女子中学生。大切な親友が他の友人と楽しそうにしているのを見ると、嫉妬してしまいます
彼女とは共通の趣味があり、一緒にいると本当に楽しく、かけがえのない存在です。しかし、他の子といるのを見ると、その人に取られてしまい、離れていく気がしてしまうのです。本当は私のことが嫌いで、関わりたくないのではないかとまで思ってしまいます。
先日も、彼女が友人と二人で遊びに行く話を聞いてしまいました。私も彼女とよく遊びに行くのだから、同じだと自分自身に言い聞かせましたが、嫉妬心は大きくなるばかりです。そのせいで、彼女に冷たく当たってしまいます。
こんな気持ち、本人にはもちろん、誰にも話せません。スポーツや趣味に没頭しても気持ちは晴れないまま。自己嫌悪に陥ります。
彼女とはこれからも親友でいたいです。心が楽になる考え方を教えてください。(神奈川・Y子)
野村 総一郎 (精神科医)
友達のことが好きで好きでたまらない。その思いとてもよく伝わる手紙です。ただ、あなたの気持ちは単なる「好き」を超えて、友達を独占したいという感情まで高まっています。
これは「愛」と言ってよいレベルかも。愛には独占願望が含まれますからね。ちょっと評論家風に言えば、
「あなたの年頃にはこのような心理が起こりがち。これは来たるべき本物の恋愛の練習編なのだ」ということになりましょうか。
つまり恋愛では、周囲との調和を保ちながら、どうやって恋人を自分だけのものにするか、というやや難しい課題を乗り越える必要がある。今はこれを予行演習として、自分の体験から学ぶ時なのだ。そうだとしたら、今は大いに悩みなさい、ということになるかな・・・・・。
もちろん現実の友達への感情を大事にすべきことも確かです。それは二つのポイントがあります。一つは、彼女を束縛するような言い方を避けること。束縛されていると思われると、彼女は離れかねません。もう一つは、すでにあなたが書いている! 「これからも親友でいたいです。それだけは約束よ」と、はっきり口にしましょう。
三十代の女性。3ヶ月前から夫と別居中ですが、離婚に踏み切れません。
夫は交際中から、手を出されたり物を投げられたりしたほか、金銭面でも気苦労が絶えませんでした。別居を決めたのは、生後間もない子どもを抱いていると時に物を投げられたからです。これだけはしないと約束していたのにです。
夫は3人で暮らしたいと言うのですが、話し合うたびにガッカリするような言葉が返ってくるだけで、もう駄目だと思っています。幸い、私は正規職員として働いており、子どもを育てるだけの貯蓄もあります、今、避難している実家での養育も可能です。
ただ、家族で暮らしたかった、子どもに父親のいる人生を歩ませてやりたかったと、負い目を感じてしまうのです。気持ちがフラフラして、どうしたらいいかわからなくなりました。
離婚をスッパリ決める覚悟をどうしたら持てるでしょう。
暴力癖と金銭面での気苦労に悩まされ、やり直そうという誠実さも感じられない夫に対して、あなたの気持ちはすでに固まっているように思われます。それでもなお、離婚することをためらわせているものは何でしょう?
