エディターたちが“満足の保証”と呼ぶ資質を備えている。その資質とは、たとえ出会いの時期はまだ気づいていないとしてもヒーローは必ずヒロインに恋して、彼女と彼女の子どもを守り抜く意志を明らかにし、生涯の愛を誓うというものである。 トップ画像ピンクバラ煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

満足の保証

本表紙
サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

満足の保証

このように、女性が伴侶を選ぶ鍵は二つある。外見のよさ(つまり遺伝子のよさである)と、地位と富を得る能力である。だが進化論の立場からいえば、女性が絶対に男性に求める資質がもうひとつある。それを知るために、オンタリオ州のドシ・ミルズに行ってみよう。

 ここにはハーレクィン・エンタープライズの本社がある。女性のファンタジーに広く訴える商品だけを考えて、ハーレクイン社はできるだけたくさんの女性に訴える商品づくりを心がけている。

 そのために、つねに読者の反響に注意している。そしてこの社の本が売れ続くけているという事実が、多くを語っているように思われる。

 ハーレクインは印刷業者のリチャード・ボニーキャッスルが、戦後カナダで需要の高まったペーパーバックの本を出版するためのウィニペグに設立した会社である。最初はウエスタンやスリラー、実用書や古典など、幅広いジャンルの本を出版していた。

 アガサ・クリスティやジーン・ブレイディ、ジェイムス・ハドリー・チェイスやサマセット・モームなどの作品を出していた。その一方で、イギリスのミルズ&ブーン社が出していたロマンス小説も多数出版していた。

 この「ハッピーエンディングのすてきな小さな本たち」よく売れることに最初に気づいたのが、創業者の妻、メアリー・ボーキャッスルである。そしてメアリーは、ハーレクイン社はこのジャンルの本に専念すべきだと提案した。

 あれから50年、社はますます波に乗っている。1970年代の初めにミルズ&ブーンを吸収し、最大のライバル、シルエット社も買収した。今や彼らのシェアは、大衆向けフィクションでは世界の売り上げの20%に上っている。

 毎年世界百以上の国で、5千万人の読者に2億冊以上の本を売っているのである。ハーレクイン社が売るロマンス小説には、“上品で優しい”ハーレクイン・ロマンスシリーズから“刺激的でセクシー、情熱的な”テンプテーション・シリーズまで、いくつかの種類がある。

 だが一見これだけバラエティがあるにもかかわらず、どの本にも一つの方針が貫かれているのである。ヒーローは必ずハンサムで冒険心に富み、ハーレクイン社のエディターたちが“満足の保証”と呼ぶ資質を備えている。

 その資質とは、たとえ出会いの時期はまだ気づいていないとしてもヒーローは必ずヒロインに恋して、彼女と彼女の子どもを守り抜く意志を明らかにし、生涯の愛を誓うというものである。

 伝統的なテイストのシリーズでは、ほとんど決まって二人は祭壇の前で誓いを交わす。もっと現代的なシリーズでは、ヒロインのお腹にはすでに子供がいることもある。

 最近テンプテーション・シリーズから出てベストセラーとなったリタ・クレイ・エストラーダの『ストーム・チェイザー』は、完全にこのレシピに沿っている。様々な点で、この物語は現代的要素をふんだんに盛り込んでいる。主人公二人は不幸な子供時代を送り、結婚に失敗したことがあり、長時間労働と将来への不安に悩んでいる。

 パソコンを使い、ジャンクフードを食べ、目に見える欠点もある(ヒーローは缶からビールを飲むし、ヒロインは妊娠線に悩んでいる)。だがこうした要素は、ハッピーエンドをいっそう引き立てるに過ぎないのである。

30代のヒーロー、ケーン・ミッチェルは、保健の調査員をしているため自然災害に遭った地に赴くことが多い。

 30代のヒーロー、ケーン・ミッチェルは、保健の調査員をしているため自然災害に遭った地に赴くことが多い。ある件の調査の時、彼はヒロインのベルナデッチ・コンランドと出会う。18歳の息子がいる彼女の家は、最近地震の被害を受けた。二人はすぐに惹かれ合うが、なかなかうまくいかない。もちろん社会的階級やキヤリアが違いすぎるせいでもあるが、いちばんの原因は結婚に失敗したあと深入りせずに何人かのガールフレンドと付き合う生活を続けてきたヒーローのほうが踏ん切りがつかないためである。

 だが二人は、会ってすぐにキスをし、メイクラブし、あっという間に仲を深めていると、やがて一緒に住み始める。だが、やはりお互い求めているのが違いすぎる。ベルナデッテは長続きする関係、深いコミットメントを求めているが、ケーンとしてはそういう関係をのぞんでいない。

