私たちは決して、結婚して「奥さん」や「お母さん」になってしまうのではない。その前にひとりの人間であり、ひとりの女性であることに変わりはないのだ。
 それをあなた自身まで、忘れてしまってはいないだろうか

本表紙 梅田みか 著

第八章 結婚しても恋愛体質でいる

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「妻になっても女でいたい」というフレーズ

 以前、結婚式場のポスターに、「あなた色に染まる秋」というキャッチコピーを見つけたことがある。

 そのときちょうど、「女性はつきあいはじめても絶対彼一色になってはいけない。そうするとすぐに飽きられてしまうから」という内容のエッセイを書いていた頃だった。

 そのときは「恋愛なら『あなた色』になってはダメだけど、結婚業界だから『あなた色』でいいのか」と思っていたが、最近、どうもそうではないような気がしてきた。

 昔の結婚観なら「あなた色」に染まっていさえすればうまくいったかもしれないが、そろそろ新しい結婚の形が必要になってきているのではないだろうか。
 先ほどのポスターと似たようなセンスだと思うが、よく「妻になっても女でいたい」とか「母になってもおしゃれでいたい」というような主旨のキャッチコピーがある。

 このようなことを意味するフレーズを見るたびに、はーっとため息をついてしまう。こう言うことを言っているうちはダメなんだよ―なあ、と。

 あなたも、この手のものにフムフムと共感してはいけない。なぜなら、このような思考はもともと、「結婚したら”女”でなくなる」ことを前提にしているからだ。

「”母”になったらもうおしゃれなんかしないもの」という決まりごとがあるからこそ、「”母”なのに”おしゃれ”」という逆説が成り立つ。
 もうずいぶん薄れてきてはいるだろうが、日本にはまだ「結婚したら”女”であってはいけない」「”妻”や”母”にならなくてはならない」という固定観念が根強くある証拠。

 これはもちろん、若い女の子ばかりもてはやす、日本の男性たちにも責任がある。彼がよく口にする「○○ちゃんもとうとうお母さんになっちゃったんだなあ」などという発言からも、それが男の本音であることがわかる。

 私たちは決して、結婚して「奥さん」や「お母さん」になってしまうのではない。その前にひとりの人間であり、ひとりの女性であることに変わりはないのだ。
 それをあなた自身まで、忘れてしまってはいないだろうか。
 ただ、「あなた色」に染まっていればよかった時代は終わっている。これからは結婚生活をあなた自身の色に染めて行かなくてはならないのだ。

男友達は人生の宝

 二十年来の男友達の結婚式に出席したときのこと。もちろんわたしは新郎側の友人席に座った。気づいたら、そのテーブルでわたしは紅一点。新郎の友人はわたし以外全員、男性だった。

 そして新婦側から見れば、友人席は見事に女性ばかり。新郎にわたしのほかに誰も女友達がいなかったわけでもなく。新婦に男友達がひとりもいないわけもない。だけど、結婚式には招待しない。

 私の場合は新婦とも何度も会って仲良くしていたからよかったが、そうでなければ新婦側から「何、あの女」と非難のささやきが漏れることになるだろうか。
 思い返してみれば、とても仲のいい男友達の結婚式に呼ばれなかったことが何度もある。なるほど、こういうことだったのか。

 わたしは結婚式というものを生まれてこのかた、したこともする予定もないので今まで気づかなかったが、世間には「結婚式に異性の友達を呼ばない」という暗黙の了解があるようだ。

 あなたはどうだろう? やはり結婚式には、親しい男友達を呼ぶのをためらっただろうか。ご主人の女友達も、式にはひとりも姿を見せなかっただろうか。
 結婚式に新郎は女友達を、新婦は男友達を呼ばない。これがそもそも、ヘンなのだ。その後の結婚生活に暗雲をもたらす諸悪の根源は、この風習なのだ。