子どもには父親が必要ではないか、夫婦仲良く暮らしてこそ家族ではないか思いですね。お気持ちはとてもよくわかります。でも、いずれも「そうだといい」という一般論ではないでしょうか。
確かに子どもにとって父親の存在は大切です。でも、それは暴力をふるったり妻を苦しめたりするような父親ではありません。
幸いあなたは仕事を持ち、経済的に自立ができます。ご両親の支援もおありの様子。お子さんはあなたの愛と共に、祖父母の愛に包まれて豊かに育つことが出来るでしょう。
離婚の決意は結婚以上に難しいと言えます。後悔しないためにも徹底的に悩み揺れる時間が必要だと思います。ご自分の感覚を信じ、同時に現実をしっかり見つめましょう。世間一般のあるべき像にとらわれずに、あなたらしい子育てと家族を作ることにエネルギーを注いでください。人生案内 大日向 雅美(大学教授)
離婚後の父「子供に会いたい」
「面会」申し立て。10年で2.5倍
離婚後に親権をもたない親などが子供との面会を求める家庭裁判所への調停申し立てが、最近10年間で2.5倍に増加している。このうちの7割は父親からの申し立てみられ、子育てをする父親、“イクメン”が増え、離婚後も子供との交流を求めていることが背景にあるようだ。
埼玉県に住む公務員、岡田健治さん(42)=仮名=には、中学1年生の長男(12)と小学5年生の二男(10)がいる。しかし、5年前に妻が子供2人を連れて突然、家出。子供と会えなくなったため約1カ月後に、面会交流を求めて家庭裁判所に調停を申し立てた。妻もほぼ同時に離婚調停を申し立て。調停は話し合いがつかず訴訟の結果、2人の子供の親権は福岡県で暮らす妻が取得。岡田さんは子供一人に月5万円(計10万円)の養育費を支払い、月に1回、面会するという取り決めで2年前に離婚が成立した。
しかし、だんだんと面会は拒否されがちになり、今は長男の進学先も分からないとい状態だ。岡田さんは「もともと自分は育児に積極的で子供は母親よりも私になついていた。子供が親と会うのは当然のことなのに」と唇をかむ。
かけがえのない
平成15年に訳28万件だった離婚件数は25年には約23万件に減少してきている。一方、面会交流調停の新規受理件数は、15年に4203件だったが25年は1万762件と、10年で2.5倍に増加した=グラフ。
両親が離婚する子供は年間23万人に上がるが、日本では両親のどちらかが親権を独占する単独親権制。離婚時の末っ子の平均年齢が4.5歳(母子世帯)と幼く、養育の必要性などから母親が親権を持つ割合は約8割に上がる。離婚訴訟でも母親に親権を認める傾向が強い。
早稲田大法学部学術院の棚村政行教授(家族法)によると、面会交流を求める調停申し立ての7割が父親からとみられ、「育児にかかわる父親が増えたことが大きい。離婚後も子供との交流をしたいという気持ちが強いのだろう」とする。また、「少子化により、子供はかけがいのない存在になった。孫に会いたい祖父母が、息子を後押ししていることも一因」とみる。
親権奪い合い
面会交流の要求だけでなく、父母間で子供を奪い合うケースもあり、養育をめぐる対立は一部で激化している。親権を持つ親が親権を持たない親に子供を奪われたなどとして、子供の引き渡しを求める調停申し立ての件数は、25年までの10年で540件から1197件と2.2倍に増加した。また、親権とは別に、子供の同居者(養育者)として父母のどちらが適任か話し合う監護者指定調停の申し立ても、3.4倍に増加した。
子供と離れて暮らす親らで作る団体「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」(東京都渋谷区、会員数331人)の佐々木昇代表(51)は「最近は、父親が子供を連れて家を出ることも増えている」と指摘する。
棚村教授は「夫婦の対立に子供が巻き込まれると、子供に大きな影響が出る、離婚後も双方の親から愛情と支援を受けられるよう、子供の視点での支援が必要だ」と話している。
70代の夫 女性と連日電話
60代後半の女性。夫がカラオケ店で知り合った、私と同年代の女性とほぼ毎日、携帯電話で話をしています。
