女29歳は生き方微妙どき はらたいら =著=
6――たくましいから生きていける
本当に強い女
本当に強い女というのは、こういう女のことかもしれない。
つい最近、上場会社に勤める30代半ばの男が、奥さんと別居した。原因は、世間によくある、旦那の浮気。もともと女好きの男であったが、仕事はバリバリこなし、女の子とも適当に遊びながら、家庭は大切にするという器用な男だったから、別居したと聞いてたときは、ちょっと驚いた。
おそらく浮気がばれて、怒り狂った奥さんが家を出て行ったのではないかと思ったが、出て行ったのは男の方だった。
早い話が、その男が会社のOLに夢中になってしまい、離婚して、そのOLと結婚する気だったらしい、男は奥さんと大ゲンカをしたあげく、そのOLのマンションに転がり込んで、同棲生活を始めてしまった。奥さんはなかなかの家柄で、そのうえ頭も切れる。
「プライドの高い女だから、俺が別れると言ったら。あいつは『どうぞお好きなように』と言うに違いない」
男はそう考えていた。ところがある日、同棲中のマンションに、二人の子どもを連れて奥さんがやってきた。奥さんの両親と男の両親までいっしょについてきた。
男はやむなく、いったん家に戻ることにした。すると、奥さんの態度が一変した。浮気の話は一切触れようとせず。とにかく旦那に尽くすこと尽くすこと。
「こいつはやはり、いい女だ」
その男は心底、そう思ってOLとの仲を清算した。それからしばらくして、その男に会った。酒を飲んでいても上機嫌である。
「もう金輪際、浮気は止めた。これからは良きパパ、良き夫で行くんだ」と言う。
崩壊しかけた家庭が元に戻ったのは、ほかならぬ、強い女のおかげである。
「女は怖い」と実感するとき
ある大企業に勤務するエリートサラリーマンがいる。
なかなかのキレ者で、仕事は実によくできる。30歳そこそこというのに、本社管理部門の重要な仕事をまかされている。
可能な限り休みの日には、酸素ボンベを背負って海に潜る。家庭サービスにも手を抜かない。
いまだに、「将来は社長になる」と豪語し、その分、勉強もよくする。見てくれも悪くない。当然、社内では女子社員のウワサによくのぼる。
その結果として、この男にも社内に恋人ができた。23歳の美人。彼は家庭を壊す気は、初めからなかった。
彼女も奥さんと子どもを犠牲にしてまで、自分が幸福になろうとは考えていない。形の上では、
“不倫”ということになる。
あるとき、この会社で、社内運動会が行われた。家族同伴を徹底するために、管理部門の社員は、自らも奥さんや子どもを伴って参加しなくてはならなくなった。この男も妻子を運動会に呼んできた。
運動会の最中、この男がふと見ると、自分の妻と子どもが、若い女子社員に囲まれている。
「××さんに娘さん、そっくりですね」
「可愛い娘さん」
男はギョッとした、そのなかに彼女が混じっていたのである。しかも、まるで屈託のない笑顔。本当に楽しそうな表情をしているのである。
次の瞬間、女子社員たちの輪が急にばらばらになり、その男の妻、娘、彼女の三人が、カメラに向かってニッコリとポーズを取っているではないか。
その直後に、男は妻に言われた。
「すごく性格のいい女性ね」
“女は怖い”。そう思うのは、この男一人だけではあるまい。
感傷旅行も食欲旺盛
女は悲劇のヒロインがお好きなようだ、失恋、あるいは離婚。傷ついた心を癒すために一人で旅に出る。
しかし、心の傷が本物ならば、センチメンタルジャーニーなんてできるはずがない。まして「京都がいいわ」などと行き先を決めたり、ホテルを予約したり…・冗談じゃない。思い込みに酔っているだけ。
だから旅先でも食欲旺盛、その土地の名物をパクパクムシャムシャ、恋の痛手はと゜こへやら。
面白いのはこのあとだ。食欲も十分満たされ、ウイスキーグラスを片手にカウンターで飲んでいる。何故か別れた男の顔が浮かんでくる。
それまでの演技とは打って変わって、本格的に落ち込んでくる。
女と旅。忘れてはならないのが“新婚旅行”。
やってきました常夏のハワイ。初めての海外旅行で、新郎はオロオロするばかり。ところが新婦ときたら経験豊富。OL時代は男のおごりでシコシコ貯金。貯めたお金で海外旅行。
新米がベテランをエスコートしようとするから、悲劇は大きい。
時は流れてご存知“フルムーン旅行”。再びやってきました常夏のハワイ。
しかし今度ばかりは夢も希望もロマンもない。眺める景色は変わっていない。変わっているのは当人ばかり。男はロマンチストだから新婚時代の思い出に一人酔う。
ふと傍らの女房の横顔を見てドキッ。目と目とが合って二人は思う。
「ここまでよくもったなァ」
フルムーン、それは夫婦が歳とったことを確認する旅。
そして「私はがんばった!」とお互いに自分の人生を納得する旅でもある。
こんな笑い話はいかがでしょう。
「私、今日ムシャクシャしてたの。あなたに嫌な顔を見せて嫌われたくなかったから、他の男と寝てスッキリしてきたの。
遅くなってごめんなさいね」
私は絶対に産みます
「日米貿易摩擦の本質は何なのか?」
外資系証券会社に勤める知り合いに尋ねたら、なかなか面白いことを言った。
「日本とアメリカとの関係は、早い話が女と男の関係だ。日本が女でアメリカが男。日本女はアメリカ男が好きで好きでしようがなかった。ところがアメリカ男にはその気がない。だが、ひょんなことから、この男女は肉体関係になってしまった。それから、しばらくはいい関係が続いた。
ある日女は、自分が妊娠していることに気づいた。その途端に男の態度が、がらりと変わった。
男は『おろせ』と叫ぶ。女は『産む』と泣きわめく。
『子どもができたのは、あなたのせい。私は絶対に産みます』、『だめだ、おろせ』。
この男と女のやり取りが、日米経済摩擦なのだ。どちらが悪いとも言い難いし、そう簡単に決着がつくものでもない」
じつにわかりがいい。しかし、もしこの説が正しいのであれば、アメリカは日本には勝てない。
万が一、子どもが生まれてしまったら、女はなお一層強くなる。男は文句を言うどころか、女の指図をうけながら、赤ん坊の紙オムツを取り換えにくるのがオチである。
オスカー・ワイルドは、
「女は愛されるべきものであって、理解されるものではない」
と言ったが、女を知らなさすぎる男は、やはり不幸な道をたどらざるを得ないようだ。
初々しい乙女の姿が、永遠に続くと男は信じやすい。しかし、女はその人生のうちに何度か開き直る。最初の開き直りが、出産だ。
さて、日本が子どもを産んだら、日米経済摩擦は、これから先いったいどうなるのだろう。
つづく
そんなに時代もかつてはあった