 これから結婚する人は、結婚式にはお互い親しい異性の友人を招いて相手にちゃんと紹介するべきだと思う。結婚式にもろもろ都合がつかないのなら新居に遊びに来てもらうなり、新婚旅行のお土産を渡して食事をするなりすればいい。

 そうすれば結婚しても、夫婦お互いいに公認の異性の友達を持つことができる。それだけであなたの結婚生活はどれだけ楽しいものになるだろう。
 独身時代から、彼氏が出来たとたんに男友達はもちろん、女友達とも疎遠になってしまうタイプの女性は、結婚したとたんに独身時代からの交友関係を断ってしまうケースが多い。

 結婚したら「夫以外の男の人と会うとなんてとんでもない」とばかりに、男友達とは連絡すらとらない。女友達でさえ、出産したころから「独身の人とは時間や生活パターンが合わないから」と、会うのは年に一度のイベントになる。

 せっかく独身時代のあなたが築き上げてきた人間関係なのに、これでは何とももったいない。別にワケアリの元カレってわけでもない、ただの男友達なのに、どうしてそんなに夫に遠慮する必要があるのだろう?

 逆の立場に立って考えてみよう。あなたが夫の「女友達」を紹介されたとする。夫はただの友達や同僚だと言うが、もしかしたら元カノか、ちょっとワケアリの女かもしれない。
 そこであなたが勘ぐったり、彼女に対して妙な感情を持ったりしたらどうなるのだろう。夫はあなたの前ではなく、あなたのいないところで隠れて「女友達」と会うようになるだけだ。

 いろいろな過去はお互い様、あれこれ詮索せずに友好な関係を築いたほうがずっといい。揺らがない事実は、夫がたったひとりの結婚相手として選んだのは彼女ではなくあなただということ。
 結婚後も豊かな交友関係を保っていくためには、ママ友以外の、いろいろなタイプ・年齢の女友達を持つこと、そして男友達を持っていることが大切だ。結婚しても、信頼できる男友達が何人かいれば、それだけで視野が広がり、多くの悩みが解決する。

 結婚していてもしていなくても、彼氏がいなくても、女性にとって男友達は人生の宝なのだから。

未公認の男友達を持とう

 結婚しても男友達とつきあい続けるなんて、特別な女性のすること、「ふつうの主婦」には男友達なんているわけないわ、という人はちょっと考えてみてほしい。

 では、あなたは夫に、たまには男友達と食事してきてもいいかどうか、相談してみたことがあるだろうか? おそらくそんなことは考えたこともないという人が大半なのではないだろうか。

 相談もしてみないで自己規制したり、どうせダメだろうと決めつけたり、「それはいけないこと」と思い込んだりしているあなたのほうなのだ。もし相談してみたら、あなたの夫は意外に快く送り出してくれるかもしれないのに。

 ある統計では、主婦の三分の一は「一対一で会う男友達がいる」というデータもある。ちゃんと夫に紹介して、気軽に付き合える男友達を持つことは全く後ろめたいことではない。

 家に遊びに来てもらって、夫を交えて食事をするときもあれば、ときにはふたりで外出して食事をしたり、軽く飲みに行ったりする。それだけで、あなたは自分を、悪い妻、悪い母親だと感じるだろうか?
 何も、浮気をしろとか言っているのではない。夫に誤解を受けるようなつきあいはもちろん避けるべき。
 男友達が夫とケンカしたときや寂しいときの逃げ道のような存在であったり、嘘や秘密の対象だったり、ましてや体の関係があったりなどというケースは問題外だ。

 あくまでもあなたと夫との信頼関係の中に成り立つ「男女の友情」を、そろそろ解禁してもいいのではないだろうか。

 もし、主婦が男友達を持つことも許されないとなれば、女性は結婚したら夫以外の男性と一対一でじっくり話すことすらなくなってしまうということになる。
 主婦が夫以外の男性と言葉を交わす機会といえば、コンビニやスーパーの店員さんか宅配便のお兄さん、銀行員や保険の外交員、それに子供の学校の先生だけ。本当にあなたはそれでいいのだろうか?

