男性にはそもそも、「肝心なときに勃たないかもしれない」という基本的な抑圧が、常にある。セックスとは勃ってこそなんぼ、女をイカせてなんぼ、の世界だという男たちの認識があるのだろう。

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第9 勃起への不安、ペニスの問題

本表紙 亀山早苗著

勃起への不安、ペニスの問題

 ただ、男性にはそもそも、「肝心なときに勃たないかもしれない」という基本的な抑圧が、常にある。セックスとは勃ってこそなんぼ、女をイカせてなんぼ、の世界だという男たちの認識があるのだろう。

 勃起、挿入、射精という男主導のセックスを、もっと変えていきたいという女性たちは多い。もちろん、自分が勃起したら女性の気持ちと身体が高まりなどお構いなしに挿入し、自分だけ、がんがん動いて射精して終わり、という男性は論外だ。そこには何のコミュニケーションもない。

女性の体を使ってマスターベーションにすぎない。そういう男性に限って、「女をイカせた」と豪語するものだが、おそらく女性は身も心もまったく満足していないだろう。

 だからこそ、いっそ挿入などこだわらず、もっとふたりで「イチャイチャ」したい、そのほうがずっと愛を感じられるという女性も多い。セックスを前戯、挿入、後戯で分けるとしたら、多くの女性たちが、前戯と、終わってからの語らいが好きだというのではないだろうか。

それは、結果的に、挿入時の男性の身勝手さの裏返しではないかという気もする。挿入だけでオーガズムを得られるのは、三割程度の女性に過ぎないそうだ。

 七割もの女性たちは、クリトリスを同時に刺激されることでオーガズムを得る。あるいは挿入ではほとんど感じず、クリトリスへの刺激だけのほうが感じるという女性たちも多い。

ふたりのセックスが大事と思うなら、自分がどういうタイプなのかをきちんと告げる必要があると思う。男性たちも、女性の意見をもっと聞こうとするべきだ。

 もっとも、女性の中には、自分がどうされたら気持ちがいいかということさえ知らない人がかなりいる。それでいて、「身勝手な挿入」を糾弾するのは筋が違う。

 個人的には男たちに、「女をイカせてなんぼ」という気持ちをなくしてほしくないと思っている。もちろん、男が勃起しなくても一緒に楽しんで、快楽を得る方法はある。それも大事なことではあるが、

挿入派の身の上としては、やはり「自分のペニスで女をイカせたい」と男性は思ってほしいし、その気持ちが男性から失われてしまうのは寂しい。

 結局、同じ「女」という性をもっていても、挿入などしないでイチャイチャするほうが好きな人もいれば、前戯など短くてもいい、挿入時間が長いほどいいという女もいるわけだ。そういった、自分の嗜好を、素直に伝えることができ、素直に受け入れてもらえるのが、いい関係なのではないだろうか。

男における「ペニスの問題」

 男たちの葛藤の中には、ペニスのサイズ問題もある「大きい、固い、何度もできる」のが男のステイタスであり、なおかつ、女性を喜ばせる重要なポイントだと考えているようだ。

「僕、ペニスにコンプレックスがあるんですよね。あんまり大きくないから、彼女といい雰囲気になると、『オレ、小さいんだよね』って、冗談交じりにすぐに言っちゃう。それで彼女の反応を見るんです。卑屈で嫌だなあとわれながら思うんだけど」

 と言った。三十代の男性がいる。ペニスのサイズというのは、男性の存在価値を揺るがすほどの大問題らしい。

 だが、女性たちに言わせればちょっと違う。日本人の勃起時の平均的サイズは十三・五センチだという。余談だが、大きさといのはときには長さばかりが問題になって、直径が問題にならないのは、気になるところではある。

細くて長いのと、太くてそこそこの長さ、どちらがいいかと言われれば、個人的には後者をとる。一般的には、ある程度の長さがあれば、太さも兼ねて備えているという判断なのかもしれないが。

 ともあれ、女性たちは、大きすぎるよりはまだ小さい方がいいと、口をそろえて言う。
女性個人の好みにもよるが、大きすぎると男同士の間では羨ましがられても、女性からは好かれないということがある。大きすぎると、女性は痛みを感じやすいからだろう。

