ハンムラビの法典の二番の土台、子どもを作り、保護することに関する法律である。出産は神聖なだけではなく、法理によって保護されている。もし中絶しようとする女がいたら、溺死させる。 トップ画像赤バラ煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

結婚の掟

本表紙
サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

結婚の掟

ルーブル美術館の古代近東セクションに行くと、おおきな黒いオベリスクが台座から誇らしげにそびえている。古代の見事な技法で彫刻を施され、赤いベルベットのロープで周りを囲まれている。

 ここに刻み込まれているのは、史上最古の法律、紀元前1750年頃の法律である。これを作ったのはバビロニア帝国の主導者、ハンムラビである。ハンムラビの支配する帝国はメソポタミア領域から地中海はシリアまで、そしてもう一方は黒海のほとりまで達していた。

 ハンムラビは、真の意味での帝王だった。征服によって領土を広げ、法律によって自らの意図を行き渡らせた。だがハンムラビは、人々が安定してこそ国が安定するのだということを知っていた。

 そのために法律を作るときも、自らの征服を思い知らせるようなものでなく、コミュニティ内部の安定を促すようなものにしていた。そのために、相互の関係のある三つの点に特に気を払った。

 まず第一の点は、人の所有物はそれぞれ神聖不可侵だということだった。人々が定住する前、アフリカの草原を駆けまわり集団で狩や採集をしていたところは、これはあまり重要な問題ではなかっただろう。

 そもそも所有するべきものなどあまりないのだから、所有権という概念もなかっただろうし、富に個人差があったわけではなかった。それに対し、ハンムラビが治めていたような安住社会では、勤勉や暴力、あるいは生まれついていた家系などによって、かなりの土地や富を所有する人々が現れた。所有者が何に介入も受けずに自分の富を享受できるような制度が、ぜひとも必要だった。

 それ以上に重要だったのは、こうした富を子孫に伝えていくことである。遺伝子から見ると、これは一種の革命だった。史上初めて、両親は自分が死んだ後も子どもへの投資を続けて行けることになったのである。

 その結果ハンムラビの法典は――あるいはそれ以前にも残っていない法典があったかもしれないが――所有権の問題に集中することになった。282の法律のうち140が所有権に関係したものなのである。

 だがこれまで見てきたとおり、富の所有が重要なのは、その結果より良い女性が更にたくさん手に入り、より良い子どもを更にたくさん産ませることが出来るからである。
 
 そこでハンムラビの法典の二番の土台、子どもを作り、保護することに関する法律である。出産は神聖なだけではなく、法理によって保護されている。もし中絶しようとする女がいたら、溺死させる。

石打の刑に処する。溺死させる

 男の精巣を砕いて不妊手術を行う女がいたら、石打の刑に処する。もし女が孕まなかったら、男は奴隷の女を連れて来て代理母にしてもよい。子どもの産めない女には、男のために相応しい奴隷女を見つけて買う義務さえある。

 だができるだけたくさんの子どもを作り、そこに資源を割り当てようとしても、その子どもが自分の子どもと確かめらなければ意味はない。それを確実にする唯一の方法は、妊娠していない、いや一度も男の手の触れたことのない妻を娶ることである。

 そこで、男が女をこの先ずっと保護し、生活の糧を与えると誓う代わり、女の子宮を一人の男に独占させることが契約にまとめられるようになった。この契約が、バビロンでは結婚の雛型になった。

 そしてその後世界中の結婚が、この形のっとって行われるようになったのである。

 契約はまず、夫になる男が花嫁に贈り物をし、それと引き換えに花嫁の家族から持参金を受け取る所から始まる。だがこの持参金は夫が使えるだけでなく、花嫁の生活の糧にしたり、花嫁にかけられた一種の保険の役割を果たしたりする。

夫が妻を離婚すれば、夫は持参金を全額返さなければならない。

 夫が妻を離婚すれば、夫は持参金を全額返さなければならない。また妻が結婚後も実家で暮らすのなら(これはよくあることだった)、夫は妻の生活費を払わなくてはならない。

 離婚してしまえば、夫からの申し出たものであっても妻から申し出たものであっても、二人の間に生まれた子どもの生活費を、夫は払わなければいけない。

 ここまでは、公正な契約だといえる。目的にかなっているし、人道的である。だがこの後、女性の純潔と貞操に科せられる要求は、バビロンでも、他の場所でも、人道的とは言えなかった。

 男は好きな所に行って好きなことをすればいい。他の男の領域を侵さない限り。だが女性は、まったく別の運命をたどった。花嫁が処女であること、妻が貞操であること。男がこの点に強くこだわったために、幾多の虐待や殺人が起きることになったのである。
 つづく 24、 花嫁は処女 
 結婚したとき処女であることを確実にするためのいちばんむごい方法はこれではない。はるかに残酷で罪深い方法、そう女性の性器を切除する習慣である。
 一般に性器切除と呼ばれているが、これから紹介する三通りの方法に関して言えば、実際は去勢に近い。
 クリトリスを大部分切り取るという、この中では控えめな方法でさえ、女性の心と体に酷い傷を残す。この手術を行う理由ははっきりしていた。女性を純潔に保つためである。
 西洋人がなかなかクリトリスの役目に気づかなかったのと違い、他の文化の中で生きてきた人々ははっきり知っていた。クリトリスは、抑制の利かない女性の性欲の温床である。