 もちろん、いいはずがない。せっかく成熟した大人の女が、夫以外の男性とまともな会話をするチャンスもないなんて、こんな惜しいことはない。だいたい、いつの時代の話なの? と疑ってしまうような状況ではないか。

 あなたが公認の男友達と出かけることになったら、ハメを外さずに帰って来るのがルール。あなたはその「ハメ」があることにきっと幸福を感じるはずだ。ほかの男性と出かけることで、夫への感謝も実感できる。

 もしあなたの夫があなたの願いに顔をしかめたら、感情的にならずこう言ってみよう。「あなたは奥さんが誰にも見向きされないくらい魅力的じゃなくなっていいの?」と。

結婚しても男友達とつきあう方法

 わたしのまわりには、結婚しても学生時代からの男友達と食事に行ったり、OL時代の仕事仲間の男性と飲みに行ったりしている女友達が何人かいる。

 ご主人たちは、「そっか、じゃあその日は俺が子供のメシ作るわ」とか、「自分はどうせ仕事が遅いからゆっくりしてくれば?」と、さらりと受け止めているし、ふたりにとってはそれが当たり前の日常なのだ。

 妻が当たり前のことだと思っているから、夫もああそういうものなのかとすんなり受け入れる。
 相手が誰で、かつて自分の妻を愛したことがあるのかどうかは不明だが、とにかく妻にとって信頼できる大切な友人なのだから余計な心配はいらない。彼女たちもその期待に応え、レストランのおいしいデザートをお土産に、何倍もの笑顔で夫の元に帰って来る。

 これが「結婚しても男友達とつきあうコツ」なのではないだろうか。そんな主婦が増えてほしいと思って、まわりのママ友に彼女たちの話をしてもなかなか信用してくれない。
「うちはそんな理解のある夫じゃないし」とか、「その人たちはもともと交際が華やかだから違和感がないのよ」とか、「私が急にそんなことを言い出したらびっくりされちゃうほ」などと尻込みする人が多い。

 中には「子供を預けて夫以外の男と会うなんて、人の道に外れているんじゃないかしら?」なんていう真面目な人までいる。

 主婦が夫に隠れて愛人をつくって、家事も子育てもほっぽらかしてアバンチュールに溺れている‥‥というのなら問題だが、たまに男友達と食事に行くのも同罪だとでも本気に思っているのだろうか。

  たしかに、夫婦になってもお互いの異性の友達とフランクにつきあう習慣のない日本では、主婦が男友達を持つために、かなりの努力がいるのかもしれない。そこに一歩踏み出す勇気と、周囲を納得させる根気も。

 まずあなた自身が「結婚しても男友達と会うことは、ごく当たり前のことなのだ」と思うこと。次に夫や子供にそれを解かってもらい、少しずつ家族を馴らしていこう。
 中には独占欲の強い夫もいるだろう。嫉妬や束縛の激しい性格は直らないから、あまり刺激しないようにしながらうまく付き合っていくしかない。

 でも、あなたが束縛されることは当然のことだと思わないほうがいい。実際、男友達と会うことはままならなくても、あなたの心はいつも自由なのだから。
 今から結婚しようと思っている人は、独身時代から。結婚後も自由に男友達と会える環境をつくっておくこと。

 恋愛中から「彼一色」にならないようにし、結婚前提の彼と付き合うようになっても男友達との連絡をおろそかにしないこと。そのときはこのまま疎遠になってもいいと思うかもしれないが、あとで後悔することになる。
 結婚したらなおさら「夫だけ」「家族だけ」「子供だけ」にならないように努力する。

 それでも、ほかの男と食事に行く妻をニコニコ送り出すなんてバカじゃないか、なんて言う夫には、こう教えてあげたい。
 ときには夫以外の男性と出かけたり食事をしたりする、そんなメリハリのある日常があれば、主婦は不埒(ふらち)な浮気をしたり、いきなり不倫に走ったりすることは決してないのだと。
 男友達との付き合いは、あなただけではなくご主人にとってもいいことがある。夫婦にとって「ほかの男の存在」は、何よりセックスレスの防止になるのである。

