しかし、ここではあえて、更年期障害について考えてみよう。女性の場合は卵巣機能の低下による卵巣ホルモンの減少が原因となって起きる更年期障害は、男性では何が原因となっているのだろう。男性の場合は女性のように「閉経」といったはっきりした生理的な変化が起こるわけではないのに、それ以前には明らかに見られなかった症状につながるようなホルモンバランスの乱れなど本当に起きているのだろう。
女性の更年期障害のチェック、治療を行うのは婦人科だが、男性の場合は「男性科」があるわけではない。「性差医療」の必要性を主張する人は、医療は男性の身体をモデルに行われており、女性は不当に扱われている。と言うが、この辺りに関してはむしろ男性の方が不利益をこうむっている。今のところ、男性の更年期障害は、「(一部の)泌尿器科」が扱うことになる。泌尿器科の専門医たちの見解をまとめると、次のようになる。
男性の更年期障害の原因は、男性ホルモン(テストステロン)の減少である。しかし、閉経などがない男性では、女性ほど急激にホルモンは減少しないし、個人差も大きく「年齢ごとの正常値」もはっきりしない。男性更年期の場合、重要なのは「今の男性ホルモンの数値」ではなくて、「以前からどのくらい減少したか」なのだ。しかし、その”以前の値”が記録されているケースは多くないので、診断はさらに難しくなるのだという。
結局、「ホルモン異常」と診断がつくほどのケースは少ない、ということだが、多くの泌尿器科医は、女性の更年期と同じようにこの男性更年期には、「ほてりや冷え、うつ症状や不眠、筋力の衰えや体のだるさ、性欲減退、勃起力の低下」など心身にわたり多岐に症状が現れるのだと説明している。
ホルモンの低下が原因であれば、必然的に治療は女性更年期と同様、「足りないホルモンを補う」という男性ホルモン補充療法になる。しかし現段階では、男性ホルモンの補充は女性のようにパッチで簡単に、というわけにはいかないどころか、内服薬さえその安全性が確立されていない。少なくとも二〜三週間に一回は、通院して、筋肉注射を受け続ける必要がある。また、効果が出るまでの期間もまちまちで、中には二〜三ヶ月と長い時間がかかる人もいるそうだ。一方、一度効果が出始めた人の中には、治療開始後半年くらいで「もうホルモン補充療法をしなくても大丈夫」と治療の必要性がなくなる人もすくなくないのだそうだ。
一度低下した男性ホルモン生産機能が、注射がきっかけで再び高まるとは考えられな。これは精神科医としての推測なのだが、男性ホルモンの補充療法には、心理的な暗示効果もあるのではないだろうか。「もうオレは人間としてダメなのだ」と思っていた彼らは、「それはあなた自身のせいではなくて、男性ホルモンの影響なのですよ」と言われたことで安心し、注射の効果でさらに「まだ大丈夫なんだ」と力づけられ、これまでにあった不快な身体症状も改善し、さらには精力さえ回復する例がある、ということだ。とくに男性の場合は、「うつ病」と診断されるより、男性ホルモンの投与で回復する更年期障害、と言われた方が、納得の度合はより高いのではないだろうか。このことからも、男性の自尊心が「精力」に依存していることがうかがえる。
逆に、精神科医は男性に更年期障害と診断を下すことや、男性ホルモン投与を行うことに慎重にならざるをえないのだが、泌尿器科医たちの中にも、同様の慎重派は少なくない。この問題に積極的に取り組む筑波大学附属病院泌尿器科は、患者さん向けのホームページでこう注意している。
最近分かってきたことですが、男性更年期外来を受診する患者様の半数以上にうつ病を認めました。男性更年期障害の症状は様々ですが、うつ病の症状もかなり重複することや、精神科や心療内科にかかるのは抵抗がある方がいらっしゃることが、その一因かと思われます。また、既に精神科で投薬を受けているにも関わらず良くならないと言って来る患者さんも多くおられます。初診時に質問票に答えていただき、男性ホルモンを測定することにより診断が可能ですので、一度相談しにいらっしゃって頂ければと思います。当科でも両方の科にかかり治療を継続されている方もいらっしゃいますし、精神科・泌尿器科が互いに連携し、患者さんを紹介しあい、患者さんにとって最も良い治療を行っていきたいというのが当科の考えです。
このあたりも非常に微妙な問題であるが、「なんとなく調子が悪い。とくに精力の減退が‥‥」と気にする五〇代〜六〇代の男性の中にも、「うつ病」と言われて不調の原因がわかったと思える人、「男性更年期障害」という診断を与えられている納得する人、そして「ただの気の持ちようです。何でもありません」と言われて安心する人、いろいろなパターンがあるのではないか。
