
梅田みか 著
別れたくてもどうしても別れられません
私は二十歳でフリーターをしています。高校三年生のときに伝言ダイヤルで知り合った三十四歳の人と不倫しています。
不倫の彼とは食事をしたり、買い物を楽しんだり、遊園地へ行ったり、まるで恋人同士のように会っていました。
初めから結婚していることは知っていました。でも子供がいることは彼のボロでわかりました。たくさん会話している中から、私はうすうす気づいていったのです。奥さんは二歳年下の三十二歳で、子供は一九九七年に生まれたみたいです。
彼は私の仕事のこと、二十四歳の彼氏のこと、何でも相談にのってくれます。困ったとき、助けてくれたり、私が歯医者に勤めていたときやめることを相談したのも彼がいちばん最初でした。
次の職探しもいろいろ心配してくれました。私は会いたい、帰りたくないとわがまま言っては彼を困らせていました。でも彼は常識ある人なので、十一時には家に着くよう送ってくれたり、すごくケジメのある人だなと、思っていました。
ある日、ホテルに泊まったとき「私はあなたの愛人だよね?」と聞いてみました。かれは「親友」というのです。私は傷つきました。彼と私の間を愛人と認めたくないのはなぜなんだろう? 彼は「なんでも言い合える、あるときは相談にのる、そんな友達関係だよ。友達以上、恋人未満」と私に言いました。
この意味は? 彼は私を愛人というめんどうくさいものにしたくないでしょうか? 何度も別れようとしました。
でも最後の彼の一言でまたもとに戻るのです。「こんなステキな人と出会えたことは忘れない」「君が忘れても、一生君のことは忘れない」と。
こんなふうに言われると、私は別れるのを取り消してしまうぐらいまた燃え上がるのです。
でも今度こそは別れようと、二十四歳の彼ひとすじでいこうと決めて携帯も変えました。すると彼は三日間探し続けて、結局同窓会とか嘘をついて実家の連絡先から私にTELしてきました。
「君に出来る限りのことをしてあげようと思っている。君には幸せになってもらいたい」と言いました。
私も気持ちよくすっぱり終わらせたいのですが、なかなかうまくいきません。彼を責めると「じゃあ、どうすればいいんだよ、俺が離婚して、君とうまくやっていけるか?」と…。
彼のことを忘れようと、二十四歳の彼と同棲を始めましたが、彼は二回ほどマンションにやってきました。Hをしました。二十四歳の彼はそのことは知りません。でもキスの写真がみつかってケンカになりました。
そして、家の事情で同棲を解消することになりました。三十四歳の彼の近くに戻ることになったんです。それからどうなるかは私には分かりません。でも彼は「俺に頼らず自分の生活をするように願っています」とメールをくれました。
突き放されたような気がしていますが、これも自分が強くなるチャンスだと思っています。
でも彼のことが忘れられるか心配です。これだけいろんな意味で好きになった人は初めてです。
ある時は親のように、友人のように…、彼のやさしさ、厳しさ、力強さ、楽しさ、全部好きなんです。 (二十歳・広島県)
もう二度と連絡をとらないで
「これだけいろんな意味で好きになったのは初めて」と思える恋愛を、二十歳のあなたが経験したことは、本当によかったと思います。
ただ、あなたは今まで、自分よりかなり年上の男性ときちんと接したことはなかったのではないでしょうか。それが、あなたにとって三十四歳の彼が必要以上に魅力的に思えた原因だと思います。
彼があなたの仕事のことや、恋の相談に乗ってくれたり、転職の心配もしてくれたりすることに対して、あなたは彼を非常に頼りがいのある優しい人とだと感じている。
でも、これは客観的に見ると、彼が特別に頼りがいのある人とか優しいという問題でなく、三十歳を過ぎた社会人の男性で、あなたのことを憎からずと思っているのなら、誰でやって当たり前という範囲のことです。
ちゃんと十一時自宅まで送ってくれる彼を、あなたは「常識のある人だな」とか「ケジメのある人だな」ととらえていますが、彼は特別常識のある人でも、ケジメのある人でもなければ、それから自分の家に帰らなくてはいけない彼のほうがもっと困るのですから。
はじめて年上の男性に接したあなたは、彼のあたりまえの行動が、すべて「大人の魅力」に見えてしまった。もちろん、それが悪いということではありません。