夫は70代。昨年、その女性とデュエットをして、すっかり意気投合し、何日は有頂天でした。後で知ったのですが、その後、携帯電話で毎日のようにはなしをしていたようです。
わたしの知らないところで、こそこそしていると思うとショックでした。大ゲンカになりましたが、夫は浮気ではないからと開き直り、反省の言葉もありませんでした。
結婚して40年以上。3年前に夫が大病を患って入院した際、私は半年間、片道1時間以上かけて通い、看病しました。やっと元気になり、それぞれ趣味を持って、のんびり老後を送りたいと思っていたのに。
私の存在は何なのかと思うと悲しく、心が折れました。夫は今もほぼ毎日、電話で楽しそうにしており、家庭は壊れました。とは言え、私はこの年齢になって今さら離婚もできません。(滋賀・A子)
人生案内 山田 昌弘 (大学教授)
あなたが長年尽くしてきたことを考えると、確かにひどいご夫君ですね。
ただ、人の心を縛ることはできません。いくら常識や倫理を持ち出して非難しようが、ご夫君が別の女性と会話をするのが楽しいという事実を覆せません。
ではどうするか。離婚はできないと高をくくっているから、つけあがるという面もあると思います。2人で直接話し合うと、罵り合いになるので、第三者に言い分を聞いてもらう必要がありますね。
信頼できる共通の友人や親戚はいませんか。恥ずかしければ、夫婦関係を修復する場として、家裁の調停手続きを利用することを考えてみてはどうですか。
今後、再び病気なったりした場合に誰に面倒をみてほしいかなどと聞き、あなたも希望を述べて妥協点を探る。そうすれば、ご夫君が将来の事を考えて、女性と話をしないことを約束し、つきあいをやめる可能性はゼロではありません。
それで気が晴れないかもしれませんが、ご夫君はルームシェアの相手と思って、趣味などあなた自身が楽しく、生活するところを見せつけてください。
夫が姑の言いなり
40代の会社員女性。今年結婚しました。夫が姑(しゅうと)の言いなりで、何のために結婚したか分かりません。
夫は一人っ子。姑が病気がちということもあり、マンションで夫の両親と同居することになりました。
何をするにも姑が決める状態で、住宅ローンや食費などは、夫の給料からだしています。
姑は身体が弱いのを理由に料理をほとんどせず、コンビニやスパーで惣菜を買います。
そして、みんながいる時は外食に行くなど、お金の使い方が無駄だらけです。
私はローンを早く返済するために、生活をできるだけ切りつめたいと思っています。無駄遣いをやめるよう、姑に話してほしいと伝えていますが、姑が怖いのか、何も言ってくれません。
甘えん坊なのはわかりますが、もう少ししっかりしてほしい。両親のためには一生懸命ですが、私が入院した時は見舞いにも来てくれませんでした。
姑とは別居したいと思っていますが、夫にはその気がありません。離婚した方がいいのか悩んでいます。(東京・S子)
人生案内 久田 恵 (作家)
夫は超のつくマザコンで、母親の言いなり暮らすことに疑問を抱かない人だったんですね。彼のその性格は、たぶんずっと変わらないように思います。
ここは、あなたが攻めに出て、姑に代わって家の主導権を手に入れるか、さっさと逃げるか、そのどちらかしかないと思われます。あなたの夫への愛情次第でしょうか。
責めるか逃げるかの選択に迷った時は、損得を捨て、自分の心身が自然と動いてしまう方へ行く。それがどんなイバラの道でも、後悔はしないと覚悟をするしかないと思います。
もしも、あなたが「攻める」を選んだ場合は、高齢になっていく姑の頼れる友になるなるのが一番いい道かと思います。
夫の家計管理はひとまず姑に任せ、料理の嫌いな姑に代わって、あなたが料理を担当すれば、たちまちみんながあなたを頼りにするようになると思いますよ。
頼れない夫を頼れば、悩みは消えません。自分が頼りにされる人になる、それが一番、葛藤の少ない道のような気がします。
派遣の40代結婚を断念
40代前半の派遣社員の男性。
これから、正規雇用の仕事に就けることはおそらくなく、結婚など、とても見込めません。
バブル経済崩壊後に高校を卒業し、一生懸命に働いたつもりです。いつかは家庭を持ちたいと思っていました。