夫以外の「男の目線」「男の意見」の大切さ

 なぜわたしが結婚しても男友達と会うことを、こんなにしつこくすすめているかというと、結婚後も男友達を持つことで、主婦たちの抱える問題点のほとんどに解決の糸口が見つかるからである。

 女性とばかりゴハンを食べていれば、自然と「女の現役感」がなくなっていく。女同志でばかり話していると、いつの間にか男の人とうまく話せなくなってしまう。男ウケする話し方や仕草も忘れてしまう。男性の視線をまったく意識しないメイクやファッションになってしまう。

 男性といえば夫としか会話していない、それも子供の話ばかりという状態だと、どうしても視野が狭まってしまう。夫以外の男性の意見や考え方を聞く機会があると主婦の世界観はずいぶん変わる。それが妻として母として、客観的に物事を見られるきっかけになる。

 対等に話、相手の意見を聞き、さらに自分の意見を述べる。そんな当たり前の会話をしばらく忘れていたことを、あなたは思い出すだろう。
 いつもと違うエリアに出かけるとなれば、いつものジーンズではなく、ちょっと華やかな装いをするきっかけになる。鏡をよく見て、自分が一番美しく見えるヘアメイクを研究する。

 もちろん相手はただの友人でも、夫以外の男性と向き合うことで、現役の女としての意識が刺激される。
 ワンパターンになりがちな主婦の生活にアクセントがつく。まわりが見えなくなるほど趣味に没頭することもなくなる。

 家族で出かけた旅先で男性へのお土産を選ぶだけの気分は変わる。
「いい奥さん」「いいママ」ちょっとひと休みして、独身だったころの気持ちを思い出すのも大切なこと。

 たとえ小さな選択でも、自分で意思決定することを忘れずにいられる。家庭から少し離れてみることで、その幸せをあらためて実感できる。子供の心配ばかりしていた自分を冷静に振り返ることができる。

 愛する家族といい友人に囲まれ、イキイキと暮らしているあなたは、人とくらべたり、むやみに誰かを羨ましがったりする必要もない。子育てのせまい世界にとらわれず、自由な目で子供を見られるようになる。

 夫に愚痴ばかりこぼしたり、ストレスをぶつけて言いなりに扱ったりすることもなくなる。理解ある夫にさらなる感謝の心を持ち、夫をいつまでも男性として見る目を持ち続けられる。
 いつも仕事で忙しい夫は、あなたのいない間に子供とのんびり遊んだり、他愛ないおしゃべりを楽しんだりする時間を得る。

 いつも、あなたにまかせきりの夕飯作り片付けに挑戦することで、家事への興が出てくる。子供のおもちゃやタオルや着替えがどこにあるかもしらなかった夫が、家の中を知るきっかけにもなる。
 子供にとっても父親との絆を深める貴重な時間になるだろう。”男の料理”や”男の遊び”を経験することは男の子にはもちろん、女の子にもいい影響を及ぼす。

 いつもは母親とべったりでも、ときおり信頼できる人とお留守番するという経験は子供の成長を促す。それがほかでもない父親なら、いうことはない。
 結婚生活の中に、夫と別の「男の目線」「男の意見」があるだけで、あなたの女性としての人生がぐっと豊かになる。それが、主婦が「自分を持つ」「自分らしく生きていく」ことにつながっていくのだ。

「恋愛体質でいる」ことと「浮気する」こととは違う

 誰かの妻になってもなお、女としての魅力を失わず、ずっと恋愛体質でいるような女性がいると、世間の目はけっこう冷たいもの。
「既婚者なのにチャラチャラしている」とか、「夫がいる身なのに尻軽だ」とか、「いまだに独身気分で子供にしめしがつかない」とか、なぜそんなふうにしか見られないのだろうと不思議に思うくらいだ。

