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第十二 「この仕事をやりながら、生きるヒントを探しているのかもしれないね」

本表紙 酒井あゆみ 著

この仕事をやりながら、生きるヒントを探しているのかもしれないね

 渡辺 美穂 26歳/横浜出身
 幼稚園の幼児教室の教師をしながら、週四日渋谷のホテトルをやっている。サーフィンが好きで、綺麗な茶色に日焼けをし、シャギーが入ったロングヘアの毛先も、海水で金髪に近いほど色が抜けている。本人によれば、これでもだいぶ落ち着いてきそうだ。どこから見てもサーファーな女の人。昼間の月収、手取り21万。夜の収入、月に60万くらい。

 私ね、不倫中なの。相手はテレビによく出ている人。うーん、名前は言えないよ。フリーのアナウンサーとだけ言っておこうかな。知り合ったきっかけは、水商売やってたときの友達の紹介。もう付き合い始めて二年くらい経つかな?

それでね、今日大阪に会いに行くの。今、彼が大阪で仕事中だからさ。でもその前に美容院に行かなくちゃ。明日は授業参観日だからさ、この真っ茶色の髪だとヤバイからさ、黒く染めるんだ。でももう何度も染めても色が抜けちゃんだよね。

 彼ったら異常なくらい神経質で、「東京じゃバレる可能性が高いから、大阪に出張のときに会おう」って言うんだよ。だから名前はダメだって。言ったら殺されちゃうよ。今は一時期ほどじゃないけど、それでもときどきテレビに出てるからね。だけどそんなに売れてるってわけでもないのにさ、「スキャンダルはいけない」って、そればかり気にしているんだ。だから移動のときも絶対別々の便で行くし、ホテルも一緒に泊まることは泊まるんだけど、部屋は念のために別々に取らなくちゃいけない。すっごく面倒くさいんだ。そんなことしたって、もう誰もおまえのこと知らねぇっちゆうの。

 私って愛人じゃなくて不倫相手だからさ、べつにお金もらっているわけじゃないんだ。だから交通費とかホテル代とかけっこうお金がかかってしょうがないのよね。だもね、今思うんだけどさ、やっぱりテレビの人ってブラウン管で見ているだけの方がいいな。だって彼さ、絶対クスリか何かやっていると思うくらい感情の起伏が激しいんだ。一緒にいても何をするかわからないから、いつもハラハラしてる。前なんか、何も気に障るようなことしてなかったのに、ハンガーで顔殴ってきたし、タウンページで頭をガンガン殴るし。なんかね、精神病にかかっているんじゃないのって感じ。

 でも、それがなければすごく優しいし、やっぱり普通の人たちとは違う雰囲気持っているし、私も何だかんだ言っても優越感ってものがあるのかもしれないな。でも相手が離婚するって言っても、結婚する気なんてないよ。今は結婚願望なんか全然ないんだよね、

今の人いれて、今まで六人くらいの男と付き合ってきたけど、なんかね、私って本当に男運がないみたい。ろくな男いなかったなあ。アニメおたくで、パンツまでセーラームーンだか何だかの絵がプリントされてのを穿いてたり、健康趣味で、健康のためなら死んでもいいというような男とか。まあ、そういう男ばっかり選んじゃう私に問題があるんだろうけどね。

 ちっちゃい頃は本当、地味っていうか、おとなしい子だった。ボーッとしてたっていうか。三つ下の妹がいるんだけど、一緒にお菓子とか買いに行っても、私、お店でお金を払うってことを知らなくてそのままでてきちゃって、妹に怒られたりしてたなあ。なんか妹のほうがお姉ちゃんだったみたい。小学生のとき始めて一人でバスに乗った時も、お母さんに乗り方とか降りるところなんか何回説明しもらってもすごく不安で、運転手さんの隣でずっと行き先を呟いてた。

運転手さんもそんな私を見かねてか、「お嬢ちゃん、その場所はまだまだずっと先だから座っていた方がいいよ。止まる時になったら教えてあげるからね」って言ってくれて、その言葉でやっと安心して座れたの。本当、今考えると笑っちゃうぐらい情けない奴だったね。

