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男おひとりさまの生きる道

本表紙  上野千鶴子著

男おひとりさまの生きる道

男おひとりさまの生きる道はあるか?  
 ある、というのが本書の答えである。
 なぜって、充実した「男おひとりさま道」をきているひとたちを、わたし自身が何人も知っているからです。

田原晋(ススム「73歳」)さんは、おひとりさま歴15年。58歳のとき、50歳の妻を失った。突然の死で、心の準備もなかった。そのススムさんからこんな便りをいただいた。

「突然のおひとりさまになられた男の方へ先輩からの、こちらの生活から生まれた老婆心10カ条を。いえ、上野千鶴子著『おひとりさまの老後』を読んで、そこに描かれた男性の方を応援したくなりました、愛をこめて」

ご本人のお許しを得て、本書で公開する。短いコメントは、ご本人のものである。

《ススムさん73歳の「男おひとりさま10カ条」》
@ トイレはいつも腰かける。
掃除もご担当になるおひとりさまのために、周囲を汚さないためには必須の方法ですが、この姿勢は思いがけない発想をしてくれます。たとえば、男のコケンとは立っておしっこをするようなものだ、などなど。

A 料理教室できちんと学ぼう。
日常の健康に生きていくための料理をきちんと学びましょう、「男の料理教室」なんて百害あって一利なし?です。

B お弁当を作って出かけよう。
自然の中での食事はいいものです。どんな中身でもコンビニ弁当とは、まるでちがいます。少し慣れたら、お花見に女友だちを誘いましよう。お重などに入れて持参すれば感激してもらえます。なに、デザートに果物や市販の桜餅など入れておけば、こちらの作ったものの味はどうでもいいのです。

C ゆったり楽な格好はしない。
なぜか働かないのなら「だらだらした格好だ」と信仰している方いるのですが、それは逆効果。パンツはっきりりとびっちりに、下着はトランクス型で、できればカラフルがおすすめ(みせたくなるほどのきれいなものなら、その努力をおしまなくなりますから?)

D 買いものにはカゴを持って
スーパーへの買い物は大きなかごを持参します。それをレジに出して直接その中に入れてもらいます。自分で入れ替える手間が省けます。

E 見知らぬ人とお話をしましょう。
散歩や食堂のテーブルで相席になった人となるべく話しましよう。「おひとりさま」同士なら結構話がはずみます。それ以上に発展することは無いけれど、それがまた無責任で嬉しいものです。

F でも仕切ったらだめですよ。
そのうちどこかのグループに声がかかって出席するようになった時、男が一人だとなぜか仕切らねばと反射的に行動する人がいらっしゃる。これはやらないほうがいいですよ。

G 男性化粧品はもういいや。
考えてみたら、男性用の肌というものが女性とどう違うのか解らない。女の方が使っておられる化粧水の無香料というのを、いいかげんに顔から首筋までつけています。

H 姿見を買う
これは意外に盲点です。自分の全身を眺める。どんなにじじいになっているか、姿勢が悪いか、もう少し気持ちをいい格好をしろとか、自分で自分に注意しないと誰も言ってくれないのですから。

I 花を生ける。
最初は仏壇のお花をきらさないのが目的でしたが、自分のためにも求めるようになりました。なにより、花があると家の中が華やかになります。これは想定外でした。

 なるほどねえ、という男おひとりさまの暮らしの知恵。とくに、@は想定外だった。
 カラダの仕組みが違うから立ってするのは当然。とは思っていたが、それに立小便こそ男の特権、ほかに羨ましいことはないがこれだけは羨ましい、と思っていたが、たしかに落差があれば、はねることもある。

 ほかに掃除をしてくれる人手がなければ、まず汚さないのがいちばん。当事者でなければわからない実感が満載されている。

 ちなみに、Cの「パンツ」は、下着のパンツではなく、ズボンのこと。ススムさんたちの世代は、この程度にはオシャレ。「カラフルなトランクス」好みのところなど、妻が存命中から下下着は自分で選んでいたのだろうと想像させる。

《女ばかりの劇団でひっぱりだこ》

ススムさんは愛妻家だった。妻の早すぎる死に痛手を被ったが、落ち込んでいたススムさんを引き上げてくれたのは、以前からのつきあいのあった女性たちだった。

 つきあいのあった女性といっても、愛人や恋人でもない。「純粋異性交友クラブ」という集まりを主催したこともある、地位は活動を続けてきた女性グループとの「グループ交際」である。

 おひとりさまの先輩格の女性たちが、ススムさんを「シニアシングル研究会」にさそってくれた。その発表をパフォーマンスでやろうという趣向になって、そこから「シルバームーン」というシニアオンリーの劇団が生まれた。入団資格が50歳以上、「つきのものがあがっていればいい」というシニア劇団である。

 「シルバームーン」という名は、人気アニメの「美少女戦士セーラームーン」から来ている。制服姿の女の子たちが、突然パワフルに変身して、「月に代わって、お仕置きよ!」という決めセリフを言うところを、「シルバームーン」では、「月があがって、お仕置きよ!」と言い換えて笑いをとる。
関西ではちょっとした人気で、各種のイベントの前座に声がかかるようになった。