 実際、ペニスが大きすぎて、根元まで女性の中に入れられない、と嘆く男性もいるほどだ。極端に小さい男性もいるのだろうが、小さければその分、テクニックで補うという方法もある。つまり、女性は男性のペニスのサイズなど気にしないことがほとんどなのだ。

「私にとって、ペニスでいちばん大事なことは、密着感かなあ。密着度の高いペニス、自分が包み込んでいる感触を覚えられるようなペニスが好きなんですよね。

自分の中に入っていながら、『穴を貸しているだけ』と感じさせられるような、独立性の高いペニスはあまり好きになれないの。固すぎるとダメってことかしら」

 と同年代の親しい女友だちは言う。かと思えば「皮一枚、その下にはきんきんに張りつめて固くなっているペニスが好き」という女性もいる。好みのペニスも千差万別。女性たちは、女同士で、こんな話までしていたりするものだ。

またもや余談だが、イタリアを旅行したとき、日本の男友だちに頼まれて、現地でコンドームを買ってみた。日本で通常手に入る最大サイズは直径三十八ミリだというが、現地で買ったものの中には五十二ミリというのがあった。それでも最大サイズではなく、最大は六十数ミリというのがあるという。

 ヨーロッパの男性に詳しい女友だちに言わせると、
「イタリアやスペインのラテン系は決して繊細なセックスをしないの。がんがん出し入れして、『ほうれ、すごいだろう』っていうタイプが多い。なんていってもセックスがうまいのはフランス人。それも北のほうの人。ついでにいえば北欧の人もうまいわよ」

 とのこと。彼女の分析によれば、やはり南のほうは、おおらかでセックスもオープンに楽しむが、その分陰影に欠ける。北の人は、もっと密着させた、繊細な「ふたりだけの世界」を作り出して楽しむ傾向が強いとか。寒いせいなのかどうかはわからない。

 繊細なテクニックを好むのか、がんがん出し入れされるのを好むのかは、女性にもよるとおもうが。

ペニスに支配される男たち

「ペニスは決して大きくないけど、私の彼はテクニシャンだと思う」
 酒田さおりさん(三十二歳)は言う。彼は、指で強弱をつけつつ彼女の性器を愛撫しながら、耳元で囁き続けるらしい。

「彼との最初のセックスのとき、彼は体を密着させ、耳元でずっと、『感じる? こんなに濡れて来たよ』『指が吸い込まれていくようだ』『すごくきれいだったよ』と囁き続けたんです。耳から脳に直接、感じる物質を注ぎこまれるような感じ。

それまで感じたことなかった不思議な感覚が、いつのまにか快感に変わって、指だけで達してしまいました」

 と。彼女は言う。彼のペニスはそれほど大きいわけではなかったが、彼女はその指の愛撫だけで何度も達してしまい、挿入されたあとも、何がなんだかわからないような乱れ方だったという。挿入前に何度もオーガズムを得ていると、挿入後のオーガズムはとても簡単に得られる。

 だからこそ、前戯は大事なのだ。ペニスを使う前に、彼女の五感を震えさせるような前戯ができれば、ペニスへのコンプレックスなどは吹き飛んでしまうのではないだろうか。

 大きさ以前に、ひょっとしたら男性のいちばんの恐怖心は、「勃起できるかどうか」だろう。しかし、男たちの恐怖心に比べて、女性たちはそのことに関して深刻にはなっていない。ただ、女性は、勃起しなかったことで、男たちが不機嫌になるのが嫌なのだ。

「男って、どうして勃起しないと、急に黙り込んだり、『あー、ダメだ、今日は』って止めちゃったりするんでしようね。別に挿入しなくても、いくらでも一緒に楽しめるのに」
 これは多くの女性の、大いなる疑問。

たとえば緊張感や疲労や深酒のせいで勃起しなかったとすると。多くの男たちはそこでことを中断し、そのまま寝てしまうか、そそくさと帰り支度を始めるかどちらかだ。男としてはプライドが傷つき、自分を情けなく思う瞬間なのだろうが、そこでもしペニスを使わずに女性を喜ばせることができたなら、ふたりの関係は、一歩見込んだものになると思う。指だって舌だって、小道具だってあるのだから、ペニスだけに依存する必要はない。

