腹痛には重篤な病気の前兆かも
お腹の上の部分、みぞおちあたりの痛み。胃痛? それとも、ほかの病気? どんな痛みがどの位置で起こったかで、疑われる病気がある程度わかります。自分の症状と照らし合わせてみましょう。
お腹の上部には、特に重要な臓器がたくさん位置しています。みぞおちまわりには、食道や胃、十二指腸、心臓、膵臓、胆道などの消化に関わる臓器や、肝臓などのデトックスに重要な臓器が。
みぞおちの右側にあたる右上腹部には、肝臓、胆道、胃、十二指腸、右腎臓、膵臓。みぞおちの左側の左上腹部には、膵臓、胃、脾臓、左腎臓など。痛む場所と、臓器別に疑いのある病気をご紹介します。
<みぞおちあたりが痛いとき>
◯食道
マロリー・ワイス症候群・・・みぞおちの痛み、繰り返す嘔吐後の吐血・下血、立ちくらみをともなう場合も。
繰り返して嘔吐・出血し、検査で胃に縦走潰瘍を認められる場合。原因は、飲酒が関与する割合は30?50%、それ以外には食中毒、乗り物酔い、つわりなどが。痛みをともなう場合は、特発性食道破裂を起こしている可能性があり、出血量が多いとショック状態になり、輸血が必要になることも。
治療は、内視鏡検査で潰瘍を確認後、出血している場合は、止血処理をします。処置後は、潰瘍の深さによりますが、入院し、絶食、輸液療法などを。潰瘍の治療として、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬などの酸分泌抑制薬を服用します。嘔吐で出血した場合は、すぐに内視鏡検査ができる病院を受診しましょう。
特発性食道破裂・・・嘔吐後、突然バットで殴られたような胸痛や、上腹部痛が。胸が苦しくなるほか、呼吸困難、冷や汗、顔面蒼白に。
主に飲酒後の嘔吐により食道内圧が上昇し、食道が破裂するもの。嘔吐反射が起きた時、こらえようとしたために食道内に嘔吐物が充満し、瞬間的な内圧の上昇に耐えきれなくなった食道壁が破裂します。
すぐに手術が必要で、胸腔内や縦隔をよく洗浄し、破裂した食道壁を2層に縫合して十分なドレナージ(ドレーンチューブを留置する)を行います。なかには手術せず保存的治療で治るものもありますが、胸腔ドレーンの留置は必要です。
特発性食道破裂は診断、治療ともに難しく、死亡の恐れもあります。飲酒後の嘔吐の後、強烈な胸痛・腹痛を感じたら、直ちに病院を受診してください。
◯胃
急性胃炎・・・上腹部の痛み、もたれ感、食欲不振、吐き気、嘔吐など。
さまざまな原因によって起こされる胃の急性炎症。飲食物、薬物、ストレスが原因のものが多くあります。また、アルコール、外傷、外科手術、ピロリ菌の感染、アニサキス症の際にも生じることが。
原因がはっきりしている場合は、それを取り除くと、すぐに回復します。出血が強い場合には、内視鏡で観察しながら止血を。軽症の場合は、注意が深く様子をみれば十分。重症の場合は、内視鏡検査の可能な病院へ。
慢性胃炎・・・上腹部不快感、膨満感、食欲不振。炎症が強いときは、吐き気や上層部痛などの急性胃炎症状がでる。
大半がピロリ菌の長期感染によって引き起こされるもの。
急性胃炎のように完全に治りきることはまれ。胃が萎縮して、胃酸や粘膜を分泌しない状態になることが原因ですが、これを改善する根本的治療はありません。胃の不定愁訴には、胃の運動を改善する薬剤や胃の粘膜を保護する薬剤が処方されます。
また、ピロリ菌に感染している場合は、除菌します。慢性胃炎自体は、大きな心配の必要がない病気ですが、胃がんの可能性を除外するため、1?2年に1度の内視鏡検査を受けておくと安心です。
胃アニサキス症
・・・食後数時間以内に、急激な上腹部痛や嘔吐などの症状が。まれに、アナフィラキシーショッック症状に陥ることも。
アニサキス類の幼虫が寄生した魚類(マサバ、スケソウダラ、マアジ、スルメイカなど)を食べることによって、胃の粘膜に入り込んで発症する病気。症状の起こる数日以内に
新鮮な魚類を食べたかどうか、そして、胃内視鏡検査で虫体を確認することで診断されます。胃内視鏡で虫体が確認されれば、その場で摘出。確認できなくても、この病気が強く疑われる場合には、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬の投与により症状は軽快します。
生鮮魚介類を好む日本人の食文化と密接な関係がある病気です。最も多い感染源は、シメサバやイカ。これらを食べた後に体調が悪くなったら、内視鏡検査の可能な医療機関へ。
急性胃粘膜病変
・・・突然の上腹部痛や吐血・下血。
