在することを、心理学者デヴェンドラ・シンは明らかにしている。それは、ウェストとヒップホップの一定の比率である。思春期以前は、身体の脂肪のつき方は男女とも共通だ。しかし思春期を迎えると、脂肪のつき方が劇的な変化が生じる。

男の子は臀部と大腿部からは脂肪が落ち、一方女の子は、女性ホルモンが分泌されるためな、下半身、特に臀部と大腿の上部に脂肪がつく。そのため、成人女性の臀部と大腿部の体脂肪は、男性に比べ四〇パーセントも多くなる。

思春期前の男女は、ウェストとヒップで割った数値は、男性に比べ目立って小さくなってしまう。健康で妊娠可能な年齢の女性のウェスト/ヒップの比率は、ふつう〇・六七から〇・八〇のあいだだが、健康な男性では〇・八五から〇・九五である。最近になって、このウェスト/ヒップ比率が、女性が妊娠可能であるかどうかを示す明確な指標であることが、多くの証拠から分かってきた。

ある女性のウェスト/ヒップ比率が小さければ、すでに女性ホルモンの分泌が活発になっていることがわかる。一方、既婚女性でウェスト/ヒップ比率が大きい場合は、その女性はすでに妊娠しにくい身体になっており、たとえ妊娠しても高齢出産になることを意味している。

また、ウェスト/ヒップ比率は、長期的な健康状態を正確に示す指標でもある。糖尿病や高血圧、心臓疾患、過去の発作、胆不全などは、体脂肪がどこにどうついているかに関連しており、全身の体脂肪率よりも、むしろウェスト/ヒップ比率に反映されているからである。

このように、ウェスト/ヒップ比率と健康状態および繁殖能力は密接に結びついており、だからこそわれわれの祖先の男性たちは、配偶者を選ぶ際にこの比率を信頼できる指標と見なすようになったのだ。

シンは、ウェスト/ヒップ比率が、女性の魅力を大きく左右する要素であることを発見した。十数回にわたって行った調査で、男性たちに、ウェスト/ヒップ比率と体脂肪の量の両方がさまざまに異なった女性の写真を見せ、どれが魅力的かをランクづけさせたところ。男性は痩せ型の女性や豊満な女性よりも、平均的な肉づきの女性に魅力を感じることがわかった。

さらに、一方で男性たちは、体脂肪の総量とは無関係に、ウェスト/ヒップ比率〇・七〇の女性は比率が〇・八〇の女性よりも魅力的だとされ、〇・八〇の女性は〇・九〇の女性より高い評価を与えられた。女性の魅力身体を描いた線画や、コンピュータ・グラフィックスを駆使して合成した写真を使った調査でも、同じ効果が得られた。

 シンは、『プレーボーイ』誌のグラビアに登場したモデルとアメリカ各地の美人コンテストの優勝者を、過去三〇年間にわたって分析し、やはりウェスト/ヒップ比率が重要であることを立証した。

『プレーボーイ』のモデルと美人コンテストの優勝者たちは、時代が後になればなるほどスリムになっていく傾向が見られたが、ウェスト/ヒップ比率だけはほぼ〇・七〇と一定のままだったのである。

男性がウェスト/ヒップ比率を重視する傾向を進化させてきたことは、もうひとつ理由が考えられる。女性が妊娠すると、ウェスト/ヒップ比率は急激に増大する。したがって、女性のウェスト/ヒップ比率が大きいと、妊娠に似た状態に見えるため、配偶者もしくはセックス相手としての魅力は減少することになるだろう。

一方、比率が小さいことは、健康と繁殖能力を示すのに加えて、現在妊娠していないことを保証してくれる。このような理由から、男性が数千世代にわたって女性の魅力の基準を進化させていく過程で、ウェスト/ヒップ比率が信頼できる指標として採用されたのだろう。
つづく 外見の重要性