 うちってね、厳しいっていうわけじゃないんだけど、ご飯は必ず家族四人揃って食べるっていうのが鉄則だった。まあ、父親がお役所勤めで、母親が専業主婦っていうのがあったからかな。「家族っていうものは、こうあるべきだ」っていうのが人一倍強かった両親だった。だからってわけじゃないけど、私と妹が大きくなって彼氏といわれる男ができたら、もう「すぐに家に連れてきなさい」って感じだった。

別に監視してるってわけじゃなくて、「うちの娘をよろしくお願いします」って言いたいの。彼氏と外でデートして家まで送ってもらうと、「お茶ぐらい飲んでいって下さい。それぐらいしないと失礼に当たるから」って、すぐに家族ぐるみの付き合いになっちゃうの。

 でも高校のとき付き合ってた彼氏を家に上げるのは、少し嫌だったなあ。だって彼、カッコ悪いんだもん。その当時、BOOWYとかのバンドブームのときでさ、私の彼もバンドやってたんだけど、その彼って流行りもんなって全然追っていない海外のヘビーメタルが好きな子でさ、髪の毛は金髪のソバージュで、靴下はなんかショッキングピンクだった。

彼が帰った後、お母さんから「あんた、どういう人と付き合っているの」って言われた時には参ったよ。だから家に上げるのは嫌だったんだ。

 そういえばある日さ、私が学校から帰ってきたら、玄関で妹の彼氏がお父さんの前で土下座しているのよ。しかも白いシャツを血で真っ赤にして、「お父さん、申し訳ありません」っ、妹は妹で部屋から出てこないし、お母さんはお母さんでお父さんのことを必死でなだめてるし、私は全然状況が分かんないまま、部屋に入ってろって言われた。それで次の朝、そのことを聞いたんだけど、みな口閉ざしてるんだよね。しょうがないから、妹の彼氏と仲が良かった私の彼氏に電話して、事の成り行きを聞いたのよ。

そしたら妹が部屋で彼氏とエッチしているときにお父さんが偶然開けちゃって、それを見たお父さんが半狂乱になって怒鳴り散らしたらしいんだ。妹の彼氏が慌てて服を着て必死に謝ってたところだったっていうわけ。でもさ、あとで笑ったのは、妹の彼氏の洋服についてた血糊って、妹の生理の血だったらしいんだよね。私それを聞いて拍子抜けしちゃったよ。お父さんが殴って血を出させちゃったのかと思っていたからさ。

 そんなことがあって、なんやかんやで高校三年生になったんだけど、進路を決めるときに両親と言い争いになったんだ。私ね、美術の大学に行って勉強したくてしょうがなかったんだけど、両親は猛反対で「そんな学校行っても、就職先なんてあるわけないだろう」って許してくれなかったの。だから私は交換条件っていうわけじゃないけど、頑張って四大行くから、その代わり一人暮らしさせて」って言ったの。最初は反対してたんだけど最後には認めてくれて、それでストレートで受かった四大の近くに部屋を借りてくれたのね。

 家からでもぜんぜん通える距離だったんだけど、家にいるのが息苦しくなっちゃってたからさ。だって、ご飯一緒に食べて、今日あったことを根掘り葉掘り聞かれて、喋りたくないときに黙っていると、「どっか体の調子が悪いのか?」って言ってくるしさ。彼とデートしているときだって、いつもご飯の時間を気にしなくちゃいけなかった。ずっと一緒にいたときだってあるじゃない。遅くなっても私のことずっとみんなで待っているのよ。だからすごくうざったくなってて、どうしても一人になりたかったの。

 大学の教育科を選んだのだって、親が「先生の資格をとっておけば、公務員と同じでいくつになっても生活が安泰だから」って言葉に従っただけなの。私は美術がダメならもうどこでもよかったからさ、言いなりになっただけなんだ。娘の将来を考えてくれるいい親っていうのも、案外疲れるもんだよ。

 だから大学に入って一人暮らしを始めたときは、毎日が楽しかった。もう「私が望んだのはこれなんだ!」って実感したよ。それださ、学費とか家賃は親に頼ってたんだけど、遊ぶお金が足りなくなっちゃうぐらい羽を伸ばしてたから、よく友達と一緒にイベントのコンパニオンのバイトとかしたの。そしたらある日、渋谷の109の前で車のキャンペーンガールやってたらさ、男の人が声をかけてきて、「うちのキャンペーンの手伝いしてください」って言われたの。

