
サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳
趣味は人それぞれ
月に一回、ゲイリー・ウルフと友人のピーターは大きなスーツケースを二つ車に積み込み、エッピング。フォレストに向かってM11を上る。そこに着くと二人はスーツケースを下し、道具を広げはじめる。包帯に大きな袋、外科用のチューブが二本、長い鎖と足押しポンプ。
ピーターがカバンを開け寝袋を取り出している間に、ゲイリーは服を脱ぐ。寝袋の表は固いプラスチックで、内側はやわらかく空気で膨らませるようになっている。ゲイリーは自分の身体を頭からつま先まで包帯で履うと、寝袋に入る。
ピーターが、ジッパーを上げてやる。そして足押しポンプを使って寝袋を膨らまし、寝袋の内側がきつくゲイリーをホールドしているのを確かめる。それからゲイリーの両方の鼻の穴にチューブをつけると、大丈夫かと尋ねる、イエスという答えらしい息が聞こえたら、ピーターは鎖を手に取り、片方の鎖を寝袋に、もう一方を近くの木の枝にかけ、引っ張り始める。ゲイリーが空中15フィートくらいの処で宙づりになると、ビーターは木に鎖を結びつけ立ち去る。
こうやってたった一人で宙に吊るされることでしか、ゲイリーは性的興奮を憶えられない。理想的な方法だとはもちろん思わないが、普通のセックスでは全然昂らない。女性にも魅力を感じない。
男性には少し感じるが、関係に踏み出すほど勇気がない。それに。売春夫に近づいてHIVに感染するのも怖い。
ゲイリーのケースは謎である。本書の最初に見てきた進化の掟にものっとっていなければ、文化の影響を受けたわけでもなさそうだ。西洋の伝統である抑圧と罪悪感が、彼の性的嗜好を作り上げたのでもないだろう。
ゲイリーを興奮させるには、すっぽり包まれているという感覚や肌に感じるプラスチックの圧力、誰かに見つかってしまうかも知れないというスリル、そして彼をこういう状態に置くというのがピーターだという事実なのである。
かなり特殊で、歪んでいるともいえる性的嗜好だが
いったいどこから出てきたものだろうか?
それに答えようとすると、人間の欲望を形づくっている三つ目の要因が立ち現れる。それは、肉体的であれ精神的であれ、それぞれの個人の特殊性である。
人間には性によって繁殖する生物で、人間を進化させてきた衝動も文化の影響を超えたところで、一人一人の性が違ってくるのである。それぞれが望み、そしてできれば実現してみたいという行為やシナリオに、個性が出てくるのである。セックスを語るとき、私たち“好み”という部分は、この第三の要因が創り出しているのである。
男と女どちらが好きか、ブロンドとブルネットどちらが好きか、頭脳派と肉体派のどちらが好きか、自分の親と似ている相手と似ていない相手のどちらが好きか、胸と尻のどちらを重視するか、支配するのとされるのとどちらが好きか、優しいセックスと荒々しいセックスとどちらが好きか――これはそれぞれが持っている特殊性によって決まるのである。
人間の性的関心には実にバラエティがあり、指紋のように一人一人違うと言ってもいいほどである。
そのために、いかなるプロセスをたどって性に個性が出てくるのかについては、性の研究者たちの間で最も熱い議論を呼んでいる。
つづく
40、性の個性は、生まれつき?
煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。