 これらは少々、男社会的な見方だと思うが、そんなにも結婚した女を地味にして、家の中に閉じ込めておきたいものかとあきれてしまう。
 結婚する前は恋愛体質の女が好きなのに、結婚したら自分の妻が恋愛体質なのは許せないという、日本人特有の男性心理にも困ったものだ。

 結婚しても独身時代のようなきれいさを保っているというだけで、まるで浮気者のように言われるのは主婦のほうもかなわない。
 でも実際、夫を裏切って浮気することと、結婚してもなお女磨きを怠らず、常に恋愛体質で輝いていることとはまったく別のこと。そのことを女性たちはもっとしっかり認識するべきだろう。

 前出のようなバッシングがある一方で、「てっきり独身なのかと思っていました」「とてもお母さんには見えませんね」などというセリフが主婦への褒め言葉として使われている。
 そういうところから察すると、女性たちはどこかで、「独身女性のような若々しい奥さん」とか「お母さんらしくないママ」になりたいと願っているのではないだろうか。

 それが本当に、家事もろくにせずに夫の財力で遊び歩いている「奥さん」や、子供の世話もしないで自分のおしゃればかりしている「お母さん」であっては何の意味もない。
 私たちが目指すのは「独身女性のような雰囲気を持っているけれど、実はしっかりした奥さん」や「若々しくてぜんぜんお母さんの様には見えないけど実はいいママ」であるはずだ。

 結婚しても、恋愛体質でいることを忘れないこと。結婚したら二度と恋することなどないと決めつけてはいけない。もしかしたら今日、素晴らしい出会いがあるかもしれないと思える、かろやかな心を持つことだ。

 これは決して浮気願望があるとか夫に満足していないとか、そういう種類のことではない。どんなエステよりどんなアンチエイジングよりも効く、いくつになっても女であり続けるための、ちょっとしたテクニックなのだ。

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ふつうの主婦ではなく、魅力的な主婦になる

 以前読んだ翻訳小説の中だったか、こんなシーンがあった。
 主人公の女性が、冬の間もきれいにペディキュアをしているのを見て、夫が「冬場にそんなことをしても誰も見ないのに無駄じゃないか、お金がもったいない」というような文句を言う。すると女性は「誰も見ていないなんてことはない。私は毎日見てるわ」と答える。

 彼女の言う通りだ。たしかに寒い季節にペディキュアをしても、ストッキングやブーツに覆い隠されてて誰の目にも映らないかもしれない。でも、あなたが毎日、そのきれいなつま先を眺め、ちょっといい気分になり、女であることを実感することができるなら、それでいいのだ。

 さらにこの主人公が悲しいのは、ダンナさんはその美しい爪を目にしているのに「誰も見ていない」と文句を言っていることだ。この描写で、夫婦の関係が冷え切っていることがわかる。誰も見ていなくても自分が見ているのだからいい。でも、本当はあなたに見ていてほしい。それが彼女の心からの叫びなのではないだろうか。

 結婚しても、夫の目を、いや、ほかの男性の目を惹きつけるような魅力的な女でありたい。そんな願望が、あなたの中にもきっとあるはずだ。
 あなたがいつまでも魅力的な女性であり続けることは、主婦としても大切なことだと思う。
「結婚しているのにまだ他の男にもモテようとしているなんて」などという人には言わせておけばいい。
 夫だって、誰にも見向きされないような妻より、男たちをハッと振り返るような女性が自分の奥さんだというほうがきっと嬉しい。子供達もみんな「きれいなお母さん」が大好きだ。

 よく「ふつうの主婦」なんていう言い方をするが、「ふつうの主婦」なんてどこにもいないのだ。ひとりひとりの主婦が、それぞれの個性と魅力を持っている。あなたにはあなたにしかない魅力がある。その本来の輝きにさらに磨きをかけていける場所が、結婚生活であってほしい。