 地域活動の担い手は、ほとんど女性。男性は希少価値である。とりわけ武体の上で「男性」を演じる男優が不足すると、女性が「男装」して男の役をやらねばならない。

 宝塚の男役ならともかく、オヤジ役を小柄で声の高い女性が演じると、サマにならない。「男優」はひっぱりだこなのだ。

《芸名は「カルメンおしん」》

この歳になってもメタボ体型にならず、すらりと細身で背の高いススムさんは、一座の人気者になった。そのうち楽屋でメイクや着替えをする「女優」たちに、劇団唯一の「男優」、ススムさんはいじられるようになった。

 仲間の女優さんのメイク用品を使って女優メイクをしてみると、思いかけず映えた。
 それならあれもこれも、と女性用コスチュームを試しているうちにどんどんはまった。ついに座付作者が、女装したススムさん用の出番をつくってくれた。

 芸名は「カルメンおしん」。女装した男性とわかっている観客からは、やんやの拍手がでる。いまでは、「シルバームーン」に欠かせない人気役者のひとりだ。

 退職前のススムさんは、関西の某大企業の部長職。定年前の彼には、女性たちは声を掛けなかっただろうし、妻に先立たれていなかったら、やはりお声はかかることもなかっただろう。

 退職前から、ススムさんの柔軟で人を分け隔てしない性格を彼女たちが知っていたからこそ、誘ってくれたのだと思う。

 男女問わず、おひとりさまには周囲が声を掛けやすい。これもおひとりさまになった利点のひとつだ。
 もちろん不慮の死で妻を失ったススムさんが、妻に先立たれたことを悲しんでいないわけではない。だが、妻が生きていたら経験することのなかった新しい体験を、仲間たちと味わっていることは確かだ。

《海外ひとり度がやみつきに》

おひとりさまになってから、ススムさんが見つけた、おひとりさまなではのもうひとつの楽しみがある。海外ひとり旅である。

 在職中から仕事がらみの研修旅行を自分で仕切って、グループを引率して海外に出るのは慣れていた。だが仕事を離れてからは、かつての仲間たちとではなく、ひとりであまり日本人のいかない中央アジアや、東欧などを旅している。切符や宿の手配は全部ひとりでして、行った先の不自由やハプニングも楽しむ姿勢は柔軟だ。
 
 その記録をブログで発信している。

 わたしも経験あるからよく解るが、海外一人旅の情報量は、二人旅やグループ旅行にくらべて、格段に増える。見知らぬ土地で自分の感覚が全開になっているだけでなく、ひとりだとまわりが勝手に寄って来てくれるからだ。

 カップル二人旅だと周囲はかえって邪魔しないように踏み込んでこないし、グループ旅行だと遠巻きにされる。パッケージツアーともなれば、旅行中に知り合ったのはツアー仲間だけ、ということになる。

 これが一人旅だと、土地の子どもたちは寄って来るし、レストランで食事をしているだけで誰かが声を掛けてくれる。ヒマな土地のひとが、ついてこい、案内してやる、言ってくれるし、場合によっては自宅へメシを食いに来いと誘ってくれさえする。

 わたしなどは、ホテルをキャンセルしてうちに泊まりに来い、とまで言ってもらった。ススムさんは、日本人観光客の姿のなどめったに見ない東欧の田舎町で、工芸を勉強しに来てそこにすみ着いている日本人女性と知り合って歓待を受けた。

 もう何年も海外一人旅がやみつきになっているススムさんは、リピーターになって、今度は何年ぶりかで、かつて訪れた町の人たちを再訪するようになった。よく来たと、旧来の知己のように迎えてくれる外国のひとたちの温かさが忘れられない。

 これも肩書も職業もなしで、カミシモをぬいで、「ただの初老の男おひとりさま」になって出会からこそ、だと思っている。

《無力な自分を体験できるチャンス》

外国に出れば、とりわけことばの通じない土地へ行けば、ひとはだれでも弱者になる。
 自分の意思が伝わらず、わずかな要求を通すのにさえ大汗をかく。だれかに助けてもらわなければ生きていけない。

 自分は無力な赤ん坊になったような気分を味わうとき、お返しが帰って来ることを期待しないで誰かの善意を受けることほど、うれしいことはない。このひとが日本に来ることがあれば、同じょうにしてあげたいと思っても、地球の反対側にある極東の島国を、彼らが訪問する可能性はほぼないに等しい。

 だから海外で出会う他人の善意は、まじりけなしの純粋な贈与だ。そして、そういうひとたちは、困っている人に手を差し伸べるので、困っていないように見えないひとには声をかけないだろう。

 わたしはガラが小さくて、そのうえ女だから、ホントにトクをした。ススムさんも、物腰のやわらかな、他人に脅威を感じさせない態度と笑顔の持ち主だ。

 海外一人旅は、「無力な自分」「助けてもらう自分」を経験するのに、よい訓練の場かも知れない。
つづく 男おひとりさま道10カ条