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幸せにしてやれない…でももう少し思っていたい

本表紙 梅田みか 著

幸せにしてやれない…でももう少し思っていたい

私(二十五歳)は回りのみんなから「バカ」と呼ばれています。彼(三十三歳)とつき合いだしてからもう四年にもなりますから仕方がない話ですが、今はこんな自分を結構気に入っています。

 つき合いだしたころは悪いことをしているようで、でも会いたくて、でも会えなくて、寂しくて辛くて悩んでばかりいたような気がします。でも人間って強くなるものですね。その寂しさとどう付き合っていこうと思えるようになったんです。

 いちばんに会いたい、話したいと思うけれど、そこをぐっと我慢して、この話はこの人、この話はこの人と、周りの友達に聞いてもらっています。友達みんなが彼代わりと言う感じです。

 以前はこんなに会いたかったの、こんなに我慢しているのに…こんなに気持ちを彼にぶつけてばかりいました。でも今は「あなたのおかげでたくさん友達と遊べるわ」と言えるようになりました。

「あなたが思っているほど私はもてない女じゃありません」みたいなことも言っちゃっています。だって悔しいじゃないですか。こいつは俺だけなんて思われてしまうの。

 彼に奥さんがいるのに私には彼一人なんて…。実際は彼一人なんですけど、ちょっと見栄をはっちゃいます。

 彼は奥さんのことについて一切私には話しません。私も絶対に聞きません。でも一度だけ「うちのカミさん、すごいんだわ」って言ったことがあるんです。私もきっとよくできた女房何だろうと思います。

 彼と居酒屋でバイトしているときに知り合いました。半年後、私から一度別れたんですが、その半年後に偶然再会、復活して、その三か月後、彼は十一年間つき合って同棲していた今の奥さんと結婚しました。そこで別れようと思ったのですが、結局別れられず、今に至ります。

 彼はいつも「俺はお前を幸せにしてやることはできない」って言うんです。私もそのときは強がって「あなたに幸せにしてもらおと思っていない」って言うんですが、奥さんに対しては「幸せにしたい、してやりたい」と思ってきっと結婚したわけですから、勝ち目はないですよ。だから無駄な抵抗はしないんです。

 とりあえずこんなふうに思えるようになったんですから、びっくりです。

 私の考え方が良いのか悪いのかわかりませんが、私は私なりにちゃんと愛人としているつもりですし、これからもしていくつもりです。卑屈にならず、私は私のできる限りで彼のことを思っていきたいと思っています。
 本当はもうそろそろやめないといけないんですれどね。私ももう二十五歳ですし、でも、もう少し彼のことを思っています。
 (二十五歳・愛知県)

そろそろタイムリミットが近づいていることを意識して

 二十五歳のあなたがもう、不倫歴四年。若くからこの恋に足を踏み入れていたあなたが「寂しさとうまくつき合っていこうと思えるようになって」この恋を今まで続けてくることができたのは、お手紙の文面からも伝わってくるあなたの気の強さや、持ち前の明るさがあったからこそなのでしょう。
そして、あなたを「バカ女」と呼びながらも支えてくれたお友達の力がとても大きいと思います。

 特に十代や二十代前半の若い女性がこの恋に落ちたとき、まわりにこの恋についてちゃんと話せる友人がいるか、いないかは、大きな違いです。

 たとえひとりでもすべてを打ち明けられる友人がいれば、この恋のつらさはいくらかでも軽減され、それがどんなに拙い助言であっても、彼女にとってそれは大きな助けになるものです。

 それがあなたの場合、ひとりどころか「友達みんなが彼代わり」といのですから、これほど大きな支えはありません。ひとりぼっちでこの恋に向き合わなくてはならない女性たちから見たら、何ともうらやまして話です。

 最初のころは「寂しくてつらくて悩んでばかりいた」あなたは、そのつらさや寂しさを乗り切る方法を自分なりにあれこれ模索し、実践してきました。なかなか会えない
彼に「あなたのおかげでたくさんの友達と遊べるわ」とちょっとイヤミを言ってみたり、「こいつは俺だけて思われるのはくやしい」と彼に見栄を張ったりする少々子供じみた行為も、あなたがこの恋のつらさを乗り切っていくために必要なことだったのです。

 あなたの思考はいつも前向きで、不倫の恋特有の暗さもない。どんな状況でも恋愛を楽しんでいける姿勢は、あなたならではの才能といってもいいでしょう。

 そんなあなただからこそ、彼の「幸せにできない」と言う言葉にも、涙ひとつみせることなく「あなたに幸せにしてもらおとなんて思っていない」と切り返すことができたのです。あなたはただの強がりだというけれど、あなたの態度はこの恋にとても敵したものだと思います。

 この恋で大切なのは「彼に幸せになってもらうこと」ではなく「あなた自身が幸せを感じられるかどうか」なのですから。

 あなたがこれまで「卑屈にならずにちゃんと愛人」を貫いてきたことは、あなたにとっても大切な経験になっていることでしょう。ただ、あなたが考えなくてはいけないのはこれから先のことです。

 「本当はそろそろやめないといけない」と言いながら、あなたの中にはまだ彼との別れが切実なものにはなっていないような気がします。
 「今はこんな自分が結構気に入っている」という気持ちの方が、大半を占めているのではないでしょうか。

 あなたがこの恋をしてきた二十一歳から二十五歳の四年間と、これから二十代後半にかけての四年間では、不倫の恋をする意味がまったく異なってきます。

 あなたが常にこの恋を前向きに明るくとらえることができたひとつ要因として、あなたの年齢が若かったことがあげられます。二十代前半では、まだ結婚や出産など考えなくてはならない時期までかなり猶予がありますが、二十代後半になればタイムリミットはもうすぐそこ。

 もちろん、若ければ不倫の恋の辛さが軽いものだと言っているのではありませんが、このまま彼とつき合っていたら一生家庭を持つことも子供を持つこともできないかもしれない、というところまで追いつめられるということはないでしょうか。

 不倫の恋をする女性にとって、若さはそれだけ重大な意味を持っているのです。誰にとってもそうであるように、あなたの若さも永遠ではありません。この先、彼との恋のつらさは、あなたの中で微妙に変化し、徐々に重いものになっていくはずです。「もうすこし彼のことを思って」いるのはかまいませんが、少しずつ彼との恋の決別を現実のものとして考えていく必要があるのではないでしょうか。

 二十五歳のあなたは、ちょうど女性として大きな転換期を迎えています。これから三十歳までの五年間をどう過ごすかで、あなたの人生がほぼ決まっていくといっても過言ではありません。
その大切な岐路に立って、もう一度彼との恋を見つめ直してみてくださいね。
つづく 妻の妊娠中に私との恋をはじめた彼はひどい人?