次世代に伝えておかなければいけないセクシュアリティがあるとするならそれは、異性に惹かれるということだろう。どのような環境にあっても、ヘテロセクシュアルであるほうが生殖に有利なのは決まっている。  トップ画像

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「ママ、遺伝子ありがとう」

本表紙
サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

「ママ、遺伝子ありがとう」

遺伝子を早く広くばら撒きたいのならば、遺伝子の中に生殖に有利な情報をプログラムしておいたほうがいい。そのためどうしても次世代に伝えておかなければいけないセクシュアリティがあるとするならそれは、異性に惹かれるということだろう。どのような環境にあっても、ヘテロセクシュアルであるほうが生殖に有利なのは決まっている。

 だが興味深いことに、ヘテロセクシュアルと同じように、ホモセクシュアルも自然の産物であるという強い証拠がみられなくはないのである。

 イリノイ州ノースウェスタン大学の心理学者マイケル・ベイリーと、ボストン大学の精神医学者リチャード・ピラードは、一卵性双生児を例にとって、遺伝子が性的嗜好を決める上で果たす役割について研究を進めた。一卵性双生児はほぼ同じ遺伝子を受け継いでいるのだから、じゅうぶんな数のサンプルを集めたアンケートしてみれば、遺伝子と性的嗜好のつながりがあるかどうかわかるだろうと思ったのである。

 最近の研究では56組の一卵性双生児と54組の二卵性双生児を集めた。ゲイの雑誌に広告を出し、双子のいるゲイとレスビアン、及び養子のきょうだいがいるゲイとレスビアンの人々に呼びかけていたのである。

 結果は驚くべきものだった。一卵性双生児の半数の人々に、やはり同性愛者の双子がいたのである。ただし二卵性双生児の場合は、一卵性双生児に比べて共有している遺伝子が少ないせいか、その率は20パーセントに留まった。そして養子のきょうだいになると、その率は急激に減り。十人に一人くらいになった。

 これを一般的な同性愛者の割合と比べてみると、(だいたい二から十パーセントと見積もっている)、同性愛者が遺伝子によって起きる割合は30〜70%だという結論に達した。

 たしかにこれは大発見だったが、新たに様々な疑問を生み出したのも確かだった。一卵性双生児の半数が双子の両方ともゲイだとしても、後の半数のケースでは同じ遺伝子を分かち合いながら二人は異なった性的嗜好を持っている。

ホモセクシュアルセクシュアルティの遺伝子というものが

また逆にヘテロセクシュアルティの遺伝子というものがあるなら、それはどうしてだろう? 何をしているのだろう?

 ディーン・ハマーという研究者が、この謎を解こうと乗り出した。野心的な遺伝学者で、明るい目をし、よく日に焼けた話の旨い人物である。ハマーの研究所は権威あるワシントンの国立衛生研究所の中にあり、ここでハマーは他の科学者たちが羨ましがられるような余裕のある研究生活を送っている。

 これは彼ががん細胞の研究で上げた実績よるところが大きいが、彼は今その頼まれなるエネルギーで、人間のセクシュアリティという難題に挑んでいる。

 ベリーとピラードの研究に触発されて、彼は二年間ホモセクシュアルセクシュアルティの遺伝子の研究に費やし、ついに1993年、それを発見した。一夜にして、彼はセンセーションを巻き起こした。彼の言葉は新聞の一面に載り、アメリカ中のトークショーに出てくれと言われた。そして全米中のゲイ活動家たちが、「ママ、遺伝子ありがとう」と背中に書いた。Tシャツを着て歩き始めた。

 ハマーは広告と告知を通して集めたゲイの男性114人の家系をたどり、それを分析し、同性愛者の出現率を調べた。まず発見したのは、母方の方が父方より二倍も同性愛者の出現が多かったとことだった。
 これは彼が予想していたことだった。同性愛をもたらす遺伝子は、X染色体にあるはずだと考えていたからである。
 
