女29歳は生き方微妙どき はらたいら =著=
7――ああ、情けない男たち
「彼女が結婚してくれない」男
「妻は若い夫にとっては女主人。中年の夫にとっては仲間。老人の夫にとって乳母である」
とは、フランシス・ベーコンの言葉。
最近の若手男たちは、女の子を口説くのもすべて雑誌に掲載された手順を忠実に守ってするらしい。ところが、口説かれる女の子の方も同じ雑誌に興味を持っていて、男たちがどう口説いてくるか研究しているから始末が悪い。
手の内を知られているとはつゆ知らず、実行してしまうものだから女の子のほうは面白いやら、アホらしいやら、すっかり同年代の男たちをバカにしている。
アメリカの有名なコラムニストによれば、彼女に寄せられてくる投書の中身がこの10年くらいでずいぶん変わってきたという。
ひと昔前なら、「彼氏が結婚してくれないんです」と言う悩みが多かったのに今はその逆で、「彼女が結婚してくれないです』が圧倒的に多いのだ。
その辺の事情は日本も同じで、だから結婚した後、若い夫にとって妻は「女主人」以上の大きな存在になる。最近結婚した共働きの夫婦がいる。生活費は一切旦那の給料から支払われる。奥さんの給料は、すべて奥さんの名義の貯金に回るという。
この調子で行くと、中年になっても旦那は妻と「仲間」になれそうもない。時が経てばたつほど、女は開き直り、図々しさを身につけてくるのだから、ベーコンが生きた時代は非常に珍しく幸福な時代だったと考えたほうが良さそうである。
老人の夫にとって、妻が乳母になるというのも嘘である。夫の稼ぎが素晴らしく、よほど財産でも残せば別だが、そうでなければ、乳母のように優しく、愛情たっぷりに面倒見てくれるはずがない。それは幻想だ。
フランス料理店の男女四人組
東京・麻布の閑静な高級住宅街にフランス料理の店がある。室内は重厚な清潔感であふれ、ピアノとバイオリンの生演奏がしっとりとしたムードを醸し出している。
当然、料理のお値段の方も安くはない。夜ともなれば、メニューはすべてコース料理だから、一人頭一万円前後はかかってしまう。そのせいか、お客のほとんどが中年の夫婦とか、どこかの企業の部長さんといった人たちが多い。
そこに、何と場違いの若い男女が四人で現れた。席に着くなり、着飾った二人の女の子は、オーダーをする前にトイレに立った。残された男の子二人は、どうもこんな店に来るとは、まったく予期していなかったというラフなスタイルだ。
二人の男の子は、女の子が席を立つなりメニューを開いた途端に二人で顔を見合わせるや、ズボンの後ろのポケットから財布を出し合い、持ちあわせがいくらあるか調べ始めた。どうも、小銭を足せば何とかこの場を凌げそうだという結論に達したのか、引きつった二人の表情に笑顔が浮かんだ。
そこにトイレから女の子たちが戻って来ると、入れ替わりに男の子二人がトイレへ。メニューの見方がまるで違う。女の子二人はワインを一生懸命に物色している。ボーイを呼んで、二、三言葉を交していた。
ボーイが姿を消したところに、トイレから男の子たちが戻ってくる。再びメニューを開き、若い男女は楽しそうな表情を見せていた。そこにボーイが、いかにも高そうな高級ワインを一本運んできた。
男の子の笑いが、引きつった。しかしここまで来たら、流れに身を任せるしかない。なみなみと注がれたグラスのワインを、二人は複雑な表情で一気に煽った。
若い女は残酷だ。
永遠にマザコン
先日、新宿のあるデパートのワイシャツ売り場で、こんな光景を目にした。
小ぎれいに着飾った中年の奥さんが、若い女子定員に案内されながら、いろいろなブランドのワイシャツを物色していた。柄が気に入らないのか、カラーの形が納得できないのか、広い売り場を行き来している。
ふと見れば、息子と思しき22、3歳の若者が、二人の女の後をついて回っている。どうやらその息子のワイシャツを、母親が選んでいるらしい。
ある高級ブランドのところで、ようやく母親の気に入ったワイシャツが見つかった。母親はそれを手に取って、何やら息子に話しかけた。ところが息子の反応はいまひとつ。気に入ったのか、気にくわぬのか、わからない。
ただ女子店員と母親の二人だけが、笑顔で言葉を交わし合い、三枚ほどのワイシャツを買っていった。ワイシャツ売り場を立ち去ろうとする親子の会話が耳に飛び込んできた。
「これじゃ、お母さんが結婚するみたいね」
社会人になっても母親の言いなり、自分の好みも主張できないこの息子が結婚するのか。そう思ったら、結婚する相手の女性が可哀そうに思えてくる。父親は仕事に明け暮れ、母一人、息子一人で育てられた男は要注意だ。母親の押し付け的愛情にどっぷりつかり切って育った男は、外見はどうあれ、まず、使いものにならない。
最近の「年上の女」ブームとワイシャツ売り場の息子は、無関係とは思えない。男にとって女房を比護(ひご)するものから、逆に自分を庇護してくれる存在に代わったのである。独身女性は、そのあたりをようく、わきまえておかなくてはいけない。
育ちが良くて、母性本能を刺激されるような男は、結婚初夜から亭主が息子に成り下がってしまうからだ。