しかし、正規雇用の仕事に就くことができませんでした。交際していた女性もいましたが、正社員になれない私のために、いつまでも結婚を待たせるわけにはいきません。
2人で話し合って結婚を断念しました。
両親に、結婚を断念することを伝えたところ、母は「お墓はだれが面倒見てくれるのか」と言って泣き崩れました。お墓には、祖父母と、若くして病気でこの世を去った、かわいい弟も入っています。
両親には本当に申し訳ないと思いますが、自分1人だけで食べていくの精一杯な生活です。結婚のことなどとても考えられません。無為に過ごしてきた人生が悔やまれます。
(群馬・R男)
人生案内 山田 昌弘 (大学教授)
結婚して子どもを育てることが、幸せの唯一の形ではありません。独身生活を楽しみたいという人もいます。それはそれでいいと思います。
ご相談から察するに、あなた自身、結婚したいという気もまだありますね。確かに派遣社員の男性は結婚には不利な面もあります。しかし、世の中、そんな側面だけで結婚するかしないかを決めるような女性ばかりではありません。
お手紙からは、あなたの家族思いで誠実な人柄が伝わってきます。交際相手に苦労をさせたくないから、別れたんですね、
女性もあなたのやさしい性格に惹かれたのだと思います。もし間に合うなら、プロポーズしたらいかがでしょう。2人で稼いで生活費を出し合い、家事を分担しながら、楽しい家庭を築くことはきっとできます。
間に合わなくとも、次を諦めないでくださいね、あなたを好きになってくれる女性はきっと現れます。
非正規社員の男性も、幸せな結婚生活を作れるというモデルになって見せる。そんな心持ちでいらしたら「婚活」を提唱した私としてもうれしいです。
次男のコミュニケーション不安
40代の主婦。大学3年の次男にコミュニケーション能力がないことで悩んでいます。
ほかのきょうだい2人は春休み中、友だちと会ったり、アルバイトやサークルで忙しかったりして、ほとんど家に居ませんでした。
しかし、次男だけは、コンビニでの深夜のバイト以外は外出せず、自室でスマートフォンをいじったりゲームをしたりして過ごしていました。私がたまにランチに誘うと、ついて来ましたが。
大学の新年度が始まってから毎日、通ってはいますが、一緒にランチをする友だちもいないらしく、昼過ぎに帰って来て、ご飯を食べます。入学当初から、「友だちはできた?」と何度も聞いていました。最近は嫌な顔をされてしまうため、聞けずにいます。
友達との楽しいおしゃべりもなく一人で過ごしているのかと想像すると、胸が痛くなります。これから社会に出てやっていけるのか、心配でたまりません(神奈川・M子)
人生案内 増田 明美(スポーツ解説者)
ひととあまり交流したくない次男の事が心配なのですね。でもコンビニでちゃんとアルバイトができているのですから、挨拶などコミュニケーションはとれているのではないでしょうか。
ひとはそれぞれ。一人でいるのが寂しくて、いつもグループの中で行動する人もいれば、一人でいるのが好きな人もいます。次男は後者なのだと思います。きょうだいと比べる必要はないと思いますよ。
かわいそうだと思うことを止めて、むしろ一人で、一つのことに没頭できる性性格なのだと前向きに考えた方がいいでしょう。そして、その長所を伸ばせるように応援しましょう。
そのためには根掘り葉掘り質問しないことです。黙って見守ってあげてください。
あなたが、どんな時も次男を受け容れてあげて、帰ってくる場所を用意していれば、そのうち自分から巣立っていきます。
その時もあんまり心配いでくださいね。「お母さんに信頼されている」という気持ちが、きっと社会でがんばるエネルギーになりますから。あなたは台所で鼻歌を歌うくらいがちょうどいいですよ。
人生相談 あすへのヒント
👩自分を否定されてつらい 東京都50代女性
居酒屋勤務です。将来、自分の飲食店を持つのが夢で、事務職を辞めてこの世界に飛び込んだのですが、怒鳴られてばかりで理由が分りません。
先日、お客さまのテーブルに水をこぼしてたばこと携帯電話を濡らしてしまいました。誠意を尽くしたつもりだったのでしたが、店長から「対応がなっていない」と怒鳴られました。以前に勤めていた店でも、同じような扱いを受けたことがあります。「あなたには相手を怒らせてしまうところがある」と言われます。そんなつもりはないのに、つらいです。10年前に夫と離婚しました。一方的に「お前が嫌になった」という理由でした。自分を否定されるたび生きているのがつらくなり、自分に存在理由が全くない気がします。
