広場の入り口がソウルの東西と南北をつなぐ大通りの鐘路(チョンノ)と世宗路の交差点になっている。ここは今は横断歩道があるが以前は地下歩道があるが以前は地下歩道だけだった。この地下歩道にはいつも雑貨やビデオ、CDなどを売る屋台や風呂敷を広げた露天商が座り込んでいる。
外国人の往来も多い韓国の表玄関だけに見苦しい。そこで以前、ソウル市長の記者会見の際、「あれは無許可の路上販売のようだが何とかならないのか ? 」と質問したことがある。答えは「貧しい生計型の露天商は黙認している」というものだった。実態は荷車で商品を運び込んでいるから生計型より企業型といった印象なのだが、業者の既得権として放置されている。
一方、地上の広場には無許可のテント村が出来ている。一昨年、大量の犠牲者が出て韓国を揺るがした「セウォル号沈没事故」の犠牲者支援団体が政府批判キャンペーンのため、勝手に設置したものだ。テント数は十数個で、今や窓ガラスや冷暖房付きの事務所風で活動家たちが寝泊まりしている。
野党系の反政府運動のちょっとした拠点になっているため保守派は撤去を要求しているが、野党系のソウル市長はそれを拒否している。政府も内心、大いに迷惑しているが、「セウォル号犠牲者の心情」を看板にした支援団体の主張や世論の同情に気を使い、不法施設なのに撤去できないでいる。
これが大韓民国の表玄関の風景である。日本大使館前の慰安婦像の問題もこの延長上にある。慰安婦像も支援団体が地元の鐘路
区役所の許可なしに、勝手に公道である歩道を引っぱがしコンクリートを流し込んで建ててしまった無許可の施設である。区役所も政府もその無許可、不法ぶりを放置したままのだ。
韓国外務省は「民間団体が建てたものなのに政府があれこれいえない」などと公式に発言しているが、国家として法治を否定したとんでもない無責任ぶりだ。外国公館にたいする“侮辱施設”や至近距離での集会・デモといった“脅威”は国際法でも違法である。 朴槿恵大統領は就任に際し「非正常化の正常化」を公約したがこれは国家としの秩序の立て直しのことである。韓国は慰安婦像問題で“放置国家”ではない法治国家としての“国のかたち」を問われる。
(ソウル駐在員論説委員)
日本よふたたび
私は縁あって韓国の現大統領とその父親の朴大統領の二人と知己がある。歴代の大統領中では傑出していたと思われる朴正熙大統領とは、実にしげしげと面談し打ち解けた会話を持つことができたものだった。
彼は特に当時結成していた青嵐会を高く評価してくれていて駐日大使をしていた李厚洛を通じてしばしば我々の仲間を招待してくれていた。ある時は福田赳夫さんを交えて限られたメンバーで休日のゴルフ場を借り切りにしてプレーしたりしたものだった。
彼の娘さんで現大統領との知己を得たのは、彼女父親が暗殺された時、福田さんと同行し朴さんの自宅に弔問に出かけた折のことだった。両親を暗殺で失い孤独に留守宅を守って私達を迎えてくれた彼女の印象は実につましく質素なもので強い印象を受けた。
その彼女が女ながら大統領になりおおせたのは、父親の後にろくな大統領続かず北に比べて押され気味の政情に飽き足らぬ国民が彼女の父親への畏敬の念を絶ちやらずの故とも思われるが、それにしても娘さん方はさしたる指導力も発想力も感じられず、政治は財閥関係の不祥事にも介入できずにお手上げで、特に日韓関係に関しては言う事やること父親とは大違いで昔思うと感無量なものがある。
私は最近列強の植民地支配について研究しているというイギリスの学者の『朝鮮が瞬間的に幸せになった時代』なる本を贈られてきて読んだが、それはまさに日本の朝鮮統合についての記述だった。断っておくが、日本の朝鮮統治は植民地支配でなしに、あくまで彼らの議会が採決し自ら望んで行われた合併であって、それによってこそ朝鮮の近代化は進みロシアの属国化は免れたのだ。
ある時酒の席で朴元大統領は思いがけぬ述懐をしてくれたものだった。
「自分は貧農の息子で勉強をしたくてもできずにいたが、日本人がやってきて子供を学校に通わせぬ親は罰を食う、ということで親も嫌々許して小学校に通うことができた。
そこでの成績がよかったので日本人の校長に勧められ、ただで通える師範学校にいかされた。さらにそこの校長が私を見込んで、これからは軍人の時代だからと推薦されて満州の軍官学校に送られ首席となった。
そして、他にもいた日本人の子弟をさしおいて卒業の際の答辞を述べさせられたものだ。あれだけの事をさせる民族はあまりいないと思うな」と。