若い男の“第二の母親”捜し
中年男性と若い美女。そんな取り合わせが、日本にすっかり定着してきた。
上司とOLというオフィスラブは、その典型だが、いまや女子大生もオジサンと恋をするようになった。
いわく。
「オジサンは何を言っても怒らない」
「デートしても、どこに行くか、何処で食事をするか、ちゃんと自分で決める」
「オジサンは大人である」
「オジサンは遊びと割り切っている」
若い女の子たちは、若い男とも付き合うそうだだが、オジサンとも付き合う。
「最近の若い男はよしよしされないとすぐに怒る」
「デートしても、どこで何をするか自分で決められない」
「早い話が子どもである」
「恋愛を楽しむ余裕がなく、すぐに結婚したがる」
男として、じつに情けない姿に成り果ててしまったものだ。
オジサンと若い女と若い男。この三角関係のなかで、若い男だけが、物事を分かっていない。若い女はオジサンを適当に利用しているが、オジサンもそれを承知だ。
男と女。もともと女のほうが精神年齢が高いから、若いうちは、女のほうが男よりはるかに大人だ。
さらに悪いことには、男がすっかりピーターパン症候群にとりつかれ、母親なしでは生きられない、ひ弱な男になっているから、若い女は子は若い男に飽き足らなくなってしまう。
オジサンと付き合うメリットは、そのまま若いピーターパンたちの逆の姿を現している。
若い男だけが、ひたすら甘える対象として、女を求めている。
若い女も、それを時たま可愛と思うが、年がら年中だとわずらわしくなってしまうのだ。
そこでピーターパンは何を始めたか。第二の母親捜しだ。
“年上の女”大流行!
男の「愛人願望」
日本一の長寿村として有名な山梨県の棡(ゆず)原村では、最近長老たちが自分の息子の葬儀に出ることが多くなった。村の平均年齢は七十六歳だから、たしかにお年寄りが多い。
なぜ息子たちは、早死にしてしまうのか。
理由はいくつもあるのだろうが、若いときの生活環境に問題があるらしい。長老たちは、どこ行くにしても歩いて行っていたし、食べ物は自然食ばかりだった。主食は玄米、麦ごはん。
息子たちは40代、50代、生活のなかに便利さが取り入れられた。冷暖房完備、一日中同じ温度、何処へ行くにしても車。食べ物といえば、ハンバーグにホットドッグ。いまの子供たちには将来、どんな人間になってしまうのだろう。
いまの日本は、若くなればなるほどひ弱になっている。ひ弱だから、すぐに疲れる。精神力も当然弱くなっている。
ある食品メーカーの新人社員の意識調査によれば、「出世できなくてもいいから転勤はしたくない」が相当の数にのぼった。
彼らの兄貴分に当たるべきベテランサラリーマンのあいだには、“愛人願望”が蔓延しているらしい。
ある連載小説がその契機になったらしいが、どうもせせこましくて行けない。彼らはいつも“○○願望”ばかりで、実行力が乏しい。
そんなに欲しけりゃやって見ろと言いたくもなる。
「良い人になる話は止めて、そろそろ良い人間になったらどうだ」
誰かが言った言葉だ。
体力ばかりじゃしようがないか、人間はまずは身体が資本。そして気力。
屈折した愛人願望は、女性に対しても失礼だし、第一健康によろしくない。
クリスマスイブの男
花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ
井伏鱒二(いぶせますじ)のこの名訳(漢詩)は、私のとても好きな言葉の一つだ。つらい思い出を、しゃれた気分で受け流されたら、人生はさぞかしちがって見えるかも知れない、と。
年末特有の感傷に浸っているのは、男ばかり。最近の若い女は「花に嵐のたとえもあるさ」を捨てセリフに、やらずぶったくりの悪徳商法的な見せかけの恋愛で、裕福な年の瀬を迎えている。
というのは、男は元来が単細胞で、女にモノをねだれると、決して悪い気がしない。カネがかかると嘆く半面、男は誰でも見栄を張りたがるものだ。ましてや、相手が恋人ともなると、ますます見栄っぱりになる。
こんな男の特性を見事についたのが最近の若い女たち、狙われやすいのが30代の独身男性か、懐具合のいい中年の部課長だ。
若い女たちは、不倫と見せかけ、あるいは本当に好きよと言わんばかりの笑顔でデートを重ね、何食わぬ無邪気さをよそおって、まず、安い物からねだりはじめる。初めは安いプレゼントでも満足しているが、そのうちに、要求するモノの値段が、ぐっと張ってくる。
女は貪欲だ。取れるものは何でも取ってしまおうと、無意識にエスカレートしていき、これ以上は無理と判断するや、急にそっけなくなる。こういう悪徳商法に引っかかるのは、ひっかけられた男が、アホなのだと言ってしまえばそれまでだか、同情の余地も少しは残っているだろう。
そんな被害者の男たちこそ、別れ際に女に言ってやるべきだ。さようならだけが人生だと。
今年のクリスマスイブも、また空しいプレゼントが飛び交うだろう。
つづく
“従っているふり”で見事に操縦
煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。