脳研究所のディック・スワープが行った研究が、とくに注意を引く。アレンとゴースキは、脳梁の前頭葉に注目した。右脳と左脳をつなぐ結合部分である。そしてルヴェイと同じような結論に達した。ゲイの男性の場合は、ストレートの男性より女性に似ている。トップ画像

セクシュアルな脳

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サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

セクシュアルな脳

1991年、サイモン・ルヴェイがある研究結果を発表した。エイズで死んだゲイとストレートの男たちの脳、他の原因で死んだ男たちの脳、そして女たちの脳を解剖してみたのである。すべての脳を”ブラインド”で、すなわち、どれが誰の脳か隠して研究に当たった結果、次のようなことが解った。

 視床下部の中央にあるINAH―3と呼ばれる場所にある。ある種の核酸の魂が、死因とは関係なくゲイの男の方がストレートの男よりも小さかったという。INAH−3が、性行動と関係があると言うのは少し前から知られていた。そして女性より男性の方がこの部分の大きいということも知られていた。

 ルヴェイの研究結果はこう言うことを示唆していた。ゲイの男たちは、女のような視床下部を持っている。別の言葉で言えば、テストステロンの影響を受けなかった視床下部である。ルヴェイの実験だけでは、十分なテストステロンが脳へ到達していなかったせいなのか、そもそもテストステロンを受け入れるシステムを欠いていのか、それは解らない。ただ一つはっきりしているのは、ゲイの男がストレートの男とは違う頭脳の構造を持っていると証明されたのは。これが初めてだということである。

 そしてこの構造の違いは、環境とは全く関係ない。生まれた時から定められたものである。ルヴェイは著書『セクシャルな脳(邦訳: 「脳が決める男と女」)』にこう書いてある。「ゲイの男たちは女に惹かれる脳細胞を持っていないかもしれない」そして、そのとおりなのである。

 七年経ってもまだ、ルヴェイの研究に関して熱い議論がかわされていた。エイズの害は脳に及び、痴呆をもたらし、視力を奪うこともある。だからゲイでもストレートの男でも、エイズで死んだ男の脳は健康な状態ではなかったかもしれない。

それにINAH−3のサイズの違いは、ホモセクシュアルセクシュアルティの結果であって原因ではないかもしれない。

だが時が経ち同じような実験が増えてくると、ゲイの男とストレートの男は脳の作りが違い、セクシュアリティの違いはどうしょうもないものだというルヴェイの主張が、ますます正しいものに思われて来るのだった。

 最近も、興味深い研究は続々と発表されている。その中でも、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校のローラ・アレインとロジャー・ゴースキが行った研究と、アステルダムの脳研究所のディック・スワープが行った研究が、とくに注意を引く。アレンとゴースキは、脳梁の前頭葉に注目した。右脳と左脳をつなぐ結合部分である。そしてルヴェイと同じような結論に達した。ゲイの男性の場合は、ストレートの男性より女性に似ている。

 一方スワープは1995年、男から女への性倒錯者を調査して、この結合部分のサイズの違いは性や性的嗜好をではなく性のアイデンティティ、つまり、自分がどちらの性だと思っているかに関係していると発表した。一見奇妙に思える結果だが、重大な発見である。

 なぜなら、この発見によってセクシュアリティには二つの種類があること(性的嗜好とアイデンティティ)、そしてそれぞれ生まれる前のホルモンと関係があり、神経系の別々の場所に原因があることが解ってきたからである。

 この両方の場所でホルモンの異常(過剰あるいは不足)が起きれば。めめしいゲイの男や。乱暴なlesbianの女が出来上がる。だが一方だけテストステロンの影響を受け、もう一方は受けないということもありうるのである。だから、ストレートのような振る舞いのゲイの男性も現れる。

見た目には普通の男性でありながら、欲望の対象だけが違うのである。

これはその逆もいえる。女性にしか欲望を感じないのに女性っポイ男性もいれば、男性にしか欲望を感じないのに男性っぽい女性もいる。

 大きな議論を呼びそうな発見だが、なかなかこれに応える研究者は現れない。人間の身体というものは驚くほど複雑で、あまりにもあっさりと結論を引き出すことは危険なのである。だが性科学者を研究する人々は学派を問わず、この三つの要素(遺伝子、ホルモン、脳の構造)の組み合わせがセクシュアリティの基礎を築くのだと言うことを信じるようになってきている。

 そしてまた、実際の性や心の性、欲望の対象となるせいだけではなく、性衝動の強さや性の上でのバラエティを求めるかどうかなども関係しているのではないかと考えられている。ただ、それぞれがどの程度の影響を及ぼしているかについてはまだ分かっていない。

 ディーン・ハマーでさえ、自分のデータを拡大解釈するのは危険だと言っている。ゲイの遺伝子は、性的嗜好に全面的に影響しているわけはないだろうと言うのである。それに、ベイリーとビラードが行った一卵性双生児に関する実験を思い出して欲しい。同じ遺伝子を持ち、体内環境もほぼ同じだったと思われる双子でも、一人はゲイになり、一人はストレートになる場合もある。

 おそらく、私たちの身体の中に刻み込まれた本質を強めるもの、補強するもの、あるいは踏みにじるものが、胎内から出たときに出てくるのだろう。そして生まれたままだったセクシュアリティに働きかけ、複雑化し、完成させていくのだろう。
 そしてこれは、人が胎内から出たその瞬間から始まるのである。
 つづく  44、子宮から世界へ 乳児期の育て方で異なった性格になる
 

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