そしてまた突然私に「あの竹島は厄介なことになるよ、あれは李承晩が国際法を無視してやった線引きで、その内必ず困る火種になると思うから、今のうちにお互いダイナマイトでも仕掛けて無くしてしまったらいい」と。
彼なら今問題の慰安婦について果たして何と言うだろうか。
当時人口2千万人しかいなかった朝鮮で20万人もの若い女性たちを官憲が本当に拉致していったとしたなら、当時の朝鮮の男たちは無為のままにそれを看過していたのだろうか。
敗戦後の日本の街で在日のいわゆる三国人たちが暴れ回っていた頃、戦争帰りの若者たちは絶対の支配力を奮っていたアメリカ軍のMPにも逆らって自警の組織を作り彼らに対抗して戦ったものだ。それが後に暴力団化して『安藤組』や『銀座警察』ともなったものだが、当時の朝鮮にはこうした気骨のある男たちは果たしていなかったのだろうか。
従軍慰安婦の問題は歴史の名を借りた意趣晴しの作り事でしかありはしない。それは歴史という冷厳な現実への政治的歪曲であって真実への冒瀆(ぼうとく)に他ならない。あの朴元大統領がもし存命ならお互いの将来のために少し頭を冷やせと言ってくれるにちがいないが。
2015/11/16日 産経新聞 石原慎太郎 寄稿
産経抄
ドイツの社会学者、ウェーバーは、解決不可能で不毛な過去の責任問題追及に明け暮れる態度を「政治的な罪」と呼んだ。
そしてこう訴えた。「政治家にとって大切なのは将来と将来に対する責任である」(『職業としての政治』)
▼韓国の朴槿恵大統領は13日までに共同通信などの書面インタビューで慰安婦問題について、被害者が受け入れ、韓国民が納得できる解決策の提示を日本政府に要求した。相変わらず視線は過去に固定されている
▼日本側にも言いたいことは山ほどある。
11日の日韓外務省局長級会議では、日本側がソウルの在韓日本大使館前の少女の慰安婦像の撤去を求めた。像は外国公館の威厳の侵害防止を定めたウィーン条約に抵触するが、韓国側は「民間団体が設置したもので関与できない」と拒んだ。韓国外務省報道官も「解決策を日本が先に提示すべきで、順序が違う」とにべもない
▼像を建てた反日団体、韓国“挺対協”は「政府の政策について最終的な拒否権を持つ」(元韓国外務省幹部)という有力圧力団体だ。日本政府に対して、責任者の処罰や国家賠償などを「法令上できない要求をしており、事実上、妥協する気がない」(東京基督教大の西岡力教授)とみられる
▼結局、朴氏が言う「納得できる解決策」はどこにもないのではないか。たとえ日韓政府が歩み寄ろうと、挺対協が否を言えば振り出しに戻る。挺対協は、慰安婦像の撤去にも応じないだろう
▼朴氏はこれまで日本に繰り返し「誠意ある行動」を要求してきたが、その具体的中身には言及しない。実現可能なことを口にすると挺対協の反発を買うかもしれないが、げたを預けられた日本にとっては難儀な話である。
朝日新聞・慰安婦報道の主なポイント
「独立検証委が報告書」朝日新聞・慰安婦報道の主なポイント
・1992(平成4)年1月12日前後に「92年1月強制連行プロパガンダ」が完成
・プロパガンダが事実でないことが証明された後も、「広義の強制性」論を展開し、責任を回避
・プロパガンダが日本の名誉を傷つけているのに、第三者委員会も朝日の責任を回避する議論に終始
・第三者委員会が広義の強制正論議を批判したのに、朝日は受け入れていない
朝日新聞の平成3年から4年1月にかけての一連の報道について「強制プロパガンダ」と断じ、数々の虚偽報道によって事実無根の「日本軍による朝鮮人女性の強制連行」を内外に拡散させたと主張している。
検証委員が重視したのは、4年1月11付朝刊トップの「慰安所 軍関与示す資料」という記事だ。これは、国内で誘拐まがいの悪質な慰安婦募集を行う業者を取り締まるように求めた軍の通達に関し、「朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行」「人数は8万とも20万ともいわれる」などと事実と異なる説明文を付けた内容だった。
また、朝日が翌12日付社説で「挺身隊の名で勧誘または強制連行され」とも重ねて記した点にも着目し、「全国紙の中で、社説でこのような虚偽をかいたのは朝日だけ」と指摘した。
昨年12月に報告書を出した朝日の第三者委員会は、前者の記事について「宮沢喜一首相訪問の時期を意識し、慰安婦問題が政治課題になるように企図して記事にしたことは明らかである」と認めた。ただ、後者の社説に関しては特に問題視していない。