「結婚しても」ではなく「結婚したからこそ」いつまでも魅力的な女性であること。
 愛し愛される男性と巡り会えたこと、愛する人と共に暮らす幸せ、結婚生活の中で学んだこと、子供を授かった喜び、その成長を見守る愛情。

 大切なものを失うことの恐怖、家庭という枠の中で生まれる信頼と尊敬。
 結婚によって経験してきたすべてのことが、あなたの愛情豊かな、人間としての深みを増した魅力的な女性にしてくれる。

 そんなあなたは、夫にとって最高の妻であり、子どもにとって最高の母であり、「最高の主婦」なのだ。
 そしてあなた自身が、「私みたいな主婦って悪くないわ」と思えたら、それがあなたにとっていちばん幸せな結婚の形なのである。

「主婦の掟」36か条

第一条 毎日大きな鏡で全身をチェックすること――
    できれば部屋のあちこちに鏡を置いて、毎日、少なくとも十回は鏡をみよう。小さな手鑑ではなく、姿見やなるべく大きな鏡で全身のバランスをみること。お出かけ前はかならず後ろ姿もチェックするのを忘れずに。
第二条 「主婦の制服」ばかり着ないこと――
オールマイティな紺のスーツや、ジーンズにチュニックのカジュアルスタイルなど、みんなが着ている「主婦の制服」から抜け出して、本当にあなたに似合う服を着てみよう。ときには華やかなおしゃれをするのも大事。
第三条 美しく歩けるハイヒールを見つけること――
歩きやすくてラクなスニーカーや”ぺたんこ靴”は子供と歩くときだけにして、女性らしいヒールの高い靴を履こう。ハイヒールは常に「女の第一線」でいられるために重要なアイテム。なるべく早く「復帰」して。
第四条 恋人とデートするつもりでメイクをしよう――
独身時代に比べてどうしても手を抜いてしまうメイク。結婚したことで安心して”スッピン”を”自然派”とごまかしてはダメ! 「大好きな恋人に会いに行く」つもりで、自分がいちばんきれいに見えるメイクを。
第五条 美容院を変えてみよう――
十年前と同じ髪型をしている人は要注意! 自分にとっての「安心ヘア」をときには変える勇気を持つことで魅力的なイメージチェンジを。はじめての美容院は、新しい視点であなたの魅力を引き出してくれるはず。
第六条 髪と歯は丁寧にブラッシングすること――
主婦の身だしなみでいちばん大切なのは「清潔感」。その印象を決めるのは、風になびくきれいな髪と、笑顔にのぞく真っ白な歯。毎日ブラッシングを丁寧にするだけで、髪のツヤツヤ、歯と歯茎もピカピカに。
第七条 「痩せたら」と言わないこと――
「痩せたら素敵な服を買おう」痩せたら新しいことに挑戦しよう」では、いつまでたってもその日は来ない。「今のあなた」に似合う服や趣味を見つけて、今の自分を受け入れれば自然とベストな体型に近づいていく。
第八条 「運命の人に出会うかも」と思って出かけよう――
「今日は誰にも会いたくない」と思うような格好で外出してはダメ。たとえ近所に出かけるだけでも「今日素敵な出会いがある」と思って支度をするれば”捨てる日”をつくらなくてもすむし、恋する心も忘れない。
第九条 幸せの基準は自分で決めること――
常に人から「幸せにみられるかどうか」ばかり気にしていると、あなたが本当に「幸せかどうか」がわからなくなってしまう。人の目を気にするよりも、あなた自身が心から幸せと思えるかどうかを基準にしよう。
第十条 冷蔵庫に学校の予定表を貼らないこと――
学校や幼稚園の予定表や給食の献立表がごっちゃ貼られた冷蔵庫は「主婦の生活感」象徴。スッキリさせて、センスのいいキッチンを取り戻そうと。部屋中を家族の楽しみや本当に欲しいものには気持ちよくお金を使う。
第十一条 節約してもケチにはならないこと――
    間に合わせの服は買わない。使い捨てのものは買わない。「安いから」といらい物は買わない。不必要なお土産やお礼品は省略する。そのかわり、家族の楽しみや本当にほしいものには気持ちよくお金を使う。
