性愛に、“賞味期限切れ”はない。寝たきりや認知症になっても、異性と添い寝したり、スキンシップをすることは知られているのだから、高齢者も性器の結合にとらわれない、多様な性愛の在り方を工夫した方がよいと思う。トップ画像

セックスは封印?

本表紙 上野千鶴子著

セックスは封印?

「いつまで、できるのか?」という男性のセックス現役志向は“悲願”といってよいほど強そうだが、妻が寝たきりになったら、“家事要因”がいなくなるではない。“ベッド要員”のほうはどうなるか。

 60代、70代の男おひとりさまのセックス現役率は、けっして低くはない。婦人科医の大川玲子さんたちのグループが調査した結果によると60%に交際相手がいる。

70代になると49%に落ちるが、それでも約半数。かえって50代で30%、40代で24%と、70代より交際相手のいる割合が低いのは、若い世代の男おひとりさまが「非モテ」系の非婚シングルであることを示唆する(日本性科学会セクシュアリティー研究会編集『カラダと気持ち――シングル版』三十五館、2007年)。

《「奥さまはそりゃお幸せでしょうけど」》

 アキラさんは、50代後半の既婚男性。妻が難病で寝たきりになり、夫が多忙な仕事の合間を縫って介護にあたる、うるわしい夫婦愛の物語の主人公だ。子どもたちは既に独立し、夫婦二人だけ。収入は悪くないから、通いの家政婦さんの手配などはすべて自分で仕切り、夜は彼が妻の面倒を見ている。

このカップルを実際に知っているさる方が、こうコメントしたのを耳にした。
「奥さまはそりゃお幸せでしょうけど、彼が痛ましくて。50代の男盛りに、自分の性を封印して過ごさなきゃならないなんて…・」

 おやおや。セックスは夫婦限定、とこの方は思っておられる様子。わたしだったら、こんな妻思いのステキな男性の愛人になって、「キミがいてくれるおかげで、ボクは彼女の介護に打ち込めるんだ」と言わせてあげるのに。おひとりさまはこういうとき、ホント自由だ。
 というわたしは、いったい男の味方で、女の敵、なんだろうか?

 60代、70代でも性欲はある。寝たきりの妻を“介護強姦”する夫だっているだろう。
 要介護度が重度の在宅の女性がレイプされたケースが報告されているし、老人ホームで同じ入居者の男性からレイプされた寝たきりの女性もいる。データから見るかぎり、レイプの対象ら、“賞味期限切れ”は存在しないようだ。

《夫婦の情は性愛とはべつ》

性愛に、“賞味期限切れ”はない。寝たきりや認知症になっても、異性と添い寝したり、スキンシップをすることは知られているのだから、高齢者も性器の結合にとらわれない、多様な性愛の在り方を工夫した方がよいと思う。

 それ以前に、一生もののセックス契約である結婚を、高齢になったら仕切り直しして契約解除してしまってもよいのではないか、とおひとりさまの私などは思うが。

 同志としての夫婦愛や、長年連れ添った情は、性愛とはべつ。
 そう思えば、もともと他人だった夫婦が、性別を問わず一方が倒れたら他方の面倒を見るという夫婦介護が当たり前になりつつある現在の趨勢(すうせい)そのものが、「家族介護」の神話を打ち破るものだとわたしには思える。

 血が繋がっているから、育ててくれたから、介護をするのではない。他人同士だったが、選び合ったから、最後まであなたの生に責任を持つ。あなたの死を見届けたい。
そう思って貰える相手がいることは、いないよりずっと幸せなことにはちがいない。

 だが、その関係から、「終身セックス契約」を引き算してもよいだろう。そんなことなら、ボク、とっくに実践していますよ、こういう男性は多そうだが。

それよりなにより、こういう関係は、「契約書」で成りたつわけではない。
妻の夫に対する介護は義務感からのこともあるが、夫の妻に対する介護は義務感だけではできない。

 なぜなら妻が要介護状態になっても、すべての夫が介護者を引き受けるわけではないからである。夫が妻の介護を引き受けるとき、そのなかには、「ほかに介護者がいない」という理由だけでなく、「愛情」要因が含まれていることを、笹谷さんの調査は示している。それだけでなく、夫が妻の介護を引き受けるということは、裏返しにいえば、妻が夫の介護に身をゆだねることに合意すること、である。

 夫に自分の身体を触られるのはぜったいイヤ、という妻もいる。夫による妻の介護が成り立つためには、妻が倒れる以前に、夫婦関係がよいという条件があることだけは確かだろう。
 つづく  息子の介護 

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。