 その場の雰囲気を壊さず、心身ともに高まっている女性を満足させられることができたら、その男性こそが「セックス上手」と言えるのではないだろうか。ペニスが言うことを利かないからその日は何もしない、とするのが、男性のいけないことだ。

 そもそも、男性はペニスに支配され過ぎていないだろうか。自分の性器を「息子」と呼ぶくらいだから、その密接な関係は分かるのだが、大人になったら、やはり親離れならぬペニス離れも必要なのではないだろうか。

 実質的に離れることはできないから、正しくは「ペニスにコントロールされるのではなく、コントロールするくらいの気概」といったほうがいいのだが。

 ある三十代の男性は、ペニスについて「自分の司令塔」言い放った。

「たとえば仕事上でも、かわいい子に優しくなるし、かわいくない子には冷たく当たってしまう。自分の好みかどうか、つまりはペニスが反応するかどうかの問題になんですけど、自分のペニスに反応する女性に対しては、優しく接してしまうんです。

そうやってペニスに支配されているのは、良くないことだと分かっている。でも仕事にしろプライベートにしろ、ペニスの指令を受けて、自分の、女性への対応が変化していくような気がするんです」

 彼はそう白状した。人間、ある程度は自分の好みに左右されるだろうが、好みの女性と好みでない女性への対応が違い過ぎるとのは問題にではないだろうか。

「だけど、自分の意思に反して暴れることがあるかと思えば、肝心のときに役に立たなかったりするものを抱えているんですよ。女性は、男のそういう複雑な気持ちもわかってほしいな」

 彼は、せつなげにそうそう話す。たしかに、ここぞというときに、意思に反してぴくりとも反応しないペニスを見れば、「われながら情けない」という気持ちもわからなくはないが。女のある私が想像する以上に、男たちはペニスに対して、複雑な思う入れがあるようだ。

 男性の場合は、十代のころからマスターベーショを始めることが多いが、彼らはずっとペニスとは、「いい友だち以上の関係」でいる。「自分の分身」でさえあるはずだ。

 それなのに、大好きな女性と初めてベッドインできて喜び勇んでいるときに限って、親友は自分を裏切る。焦れば焦るほど、言うことを利かず、死んだふりをし続ける。そういうペニスに対して、自分の一部ながら、どう扱ったらいいものか、悩んでしまうこともあるだろう。

「いざというとき、しんなりとしてしまったペニスを見て、女性が『あら』という顔をしたことがあったんです。彼女は優しくて、それから一生懸命フェラチをして、勃たせようとしてくれた。僕もその気持ちに応えたい。それなのにヤツは微動だにしない。

焦りを通り越して、なにもかも嫌になってしまったんですよ。自己嫌悪というか。だかせ、その場を逃れたい、という気持ちが先行して、帰り支度を始めてしまったんですよね。

それが彼女を傷つけたと気付くのは、ずっとあとから。とりあえずその場から逃れたい一心で、男は黙り込んでしまうんです」

 と、先の三十代独身男性は言う。しかし、そのとき、女性が何を考えているか、男性は知っているのだろうか。

「彼が不機嫌に黙り込んで寝てしまうと、私は隣で涙が出てくるんです。彼にとって、私は、もう魅力がないんじゃないか、と真剣に悩んでしまうから」
 これが女性の代表的な意見。

 女性は、男性のペニスが言うことをもっとストレートに、彼の心を反映するものだと考えている。勃起する、しないは、男性が自分を好きかどうかのリトマス試験紙だと、感じているのだ。だから、「緊張しているから」「飲みすぎた」という言い訳を、そのまま信じたりはしない。

 恋愛初期であれば、そこからふたりの関係にひびが入る可能性だってなきにしもあらずだ。
 だからこそ、男性はそのときの自分の気持ちを、きちんと、女性に説明したほうがいい。格好悪いから逃げたいという気持ちは分かるが、男性の心とペニスについてわかってもらう。いい機会なのだから、女性側も、自分の魅力と彼の勃起とは比例する、という思い込みは持たないほうがいい。

