国分康孝・国分久子=共著=
◆ふたまたかけた愛
Q:女性はつき合っている人がひとりいたら、他の人には目を向けないことが多い。ところが男性は他の女の人とつき合うことができます。どうして両天秤をかけられるのですか。
A:今の私たちの文化では、女性が複数の男性と接触がある場合。社会の批判がつよいのです。あるいはひとりの男性とのつきあいが解消したからと言って、次の男性とコンタクトをすぐ持つことについても社会は批判的です。
それゆえ、女性は一度男性とリレーションができるとそれを大事に育てようとします。こわした場合、男性のようにすぐ次の候補者を探すのを社会が許容しないだろうと思うからです。
本当は女性も男性同様、複数の異性とつき合いつきあいながら選択したほうがベターとは思っているのですが、そういう願望にすら気づかない人が多いのだと思います。
人間を天秤にかけてはならない、と考える必要はありません。人事部長は人を採用するとき複数の人間に会います。入社試験の受験生は数社を歩き回って比較見当します。最初に出会った人をすぐ終生の友と決めたければそうしてもよいでしょうが、複数の人とつきあいながら吟味して決断する方法を拒否する理由は特にないと思います。
◆ 三角関係
Q:友達と全く同じ人を好きになりました。彼は私の女友達ちに対しては姉に甘える弟のようで、私に対するときとは妹をあやす兄のようです。彼は私たちふたりが彼を好いていることを知っているのですが、彼のこのような行動をどう理解したらいいのでしょうか。
A:「あれも、これも」という幼児の欲張り根性です。大人というのは「あれか、これか」の選択ができる人のことです。この男性は虫のよい幼児的人物です。
◆ プラトニック・ラフの是非
Q:結婚前はプラトニック・ラブのほうがよいでしょうか。
A:そんなことはないと思います。契約結婚とか友愛結婚という提唱もあるくらいです。きちんとフルコースで生活をともにして、それでも気持ちに迷いがないことを確かめてから結婚したほうが、後で後悔しないと思います。
◆ 愛情が冷めるとき
Q:男の人が女の人に対して愛情が冷めていくのはどんなときでしょうか。
A:第一に、女性が実家の父親や兄貴に相談してものを決めたとき。夫と相談して決めないということは夫の存在を認めないことです。自分の存在を否定されても女性を愛しつづける男がいたら、よほど鈍感な人物と思います。
第二に、女性が男性の親・きょうだいの悪口をいいつづけるとき。
◆ フリーセックスの権利
Q:男の人は結婚前に多くの女性と関係をもちたいと願っているようですが、結婚するには何よりも処女ときめつけている人が多いのは矛盾だと思います。女性も結婚前に多くの男性を知る権利があると思います。
A:おおいにあります。男性のみを考えるのは不公平です。
◆ 男性の愛のていど
Q:結婚前に妊娠体験があることがわかって、男性は逃げ腰になるのは、女性を愛していなかったということでしょうか。
A:そうです。愛していなかったのです。愛していると相手のすべてを自分の分身と考え受け入れる覚悟(心意気)をきめることです。その男性がそのていどの人物であることが結婚前にわかっただけでもよかったといえるでしょう。
◆ 女性からのプロポーズ
Q:恋人同士が結婚をお互いに胸中にいだいているとき、女性のほうから先にプロポーズした場合の男性心理?
