女性が夫の社会的地位を重視する傾向もまた、アメリカや資本主義諸国に限られたものではない。われわれが調査した三七の文化圏のうち大部分で、女性は男性よりも、配偶者候補の社会的地位を重視する傾向はみられたトップ画像

社会的地位

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デビィツド・M・バス 訳=狩野秀之

社会的地位

 伝統的な狩猟・採取民の社会は、われわれの祖先がどんな生活を憶いたかを推測するうえで、最も身近な手掛かりとなる。この手掛かりから、祖先たちが明確に階層的な社会構造をもっており、高い地位にいる者には多くの資源が速やかに集まり、地位の低い者にはごくわずかずつしか分配されないことが明らかになっている。

オースラリア北部沖合の二つの小さな島に住むティウィ族や、ヴェネズエラのヤノマミ族、パラグアイのアチェ族、ボッワナのクン族など、現在も伝統的な生活を守っている部族には、「ビッグマン」と呼ばれる人々がおり、大きな権力をもち、資源を手に入れる特権を享受している。この事実から、祖先たちの社会においては、男性はどんな社会的地位にいるかによって、その所有する資源の量がほぼ決定されていたと考えられる。

かつてヘンリー・キッシンジャーは、権力こそもっと強力な媚薬だと言った。女性たちは、社会において高い地位を占めている男性を求める。社会的地位こそ、その男性が資源を支配して入ることを示すもっとも普遍的な指標だからだ。高い地位は、よりよい食物と、より豊かな土地と、手厚い医療を意味する。

親の地位が高ければ高いほど、その子どもたちはさまざまな社会的チャンスを得られるか、地位の低い男性の子どもはそうした機会を手にすることが出来ない。とくに男の子の場合。高位の家の出身であればあるほど、より多くの、よりすぐれた配偶者を獲得できることは、万国共通である。

アフリカのムブチ族からアレウト・イヌイット(エスキモー)まで186の部族を対象としたある研究によれば、高い地位にある男性は、ほぼ例外なく多くの富をもち、子供たちに良いものを食べさせ、たくさんの妻を持っていることが明らかにされている。

アメリカの女性たちは、高い地位や評価の高い職業についている配偶者を好む傾向をはっきりと示している。高い地位は、経済力とほとんど同じくらい重視されているのだ。前述の「関係ない」から「必要不可欠」までのランクづけ調査によれば、マサチューセッツ、ミシガン、テキサス、カリフォルニアの女性たちは、社会的地位を「重要」と「必要不可欠」の中間に評価している。

それとは対照的に、男性たちは配偶者が高い地位にあることを、「望ましいが特に重要でない」としか評価していない。また、5千人の大学生を対象にした別の調査でも、女性は男性に比べ、配偶者の地位、名声、階級、権力、キャリアといったものを重視する傾向が顕著だった。

デヴィド・シュミットと私は、一時的な男女関係と永続的な配偶者関係の違いについての調査を行ったことがある。調査の目的は、人々が配偶者候補にどんな特別な資質を求めているかを知り、それを一時的なセックス相手に求められる資質と比較することにあった。

対象にしたのはミシガン大学の男女学生で、この集団は一時的な男女関係、婚姻関係のどちらかについて適切な調査対象だった。われわれは数百人の学生に、配偶者の資質として六七項目を提示し、短期的な関係・長期的な関係それぞれの場合に、どれが望ましく、どれが望ましくないかを判定させた。

女子学生たちは、仕事で成功しそうなこと、将来有望なキャリアの持ち主であることの二点を、配偶者に強く望まれる資質としてあげた。だが、注意すべきことに、こうした将来の高い地位へとつながる資質は、配偶者に求められても、一時的なセックス相手に求めることは少なかった。

また、アメリカの女性は、配偶者が高等教育を受け、専門的な学位を得ていることはきわめて重視する。これもまた、社会的地位に強く結びついた資質である。先ほどの調査によれば、女子学生たちは、自分の将来の夫に学歴が欠けている事に強い抵抗を示した。

女性が医者や弁護士、大学教授といった専門職の男性と結婚したがるという通説は、現実に即したもののようだ。女性たちは、他の男性に顎で使われるような男性や、集団内で敬意を払われないような男性には興味を示さない。

女性が夫の社会的地位を重視する傾向もまた、アメリカや資本主義諸国に限られたものではない。われわれが調査した三七の文化圏のうち大部分で、女性は男性よりも、配偶者候補の社会的地位を重視する傾向はみられた。それは、共産主義もしくは社会主義国家においても、黒人や東洋人の人々の間でも、カトリックにおいてユダヤ教徒においても、あるいは熱帯地方だろうと極北のちいきだろうと変わらない。

例えば台湾では、配偶者の社会的地位を重視すると答えた女性は男性よりも六三パーセント多かった。同じように、ザンビアでは三〇パーセント、西ドイツでは三八パーセント、ブラジルでは四〇パーセント、女性のほうが多かった。

階層構造は、人間集団における普遍的な特徴であり、資源は階層の上位にいる人間に集まりやすい。そのために、より多くの資源を入手するという課題に直面した女性たちは、高い地位にある男性を配偶者に選ぶことである問題の一部を解決しようとした。女性にとってある男性の社会的地位とは、自分や子どもたちに対してどれだけ資源を提供してくれるかを示す確実な指標なのである。

そこから、女性がそうした指標を資源の獲得に生かそうとするという進化的な予測が成り立つ。そして現在、多くの文化において観察できる事実は、この予測を裏書きしている。世界中の女性たちが、結婚によって社会的地位を上げたがっている。それは、進化の歴史において地位を上げ損なった女性たちが、自分や子どもたちのために資源を入手するうえで不利になったからである。
 つづく 年齢 
煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。