◆回答者 精神科医 熊木徹夫
ご質問だけで、あなたのお人柄や生き方を推察するには少々無理があります。が、推測を交えながら、お答えします。
あなたは恐らく、第一印象は悪くない方なのでしょう。というのも、これまでにいくつもの企業に就職できているようですし、結婚も果たされているからです。もし人当たりが悪くて、一目で他者に不快な思いをさせるのであれば、最初から誰も相手にしないだろうし、ましてやあなたの元夫が、自分の人生を大きく規定するはずの伴侶選びで、あなたを妻として迎える決意をするはずがない。しかし、いつも最後にはひどい言われようです。どうしてこうなるのか。
それはあなたが、初対面で相手にある程度の期待を持たせてしまうからでしょう。それは「空気が読める」という期待です。しかし、あなたはどうやらこの「空気読み」が決定的に苦手なようです。サービス業勤務にせよ、結婚生活にせよ、この“以心伝心”が自明の理とされています。あなたは𠮟責を受けるたびに、相手の顔色を懸命にうかがう。その叱責の理由は分からないが、試行錯誤の末、相手の怒りが静まると、そのたびに「空気の読み方」を“学習”する。本来、このようなものは、“学習”できるものでないにもかかわらずです。
ふあなたの不幸は、あなた自身、対人関係に最大の価値を求めること、そのなかで、超人的努力により空気を読もうとするものの、その営為が誰からも評価されないということです。その結果、常にあなたが自己存在への懐疑にまで至るのなら、やはりこういったことはあなたに向かないと考えるべきです。固定観念に縛られず、「「空気を読む」努力せずに済む生き方を探りましょう。そこで真の生きがいを見つけられるはずです。
もう👤のあなた・嫉妬のジレンマ
スマホなどで自分を撮影する「自撮り」の「コツ」や「秘訣(ひけつ)」がネット上であふれている。「イケメンに撮りたい」「モデルっぽく見られたい」。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に載せる自分の写真をいかによく見せるか、そんな願いに応えるかのようにな現象だが、精神科医の片田珠美はそこに潜む”病理”こう分析してみせる。
「池に映った自分の姿に見ほれて死んでしまったギリシャ神話のナルキッソスを思い出します。ナルシシズムの起源ですが、それこそ奇跡の一枚を自分で撮ってネットに投稿したいわけです。これは肥大した自己愛以外の何物でもない。人々のこの傾向は強まっていくのではないでしょうか」
スマホに取り付ける「自撮り棒」を人混みで振りかざしたりする迷惑行為が指摘されているが、マナーの話で収まるならまだいい。
問題は自己愛が引き起こす感情だ。他人の幸福を目の当たりにすると、自己愛が傷つけられて怒りを感じる。それが、他人の幸福を妬んだりする「羨望」である。片田は、ネット上であたかも他人の不幸を願うように、他人を激しく攻撃する風潮が広がっているのは、人々の間で自己愛とともに羨望も強まっているからだとみている。
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嫉妬とは自分が持っている幸福を失う恐れがあり、羨望は社会的地位、金、美貌、称賛など手に入れたいと願いながら、他人がすでに手中に収めているのを見て抱くネガティブな感情だという。
羨望と嫉妬は混然一体となって私たちの心にまとわりつく。
<羨望は他人の幸福が我慢できない怒り>。片田は17世紀のフランスの貴族ラ・ロシュフコーの言葉を引用しながら、「怒りを和らげ、穏やかな気持ちで過ごすために、他人の不幸を蜜としてなめずにいられない人が多い」と話す。そして社会に羨望が満ちている理由を次のように見る。
今の日本はかつての高度成長のような経済発展は望めず、夢を語れない状況で人々はおのずと「不公平感」を強める。「私はもっと能力がある。会社は私を正当に評価してくれない」といった怨嗟(えんさ)もひろがる。