若い女性が、年上の男性に惹かれる理由のほとんどは、あなたと同じ視点にあると言っても過言でないからです。問題は、彼という男性が、あなたが大人の魅力を感じるにふさわしい男性であるかどうか、です。
あなたのお手紙を読む限りでは、この男性三十四歳にしてはずいぶん子供っぽい部分があるように見受けられます。
まず、あなたが「私の愛人だよね?」ときいたとき、彼はそれを認めようとせず「友人」と答えている。
あなたと恋愛関係にあることは明らかなのに、あえてそこに清らかな肩書きをつけようとしているところに、彼が自分を正当化していることがうかがえます。
もしそんなつもりがなかったとしても、少なくともこの「友人」と言う言葉は、あなたのためでなく、彼が自分のために口にした言葉であることは明らかです。
その証拠に、あなたはこのひと言に深く傷ついたのですから。そして、あなたが別れよう意思を見せると、一転「君が僕を忘れても、一生君のことを忘れない」などという、自分を悲劇のヒーローに仕立て上げたようなことを言う。
つらく悲しい思いをしているのはあなたのほうなのに、あなたの気持ちなどすっかり棚に上げて、自分の感傷に浸っている。この部分でも彼は、あなたの立場に立ってものを考えることができない自己中心的な子供でしかありません。
その上、あなたに独身の恋人がいることを知りながら、携帯電話まで変えて去っていったあなたを執拗に追いかけている。そこで何を言うのかと思えば「君に出来る限りのことをしてあげようと思っている」「幸せになってもらいたい」ですって?
もし本当にかれがあなたにできる限りのことをしたいと思っているなら、別れを決意したあなたを黙って見送ってあげること以外、何ができるというのでしょう?
あなたの幸せを願っている人が、あなたと恋人が一緒に住んでいる部屋まで乗り込んで来たりするはずがないではありません。
彼はあなたができる限りのことなんて何もしていません。彼が考えるのはあなたの幸せでなく、自分のしたいことをするだけ。
そんな中で、彼を何とか忘れようとしているあなたの判断は正しく、とても頑張ったと思います。
あなたに独身の恋人がいたことは何よりも救いです。もう二度と、彼と連絡を取ったりしてはいけません。
あなたは「彼のことが忘れるか心配」と言っているけれど、わたしは「彼があなたのことを忘れてくれるか心配」です。
彼の「俺に頼らず自分の生活をするように願っています」などと言う言葉はまったくあてになりませんから。
今のあなたが彼を魅力的な大人の男性だと思うのは仕方がないことです。でも、あなたが大人の女性としてたくさんの恋をしていく中で、本当に素晴らしい、本物の「大人の男性」と出会ったとき、彼という男性を理解できるのではないかと思います。
そのときのあなたは「彼の全部が好き」なあなたではなくなっているはずですよ。
「彼氏をつくれ」「いい男を見つけて幸せになれ」…
既婚者の男性がつき合っている独身の女性に自分以外の恋人をつくることを薦める言葉は、とてもよく聞かれる。
この言葉を言葉のまま受け止めて、傷ついたり、彼の愛情はもう自分にはないのだと絶望的になったりすることはない。
男性がこのような言葉を口にするのは、あなたへの愛情が高まり、独占欲が出てきた証拠なのだから。
彼らは「浮気するな」などという言葉であなたへの独占欲をストレートに表現できない立場をわきまえているか。
できることなら独占したいが、ずっと自分の元にいたらあなたが幸せになれないと思うからこそ、ある意味あなたを突き放すような言葉が出てくるのである。
もちろん、あなたが自分以外の男性など愛せるはずがないことをわかっていながら「彼氏をつくれ」と言う彼の中には、不倫の恋をする男性特有のずるさも含まれている。でも、ずるいと言って彼を責めても仕方がない。
この恋に足を踏み入れた時点ですでに彼は矛盾した存在であり、ずるさと切っても切れない感情の中にいるのだ。
問題は、自分が矛盾しているということを彼自身がきちんと認識しているかどうかだ。そのずるさにまったく自覚せずこの言葉を口にするのはただの偽善であり、あなたへの愛情を疑う要因になるのである。
つづく
彼以外の人を好きになれるなんて思えません