在宅看取りを実践している関係者の証言を総合すれば終末期の痛みのコントロールは、今日の医療水準では、完全にできる。HEADLINE トップ画像赤バラ煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

介護保険を「おひとりさま仕様」

本表紙  上野千鶴子著

介護保険を「おひとりさま仕様」

在宅看取りを実践している関係者の証言を総合すれば、
 第1に、終末期の痛みのコントロールは、今日の医療水準では、完全にできる。
 第2に、家族がいなくても、多職種の連携があれば、おひとりさま世帯でも看取りはできる。
 第3に、場合によっては、家族がいないおひとりさまのほうが在宅看取りがスムーズにいくこともある。

 おひとりさまにとって、こんなに心強いことがあるだろうか。
 おひとりさまの在宅ターミナルケアが可能になるように、介護保険を「おひとりさま仕様」に、とわたしは言い続けてきたが、それはいつも負担と要介護5に認定されても、在宅サービスの1ヶ月の支給限度額は約36万円と決まっている。

 利用者本位と言いながら、介護する家族の人手があることが前提で、その家族介護の負担を軽減するのが、介護保険の制度設計り政策意図であり政策効果だった。

 となると、おひとりさまは施設介護を受けてあの世に旅立つほかにはないのだろうか。
にもかかわらず、特養などの施設は行政の誘導で設置がよくせいされている。

 予約待ちが700人などと聞くと、絶望的な気分になる。保育所の待機児童をゼロに、というかけ声は聞かれるのに、特養の待機高齢者をゼロに、とは聞かれない。
 
 とはいえ、施設介護がよいとはわたしには思えない。世界的に脱施設化の動きが来ているというのに、「もっと施設を」とは思えないからだ。だからといって、施設の増設を抑制すると、おひとりさまの最後は群馬県渋川市の無届け施設のように、ウバ捨てされて焼け死ぬしかないのだろうか、暗澹(あんたん)たる気分になる。

《最期に貯蓄をどう使うか》

だが既に述べたように、傷害の最後に他人様のお世話になる期間は、死因が、
@ 心疾患と脳血管疾患、Aがん、B老衰や感染症の順に短い。寝たきりの平均期間は8、
5ヶ月。がんなら半年、寝たきりなら1〜2年程度を予期して、終末期に投資すればよい。

寝たきり期間のあいだでも、ほんとうに24時間介護が必要な期間はそう長くないものだ。日本の高齢者の貯蓄率は貯蓄額はけっして低くはない。

爪に火をともすように慎ましい暮らしをしていたお年寄りが亡くなってみると、1000万円以上の貯蓄をしていたなんて話はざらにある。

先の岐阜市在住の医師、小笠原さんによると、そろそろと思ったころには、泊まり込みの家政婦さんを入れるように勧めるのだとか。岐阜周辺の相場では、日額1万5000円、月額で45万円。月にこれだけ払う覚悟があれば、在宅で生活のクオリティを維持できる。
アメニティ(快適性)を高めれば100万円あればよい。

ところが、これについても“抵抗勢力”は家族。高齢者の資産を減らしたがらない。
貯蓄額が300万円あるおばあちゃんのおひとりさま世帯に、家政婦をいれたらとすすめると、義理の息子はそれでは足りないのではないか、と心配する。

300万円あれば半年はもつよ、足りなければ小笠原内科がそれからは持つ、と説得したという。このドクターは、患者さんの資金額まで知っているほど信頼を獲得されている。

「いよいよ」となってから、ボランティアが交替で泊まりこみにきたケースもある。
せっかくサポート体制を整えたのに、遠方の家族が来て、さっさと病院へ連れて去ってしまったと、ボランティアさんは悔しがる。

 そうやって遠くにいる家族を頼らずに在宅で亡くなったさる高齢者の方は、土地付きの自宅を「ほかの方の役に立ててくださいと」とドクターに遺贈した。ドクターはありがたいが贈与税がかかってたいへん、と苦笑い。

《ケアサービスにカネを惜しむな》

1ヶ月45万円は、高級な設備を売り物にするトップクラスの有料老人ホームの月額利用料と同程度。こういう有料老人ホームでは、最初の入居料金も数千万円とバカ高い。

 在宅ならもともと自分の住宅があるのだから、初期投資はいらない。どんなあばら屋でもわが家がいちばん。あとはバリアフリー改装と介護用品のレンタル費用。

 インフラ投資は最小限にして、サービス費用に思いっきりかけたらよい。
 これまで家族介護はタダだと思い込んできた日本人は、サービスにおカネをかけることを惜しみ過ぎる。自分のおカネだ、だれに遠慮することもない。そのために貯金してきのだから。

 ただし、住み込み家政婦さんの月額報酬は45万円は、地方都市相場。大都市圏では人件費が高く、なり手も払底しているかもしれない。だが、身の回りのお世話なら、プロの家政婦さんにかぎらず、短期間におカネを貯めたい若者や学生などが応募してくるかも。

 現にスウェーデンでは、高齢者の住宅の一室を提供して、代わりにケアサービスを提供してもらう仕組みも成り立っているのだから。
 いずれはこういう場に、外国人ワーカーが参入することもあるのだろうか。
 在宅ターミナルケアは、
第1に、本人の満足度が高い。
第2に、施設介護に比べてインフラ投資がいらないぶんだけコストが安い。
第3に、終末期医療のコスト抑制につながる。
第4に、終末期に高齢者が貯め込んだ貯蓄を放出してもらうと、地域の雇用活性化や需要創出につながる。
 よいことだらけなのである。
 つづく 和解のススメ