格差も変質してきた。かつては大企業、中小企業ていった集団間の格差だったが、今は同じ職場の中に正社員や契約社員、パートが働き、隣人との格差をより強く感じてしまう。
一方で世の中には「やればできる」「夢はかなう」といったコピーがあふれ、自己愛をあおる。「自分はこんもんじゃない」と現実とのギャップに苦しんだ末、現実の方を否認、「自己実現を果たせないのは社会のせいだ」と、周囲への攻撃性を強めていく、こうして他人を罰したい他罰欲求が生まれ、モンスターペアレントやネット上でのバッシングなどさまざまな現象となって表面化するのだという。
👤
所有欲のある人間にとって羨望や嫉妬は普通の感情だ。神話にも取り上げるように古今東西、人々は子の感情に縛られ、悩まされてきた。
どうしたら、負の感情に振り回されずに済むのか。やっかいな感情を和らげる手立てはあるのか。片田はその”処方箋”をこう語った。「100㍍走をイメージしてください。隣のレーンの選手の邪魔をしても、勝者をうらやんでも意味がない。まっすぐに前を見て自分の走るコースだけを考えるしかない。自分がいる場所で、地道な努力を積み重ね、未来を切り開く、それしかないと思います。=敬称略 徳永潔
👪 息子より「かまってほしい」自覚なき親の暴走
今思えば、疑いようもなく虐待だった。
午前5時、まだ寝ている長男(8)を起こす。机に向かわせ、自作のドリルや漢字ドリルを与える。答えを間違えればもう一度やり直し、ミスを重ねれば頭をたたく、夜も同じことを繰り返し、長男をかばう妻には「出ていけ」と怒鳴りちらした。
尾崎学(39)=仮名=は9年前、妻(39)の妊娠を機に結婚した。半年後に長男が誕生すると、素直に感動がこみ上げた。だが、何事も長男が優先される生活にストレスを感じるようになり、長男と妻を「支配」する”もう一人の自分”が生まれた。
妻と長男は今年2月、突然行方をくらませた。警察に捜索願を出しに行くと、「家庭内暴力のために保護した」と告げられた、ノートに自分がしてきた行動を書き出して初めて、長男への嫉妬という感情と暴力を自覚した。
横浜市のNPO法人「女性・人権支援センター」が主催するドメスティックバイオレンス(DV)の加害者向けの更生プログラムに通うになった尾崎は、こう振り返る。
「妻の中で僕が一番であってほしかった。妻にかまってもらえる長男がからやましかった」
「親思う心に勝る親心」ということわざがある。子が親を思う以上に、子に対する親の愛情は深いという意味だ。
だが、家族間のトラブルを多く扱う「原宿カウンセリングセンター」所長、信田さよ子は「親が子に嫉妬することは珍しくない」と言い切る。自己肯定感の希薄な親だと、わが子もまた比較の対象であり、愛情は簡単に妬みへと転化するのだという。
<子供がうざい> <俺と子供のどっちが大事?>
大阪市で平成22年、生後間もない息子を浴槽に沈めて死亡させた父親(25)=傷害致死罪などで実刑判決=は事件前、そんなメールを妻に送っていた。
広島県の自宅で昨年、2歳の長男に至近距離からエアガンを360発乱射した父親(26)=傷害罪で実刑判決=も、「妻を長男に取られたと感じ、嫉妬した」ために犯行に及んだ。
子に対する親の嫉妬は、必ずしも暴力に結びつくケースばかりではない。信田によると、センターで増えているのが、娘の社会的成功や幸せを妬んで嫌がらせをする「毒母」に関する相談だという。
一流企業で順調にキャリアを積む娘を「出産年齢の上限を分かっているの」と叱責する母がいれば、娘が恋人とデートするたびに「あの男とは別れたほうがいい」と忠告する母もいる。しかも大半は尾崎と同様、娘への嫉妬を自覚していない。
「地位や財産をめぐる嫉妬が自覚されやすいのに比べ、子に対する親の嫉妬は子のために思う愛情と誤解しやすい。それだけに、いったん暴走すると歯止めが利かなくなる」信田は分析する。
「子供に愛情を感じられない」「子供は泣けば許されると思っている」
「ステップ」で理事長を務め、23年のプログラム開始以来、虐待やDVの加害者160人と接してきた栗原加代美は、親たちの未熟ともいえる発言を繰り返し耳にしてきた。