さらに、朝日の第三者委は、同誌報道の海外の影響は「限定的」などと低く見積もったが、独立検証委の見解は大きく異なる。
例えば、米紙への影響を調べ島田洋一福井県立大教授は19日の会見で、米3大紙の報道を検証した結果を明らかにした。
それによると、慰安婦の訳語としての「comfort woman」と「性奴隷」、朝日が虚偽と判断して関連18本の記事を取り消した朝鮮半島での強制連行の証言者である「吉田清治」の3つのキーワードは、「4年1月以前は全く出てこない」という。
同様に、独立検証委は朝日報道が韓国や国連に与えた影響の大きさも実例を挙げて指摘している。
今月18日には、朝日報道によって「精神的苦痛を負った」などとして、在米邦人らが朝日に慰謝料などを求める訴訟を東京地裁に起こしている。これに関連して、米国で調査した高橋史郎明星大教授は会見で「いじめの具体例は私が聞いただけでも10件以上ある」と説明した。日本人子弟が中国系の生徒から日本人であることを責められたり、韓国人の男子からつばを吐きかけたりしているという。
独立検証委は結論の中で「国際社会に蔓延しているプロパガンダを消し去るため、朝日が応分の負担することを求める」と訴える。
朝日には、一連の誤報が引き起こした事態から逃げない真摯な対応を願いたい。阿比留瑠比。
米「慰安婦」教科書で日本総領事館「間違い」共著者に削除を求める。
米国の公立高校で使用されている世界史の教科書に「旧日本軍による慰安婦強制連行」など事実に異なる記述がある問題で、ハワイ州ホノルルの日本領事館は9日、教科書の共著者のハーバート・ジーグラー・ハワイ大学准教授に事実誤認を指摘するなどの申し入れを昨年12月に行ったことを明かした。
10日の米紙ワシントン・ポストは申し入れについて報じた。
それによると、ジーグラー氏は昨年暮れ、日本総領事館職員から「教科書について協議したい」との申し入れを受け、これを断ったが、職員2人が大学を訪れ、「間違い」を指摘されたという。
日本政府が教科書の文章の削除を求めることは「私の言論と学問の自由に対する侵害」だと批判している。
一方、日本総領事館は9日、産経新聞の取材に対して、ジーグラー氏とのやり取りの詳細は明かせないとしながらも「昨年12月に慰安婦問題に関して執筆者に申し入れを行い、事実誤認や、我が国の立場と相いれない部分が存在することを指摘した」と述べた。
米歴史学者19人が発表した、教科書にかんする「いかなる修正にも応じない」との声明をまとめたコネティカット大のアケクシス・ダデン教授もポスト紙に「声明は日本たたきでなく、日本の仲間を支援するためのものだ」と述べた。
記事は、慰安婦問題で日本政府の責任を追及する吉見義明・中央大教授の研究が声明の根拠になっていると紹介。教科書を出版した米大手教育出版社マグロウヒルが「記述は史的事実に基づく」として修正を拒否したことも伝えている。
「慰安婦問題 米から支援の声」ワシントン駐在客員特派員
マイケル・ヨン氏といえば、全米で知られたフリーのジャーナリストである。
2003年から米軍のイラク介入で前線に長期滞在し、迫真の報道と論評で声価をあげた。09年ごろからはアフガニスタンでも同様に活動し、米国内での知名度をさらに高めた、名前からアジア系を連想させるが、先祖は欧州系、数世代が米国市民だという。
ヨン氏のリポートは米紙ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズや雑誌多数に掲載され、大手テレビ各局でも放映された。
「イラクの真実の時」といった著書なども集めてきた。
そんな著名な米国のジャーナリストが日本の慰安婦問題の調査に本格的に取り組み始めた。 米国、日本、韓国、タイ、シンガポールなどでの取材をすでに済ませた段階で、ヨン氏は「米欧大手メディアの(日本軍が組織的に女性を強制連行して性奴隷にした)という主張は作り話としか思えない」と明言する。
ヨン氏はこの趣旨の調査報告を間もなく米国系のメディアで公表するというが、自分自身のホームページでは「慰安婦問題での日本糾弾は特定の政治勢力の日本叩きだ」とまで断言する。
慰安婦問題での世紀の冤罪を晴らそうとする日本の対外発信の試みにとっても、やっと一条の光が米国側から差してきたようだ。
そのヨン氏と10月前半、2回にわたって東京で会った。慰安婦問題などの情報や意見の交換ということで、かなりの時間をかけて話し合った。
日本では慰安婦問題の研究や調査の関係者に多数合い、日本側の資料にあたったという。 米国でも、国立公文書館での資料調査や、グレンデール市の慰安婦像設置の経過取材などを済ませたとのことだった。