A:ホッとします。決断がつきます。自分から言い出すにはよほどの決心がいるからです。一家の主としてやっていくだけの収入があるか、はたしてこの女性がついてくるだけの能力が自分にあるか、と自問自答するとなかなか決断しにくいものです。
それゆえ、女性にその覚悟があるなら自分も何とかやっていけるんじゃないかという安心感が出てくるからです。
◆ 妻は女友だちになるか
Q:男性にとって妻は女性になりうるのですか。
A:おおいになりえます。ただし生活の仕方に留意すればです。妻は女性ではないと思っている人は、妻という役割しか期待しないからです。友人としての役割を演じる場面を意識的につくらないからです。
つまり家事以外の分野で共同作業することです。旅行、酒、観劇、スポーツなど、つまり恋愛時代にしていたようなことを結婚後も生活の中に挿入することです。男女の付き合いには遊びの要素が必要です。遊びの要素とは「責任と権限」が問われない生活空間という意味です。
◆ 浮気心と罪障感
Q:男性の欲望は満たされえすれば愛する人でなくても平気なのでしょうが、愛している人に罪障感はないのでしょうか。
A:ふたりでひとつの人生を築こうとしているときは、男性も他の女性にわき目をふらないと思います。生きるのに懸命なときは(自己保存が脅かされているときは)性感情をもつ余裕がないからです。種族保存の本能は自己保存が保証されてはじめて出てくると思います。
さて自己保存が約束されると余裕が出てきます。他の女性と関係をもつことに罪障感のある人とない人がいるようです。罪障感のない男性というのは、配偶者に母親を求めている人のように思います。
妻に母親を求めている人は母親がすべてを許してくれたように妻も許してくれるのは当たり前と思うようでする
男が罪障感をもたない第二の理由は、女性よりも性欲と愛情を分離できるからです。生理的欲求と心理的欲求が両立できる人が多いのです。
したがって配偶者を捨ててまで他の女性と結婚する決心がつかないのです。
もし離婚してでも他の女性と結婚したい男性がいたら、たぶんその人と配偶者とのあいだは愛憎を感じないほどに離れていたからだと推論されます。
配偶者に罪障感をもたない第三の理由は、配偶者への反逆として浮気をしている場合です。
親に反逆する非行青年がセックスに走るのと似ています。こういうかたちで反逆でもしないと自分の精神衛生が保てないからです。
以上の条件は女性にも当てはまると思います。女性でも配偶者に罪障感をもたずに他の男性と性交渉を持つ人がいます。
平気で浮気をする人が今の浮気をする人が今の文化では男性に多いというだけで、女性は異質というわけではないと思います。女性もその可能性をひめています。
◆ 浮気対策如何
Q:結婚後の夫の浮気、性体験の男性の心変わり。これを防ぐために女性はどうすればよいのですか。
A:社内研修などで単身赴任経験者の話をよく聞きますが、意外に女性関係に巻き込まれる人は少なくないものです。しようと思えばできる状況におかれるとかえって意欲が減退するもののようです。
「食べ放題・飲み放題」のバイキングでも、それほど飲食しないのと似ています。
そこで予防策は「勝手にしなさい、あなたは子どもじゃないから、善悪の判断ぐらいできるでしょう」という態度をとることではないでしょうかと思います。
◆ 仕事と家庭の両立
Q:男性は家庭と仕事の両立で悩むことはないでしょうか。
A:あります。たとえば病妻をかかえているので、人ほどに出張できない、都会で就職したいが長男ゆえ不本意ながら生まれ故郷に就職先を探さねばならない、夜の会議に出るべきだが託児所の時間が決まっているので…といった具合です。
この二本立てをやってのける男が一人前の男だと思います。
◆ 共働きを嫌う夫
Q:経済的に多少苦しくても、妻に家庭にいてほしいという男性の心理はどう説明するのでしょうか。
A:妻に母親を求めているのだと思います。家庭を憩いの港にしたい心理です。ホテル家族反対論者です。
妻が外に仕事を持ってもなお、ホテル家族にならない方法がありそうなものですが、それを探す柔軟性が欠しい男性といえそうです。たぶん幼少期に母に十分甘えられない事情があったと推論されます。
◆ 青年にとっての母親
Q:青年期の男子にとって、母親はどんな存在なのですか。
A:「ご飯と風呂さえ用意してくれればよい、余計な口出しは無用」といった位置づけが普通だと思います。母が息子を恋うる気持ちなど知る由もありません。
母へのいとおしさが復活するのは、第一子の誕生以降と思います。子どもをもって初めて知る親の恩です。
幼児のように母にべたつきはしませんが、それに類似の心理が息子のなかにあります。50歳の息子でもそうです。いい年齢をした息子が母親を恋うる気持ちを老母は知る由もありませ。
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