栗原はただ、こうした発言をする親たちも、自身の親から愛情を得られなかったり、逆に過剰な愛情を受けすぎたりした「被害者」とみる。「母性や父性は人間に先天的に備わった本能でなく、親からの適切な愛情教育によって身につくもの」と考えるからだ。
プログラムでは、子や妻に嫉妬や怒りを抱くことを「自然なこと」とし、それをいかにコントロールすべきかを受講者同士で議論させる。そして、自分の欲求に合わせて子や妻を変えようとする考えは間違いだと教え込む。
尾崎は7月、離婚調停中の妻側の代理人弁護士に、再び妻と長男に一緒に生活したいと訴えた。毎週プログラムを受講し、嫉妬の感情と付き合う方法が分かってきたからだという。
だが、家を出て半年近くがたっても、妻と長男の行き先は分かっていない。自覚なき嫉妬の代償に、尾崎は今も苦しみ続けている。 =呼称、敬省略 (林佳代子)
「お母さん、こっち見て」赤ちゃんの生きる力
👪「嫉妬」という言葉の持つじっとりとした暗さと、無垢(むく)な赤ん坊のかわいらしさは、すんなり結びつかないかもしれない。しかし、わずか生後2~6か月のころは嫉妬と言える感情を持っていることが、実験で明らかになっているという。
「驚くことはないんです。赤ちゃんは早い時期から大人と似た心理を持っているというのはすでによく知られている」。赤ちゃんの心を研究する京都大学大学院教授、板倉昭二(発達科学)はそう話す。 カナダの研究者が3~6か月の赤ちゃんを対象に行った実験では、赤ちゃんをあやしていた母親がそばの女性に話しかけたりしても赤ちゃんはそれほど機嫌が悪くならないが、母親が会話に夢中になると、とたんに赤ちゃんは不快のサインを出すという。
のけぞったり、母親にすがりつこうとしたり、言葉にならない身振りで母親の注意を引こうとする。
「心理的な結びつきがなくなる不安。それを自覚しているのです」 赤ん坊の嫉妬。母親ならだれでも心当たりはあるのは、弟や妹が生まれたときの上の子の反応だろう。
「本当に驚いた。手加減がないからすごいんです」。大阪市城東区の高倉さやか(28)は、弟が生まれたときの長女の行動を振り返る。
長男が生まれて1か月ほどたったとき、泣き叫ぶ声で駆けつけると、1歳になったばかりの長女がかみついていた。
長女と長男の年の差は11か月半。「小さすぎて、弟だとか全く理解できていなかったと思う。『誰の子』って感じなんでしょうね」。弟の授乳をじゃまし、四六時中だっこをせがむ。「これって嫉妬だな」と感じた。
赤ちゃんのような行動をして親の気を引く「赤ちゃん返り」は知っていたが、「そんなかわいらしい感じでなくて、もっと激しい感情だった」。
同じようにわが子の行動に戸惑う母親は少なくない。「大阪市立男女共同参画センター子育て活動支援課」には、母親らからの相談が次々に寄せられる。
哺乳瓶で飲みたがったり、おもらしするようになったり、赤ちゃん言葉を使うようになったり、下の子をたたく子も珍しくない。「兄弟は生まれて初めてのライバルになるわけです。子供は正直。気持ちの出し方はストレートです」と相談員(47)は話す。
相談員自身も経験がある、聞き分けの良かった長女が、五歳下に妹ができると急に幼稚園に行くのを嫌がりはじめた。理由を尋ねると、「ママがとられるやん」。妹への対抗心に触れてドキリとしたという。
👪
「嫉妬は悪いことでしょうか」。同社大学赤ちゃん学研究センター教授の小西行郎はそう問いかける。
小西に言わせると、「嫉妬のような負の感情こそが人間の自然な感情」なのだという。
例えば、飢えという「不快」があって初めて、満腹の「快」があるように、生きていく上で、まず人間が先に抱くのは不快であり、不安であり、不満である。
つながりが先に失われるかもしれないという不安から、赤ちゃんたちには嫉妬し、母親にサインを送る。
お母さん、こっち見て・・・・。
にもかかわらず今の若い母親は、わが子が嫉妬や嘘といった負の感情をあらわにすることを嫌がる傾向があるという。行為だけ見て悪いことだと決めつけ、その行動の背景をじっくり考える余裕が今の育児になくなっている。
「嫉妬のサインをきちんと受け止め、不快を快に変えてあげるのが育児の肝要なところ。赤ちゃんにとっては感情を出すことで自分の存在を確認している。母親が自分を受け入れてくれる存在であるかどうか、赤ちゃんたちは試している。愛情を深めるチャンスだとおもってほしい」 =敬省略 中井美樹