 二人は泣く泣く別れることになる。ところが、である。事態は複雑になる。ベルナデッテは妊娠していたのである。ベルナデッテは一人で子供を産んで育てる決心をする。それも知らずにケーンは、別れの悲しみと後悔に苛まれて、ついに彼女とやり直すことを決心する。

 最後の何ページかで、盛り上がるシーンが三つも出てくる。一つ目は、ケーンがベルナデッテへの愛を高らかに告げる場所である。

 ケーンは立ち上がり、ベルナデッテに向き合った。毛布を床に落ちる。痛々しいほど愛に溢れていた。「自分が何をして欲しいのか、僕にはわかっているよ。それはここにある。僕のすぐ目の前に」

 これにプロポーズが続く、彼が一生彼女の面倒をみるつもりであることがはっきりわかるプロポーズである。

「きちんと結婚式を挙げたい? それとも駆け落ちでもするか?」
「きちんと結婚式をしたいわ。盛大な結婚式を」
「やれやれ」ケーンは言った。「そう来ると思ったよ」

 そしてついにケーンは、本当に妻と子を生涯守るつもりか試されるのである。

 大きく息を吸って、彼女は丸みを帯びたお腹をなでた。「もしこれからあなたが逃げようとするのなら、あなたは私とこの子、二人を失うことになるのよ。これが最後のチャンスよ。一緒に愛情をもって育てる気がないのなら、今やめにした方がいいわ。今ならあなたなしでもなんとかやっていけるだろうから」

 ヒーローは期待に添い、自然災害を追いかける生活を止め、腰を落ち着けて励むことにするのである。

 この種のハッピーエンドが――すなわち、男性が一生その女性の面倒を見ると誓うハッピーエンドが――女性の望む三番目の要素なのである。そして進化論に見ると、これはまったく正当なことで男に惹かれると、生まれてきた子どもにいい環境を与えてやれる。

だがずっとそばにいて自分たちを守り育むことに献身してくれる男性を得ることは、遺伝子を残す上で最強の手段なのである。

モデルのアダム・ペリーがセミヌードで赤ん坊を抱いた写真が売れたのは

1980年代に、モデルのアダム・ペリーがセミヌードで赤ん坊を抱いた写真が売れたのは、不思議なことではないだろう。アダム一人の写真より売れるが、彼が子育てに熱心な姿を見せるや否や、評判は急上昇した。

ところが(性が絡むと実にありがちなことだが)彼が世間に見せていた顔と実際の行いはずいぶん違っていたらしい。ペリーは仕事で得たのは金だけではなかった。最近明るみに出たことだが、彼はここ10年で3千人の女性を誘惑しベッドを共にしたということだ。

このエピソードはもちろん、多くを語っている。だが今はテネシー州のヴァンダーヒル大学にいるブルース・エリスが男性の魅力に関して大規模な調査を行ったところによると、男性が一人の女性に多くの時間を“投資”すればするほど、女性がオーガズムを経験する頻度が高くなるという。

ペギー・ラー・チェラも、先ほど紹介した男性の服装に関する実験を試みた。そして、男性一人で映っていたり、子どもが傍にいてもそちらを見ていない写真よりも、男性が子どもに愛情を注いでいる姿の写真の方が、女性の気持ちを惹きつけることを発見したのである。

確かに女性の欲望は、“満足を保証”してくれる男性に狙いを定めているようである。
それはつまり、途切れることのない愛情と保護を、女性と子どもに与えてくれる男性のことである。

20世紀になって初めて、家庭を大事にする男がもてはやされたわけではない。女たちが、太古の昔から抱いていた要求が、再発見されただけである。

だが残念ながら、現実の世界でハーレクィンのヒーローのような男たちは――豊かでハンサムで良き父親になりそうな男たちは――数が少ない。それには理由がある。どの男にも、できるだけ多くの女とセックスしたいという気持ちがある。そして、とくに豊かで力のある男にとって、その希望を満たすのは難しくない。

 その昔の専制君主から今日のスターやプレイボーイ、政治家やアダム・ペリーのようなセクシーな男に至るまで、パワフルで金持ちで飛び抜けてハンサムな男たちはそうでもない男たちより多くの女性とつがう。理由はただ一つ――それが可能だからである。

こうなると、ただ一人の完璧な男にやさしく愛しつづけてもらいたいという女性側の希望は叶えられないように思われる。何か、奥の手とも呼べるものでもない限り。ところが“進化”まつたくもって実利的である。そして、女性をもっと複雑な道へと導いていったのである。
 つづく  14、クラブでの実験 
 男性の性欲は主としてテストステロンのレベルが保たれていることによって引き起こされる。このホルモンがあるから男性は、出来るだけ多くの相手とできるだけたくさんセックスをしようとするのである。かたや女性の性欲には、非常に異なる三つのホルモンが複雑に混ざり合って影響を与えている。