彼は口を挟むことがさえできなかった。ふたりは黙って苦い酒を飲んだ。しばらくして、彼は、「オマエのために離婚したのに」と絞りですように言うのが精一杯だった「ごめんなさい」たった一言を残して、彼女は席を立ったトップ写真赤バラ煌きを失った夫婦生活・性生活は倦怠感・性の不一致となる人が多い、新たな刺激・心地よさを付与し。避妊方法とし用いても優れた特許取得ソフトノーブルは夫婦生活での性の不一致を改善し、セックスレス及びセックスレス夫婦になるのを防いでくれます

恋人が彼を見捨てるとき

本表紙 著者=亀山早苗=

ピンクバラ恋人が彼を見捨てるとき・「妻と離婚成立」その時彼女は…

妻と離婚成立、その時彼女は…
恋愛は意図するにせよしないにせよ、打算と駆け引きがつきまとう。特に目標に「結婚」の二文字がちらつきやすい不倫の場合は。
 恋人の女性も、煮え切らない彼の態度を見ているうちに、
「こんな状態は嫌だから、もうやめたい」
 と口走ることもある。そこでようやく“離婚”を妻に切り出したという男性がいる。

 若林康志さん(四十五歳)は五年前の四十歳のとき、離婚した。その時点で、三年近くつきあっている十歳年下の女性がいた。彼女のためにも早く離婚をしたいと考えていたが、妻になかなか言い出せなかったのだ。だが彼女には、
「いま離婚の話が進んでいる」
「妻は離婚に同意しているんだ。あとは財産分与と養育費の問題が」というように時期が迫って、着々と離婚が進行しているように話していた。
 だが、実は、「離婚」のりの字も、妻には言えずにいたわけだ。

 それが、恋人の「もう別れたい」の一言で背中を押されるように、妻に「離婚」を頼んだ。
「まさに、頼んだという状態です。懇願しました。なんとか別れてください。と。思ったより妻はあっさり承諾してくれました。
 だけど条件が、『今の家を私と子供にくれること』『預貯金は折半』『養育費は子供が大学を出るまで月々ひとり五万円。ふたりで十万円。子供が進学するときの入学金は別途払う』など、僕にとっては悪条件でした。結局、預貯金の半額三百万円だけで放り出されたようなものでした。
 子供たちは当時、十歳と七歳。これからまだまだお金がかかる。それでもそのときは、とにかく解放されて彼女と結婚できるなら、という思いで妻の条件をのんでしまつたんです」

 晴れて彼女と結婚できる。彼女も涙を流して喜んでくれた。ところが式場を決めようとしたとき。
 彼ははたと悩んだ。自分にはろくに金がない。とても立派な式など挙げられない。
 彼女にちらっとその話をすると、そこから徐々に誘導され、離婚の条件についてすべてを喋らざるを得なくなった。
 彼女は全てを聞き終わっても沈黙し続けた。
 それから彼女はなんとなく彼を避けるようになった。会うと言えば会いはするが、以前のように笑顔は見せない。
 結婚式を挙げずにとりあえず入籍だけしょう。と彼が言ってものらりくらりと返事を避ける。

ピンクバラ彼女が選んだ「結婚相手」は自分の部下

三ヶ月後、彼の部下である三十歳の男性に、個人的な話があると呼び出された。
「結婚するので、本当なら媒酌人をお願いしたいところだが、離婚されたばかりだからそれはお願いしない。だが、いちばん大事な来賓だと僕たちは思っている」

 という内容。いくら自分が離婚したばかりでも、部下の結婚を祝福するくらいの余裕はある。
 だが、相手が誰か聞かされて、彼は卒倒しそうになったという。なんと、自分の恋人だったからだ。

「あれほどの衝撃って、後にも先にもあのときだけですね、僕は二回くらい聞き返したんじゃないでしょうか、『本当か?』って。
 ヤツがおかしくなってしまったのかと思ったくらいです思わず、『いつからそういうことになっていたんだ』と言ってしまった。
 口調はきつかったと思うんですが、ヤツのほうは喜びいっぱいでそのことには気づかなかったようですね。
 ふたりは机も隣同士。ヤツは彼女の事がずっと好きだった、と。だけど彼女はデートにさえ応じてくれなかった。
 それが三ヶ月ほど前、彼女がなんとなく落ち込んでいる様子だったので食事に誘うと、珍しくOKしてくれた。彼女の悩みは何だったのかわからないけれど、その食事を機会に、自分の気持ちを必死にアピールし続けて、最近、ようやく結婚を承諾してくれたと言うんです。

 三か月前と言えば、僕の離婚の一件がすべて彼女に知られてしまったときですよね、それを聞いて複雑な気持ちになりました。
 彼女は経済的に安定しているから、僕と結婚したかったのか。お金がないと知ったらころりと別の男に転ぶのか。
 そういう女のために僕は全てを失ったのか。そう思うといて立ってもいられなくなって、その晩、彼女を強引に誘い出しました」