産経新聞015年9月4日
子育て相談
上の子ばかり怒ってしまう
Q 3歳と0歳の男児がいます。下の子の妊娠中から、上の子をほったらかしがちにしてしまいました。上の子は下の子に意地悪をします。食べ物の好き嫌いも多いように思います。上の子を理解しようと思ってもできずに怒ってしまい、最近は「ママ大好き」と言われてもイライラします。
夏休みに両方の実家に数日ずつあずかってもらっていたら、まもなく新学期なのに幼稚園に行きたくないと言い出しました。
A 下の子が生まれた途端、上の子へのかかわりはどうしても減ってしまいます。上の子は親の愛情を取られたように感じ、嫉妬心から意地悪をしたり、自分もかわいがられようと、赤ちゃんのようになる、いわゆる「赤ちゃん返り」もよく起こります。
毎日怒られてばかりいるのに、わざわざ「ママ大好き」と言いに来るのは、ママに気に入られようという作戦なのだと思います。なのに、そこで怒ってしまうのは、「その言葉は本心でないはず」という心当たりが、ご自身にあるからではないでしょうか。
お子さんは今、一番ほしいのはお母さんからの関わりと愛情です。お子さんに対してイライラしない時間もありますよね、そんなときに、唐突でもいいので「ママね、あなたがだ~い好き」「いつも怒ってごめん」の2つの言葉を(まずは2日に1度)言ってみてください。あなたの本心がまさにそうだということは質問文からもうかがえますので、きっと言えると思います。お子さんはその言葉に安心することでしょう。
そして、10秒程度でいいので、お子さんが笑顔になる関わりを一回でも多くしてみてください。テレビを見て笑ったなら「何が面白いの?」と聞く、ブロックで遊んでいたなら「何ができるのかな?」「できたら見せてね」。何ができたときはハイタッチ。そんな小さな関わりの連続で、自分も愛されていることを実感し、幼稚園にも喜んでいくと思いますよ。幸い、実家は両家とも理解ある様子。疲れたときは、たくさん甘えていいと思います。
015年8月26日 原坂一郎
間違えるとすぐ理性をなくす
Q 小学6年の息子がいます。勉強が嫌いというか、間違えることをひどく嫌います。塾のテストの答え合わせは間違っているもの○にして100点にし、間違いが多いと号泣しながら解答用紙をビリビリ破ったり私に暴言を吐いたりと、理性がなくなります。「間違ってもいいんだよ」と言ってもダメ。低学年からこうなので病気かもしれないとも思いますが、本人を傷つけるようで検査に行くのをためらっています。
A 人間だれしも、自分が間違えたときは悔しさを感じたり、落ち込んだりすることはあります。しかし、お子さんの悔しがり方は確かに度を超しており、そういうことが日常的に起こるならば、お母さんも大変ですよね。
20年前の話ですが、年長クラスを持ったとき、お子さんとよく似た行動を取る男の子がいました。自分のものがない▽遊びを中断させられた▽先生から怒られた―などの際、すぐにキレて興奮し、手が付けられなくなるのです。お母さんは穏やかな感じで、育て方や接し方に問題がなさそうなところも似ています。
私の作戦は、その男の子と友達関係になることでした。1対1で遊ぶ▽一緒に笑う▽活躍する場を与える▽ほめる―を繰り返した結果、私の指示はよく聞くようになり、随分落ち着きました。しかし、振り返ってみると、あの興奮の仕方は尋常ではなく、今でいう発達障害か何かの問題が潜んでいたように思います。
勉強で間違ったときだけならいいですが、他の人はできるのに自分ができなかったときやゲームで負けたときなど、少し敗北感を味わっただけでそういうことが起こるなら、しかるべき機関に相談に行っていいと思います。そういう行動は幼少期に多く見られても、小学校高学年までは続かないからでする
病気とは限らないので、まず学校に相談して適切な機関を紹介してもらってください。新学期の今がチャンス。授業がないため、先生に気持ちの余裕があり、親身に相談に乗ってくれると思います。 (こどもコンサルタント)原坂一郎 015年8月16日
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