夜の夫婦生活での性の不一致・不満は話し合ってもなかなか解決することができずにセックスレス・セックスレス夫婦というふうに常態化する。愛しているかけがえのない家族・子どもがいても別れてしまう場合が多いのです。トップ写真

不倫の恋を終えた男たち

本表紙 著者=亀山早苗=

ピンクバラ男が「不倫の恋」をして得たこと、気づいたこと

男性は感情を表現するのがあまり上手でない。喜怒哀楽を素直に表現することがよしとされないような育てられ方をされてきたのだし、社会に出てからは感情的にならないように自制してきているから仕方がない。
 だが、恋ではそんな男性たちが変わる。既婚の女性が恋をしても、おそらく男性ほどには感情的な変化は表れないだろう。

 自分の中にそうした情緒を見出すようになった男性たち自身は、そのことをどう感じているのだろうか。
「今まで、人の気持ちがまったくわかっていなかった、と反省しています。
 もちろん今までも、人の気持ちに敏感になれたかどうかはわからないけど、少なくともわかるように努力できるようになった。
 女性ってよく共感してほしいと言うでしょう。でもそれがどういうことか、僕には具体的には分からなかったです。

 だから妻が何を言うと、すぐに自分の意見やアドバイスを押しつけていた。
 すると妻は妻で、『いいわ、もう』と話を打ち切ってしまう。自分から話をしておいて途中で打ち切るとはなんだ、と僕は怒っていたんです。
 妻が話していたのは別に具体的な意見を聞きたいからからではなく、ただ聞いて『そうだよね』と言って欲しかったんだ。ということに気づきました。

 それはつきあっていた女性から言外に教わったこと。日常的に顔つき合わせて暮らしている妻に言われても素直には聞けないことが、恋愛相手の言うことなら聞ける。
 恋愛は終わってしまったけれど、彼女から得たことは、これから罪滅ぼしの意味も含めて、妻との生活に役立てていけたらいいなと思いっているんです」(四十四歳)

「恋をしたからって、大きく変わることはないと思うけど、人生の引き出しに宝石が増えたかなという気がしますね。
 僕、結婚したのは二十四歳で早かったんです。妻のことは大事に思っているけど、結婚後は人を好きになってはいけないということもないでしょう。
 実際、僕は恋愛していないと仕事も乗れないタイプなんです。男の中には多いんじゃないかな。好きな女のためにも精一杯仕事をしよう、と思う。

 最後はこっちがふられて終わることが殆んどですが、僕としてはとにかく追われない。絶対に追わない。それだけは自分に言い聞かせているから。恋が終わると、またひとつ宝石が増えたような気がするんです」(四十九歳)
 恋愛が仕事をするエネルギーになるという男性は多いもちろん、家族は大事なのだが、家族に対してはエネルギーを注ぐ一方だから、自分もよそからエネルギーを補給しなければいけない。それが恋愛だ、と言う男もいる。
 
男性たちは、常に「頑張らなければいけない」と思い込んでいる。家族のために、会社のために。なぜなら「男だから」。社会で働く女性たちも肩に力を入れないと男社会で生き抜いてはいけないが、男たちも男であるがゆえに肩に力が入っているのだと実感する。

そんな男たちの唯一、リラックスできるのが恋愛であるのだろう。既婚の男性が恋愛をする場合、かなり高い確率で、妻には言えないことを恋人には話している。妻より恋人の方がずっと年下でも、怖がらずに弱みを見せることが多い。
 妻でない女性だとなぜ弱味を見せられるのか。やはり生活を共にしているわけではないこと、大黒柱という役割を演じる必要がないことなどが大きな理由のようだ。
 本当は妻の前で自分をさらけ出し、もっと人間同士としての絆を深めたほうがいいとは思う。
 だが、いいように考えれば、家庭と恋愛は別。と割り切るところに男の優しさと辛さがあるのかもしれない。

「それでも別れはつらいですよ。別れたくてつきあっているわけじゃないから。もうこれ以上つきあっていけないと思うと、気分的には暗くなりますね、どうしてオレには彼女を引き止めるだけの力がなかったのかな、と落ち込むし、お互いの人生が交わるような付き合いをしてきたのに、結果的には人生を共にできない。
こっちが結婚していてそういうことを言うのは勝手だと分かっているけど、それでも切なくてたまらない。一か月くらいは深酒してぼろぼろになりますよ。強がっていた男は弱いなあ、と酒を飲みながらつくづく思う」(五十四歳)