「日本軍が組織的に20万の女性を強制連行して性的奴隷にしたというのならば国家犯罪となるが、そんな事実は出ていない」
「どの時代でも軍隊に売春はつきものであり、日本の慰安婦も大多数は普通の意味の売春婦だったのだろう」
「それでもなお(日本軍の強制連行による性的奴隷)と断じる主張は政治的意図のにじむ捏造であり、日本を同盟国の米国や韓国と離反させるための日本叩きだろう」
ヨン氏のこういう主張は、米陸軍の1944年のビルマ(現ミャンマー)での慰安婦尋問書や日本の新聞の慰安婦募集広告の検証の結果だともいう。
そのうえで同氏は現代の日本について以下のようにも述べるのだった。
「現在の日本ほど人道主義、民主主義、平和主義に徹した国は全世界でも珍しい。
米国にとっても貴重な同盟国だ。であるのに米側が慰安婦問題で日本を叩くのは敵対勢力を強め、友邦を弱めるに等しい」
ヨン氏は、オバマ政権が安倍普三首相の靖国神社参拝を非難したことも日本側の慣行への干渉だからおかしいとして、「自国の戦死者の霊に弔意を捧げることは万国共通であり、戦犯という概念もその当事者が死ねばなくなるはずだ」とかたる。
ヨン氏も10月中旬、靖国神社を参拝した。 今度は各国の元軍人たちに呼びかけて、集団で靖国参拝をしたいともいう。
米国側にこうした意見が存在することは日本側の官民も改めて認識するべきだろう。「朝日新聞の2度目の転機なるか!!!?」
韓国が以前、今の朴クネ大統領の父の朴チョンヒ政権のころ、日本のマスコミは韓国から「韓国を独裁政権と批判しながらなぜ北朝鮮の独裁は批判しないのか」とよく非難された。
当時、日本では北朝鮮支持の朝鮮総連や韓国の反政府・野党勢力の主張が幅を利かし、その影響を強く受けていたからだ。
背景には、過去の軍国主義日本を否定し、ソ連や中国などの社会主義や共産主義を新しい時代の理想とする戦後的な雰囲気があった。
韓国・朝鮮に対しては昔、日本が支配したことを「申し訳なかった」とする”贖罪意識”が強かった。
とくに北朝鮮にたいしては「社会主義幻想と対外的贖罪意識」が重なり、腫物に触るような尊敬と同情みたいな不思議な感じがあった。
筆者も歴史的贖罪感から韓国・朝鮮に関心を持ち始めた一人だから、これは実感でもある。
そんな中で、”反共産主義”の論調で知られた産経新聞はほぼ唯一、反共と経済発展で頑張る韓国を支持し北朝鮮には厳しかった。
これに対し過去の日本に対する否定や「社会主義幻想と贖罪意識」が強かった朝日新聞は北朝鮮への同情と支持を惜しまなかった。
朝日は長い間、親・北朝鮮的とみられてきたが、それが日本人拉致問題の表面化で大きく変化する。
「北朝鮮がそんなことをするはずがない」という姿勢だった朝日も、拉致事件が事実として確認されることで北朝鮮報道を軌道修正せざるをえなかった。
それまでの朝日は、北朝鮮からの亡命者証言や脱北者が伝える北朝鮮の実態、さらには韓国の情報機関の北朝鮮情報などにはきわめて冷淡で、大きく報道することは無かったように思う。
大韓航空機爆破など北朝鮮のテロに対しても「北の犯行される」などと、微妙に断定を避けた曖昧な書き方が多かった。
北朝鮮への遠慮、配慮からである。
しかし拉致事件をきっかけに朝日は”北朝鮮幻想”から目覚めた。
慰安婦問題での検証、訂正、おわびのような明確な態度変化の表明は無かったが、 その後の北朝鮮報道はより客観的で厳しいものになった。脱北者の証言などもよく紹介されるようになった。
今回の慰安婦誤報問題は朝日にとってそれに次ぐ第2の転換点だと思う。誤報の最大の原因は韓国・朝鮮に対する過剰な贖罪意識にある。
被害者の主張はすべて正しく正義であり、加害者の日本の主張は虚偽で悪であるという観点から、被害証言に過剰に肩入れした結果である。
被害者に対する同情や「申し訳ないことをした」という贖罪感そのものが悪いわけではないが、それが過剰になって目が曇り、本当のところが見えなくなったのだ。
従って第2の転換には「過剰な贖罪意識からの脱皮」が不可欠になる。
ただこの過剰な贖罪意識は歴史における日本悪者論というか過剰な日本否定論につながっている。
したがって問題は韓国・朝鮮との関係を超えて日本の歴史をどう評価するかという話になってくる。
いわゆる”反日的”といわれる歴史認識だが、朝日新聞がその転換にまで踏み出せるかどうか。(ソウル駐在客員論説委員)黒田勝弘
つづく
侵略といえない朝鮮統治