第十二条 「家族旅行」以外の旅行を計画しよう――
     パパ、ママ、子供たち、全員そろった家族旅行だけが旅行ではない。ときには違うメンバーでの旅行も考えてみると行動の幅がぐっと広がる。家族の希望とは別にあなた自身が行きたい場所も常に三つ考えておこう。
第十三条 「いい人」になりすぎないこ――
    “ママ友”とのおつきあい、学校や習いごとにまつわるボランティア、いろいろな場面で「いい人」になりすぎて疲れ果ててしまっては本末転倒。義務や責任はきちんと果たし、それ以上はノーと言う勇気も必要。
第十四条 「何でもいい」「どっちでもいい」と言わないこと――
     ランチのメニュー選び、手に取る雑誌、観る映画、買い物の行き先…どんな小さなことでも、ひとつひとつあなたの意思で選択・決定することを心がけて。それが、あなたが「自分らしく」生きることにつながる。
第十五条 常に自分の意見を持っていること――
    誰かの意見や、テレビで言っていたこと、新聞や週刊誌で読んだことなどをそのまま自分の意見にしないように気をつけよう。日々のニュースや身近な出来事にも「私はこう思う」というあなたの意見を持つ習慣を。
第十六条 「忙しい」「大変な」「早くして」は禁句――
    「専業主婦はヒマ」などという心ない批判をくつがえそうと、「主婦はいつも忙しくしていないといけない」なんて思わないで。この三つの口ぐせを封印すれば、あなたと家族の心にゆとりが生まれてくるはず。
第十七条 子供との時間も「自分の時間」――
    子供を急かせて早く寝かせて必死に「自分の時間」をつくらなくても、「自分の時間」はすでにあなたの中にある。子供と過ごす時間も「自分の時間」、家族と過ごす時間も「自分の時間」と考えれば余裕ができる。
第十八条 人とくらべるのをやめること――
    マイホームや車、海外旅行など、生活のすべてを人と比べていると決して幸せはやってこない。子供ががんばっても「○○くんより下」という考え方では子供は伸びない。幸せは、相対的ではなく絶対的なもの。
第十九条 むやみに人を羨ましがらないこと――
    裕福なセレブ奥様や優秀な息子を持つママ友、芸能人妻やママドルなど、やたらに羨ましがるのはやめよう。うらむのをやめると、今度はあなたがみんなから「羨ましい」と言われる人になるから不思議!
第二十条 「うちの子なんて」と言わないこと――
    いくら謙遜の美徳といっても、「うちの子なんて」「どうせダメ」などと口にするのはやめよう。子供は母親の言葉をストレートに受け取って自信をなくしてしまう。子供を誉めるときは口先ではなく真剣に誉めること。
第二十一条 笑顔を忘れないこと――
     主婦の日常はいろいろアクシデントやこまごましたトラブルでいっぱい。いつも時間に追われイライラ、カリカリして眉間にしわを寄せ、笑顔を忘れてしまってはいけない。気づいたら深呼吸してニッコリしよう。
第二十二条 ビデオ。カメラでなく肉眼で子供を見よう――
     子供の運動会や学芸会や試合など、がんばっている晴れ姿を、いつもビデオやカメラ越しに見ているのはもったいない。レンズや画面を通さず心のフィルムに焼付よう。肉眼で見ると感動がまるで違う。
第二十三条 本を読む習慣をつけること――
    あなたの子供を「本の好きな子」に育てたかったら。あなたが本を読んでいる姿を見せるのがいちばん。同時に読書は視野や見識を広くしたり、さまざまな世界を疑似体験させてくれたり、あなたの成長にもつながる。
第二十四条 夫と、子供以外の話をしよう――
     仕事から疲れて帰って来るなり、今日あった些細な出来事やトラブルを延々と報告されるのは「夫のいちばんイヤなこと」。本当に大事なことは夫婦でとことん話し合うべきだが、子供以外の話題を見つける努力も大切。