急性胃炎のうち、急激に強い上腹部痛や吐血、下血などの症状が現れ、内視鏡で胃のなかを観察すると、出血、びらん、潰瘍(かいよう)性変化を伴っているもの。
原因はさまざまあり、ストレス、鎮痛剤や解熱薬などの薬物、アルコール・香辛料などの多量摂取、アニサキスの感染、ピロリ菌など多数あります。すみやかな内視鏡検査が唯一の診断法で、原因がわかればそれをすぐに除去。そのほかは、胃酸分泌抑制薬がとても効果的です。出血があれば、内視鏡的止血術などが行われます。重い合併症がなければ、予後のよい病気です。
胃潰瘍
・・・食後30分から1時間で、上腹部痛が起こる。ただし、20?30%では痛みが出ないことがある(特に非ステロイド性消炎鎮痛薬由来の場合)。吐血や下血をともなう場合も。
胃酸の影響を受けて潰瘍を胃に形成するもの。40歳以降の人に多く見られる病気です。原因は、ピロリ菌に由来するものが全体の70%前後。もうひとつ、成因としていわれているのが、非ステロイド性消炎鎮痛薬です。
日本ではアスピリンが最も有名ですが、こういった薬剤は、胃酸から胃粘膜を守るプロスタグランジンの合成を抑制する作用をもっています。そのため、薬を服用すると胃の防御機構が障害され潰瘍を形成してしまうのです。胃潰瘍は治癒するのに2?3カ月かかります。
ピロリ菌の除菌療法のほか、薬由来の胃潰瘍の場合は原因となる薬の使用を中止する、または胃粘膜のプロスタグランジンを補充する、プロスタグランジン誘導体の投与が行われます。治療法は確立されてきましたが、激しい上腹部痛や吐血・下血をともなう場合は、胃に穴が開く可能性もあるので、ただちに救急外来を受診してください。
胃軸捻転症・・・上腹部の膨満感、激しい腹痛、嘔吐など。
胃の異常な回転や捻転によって起こる比較的まれな病気です。胃は靭帯(じんたい)、腸間膜(ちょうかんまく)、腹膜(ふくまく)などによって固定されていますが、新生児や乳児ではこれらの靭帯の固定が比較的弱いために容易に捻転を生じます。
急速に生じた捻転の程度が180度を超えた場合には完全閉塞となって循環障害を起こし、胃壁の壊死(えし)、穿孔(せんこう)(孔(あな)があく)を合併してショック状態となることが。
そのため、急性型では慢性型に比べて死亡率が高くなります。慢性型で横隔膜や胃に異常がなければ、体位の工夫、食事を少量ずつ回数を多く摂取する、浣腸による排便・排ガスの促進で軽快します。
急性型で胃管挿入で軽快しない場合は、緊急の開腹手術を行う必要が。痛みや嘔吐が激しいとき、子供は小児科を、大人は内科または外科を受診してください。
胃がん・・・上腹部痛、腹部膨満感、食欲不振。早期の胃がんの多くは無症状。
胃の悪性新生物の95%を占める上皮性の悪性腫瘍で、日本では肺がんに次いで死亡率の高いがんです。原因は、ピロリ菌の感染のほか、食生活に関係があるといわれています。
たばこ、高塩分食、魚や肉のこげなど発がん促進因子の摂取など。がんの治療法は、粘膜の切除、胃切除、化学療法や放射線療法など、がんの進達度と広がりの程度、リンパ節への転移など、進行具合により異なります。新しい治療法も登場していますが、具体的な薬剤の選択や投与法に関しては、いまだ研究段階にあり、経験豊富な施設、医師のもとでの治療がすすめられます。
また、セカンドオピニオンを積極的に聞くことも大切です。胃がんは、早期に発見された人の5年生存率は97%で、今では早くみつければほぼ完全に治せる病気になっています。
無症状の場合でも、40歳を超えたら、内視鏡もしくはX線検査による健康診断を定期的に行う事が必要です。
胃肉腫
・・・自覚症状はほとんどなく、大きくなると胃の痛み、不快感、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹部膨満感などが。
胃の悪性腫瘍のうち上皮性のものを「胃がん」といい、非上皮性のものを「胃肉腫」といいます。
「胃肉腫」は、胃の悪性腫瘍のうちの約5%で、珍しい病気です。「胃肉腫」のうち頻度が多いのは、「悪性リンパ腫」と「間葉系(かんようけい)腫瘍」です。この「間葉系腫瘍」には、神経の特徴をもった「神経系腫瘍」と平滑筋の特徴をもった「平滑筋系の腫瘍」があります。
どれも原因は不明で、多くの胃肉腫は胃がんの検診の際に無症状で発見されることが多くなっています。悪性リンパ腫は、抗がん薬による化学療法で治療することが多く、間葉系腫瘍は切除することで診断と治療を同時に行います。胃肉腫の初期は無症状なので、定期的に健康診断を受けましょう。ソース元wikipedia
つづく
十二指腸・心臓