花嫁が処女であること確実にするいちばんの方法は、疑いが生じる年齢になる前に結婚させてしまうことである。別の言い方をすれば、まだ子どものうちにということである。トップ画像

花嫁は処女

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サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

花嫁は処女

 花嫁が処女であること確実にするいちばんの方法は、疑いが生じる年齢になる前に結婚させてしまうことである。別の言い方をすれば、まだ子どものうちにということである。

イスラム教の創設者モハメドは、愛妻アーイシャと彼女が6歳のとき結婚した。インドとパキスタンでは子どもの結婚が禁じられているにもかかわらず、今日でも子どもたちを4歳か5歳で結婚させる思春期に結婚させる。

1985年の8月ラジャスタンでは、二日の間に5万人の子どもたちが婚約する集団婚約式があった。

西洋でもこれが行われなかったわけじゃない。ヨーロッパとイギリスの歴史を通じて、子どものうちに結婚させるのは上流階級にとっては得意の手段だった。

土地を合併したい、血統を汚したくないとい願う貴族たちは、子どもたちが自分の意見を主張し始める前に片を付けようとしたのだ。チェスターの教会に残る記録によると、16世紀に、3歳のジョン・サマーフォールドと2歳の麗しき花嫁、ジェーン・ブレトンの結婚式が行われた。式の途中、花嫁はむずかって誓いの言葉を言おうとしなかった。
何度か言い聞かせようとしたが失敗したとき、司祭がささやいた。「もう少し喋ってくれたら遊びに行ってもいいよ」。5分後、ジョン・サマーフォールドはチェスター一幸せな夫になっていた。

 幼児結婚はおそらく、結婚したとき花嫁が他の男性の種を宿していないことを確実にするため取られた方法の中で、いちばん広く使われてきたものだろう。

 だが、結婚したとき処女であることを確実にするためのいちばんむごい方法はこれではない。

女性の性器を切除する習慣

 だが、結婚したとき処女であることを確実にするためのいちばんむごい方法はこれではない。はるかに残酷で罪深い方法、そう女性の性器を切除する習慣である。

 一般に性器切除と呼ばれているが、これから紹介する三通りの方法に関して言えば、実際は去勢に近い。

 クリトリスを大部分切り取るという、この中では控えめな方法でさえ、女性の心と体に酷い傷を残す。この手術を行う理由ははっきりしていた。女性を純潔に保つためである。

西洋人がなかなかクリトリスの役目に気づかなかった&クリトリスだけでなく内側と外側の陰唇を切り取る

西洋人がなかなかクリトリスの役目に気づかなかったのと違い、他の文化の中で生きてきた人々ははっきり知っていた。クリトリスは、抑制の利かない女性の性欲の温床である。

ならば切ってしまった方がいい。そうすれば少女たちが処女を守るだろうし、結婚した女たちが夫を裏切らないだろう。

 より残酷な方法を取る場合は、クリトリスだけでなく内側と外側の陰唇を切り取る。だが、これよりさらにむごい方法もある。性欲を押さえるだけでは飽き足らず、結婚前の性器への挿入を一切阻むための陰部封鎖。別名、ファラオ式切除、である。

 そのネーミングからしてもおそらく古代エジプトに端を発していると思われるこの手術では、外陰部をすべて切り取り、傷口を縫い合わせ、尿と経血の通り道として、米粒ほどの穴をあけておく。

 こうするとやがて傷口を、非常に堅い肉がふさぎ、相当ダメージを与えない限り何者の挿入することはできない。そしてこの手術を受けた女性がいざ結婚すると、今度は開かなくてはならないのである。

 夫は挿入するため、ナイフで切り裂く。そして出産のときも、更に切り裂くのである。苦難はまだ続く。子どもが生まれた後も、女性は、陰部を封鎖される。子づくりと子づくりの間、貞操を保つためである。

性器切除は、過去の蛮行ではない。

今もアフリカや中近東、セネガルからオーマンの女性たち1億2千万人が、これに耐えている。

 今では処女性は再生できるものとなったことに、喜んでいる人々もいるだろう。上流階級の人たちに向けて、ハーリー・ストリートの外科医院や中東の豪華な病院、あるいは東京の評判の高い病院では、処女膜再生という割のいいビジネスに乗り出した外科医たちがいる。

 処女膜の名残を縫い合わせたり、羊の腸で人工の処女膜を作ったりして、処女の花嫁を演じることを可能にするのである。

 東京の十仁病院の医師梅澤文彦氏は、この道の第一人者である。日本は処女性を重んじてきた国ではないが、彼の商売は?盛している。顧客はだいたい、4種類に分かれている、まずは児童虐待やレイプの被害者で、この人々にとって、手術そのものが癒しの効果を持つ。

二目は裕福な家に嫁ぎながら離婚し、再婚しようとする女性たちで、少なくとももう一度処女の気持ちになって嫁ぐのも悪くないと考えている。
二番目は性産業で働いていたが婚約した女性たちで、彼女たちにとって処女膜再生は夫との新たな旅立ちと、これまでの生活の決別を象徴している。

 だが梅澤医師の顧客で一番多いのは、中東からの(特に湾岸諸国が多い)裕福な女性たちである。結婚前にセックスしてしまったが、それが夫に知られたら評判どころか命まで危うくなる女性たちである。

 性器切除の習慣があったアフリカや地中海沿岸、そして中東では、同じように古くからある習慣がみられる。それは、花婿かもしくは親戚の女性が新婚夫婦の寝室から、処女膜が破れた証である血に染まったシーツを持ちだし、披露する習慣である。

キリスト教徒もイスラム教も“名誉の虐殺”を行うことがある

このシーツは、新婦の結婚前の行状にかかわらず、親戚の女性やナイフ、近くにいた動物などの力を借りてでっちあげることも多い。が、とにかく証拠がないと、新婦は公に恥をかくことになり、そのまま実家に帰され、家名を汚したといって殺されることさえある。

 現実的な社会では夫は、持参金を返さず妻だけ返す、あるいは妻を引き続き引き取る代わりに追加の持参金を要求することオプションを与えることもある。

 だが純潔がどうしても必要とされる文化の中では、危険はより大きくなる。古代ヘブライ世界では花嫁がシーツの儀式を達成できない時は、町の外まで連れて行って死ぬまで石打の刑にするべきだとされていたという。

 最悪のケースとして、花嫁の実家の人間が花嫁を罰するように、ときには殺すように命じられることもある。今日でさえ、中東ではキリスト教徒もイスラム教も“名誉の虐殺”を行うことがある。

 結婚前にセックスした女性は(あるいは疑われているだけでの女性でも)、処刑されても当然であるし、世論もそれを認めている。こうした殺人を警察は無視するし、メディアも余り報じない。

 ときにはこの“名誉虐殺”が家族に科されることもある。父や兄が、自らの手で花嫁を殺す立場に追い込まれるのである。

 一般的に見れば、こうした文字通りの処女膜崇拝はだんだん消えていき、純潔の象徴だけが残っていく。今日の西洋キリスト教社会では、花嫁は白いドレスと薄いヴェールで祭壇に向かう。

 婚約期間を9ヶ月取るのも、望まない妊娠をしているかどうか確かめるためである。こうした結婚の儀式は、いまやロマンスへの憧れとつながっている。けれども元をたどれば、血に塗られた恐怖の歴史がそこにあったのである。
  つづく 25、貞節な妻 
 

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