説明聞いたら水商売だったんだけど、体験入店でもいいって言ってくれたから「まあ、いいか」って働いたんだけど、時給五千円ももらえて、一日であっという間に二万円ももらえちゃって。それにバブルのときだったから、チップもすごくもらえたんだ。

それから水商売のバイトが面白くなっちゃってさ、もっと条件がいいところないかなって思って、友だちから情報を集めて六本木の大きなチェーン店の有名なクラブで働くことにしたの。そこに毎日出勤すれば、必ず有名なタレントに会えたし、ますますバイトが面白くなっちゃって。ヘビメタの彼氏ともそれまで付き合っていたんだけど、その頃別れちゃったのね。

 バイトが面白くて毎日行ってたから、けっこうお金がたまって、今まで親が借りてくれていたアパートを引き払って、目黒の家賃十五万のマンションに勝手に引っ越しちゃったの。親には、友達と二人で半分ずつ払って住むからって?ついて、やっぱりね、店の女の子の生活の話を聞いていると、家賃六万のアパートじゃ恥ずかしくなってきたし、そういう生活に憧れちゃったんだろうね。

 でも、夜、お店に行ってても、ちゃんと学校には行って単位をとってたよ。だって留年でもしたら実家に連れ戻されちゃうでしょ。それにせっかく大学入ったんだから、卒業しなくちゃもったいないじゃん。学校の生活は生活で楽しかったなあ。だって他の子よりはいっぱいお金は持っていたしさ、他の子は知らない大人の世界の話とか芸能界の話と知ってたから、自分の中では結構、他の暇そうにしている女の子を観察してるのが面白かったからね。それに趣味になったサーフィンで海外とかポーンと行ってたし。

 そんなことしてたらさ、大学卒業間近になっちゃったの。それで「さあ、就職」ってときにさ、せめて休みがなるべく多いところへ行きたかったのね。それであんまり子供って好きじゃなかったけど、休みがいちばん長そうな幼稚園に就職することにしたの。それも運よくて、夜のバイトに近い青山の幼稚園に入れたんだ。

 でも入れたまではよかったんだけど、先輩の先生とか同期の先生にすごくイジメられてね「あんたに子供教える資格なんてないわ」とか、「私の時代には、あんたみたいなはいなかったわ」って。その頃ってサーフィン焼けで肌は黒人みたいに真っ黒だったし、海水焼けで髪毛は真っ金きんだったんだ。でも私はそれなりに気を使って、働くときは髪毛を一つに束ねてたんだけど、そんな努力も空しくみんなにガミガミ言われた。

だからしょうがなく美容院に行って、髪を真っ黒に染めたんだけどさ、子供に「石油売ってる国の人だ」って言われたよ。挙句には、友達までに「ベトナム人」って言われるし(笑)。もう、なんて外観のことをこんなに細かく言われなくちゃいけないの? って、いつも思うよ。

 それで嫌だなって思っていたら、園長先生が幼児教室で働きませんかって言われて、今のところに移ったの。幼児教室ってさ、ひとことで言えば塾みたいなもん。一歳から四歳までの子供を相手に、お絵かきとか、初歩の算数とか国語といったふうに、教科別に教室を開くの。

でもさ、そこもなんとか真面目な人ばかりで、煙草を吸うのもいまだ私一人だけ。だから煙草を吸うとき「悪いかな」って思って外でコソコソ吸ってたら、「そんなみっともないことをしないでください」ってすごく文句言われて、もう平謝りだったよ。他の先生って、私を入れて十二人いるんだけど、教育熱心なひとばっかり。本当、偉いと思うよ。私なんか、子どもをちゃんと教育しようと思ったら、家庭しかないと思っているからさ、そんな使命感に燃えてる先生見ちゃうと、なんか白けちゃうんだよね。

 それにさ、園児の親たちを見ていると、いくら私が一生懸命教えたとしても、将来平気で人を刺しちゃうような子供ができあがるっていうのが見えちゃうんだよね。自分の子供だけ特別扱いしてもらおうとする親なんて、まだ可愛い方だよ。なんか、自分の価値観しか信じられないような想像力のない親がいっぱいいるよ。

大人より子供の方が悩んでることだってあることを知らないんだよね。子供を教育する前に親を教育しなくちゃいけないってこと、他の先生はちゃんと知っているのかな? まあ、知ってても知らなくても、私は教書の量を減らすことをしていればいいわけだからさ、べつにどっちでもいいんだけどね。