第二十五条 夫は誉めて育てること――
     命令したり、役割分担を強いても家事に協力的な夫にはならない。何か手伝ってくれたらベタ誉めして、笑顔で「ありがとう!」と言おう。そうすれば夫はまた手伝おうととう気になるし、家事の腕も上がる。
第二十六条 夫を言いなりにしないこと――
     家の中は私の領分とばかりに、夫のやることなすこと指示を出したり、アゴで使ったりしていると「ここぞというとき」に役に立たない夫になってしまう。将来、自分の首を絞める結果になることを忘れずに。
第二十七条 腕組みをしないこと――
     腕組みは女が偉そうにみえて、男性に不人気なポーズ。俊腕のキャリアウーマンにはピッタリかもしれないが、幸せな主婦には似合わない。いつまでも可愛げのある女でいるためにも、特に夫の前ではNG!
第二十八条 夫のためにおしゃれをすること――
     女性同士のランチや食事会、同窓会など「女性向け」のファッションばかりしていると、「男性目線」のおしゃれを忘れてしまう。恋人同士だったころを思い出して、ときには夫好みのおしゃれをして出かけよう。
第二十九条 「あなたのため」と言わないこと――
     「あなたのため」は、実は「自分のため」に相手をコントロールしようとする言葉。いくら「あなたのためよ」と言っても、夫も子供も変わらない。素直に「私のため」とお願いしてみるのも意外と効果的。
第三十条 夫の好きなものを一品作ること――
     いつも子供の好物ばかりの献立になりがちだが夫の好きなものを一品作るようにしよう。子供は食べなくてもいい大人の料理を添えれば、夫の帰りは確実に早くなる。週に一度は自分も食べたいものを作るのもいい。
第三十一条 「誰にも見られたくない下着」は捨てること――
     独身時代の”勝負下着”のかわりに、主婦には「いつ見られてもいい下着を」が必要。高価でなくてもいい。ブラとショーツ上下お揃いの、今のあなたのボディをきれいに見せてくれる素敵な下着をそろえよう。
第三十二条 「十分で何となる部屋」を心がけてること――
     家族が落ち着かないほど散らかり切った部屋は困るけど、逆にきれいすぎる部屋もかえってリラックスできないことも。完璧でなくてもいいから、急な来客にも「十分で何とかなる」あなたらしい部屋を目指そう。
第三十三条 がんばりすぎないこと――
     家族や子供から「いつも怒っている」「どうしていつも機嫌が悪いの?」なんて言われるのは「がんばりすぎ」の危険信号! 何もかもひとりで背負い込んでがんばりすぎていると感じたら、ちょっと肩の力を抜いて。
第三十四条 夫公認の男友達を持つこと――
     結婚しても、独身時代からの男友達とつきあい続けることはとても大切。家に招いたり、たまには食事に出かけたりする「夫公認の」男友達を持とう。それだけで結婚生活が豊かになり、女の「現役感」を保てる。
第三十五条 主婦であることに誇りを持つこと――
     「どうせ主婦」なんて言い方はしないで、主婦であることに感謝と誇りを持とう。主婦であることの幸せを見つめ直して。
第三十六条 恋愛体質であり続けること――
     「結婚しても恋愛体質でいることと「浮気する」こととはぜんぜん違う。大切なのは自身が「もう二度と恋はしない」なんて決めつけないこと。これはずっと魅力的な女であり続けるためのテクニック。
  主婦の掟 梅田みか 2009年11月11日発行
梅田みか1965年、東京にて作家・故 梅田晴夫氏の長女として生まれる。慶応義塾大学文学部卒業後、執筆活動に入る。現在、小説、エッセイのほか、脚本家としても活動中・著書に「別れの十二か月」「愛された娘」などなと・・・。
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