サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳
罪は死につながる
これまでの歴史のなかで、姦淫に与えられた罪はたんなる罰金刑から究極の刑――死刑――まで多岐にわたる。ハムラビ法典の与える罰は、厳しく単刀直入である。姦淫した妻と愛人は縛られ、川に投げ込まれ溺死させられる。また、夫に相手の男を処刑する権利を与えた社会もあった(妻の処刑はゆるさなかった)。今日でもアフガニスタン、バングラデシュ、イラン、パキスタン、ソマリア、スーダンの6つの国が姦通の罪を犯した者を処刑する。
聖書の時代と同じようら、残酷な石打の刑に処するのである。
姦淫の罪に対して死刑とは、じゆうぶん厳しい罰と思うだろう。だが姦淫の罪は、凝りに凝った忌まわしい処刑方法の誕生にインスピレーションを与えてきたようだ。
おそらくそれは、できるだけ相手に苦痛を与えたいという復讐の気持ちを、姦淫という罪がかき立てるからだろう。ベトナム人たちは不義を犯した妻を、特別な訓練した象に向かって投げた。象は女を空中高く放りあげ、落ちてくると踏みつけて殺すのである。
北アフリカのシャイエン族や、アフリカ南部のズールー族や、ナイジェリアにいたイボ族は、不貞の妻を集団で犯したり、ヴァギナにサボテンを挿入したり、愛人と地に縛り付けたりした。そこで無理やり交わらせ、そのまま棒で貫くのである。
高遇な理想を持っているはずのローマ人たちも姦通を犯した者には八つ裂きにしたり、去勢を施したりアナルに異物を入れるといった刑を与えたことが年代記に記されている。
姦通という言葉そのものがラテン語に由来している。異質なもの、劣ったものを混ぜるという意味である。そしてその性の領域で、異質なものといえばただ一つ、押し入って来た男の精液(すなわち遺伝子)なのである。
そして歴史的に見て、姦通という言葉は性に関する法の偏りを反映していた。姦通を犯すのは、結婚した女とその愛人であり、結婚している男が未婚の女性や未亡人とセックスをしてもその言葉は使われない。当然、罰は受けるのも結婚している女とその愛人だけなのである。
罪を犯した女は殺されることもあれば、もっとじわじわと刑を与えられることもある。コーランに影響されたある法律家は、姦通を犯した妻は夫の家の一室に一生閉じ込めその周りを石で囲っておけばいいと言った。
中世ヨーロッパでは、妻の情事を発見し、愛人を殺し、その頭蓋骨を杯代わりに妻に使わせた
という騎士の話が、いくつか残っている。子供のために妻を処刑するのは叶わなかったとしても、妻を殴り、食物を与えずに虐待し、やがて死に至らせる事はできたのである。
愛人の方はもっとあっさりと――時にはその場で――殺された。夫たちは愛人を殺しても罪には問われず、むしろ奨励されてさえいた。古代ギリシアの男たちは、妻が自分の家の屋根の下で浮気をしているのを発見した場合、法に代わってその場で相手を処刑することを許されていた。
1974年に至るまでテキサスでは、妻の浮気の相手を現行犯で見つけたら、殺しても殺人にはならず、裁判も開かれず、罪も与えられないことになっていた。
間男の処刑にある程度の制限が法で科されている場合でさえ、姦通の発覚による殺人は、命が脅威にさらされて犯した殺人の次に正当性があるものとされてきた。
イギリスの法律システムの中でも
姦通に気づいたあと妻や相手の男を殺した者の罪は、故意なき殺人と判定されることがほとんどだった。法律のコメンテーター、ブラックストーンによると、ふつうの理性を持った男なら「妻の浮気を発見した以上に激情に駆られる場面はない」と法が認めているのだという。
この傾向は、実際未だによく見られる。1997年、控訴院裁判官のプロッサーはブラックストーンの言うとおり、妻を殺した男に、“妻の死を贖(あがな)うため”の二百日の社会奉仕という判決を下し、国中の不興を買った。
溶接工のデイヴィッド・スインバーンが妻マーガレットの不倫について、不穏な結婚生活について、自分がついに感情を爆発させたことについて語るのを聞くうち、「貴君を放置する理由がない」と宣言する気になってしまったのである。
どうやら、妻が自分を捨てて愛人と暮らすと言い出したときに「気が狂いそうになった」というスインバーンの訴えが、裁判官のハートに触れたらしい。
だが、姦通に関する法の制定に対して、力をもつ要素がもう一つある。それは、金である。ハンムラビの法典をみても、のちの法制度を見ても、主に問題になるのは財産と地位の保護であり、女性を隔離するそのものが富裕層の特権だったことが解るだろう。姦通の罪に関しても、他の分野と同じように、金持ちと貧乏人では適用される法が違う。
高い地位にある男性が貧乏人の妻にセックスを強要しても、罪には問われない。だが低い地位にある男が高い地位の男の妻を奪えば、酷い目に遭う事を覚悟しなければならない。
脅かされる財産が多ければ多いほど、脅かす男は手ひどく罰を受けるのである。例えばガーナの民族アシャンティの場合、一般人の妻を誘惑しても罰金刑で済む。だが酋長の妻を寝取れば、人々の前で百もの刀傷をうけ、ゆっくりと苦しみながら死んでいかなければならないのである。
つづく
27、一夫多妻制から一夫一妻制へ
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