 女の子は父親と母親から一つずつX染色体を受け継ぐ、男の子はX染色体とY染色体を受け継ぐが、Yはつねに父親からもらうもので、Xは母親からもらうことになる。こうやってハマーは、最初の手がかりをえた。

 ハマーが次に着手したのは、四十組の同性愛者の兄弟姉妹を集めDNAを分析することだった。そしてそのうち75%の人々が、Xq28と呼ばれるX染色体の一部に、同じ組み合わせの標識(マーカー)を持っていたことが解ったのである。偶然で片付ける訳にはいかない数字だった。ゲイの遺伝子というものがあるなら、ここにあるに違いなかった。

 だがこの時点で、ハマーの研究に疑問が寄せられる。Xq28は最初マスコミが思い込んでいたような単純の遺伝子でなく、非常に広い範囲で活動しているたくさんの遺伝子が集まったってものだった。

色盲や血液の病気、糖尿病の標識があるのもここだった。

それにまた、遺伝子が同性愛者を作るのなら、なぜそもそもそういう遺伝子が世代を経て伝わってきたのだろう? ストレートの男よりゲイの男は繁殖のチャンスがないことは明らかである。ならば冷酷な自然淘汰が、とっくの昔の遺伝子を消し去ったとしてもおかしくはなかった。

 一つ目の疑問に対して、ハマーは反論した。単独の遺伝子だと言った覚えはないというのである。ただ遺伝子的な根拠があることを示し、その場所を示しただけだと言うのである。見出しを書いたのは新聞ではないかと彼は言った。

 二番目の疑問に対しては、もっと巧妙な答え方をした。著名な進化生物学者ローバー・トリバースの論理を借りて、いわゆるゲイの遺伝子はホモセクシュアルセクシュアルティの遺伝子暗号を指定するものではないと言った。そうでなく、男性に惹かれるという遺伝子暗号を指定するのではないか、と。

 そういう遺伝子が女性にあれば、性の相手を探してつがおうとする機動力となり、繁殖上は有利にちがいない。だが男性にそういう遺伝子があるとすればそれは、胎児が成長していく途中、普通なら自然に起きる抑制が何らかの理由でうまくいかなかったためである。

 だがこの遺伝子があるといってすべての男性がゲイになるわけではない。結局はうまく制御できる男性もいるし、もともと女性にとってはごくまっとうな遺伝子なのだ、と。

 だがこの段階ではまだ、ハマーの発見やそこから引き出された理論は、推測の域を出ていなかった。これに答えた研究者もいなければ、遺伝子がどれくらいの力を及ぼすのか計る手段もなかった。科学者たちはハマーの理論の正当性について議論し、政治家たちはその意味合いについて議論していた。

 その間にもハマーは、先に進んでいたのである。アンケートと家族の研究を更に進め、それぞれの人が望むセックスの回数が遺伝子と関わりがあるか、あるとすればそれはセロトニンを選ぶ遺伝子にあるかどうかを突き止めようとしていたのである。

 その上、さらに議論を巻き起こしてしまいそうな研究もしていた。人間が何人の人とセックスをしたいと思っているかは、遺伝子が決めているのではないか――そういう大胆な仮説を立て、検証しようとしていたのである。

 遺伝子に関しての議論は、問題を解いたというよりさらに白熱させた。そして憶えておかなければならないのは、性行動の源が遺伝子にあるとしても、性行動を実際に起こすのは身体ということである。それでは他にも、セクシュアリティの発達にかかわるものがあるのだろうか?
 つづく 42、遺伝子からホルモンへ
 受胎最初の四週目から五週目は、男でも女でもさほど変わらない成長をしていく。胎児には、小さな管が二本あって、これが精管もしくは卵管になる。また小さな細胞の塊があって。それが陰のうとペニスもしくはヴァギナとクリトリスになる。