 幼稚園から幼児教室に移って半年経ったときくらいかな、お父さんが心臓の病気で入院しちゃったの。私も親のありがたさがわかる年頃にもなったし。一人暮らしにも疲れちゃっていたから実家に戻ることにしたの。それと同時に水商売のアルバイトも辞めた。だって私が居た頃って、週に一、二回っていう子はダメだったし、他の店に移っても絶対夜の十二時頃までいなくちゃいけないでしょ。私の実家って都内に出るまで一時間以上かかるし、いつも夜遅くに家に帰るってこともできないじゃない。それに親に変な心配かけちゃうからさ。だからしばらくの間は昼間の先生だけの給料で生活してたの。

 でも一回上げた生活レベルってなかなか直せないんだなあって、本当に思った。それに急に時間が空いちゃって暇だったしね。それで「何か水商売じゃなくて、もっと違う仕事で稼げる方法ってないかな」って思って、高収入アルバイトって書いてある雑誌を買ってきたの。でね、向こう〇コンパニオンって書いてあるところがけっこういい金額だったから電話してみると、「うちはホテトルっていう業種になります」って言われたの。

水商売長かったからさ、ホテトルって何をするところかすぐに分かって、「うわぁ、どうしょうかな」って思ったんだけど、電話かけた日が午前中に授業が終わる日で、午後からまるまる空いてたからさ、「まあ、いいか」って面接に行ったの。つい最近、ホテトルやっていたOLが殺された事件があったじゃん。私もそうなったら嫌だなって思ったけど、あんまり深く考えなかった。

 そしたら、その日は凄く混んでたみたいで、面接してすぐに仕事することに躊躇しちゃったの。最初のお客さんってインパクト強くって、今でも憶えているよ。小学校の先生やっているって言った男で、指の毛がすっごく長かった。たぶん二センチはあった。だって毛がなびいてたもん。今じゃ絶対そんなことはさせないんだけど、そのときはサービスのことなんて全然教えてもらわずそのまま行かされたから、もういっぱいベチャベチャチューされちゃって。よく見たらその男の歯って、よくお婆ちゃんがしている歯の周りだけが金歯になっているやつあるでしょ。それだったのよ。

もう気持ち悪くって、ことが終わって一人でシャワー浴びるときに、お湯を口の中に入れてうがいして、体中の唾液を全部出すくらいにペッペッやってた。その日は結局昼の一時から夕方までいて七万円もらった。それでこの仕事を続けてみようという気になったかな。

 でも私ってね、セックスっていうものがあんまり好きじゃなかったから割り切れたんだと思うの。初体験は十六歳のときで、相手は友達のお兄ちゃんで、二十七歳の男。別に付き合っていたわけじゃなかったんだけど、よく一緒に遊んでいた。それでその男って一人暮らしで、友達と試験勉強するときとか、その部屋を借りていたの。で、いつものように、友達と勉強していたら私は眠りこけちゃって、なんか重いなって目が覚めたら、その男が私の上に乗ってたの。いつの間にか友達は帰っちゃったしさ、なんか成り行きでセックスしちゃった。あっという間に事が終わったときには、「こんなもんなんだな」って少しがっかりしちゃったの。だってそれまで、初体験はああなってこうなって、人並みに夢見てたからさあ。想像してたものとぜんぜん違っていた。

 男の人の勃起したものって、十四歳のときかな。学校の帰り道によく変質者が出たの。その人って大学生ぐらいの人だったと思う。上着とかちゃんと着ているのに、あのモノだけ出して自分でしごいてて、通る私たちに見せびらかして射精していたの。もう何回も見た。初めはその人を見てびっくりしたけどその勃ってるモノを見たときは、「うわぁ、へぇー」って感心した。

「こんなもんが入ってくると、女の人って気持ちよくなるんだ」って、自分が体験するまで信じて疑わなかった。でも実際に経験してみるとぜんぜんよ。ちょっと痛いだけで、気持ちよくも何ともないからさ、「あの衝撃は何だったの」って感じ。

 それから男の人とは、付き合うと長いんだけど、なんか「これだ」っていう人と巡り会わなくて困っている。私、付き合っている男がいるときは絶対浮気なんかしないけど、フリーのときは、ナンパされるとタイプだったらエッチしてた。でも三十人ぐらいの男とやったけど、いまだにイクって感覚が分からないんだよね。どうしてだろう?

