感情の不安定な男性は、自己中心的な考えに陥り易く、また夫婦で共有すべき資源を独占したがる傾向がある。さらに、強迫観念にかられやすく、妻が夫の世話以外の仕事に時間を割くことを嫌う。トップ画像

頼りがいと安定性

本表紙
デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

頼りがいと安定性

配偶者選択に関する国際調査でランク付けされた一八の項目のうち、「愛情」に次いで二番目と三番目に評価されたのが、「頼りがい」と「感情の安定性もしくは成熟度」だった。調査対象となった三七の文化圏のうち二一で、男性も女性も同じように配偶者に頼りがいを求めている。

残りの一六の文化圏では、男女間に評価の違いがみられ、そのうち一五では女性のほうが男性よりも、配偶者の頼りがいを重視している。三七の文化圏全体を平均すると、必要度を3.00点万点としたとき、女性は「頼りがい」を2.69点に評価している。男性も同じくらいに重視しており、平均2.50点を与えている。

 一方「感情の安定性もしくは成熟度」の場合、男女間の差はより大きくなる。二三の文化圏で女性は男性よりもこの要素をずっと高く評価しており、残り一四の文化圏では男性と女性がほぼ同じ評価を与えている。

 すべての文化圏を平均すると女性は感情の安定性に2.68点を与えているが、男性の評価は2.47点である。つまり、あらゆる文化を通じて、女性は未来の配偶者の頼りがいや安定性に大きな評価を認めており、この二つの要素を「重要」と「必要不可欠」の中間にランク付けしている。

 こうした要素が全世界でこれほど重要視されているのは、それが、長期的に資源が安定供給されることを示す信頼できる指標だからだ。それにひきかえ頼りがいに賭けるタイプの人々は、資源の供給が不安定で、逆に配偶者に多大なコストを支払わせたりする。私と研究者は、新婚のカップルを対象に、次のような調査を行ったことがある。

 まず、ミシガン州の大規模な郡で、ここ六カ月以内に婚姻届け出したカップルの中から、無作為に一〇四組を抽出して協力を求めた。選ばれたカップルは、六時間にわたる性格テスト、結婚生活についての自己評価、配偶者の性格に対する評価を行ったあと、それぞれ男女ひとりずつのインタビュアーによる面接調査を受けた。

 この調査の一環として、それまでの一年間に、自分のパートナーのためにどのようなコストを払わされたかを一四七の項目から選んでもらった。その結果、感情的に不安定な男性――自分でそう認めている場合もあれば、配偶者もしくはインタビュアーからそう判断された場合もある――は、特に多くのコストを女性に強いていることが分かった。

 まず第一に、感情の不安定な男性は、自己中心的な考えに陥り易く、また夫婦で共有すべき資源を独占したがる傾向がある。さらに、強迫観念にかられやすく、妻が夫の世話以外の仕事に時間を割くことを嫌う。性的な嫉妬心も強く、妻が他の男性と話をするだけで怒る。

 他人に依存する傾向があり、自分の要求をすべてかなえてくれることを配偶者に強要し、言葉や暴力による虐待を加えることすらある。約束の時間を平気で遅れるなど自分勝手な振る舞いも多い。気分に左右されやすく、特に理由もないのに激昂したりする。

 また、より安定した男性よりも浮気に走りやすく、その点でも時間と資源を無駄にしやすい。こうしたコストの存在は、感情的に不安定な男性が、妻の時間と資源を浪費する一方で、自分の時間や資源には他の用途に振り向けてしまい、資源が長期にわたって安定供給されないことを示している。頼りがいと感情の安定性は、女性の資源が男性によって浪費されないことを保証する人格的指標でもあるのだ。

 感情的に不安定な男性には行動が予測できない面もあり、重要な適応上の課題が解決されずに、よけいなコストを強いられることになる。資源の供給が不安定だと、生存と繁殖に必要な目標達成が大きく妨げられることになる。頼りにならない配偶者がほんの気紛れから狩に行くのを止めて、昼寝をしてしまったとしよう。その結果、家族は肉を食べられなくなる。栄養不足をはじめとするさまざまな問題をもたらす。

 資源は、それが規則正しく供給される場合にもっとも価値のあるものとなる。断続的にしか供給されない資源は、往々にして浪費を招きかねない。その資源によって満たされるはずの需要を、他の、もっと高くつくものによって穴埋めする場合があるからだ。
 反対に、確実に供給される資源は、日々の生活で生じるさまざまな需要を、より効果的な形で満たすことができる。

 とはいえ、「感情の安定性」と「頼りがい」は、かなり漠然としたカテゴリーである。こうした一般的な特徴をより正確に定義づけるために、マイケル・ボトウィンと私は一四〇人を対象に調査を行い、感情的に安定した行動と不安定な行動の例をそれぞれあげてもらった。感情的に安定していることを示す行動としては、快活にふるまう、困難な状況でも愚痴をこぼさない、他人に思いやりを示す、などがあげられた。

 また、仕事に関係した行動としては、他の人々が遊びに出かけているあいだに家で仕事を片づけする、くよくよと心配したりせずに全力で仕事に打ち込む、などがある。こうした種類の行動は、仕事を着実にこなし、ストレスや難問にも自力で対処し、逆境にあっても他人のために自分の資源を提供できることを示しているからだ。

 それと対照的なのが、感情的に不安定な人々の行動である。どうしょうもないことを気に病んだり、困難につきあたると落ち込んだり、するべき仕事もせずに当り散らすといった不安定な行動は、自分の資源をうまく制御できないことをあらわにしている。それはまた、仕事をこなしたりストレスに対処したりする能力の欠如や、他人にコストを強いる傾向、他人に分け与える資源の欠如なども示している。

 女性は、そうしたコストの出費を避け、配偶者から長期にわたって利益を引き出すために、頼りがいと感情の安定性を重視するのである。先史時代においては、感情的に安定した頼りがいある男性を配偶者に選んだ女性は、その男性が獲得し、保持していた資源を、自分や子どもたちのために利用できる確率が高かった。
 感情的に不安定な頼りにならない男のために、コストを払わされる危険を避けることができたのだ。
  つづく 知性 

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。