私は現在、ある医療法人の診療所を開設した、スタッフも全員女性の「女性外来」で精神科を担当しているのだが、「女性外来」併設する病院は全国的に増えつつあり、更年期の年代の女性の治療に女性の婦人科医と精神科医が協力してあたる。というケースも珍しくなくなった。しかし、男性の場合は「男性外来」で男性の泌尿器科医と精神科医が‥‥などという話はまだ聞いたことがない。しかし、男性の中に自分のプライドや自信の拠り所として「精力」にこだわり続ける人がいる限り、その問題はいくらかでもその心境が理解できる男性医師による「男性専用外来」で扱った方がいいのではないか。少なくとも女性精神科医は、「週三回が二回に? それは悲しいですね」とは言わないはずだ。
それにして、男性更年期の場合はどうして「性欲や勃起力の低下」がこれほど問題になるのだろう。女性の更年期障害では「イライラ。不安感」などの心理的な症状や「動悸、発汗」などの身体的症状がメインであり、「性欲がなくなったんですよね」などと訴える人はあまりいない。もちろん、その背景には「五〇代以上の女性が自分の性欲について悩むことじたい、はしたない」といった価値観もあるのだろうが、”女性と性”がタブーではなくなってきた最近になっても、更年期の女性の口からそういう相談が語られる機会は増えていないのではないか。
中年以上の男性向けの精力回復剤や勃起力維持のためのツールは今も昔も星の数ほどあり、「勃起力パワーアップ!」などうたったサプリメントの広告には次のようなフレーズや体験談が並んでいる。
「六五歳、余裕で三日連続のセックス!」
「七二歳でも週一バリバリ現役」
「毎朝、朝勃ちするようになり、悦びと感激です――六七歳」
この人たちは、いったい何のためにここまで「勃起」や「持続」にこだわるのであろうか。六〇歳になっても七〇歳になっても「妻とセックスしたい」と願う男性が多いのか。
それは違うはずだ。これまでの章でも触れたように、日本人のセックス回数は世界の国々の中でも飛びぬけて低く、世界平均の半分以下であることが知られている。その回数というのが、配偶者だけを指すのかそれても相手が誰かは問わないのかは定かではないが、いずれにしても「いくつになって勃起したい」と躍起になっている男性がそれだけ豊かな性生活を送っている、という事ではないはずだ。
では何のために彼らはこうして「勃起力」にこだわり、それが低下したといってはなぜ、「男性更年期ではないか」「サプリメントを試そうか」と右往左往するのだろうか。
ひとことで言えば、男性の場合は、「精力」が自分の人間としてのパワーや若さの指標になっているのだと思われる。繰り返しになるが、この「精力」とは必ずしも妻や恋人とのセックスを意味するわけではない。たとえ、妻とは長くセックスレスが続いていても、毎朝、勃起を確認するだけで、「よし、オレはまだまだ大丈夫だ」と自己満足し、自信を深める男性もいるのかもしれない。
しかも、悲しいことに「精力」がその人の人間としてのパワーや能力を示す、と思っているのは当の中年男性たちだけなのではないか。たとえば女性たちが集まって、「私の夫は精力絶倫ですばらしい」「○○課長はもう持続力が低下しているからダメね」などと精力を基準に男性を評価することはほぼないだろう。
男性向けのポルノ小説には、男性器の大きさに「すごい」と息を呑む女性が登場するが、女性同士でパートナーの男性器の大きさが話題になることもない。診察室でも妻が「ウチはセックスレス」と語るケースは多い、という話はしたが、その理由がパートナーの性的能力がある、という場合はほとんどない。
逆に既婚女性のカウンセリングを行い中で、「失礼ですが。ご主人との夫婦生活は?」と質問して、「そうですね‥‥。実は夫はEDなので、そういう関係はないと言えばないですね。でも、夫は仲良しでいっしょにお風呂に入ったりもするんで、別に不満はありません」といった答えが返ってきたことは、何回かある。つまり、夫に「勃起力」や「持続力」はなくても、いわゆる”心のふれあい”やちょっとしたスキンシップがあれば、妻の多くは満足するのではないだろうか。
差し込み文書
「男性・女性のセックスにおける最大の恐怖」
男性のオーガズムは射精すれば性欲を満たしオーガズムは得られるが、女性となるとそうはいかないのだ性欲を満たしオーガズムに達する条件は、二人の間の愛情と、信頼関係と、さらにプラス精神安定の三つの条件が揃っていることが必要不可欠であり「膣そのものは女性のからだの中でも桁外れに鈍感で快感」を感じられない性器であり、それを男性に提供するというマイナス条件下で行われる、愛情豊かな肌のふれあいを十二分におこない逡巡しつつ心からふたりが楽しむ環境へと埋没し膣挿入のち持続に富んだ性交でなければ女性の性欲が満たされ「イク」ということはまず望み薄である。