ピンクバラそれでも「人を愛する」ことをやめられない

自分の弱さがわかっている男は魅力的である。恋愛は楽しいことばかりではない。
 特に結婚してしまった後の恋愛には。男女を問わず、苦しみもまた付きまとう。ふとした拍子に、人生丸ごと転落してしまう危険性もはらんでいないとは言えない。
 自分さえ相手と家族の両方に誠実であれば、すべてが上手くいくとは限らない。相手が独身でも、親きょうだいもいるだろう。彼らの猛反対によって、引き離されてしまうこともあれば、“不倫”を誰かに告発されて社会的立場が危うくなる恐れもある。

 それでも人は愛することをやめられない。愚かといえば愚かかもしれないが、愛することをやめられないから、人は人として生きていけるのだと思う。
 取材の過程で、ある男性は言った。
「いい人生を生きられるかどうかは、人をどれだけ好きになるかで決まるような気がするんです。本気で好きになれる相手の幅は狭まっていくと思うんですよ。

 その中で、素敵な人とどれだけ本気で好きになって、いい関係をもてるかというのはとても重要だと思う。大きな仕事をするとか金持ちになるとか、それはそれで大事かもしれないけど、それだけでは充足感はないでしょう。もっと大事なことは、人を好きになること。人を好きなるここと人生の豊かさは比例する。この年になって、それがわかってきました」(五十六歳)
 人を好きになる。人と触れ合う。心と心で向き合っていく。彼が言うように、それこそが人として生まれてきたことの醍醐味なのかもしれない。

ピンクバラエピローグ

不倫の恋をしている女性たちの気持ちは、多くの本になっている。友人たちから話も聞く。だが、その相手である男性たちは、いったい、何を考え、何を思っているのかが見えてこない。
そんなところから、この本は始まった。
 友人知人のつてを頼り、多くの男性たちに話を聞いた。男性は感情表現が下手だ、と私は常日頃から思っているが、「好きだからつき合って、だめになったから別れた」とだけ語る人はいなかった。

特に既婚者が独身女性とつき合った場合、彼らは恋を楽しみながらも、その一方で悩んでいる。
 女性のように自分の心の揺れまで把握している男性は少ないけれど、恋を通じて、男性たちが情緒豊かになっていくのは確かのようだ。

 重い話も含め、プライベートな話をしてくれた男性には心から感謝したい。
 ただ、彼らには社会生活や家庭生活がある、すべての男性は仮名にさせていただいた。本人と特定できないよう、多少、状況を変えているところもあることをお断りしておきたい。

 読んでくれているあなたは、既婚者と恋愛している独身女性だろうか、あるいは既婚女性だろうか、はたまた独身女性と恋愛している既婚男性だろうか。いずれの立場にあるとしても、「不倫している」ことで、自分を責めないでほしいと思う。
 道徳的な観点は別にしても、恋に落ちてしまったら自分も止められないこともある。
 止められなかったら突っ走るしかない。だが、絶対に冷静な部分は失わないでほしいと思う。

 自分を否定したり自暴自棄になったり、相手や周囲を傷つけるとわかっているような行動は起こさないこと。
 自分の恋をどこか客観的に眺められる余裕を失わないでほしい。
 不倫は悲惨な結果も生むこともありうる。だがそれを恐れて恋から身を遠ざけてればいいというものではない。
 善悪で恋を斬ってはいけない、とつくづく思う。

 なかなか書けなかった私を励ましてくれた出版プロデューサーの原田英子さん、何度も締め切りを破った私を待ってくれた編集部の小田明美さんに心から感謝。
 以前、「低温関係」で恋愛や人間関係の低温化を嘆いたけれど、不倫の恋をしている男女は少なくとも“低温”ではない。ただ低温でないがゆえの苦しみがある、と今回は実感した。
 そして読んでくれたあなたへ。ありがとうの言葉と共に「ことを好きになるこが人生を豊かにすることだ」という、いちばん印象に残った男性の言葉を贈ります。

著者=亀山早苗=発行所WAVE出版
1960年東京生まれ
明治大学文学部卒 フリーライター
女性の生き方を中心に、恋愛、結婚、性の問題に取り組み、かつ社会状況を的確に分析する筆力に定評がある。著書多数ある。
著者=亀山早苗=目次へ戻る