 それにさ、夜のホテトル始めてから、ますますセックスって重要じゃないって知っちゃって、気持ちの方が大切だっていうことが分かったよ。あと昼間の仕事のときにくどくど男の先生に文句言われても、「この人だってこんなことを言っているけど、やること一緒なんだろうなあ」って、醒めた目で見るようになって、「はいはい」ってサラリと流せるようになった。

 それにさ、教えてる男の子を見る目も、「うう、この子も大きくなるとこうなっちゃうんだろうなあ」って、ときどきふと考えちゃうことがあるの。そう思い始めると子供がすごく無防備なものに見えてきた。だから、どんな子供だっていずれは大人になっていくんだからさ、今のうちだけでも自由にいてほしいって思っちゃうんだよね。

だって、大人になっていろんなことあってさ、会社でも、友達や親の前でも本当の自分を出せなくって、安いラブホテルの狭い一室で、お金で買った見ず知らずの女の子に身の上相談をするようになったら、悲しいじゃない。

 夜のホテトルでの収入は、不倫中の彼と会うために使ったり、遊びで使ったり、洋服買ったりって、自分の贅沢に使っている。そして、昼間の仕事の給料は、まるまる手付かずで貯金している。なんかね、夜のバイトって適当にやっててもお金になるけど、昼の仕事ってやっぱり自分なりに一生懸命やっているつもりだから、

なんか昼間の給料を使うのがためらわれるんだよね。使いたくないっていうか。ホテトルをやり始めてから特にそうだけど、「昼間こんなに長い時間いて、こんなに苦労して、それでたったこれだけ?」って考えになってるからさ。

 だからといって昼間の仕事は意地でも辞めない。だって昼間はきちんと仕事していたいっていうのもあるけどさ、もう年だし、今辞めたら次の就職先なんて絶対にないと思うから。自分で「何をやってるんだろう?」ってときどき思うこともあるけど、夜の仕事って今しかできない仕事だから、お金を貯めるだけ貯めて辞めようって思っている。

お金って本当、大切だと思う。だって、お金がないと些細なことでモメるし、心の余裕がなくなってきちゃうじゃない。 それで自分ことで精一杯になっちゃって、他人を思いやる気持ちが薄れると思うんだよね。それに今してる不倫って、この先がないじゃない。お互いのどっちが辞めようって言ったら終わりなんだから。

 昔は二十三歳で結婚して双子を産むんだって思っていたけど、友達なんかで、結婚して子供を産んで生活感ありありの変わり果てた姿を見ちゃうと、結婚願望なんてなくなっちゃう。まあ、三十歳になったら焦るんだろうけどさ。親も心臓やっちゃっているから、後はそう長くなさそうだし、一人になったときの自分の老後を考えて、お金を貯められるまで貯めようと思ってるのね。

 昼の仕事は朝の八時半に行って、終わる時間は午後二時だったり四時だったりバラバラで。ホテトルはそんな不規則なスケージュールでも大丈夫だから、週四日は行っているかな。多いときはもっと行っているけど。土・日だけは、昼の仕事も夜の仕事もしないようにしているの。きっちりまとめて休みたいっていうか。

 でもね、この頃土・日になるとボランティアに参加しているのよ。ボランティアに参加し始めたのって、ホテトルやってしばらくしてからかなあ? お爺ちゃんお婆ちゃんと一緒に歩け歩け大会に参加したりして、何キロも歩いてるの。なんかねテレビで見たら、急に参加したくなっちゃって。どうしてだかわかんないけど、いきなりその気になっていまだに続いている。

 わたしって、昼間は幼児と接して、夜は男と接して、休日になれば老人と接して、ある意味で人生の縮図を見ているようなもんじゃない。なんかそれを見ているとさ、いろんなことを考えるんだよね。これからの生き方のヒントを探してるっていうか。そうだね。そうやって
考えてみると、幼児教室もホテトルもボランティアも、お金っていうよりは、もしかしたらこれからやりたいこと、これからの生き方のヒントを私は探しているのかもね。

つづく 第十三 「乱交プレイとている最中に、友達から携帯に電話がかかってくる時は、さすがに困るよ」