 会う前は怒りで体がわなわなと震えるほどだった。約束したバーで彼女の姿を見たときも、殴りそうになる自分を止めるのに一苦労という状態だった。
「だけどここで怒りを爆発させたら、かえって彼女の心を閉ざしてしまう。だから気持ちを押し殺して、『どういうことなのか話してもらおう』と言ったんです。すると彼女、急に泣き出しました…」

ピンクバラ諦めがついた彼女からの一言

彼女自身もいろいろ考えた。養育費を払い、なかかつ生活していくことを考えたら、自分は仕事を止められない。
 子どもも産めないのではないか。自分が産んだ子を、彼は前の妻の子供たちと比べるのではないか。何より、一人娘の花嫁姿を楽しみにしている両親や祖父母たちがすんなり賛成してくれるとは限らない。

「周りに祝福されない結婚をしようとしている自分が、急に恐ろしくなってしまったの。そんなとき、彼が声をかけてくれたの…。
 隣同士だし、男という感覚はなく、仕事仲間とし彼のことは信頼していた。ふたりで会ったら、男性として尊敬できる人だとわかってきた。
 何よりしがらみがない、何の心配もなく両親に紹介できる。そういう結婚をしたほうが、私は幸せになれると思ったの」

 涙ながらに語った彼女の話に、彼は口を挟むことがさえできなかった。ふたりは黙って苦い酒を飲んだ。しばらくして、彼は、「オマエのために離婚したのに」と絞りですように言うのが精一杯だった。
「ごめんなさい」

 たった一言を残して、彼女は席を立った。その瞬間、彼は自分でも思いがけないことを叫んでいた。
「『ヤツは俺たちの付き合っていたことは知らないんだよな。ヤツとはまだセックスをしてないんだろう。オマエの背中の右側にホクロがあることや、どこをどうすれば感じるか、彼に教えてやろうか』。
 自分がとてつもなく嫌な男になっているのは承知しているんだけど、止められなかった。
 これで僕の人生は終わりだ、そんな思いにかられていたから。
 だけど彼女はまったく動じることなく、『私があなたを本当に好きだった。今でも好き。だから嫌いにさせないで』とはっきり言った。
 それで私は諦(あきら)めがつきました。
 あれだけはっきり『好き』というのは、逆説的に彼女が私以外と男性と結婚するという意志を表明したように聞こえたんです。
 以前、彼女は言ったことがある。好きなのは単なる感情だけど、愛するのは意志だ、と。
 結婚は意志がないとできないのよ、と。そのことを私に最後に訴えたんでしよう」

ピンクバラ彼はふたりの結婚式に出席した。

ふたりの上司として、新郎の素晴らしい人間性を、新婦の細やかな性格を、ユーモアを交えながら話した。
 直属の上司の話はリアルで楽しいものとなった。

「結婚式の一週間前、最後に彼女とふたりで会いました。私は運転手付きの車をチャーターして、夜のドライブを楽しみました。
 湘南のレストランで食事をし、最後は都内の高級ホテルに泊まりました。
 どうしても彼女と険悪なまま別れたくなかった。
 それは彼女のためじゃないんです。険悪なまま別れたら、私はもう立ち直れない。

 家族の生活をめちゃくちゃにし、彼女にまで悪い印象のままだったら、救いがなさすぎる。
 だからこそ、そういう行動をとったんです。スピーチしながら、私はその晩のことを思い出しました。不思議ですね、目の裏に涙がたまって、それが体の中をざーっと流れていく感覚があったんです。あんな経験は初めてでした。目から涙が出るうちはまだいいのかもしれない。体の中を流れる涙は、外に出ていかない分、つらいんですよ」

善悪で割り切れない男女

 彼の失ったものはあまりにも大きい。同時に、何も報いられることは無かった。
 それを彼に非があると責めるのは酷(こく)というものだろう。社内でも出世頭と目されていたのに、今も三年前と同じ課長職。
 もう部長になることはないだろうと彼は踏んでいる。離婚が原因というよりは、やはり自分に仕事の覇気(はき)や情熱が以前ほどなくなったのを実感しているからだろう。

「ある種、変な諦観(ていかん)がありましたね。がんばったって何になるんだ、というような。あれから三年たちますが、彼女は会社を辞め、子供が生まれました。今は家族で海外へ赴任しています。ヤツはけっこう出世するんじゃないでしょうか。
 今思えば、彼女には不思議と男にやる気を出させる才能があるのかしれない」

 口調からは、彼女に対する未練がまだ感じられる。
 彼自身は、もうまったく彼女のことは考えないと言っているが。
 結婚は女の一大事業だ。特に結婚を機に仕事を辞めて家庭に入ろうと考えている女性にとっては、相手の収入や社会的な将来性に自分の人生を委(ゆだ)ねるも同然。
 だからこそ、彼女は慎重にならざるを得なかったし、ひとり娘として大事に育ててくれた両親の事を考えると彼との結婚に踏み切れなかったというのも正直のところだろう。彼女をずるいとも言い切れない。
 善悪では割り切れない、だが何かずしりと重いものを感じさせられる話だった。だから男女の話は深遠なのだろう。
 つづく 妻は夫の不倫をどう見るか