しかし、中高年層は自らのペニス膣挿入してからの持続力には限界がある。当サイト商品「ノーブルウッシングC型」を用いて膣挿入しパートナーがオーガズムに達するのは最低二十分以上要し、さらに何回でもオーガズムへ誘うことができるが、それほどの体力を持ち合わせている人は多くはないはず。
パートナーである男性が愛情豊かな肌のふれあいを十二分に逡巡しつつ心からふたりが楽しむ環境へと埋没し自らのペニスを膣挿入し持続性富んだ性交を試み努力したのだが(オーガズム「イク」)達しなければ女の価値観そのものを男に問われ、男性もまた自信を失ったり落ち込む恐れがある。
「肌のふれあいは皮膚を刺激する。この刺激は皮膚に散在している知覚神経を促し、脳が活性化する。パートナーの肌のぬくもりを感じる快い感覚は自律神経系に働いて、イライラや、不安の解消にも役立ち、心を安定させ、成人病やボケの予防にも役立つ」と言うのだが、もしそれが本当だとしたら、三〇代でセックスレスの夫婦はどんどん老化が進むということになるのだろうか。
若年セックスレス夫婦も、せめて手をつないだり肩を叩き合ったりするだけで何らかの老化防止に役立つ、ということになるのだろうか。
男にとってセックスは自分の立場、男としての有能感・価値観を賭けた戦いの場。
それですべてがうまくいき、満足できればけっこうなことだが、“戦い”に敗れたときは悲惨である。失われた自信はそう簡単に回復できない。
まして、女性から「あなたヘタね」とテクニックを批判されたり、「もうイッちゃったの?」と早漏を指摘されたり、「けっこう小さいのね」とペニスの小ささを笑われたりすると、セックスすることがすっかり怖くなってしまつたりする。
ソフトノーブル通販
そういえばかつて、一度だけ女性から「夫のED」について相談されたことがあった。その三〇代の女性は同世代の夫と結婚して一〇年あまりたつのだが、夫とのセックスは新婚時代に数度、経験しただけだという。「セックスレスというわけですね?」ときくと、感じのいいその妻は首をかしげながら言った。
「いえ、それとは少し違うと思うんです。いわゆるEDっていうんですか、そうしようとしてもうまく行かないみたいなんですね。」
私は「じゃ、こちらに相談されるよりも、ご主人をEDを専門とする泌尿器科にお連れしたほうが」と言いかけると、彼女は「いえ、いいんですよ。セックスがなくても」と、こう話し続けたのだ。
「私もとくにセックスがした、とか思うわけじゃないし、それに夫とはテニスという共通の趣味があって、ペアを組んで毎週のようにいろいろな大会に出たり練習したり。わたしとしてはそれでももう、満足なんです。」
だとすれば、なおさら彼女はなぜ、精神科を受診したのだろう。
「それが、私と夫はこれで満足なのですが、夫の親は息子がEDだとか私たちがセックスレスだとか、想像もしてないみたいなんです。だから、お盆やお正月で会うたびに“子どもはまだなの? 攻撃”がすごくて。
さすがに『EDなんだよ』とは言えないかもしれないけど、せめて『僕たち、子どもを持つことは考えていないんだよ』くらい説明してくれてもいいのに、夫はそういう時はうつむいて黙っちゃうんですよ。
だから姑たちは私の方に何か問題がある、と思い込んでいるみたいで、このあいだなんて”いい病院があるみたいだから、いってみたら?”と不妊治療を受けるように勧められました。こういう場合、姑たちを傷つけないように説明するには、何と言ったらいいのか、ちょっと相談したくて‥‥。」
子どもができない原因は夫のEDであることは確かなのだが、彼女自身も「今さら夫とセックスしたいとも、これから母親になりたいとも思わない」と言い、テニスで結びついている夫との関係にも満足している。唯一の悩みは、「EDであることを親に言えない」ということなのだ。
しかし、この夫は自分はEDで妻とのセックスができない、ということをどう考えているのかはわからない。もしかすると、妻のように「セックスレスであることじたいは、本当はどうでもいいんです」とは思っておらず、自分の男性あるいは人間としての能力やパワーに自信を喪失しがちになっているかもしれないのだ。
妻が「セックスレスなんです」と悩むときには、その「セックス」は単なる性交ではなくて”心のふれあい”やスキンシップを意味する場合が多いが、夫の「EDなんです」という悩みには、セックスもふれあいやスキンシップも、妻や恋人など異性さえもかかわっておらず、単純な「勃起力」しか意味していないことがある。
あくまで、相手との関係性の中でセックスをとらえる女性。自己完結する身体的な問題としていかセックスを捉えられない男性。この辺りにも、女性と男性との深刻な意識のギャップが表れている。
つづく(2)「女性患者を見たら、まず妊娠を疑え」の真実味