昔の愛を取り戻した男と女が、家族を捨て世間や社会を捨て、ものの見事に愛の逃避行を成立させてしまった。決断がつきかねている男に向かって、「仕事はこれから行くところで探せばいい。私も働く、貯金もいくらかある、もう千葉にはいられない。一緒に逃げて
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9――時には男の弱さを許す寛容さを

本表紙女29歳は生き方微妙どき はらたいら =著=

ピンクバラ9――時には男の弱さを許す寛容さを「逃げた花嫁」は愛のドラマか

結婚式まであと一週間というところで、結婚話そのものが御破算になった。被害者は新郎になる予定だった作家の卵。千葉県在住、ユーモアたっぷりの人のいい男である。

 事務所の電話がけたたましく鳴った。「もう、だめです」という卵からの電話だ。聞けば花嫁になるはずの女性が、昔の男と逃げたとのこと。
「いったい、どうなっているんだ。一週間前だというのに?」
 ひととおり経過報告を聞く。本人の興奮が治まるのを待って、招待客に突然の中止をどう伝えるかを話し合った。招待客は新郎側だけで50人。ありのままを伝えるのは、本人のプライド傷つける。
「逃げられました」を「花嫁が交通事故」に切り換えた。

 よほど腹の虫がおさまらなかったのか、卵はしばらくして女の家に乗り込んだのだが、両親に向かって吐いたセリフが泣かせる。
「てめえら人間じゃねえ」
 気持ちは分かる、わかるが、それを両親にやっちゃいけない。それにカメラのレンズは一つだけじゃないのだ。自分を主人公にしてみれば、これほどひどい仕打ちはとなるけれど、見方を変えて女性側からのカメラから見れば、これは大変な愛のドラマとなる。千葉版「卒業」である。

 昔の愛を取り戻した男と女が、家族を捨て世間や社会を捨て、ものの見事に愛の逃避行を成立させてしまった。
 ここでも、やはり女は強かった。決断がつきかねている男に向かって、「仕事はこれから行くところで探せばいい。私も働く、貯金もいくらかある、もう千葉にはいられない。一緒に逃げて」

 卵の手元には新婚旅行に行くはずだったチケットが二枚残った。キャンセルすればよいものを、卵は今回の事件で迷惑をかけた仲人夫婦にそれをプレゼントしてしまった。

“新婚さん”で予約を受けている旅館では、さぞ驚いたことであろう。60歳を過ぎた仲人夫婦の到着。
 ハネムーンならぬフルムーンである。

男によく似合う言葉

「ああ、寒いほど一人ぼっちだ!」
 この井伏鱒二の言葉は、やはり男に似合う。ひ弱で未練がましくて優柔不断な男たちは、いつも孤独を噛みしめている。

 新年早々、建設会社に務める男が「離婚します」とやってきた。仕事もできるし、男っぽい硬骨漢。奥さんもできた女性で、仲間内でも評判が良かった。結婚して10年。どちらも相手に不満があるわけでもない。元編集者の奥さんが、家事と育児だけの生活に絶望したことが発端らしい。

 離婚する離婚しないで、一年近くもめたあげくに、昨年暮れ別れることにしたという。
 それにしても男と女の別れには、好対照がつきものだ、悲劇をバネにする女、悲劇に小突く回される男。

 建設会社の男は、その晩飲み放題飲んだあげくに、泣いて帰った。それから一週間して、奥さんから電話もらった。
「いろいろありましたけど、第二の人生はバラ色にします!」
 たまげた強さに、返す言葉もなかった。おそらくは女は、忘却の名人なのだろう。
 いやなことに、都合の悪いこと、覚えていて無益なこと、そんなものは、さっさと忘れてしまう。

 男もこれからは、忘却術を身につけなくてはならないだろう。
 モリエールが、こんなことを言っている。
「女に忘れられたら、男だって意地になる。そういう女を忘れるために、できるだけの手は打ってみる。それでもうまく行かなければ、せめて忘れた振りをする」
 世の男たちに勇気づけようと引用したのだが、どうもかえって男の弱さを露呈してしまった格好である。
 どうせだめなんだから、ここはひとつ、忘れた振りをマスターしよう。

男にはハンディが欲しい

何と40歳にならないと結婚できない男が出てくる時代になってしまった。
 同じ男として、不幸な時代環境を嘆いてやりたい。厚生省や総務庁などの調査で、男と女の数にバランスの異変が生じつつあることが判明した。男女の産まれる比率は、ここ30年ほど変化がなく、日本では、女が百に対し男は百六人の割合だ。
 
 ところが男の方が遺伝的にひ弱に出来ていて、死亡率が高い。
 おまけに、ちゃんと育っても、外で働く機会が多いために、さまざまな危険に遭遇する機会も多く。これがまた男の死亡率をあげている。

 男はそういう悲しい歴史を背負いながら、20歳以降に、男と女のバランスの取れる時期に結婚してきたのである。
 ところが医学などの進歩などで、死亡率がグンと減ってきたために、男と女のバランスがとれる時期がだんだん上がってきたのだ。

 最近の状況では、何と40歳にならないと男数と女の数が揃わない。結婚できない男が、確実に増えてくる。
 女が強くなったと言われて久しいが、この状況では、女はよりどりみどりと男を選び、男は「ボクを選んでください」と言わんばかりに、さまざまな付加価値を用意したり、サービスで差をつけたりと、商売さながら頑張らないと、結婚できなくなってしまった。

 科学の進歩が男の不幸を生み出すとは、男の科学者も気づかなかった。
 まさに、男は額に汗して不幸を招き入れたという格好である。
 男と女を決めるのはXとYという染色体。XYが男、XXが女だ。重要な遺伝子をたくさん備えているのは、YよりもXだ。そうなると。Xがふたつの女の方が優秀だとなる。
 ゴルフじゃないが、男にハンディが必要な時代になってきた。

男の目くばりも大変

 スペインの諺だ。
「青い目の女は愛して下さらねば死ぬといい、黒い目の女は愛して下さらねば殺すという」
 自分が死ぬことと相手の男も殺すのとでは、ずいぶんちがう。しかし勝手に女から愛を要求された男は、不幸である。どちらにしても脅迫だ。女というものは「愛」か「憎しみ」か、そのどちらかしか持ち合わせていないようである。
 
 それは何も、ドラマチックな大恋愛の最中だけではなく、ごく当たり前の日常生活の中でもしばしばみられる。
 銀行や証券会社のような金融機関は、圧倒的に女の社員が多い。こういう会社では、若い女子社員に嫌われたら仕事ならないという。
「サービスが悪くなるだけで、通常の業務は普通にしてくれるのなら嫌らわれたってかまわない。しかし。社内の女の子に嫌われたら、嫌がらせをされて、業務自体に支障が生じてしまうんですよ」

 と、ある大手の証券マンが話していた。
 だから、3月14日のホワイトデーの直前に、ふだん見かけない背広姿の男たちがデパートの食品売り場が一杯になるのである。

 男たちは、チョコレートをもらった感謝の気持ちだけでキャンデーを買いに行っているわけではない。万が一にお返しを忘れてしまったときの恐怖が、背広族を食品売り場へと走らせるにすぎない。
 
 たかがキンディーで、仕事の平和が維持されるものなら安いものということを、みんな知っているのだ。
 黒い目の女は「愛して下さらなければ殺す」と言うから、男は女に愛されたら、自分の意志に拘わらず、その愛情を受け止めなければならないだろう。

 それがもし深情けだったら、殺し方も残虐になるかも知れない。
 つづく 女が興味を示さない男の楽しみ