女が抱えるプレッシャー

 男性が女性の反応について、いちばん嫌うのは、「マグロ状態」だという。つまり、彼がどう愛撫しようが、何の反応も示さない女性だ。

 だが、これもまた、女性側からいわせると、「声の大きな女は嫌われる」とか「あんまり感じてしまうと、遊んでいる女だと思われる」など、女の世界で伝わっている俗説が、多々あるのだ。

 これは俗説とも言い切れず、実際、独身の男友だち(三十八歳)に、「声の大きな女は嫌い」と公言する人がいる。

「我慢して我慢して、最後に耐え切れなくなったとき初めて、ため息のような声を漏らすような女性が好き。そうじゃないと僕は感じない」

 と言うのだが、この発言で分かるように、彼は自分の中で「理想の女性」を作り出し、相手をそこに当てはめようとするタイプ。なぜ、感じていることを表現するのに「我慢」しないといけないのか、と彼に聞いてみた。

「やっぱりさ、女性が耐えているときがいちばんきれいなんだよね」
 と、時代錯誤の返事が返ってきた。こういう男性とまかり間違って結婚した日には、耐え忍ぶ生活が続きそうで怖い。

 彼は、つきあう上で、セックスには重きを置いていないというから、セックスすきの女性は、そもそも彼には物足りなさを覚えるだろう。

 もちろん、感じたときの反応には個人差があるし、大声を出す女性もいれば、それこそ「恥ずかしいから」と唇をかみしめる女性もいる。だが、感じていることをどうして恥ずかしいのか、素直に表現することがなぜいけないのか。

 人はなぜ生殖を目的としないセックスをするのか。単純に性欲を処理したいという原始的な欲求から、快楽を得たい、相手と言葉以外の、あるいは言葉以上のコミュニケーションを取りたいから、といろいろな理由があるだろう。

 単純に性欲を処理したいなら、マスターベーショでも構わないはずだ。それなのに人は人を求める。しかも多くの場合、人は全裸でセックスをする。それはなぜか。体に何もまとわないことで、気持ちを解放したいのではないか。

 それなのに、セックスのときまで、「恋人の描く理想の女性」として演技しなければいけないというプレッシャーを与えられるのは、あんまりだ。そういう彼は、彼女をあるがままに受け入れることができないのだろう。

相手の好みに左右されないで

 セックスは、男女双方(もちろん同性同士でもかまわない。念のため)が、相手を丸ごと受け入れる行為だと思う。それなのに、そこでの快楽の表現の仕方に注文をつけるのは、何かがおかしい。

 もちろん、相手の反応に対しての好みはあるだろう。すすり泣くような喘ぎ声が好きな男性もいれば、もっとストレートに大きな声を出されるほうが燃えるという男性もいるはずだ。

だが、常に「快感を表現することを我慢せよ」というのはおかしい。相手のあり方を受け入れないで、自分の好を押し付けながら、恋人としてつきあっているのもどうかと思う。

 それが女性たちを、不自由にさせる危険性がある。女性たちは、「彼に嫌われたくない」という気持ちを、とても強くもっている。恋人同士だけでなく、現在の人間関係すべてが「嫌われたくない」という消極的な意識の上に成り立っている。

もっと愛そう、もっと愛されようという、積極的な意識はないのだ。それが、現代のコミュニケーションの大きな特徴でもある。

 だから相手の意向にしたがって、女性は「演技」をしてしまう。彼がセックスに情熱的な女性を好むなら、そのように振る舞うし、我慢するのが好きなら声を出さずに頑張る。

 もちろん、一方では性的に奔放な女性も増えてはいるが、まだまだごく一握り。多くの女性たちは相手の意向、彼の好みに振り回されている。

それは何度も繰り返すように、女性たちが「自分の性欲のあり方」「自分の好きなセックスのありよう」を把握していないせいでもある。

もし自分の性欲や性反応などを、きちんと把握していれば、「私はあなたの望むような女じゃないの」と言えるはずだから。

 一般的に、セックスというものは、男が求めて女が応じるもの、という男性優位の考え方に、まだまだ支配されている。だから、自分がしたくなくても、彼に求められれば応じるし、自分がしたくても、彼からの誘いがなければ自らは求めはしない。

それは、いつまでたっても、心も体も解放されたセックスはできない。どこかで打破しなくてはいけないのではないだろうか。

要求をどう伝えるか

 前述したが、シリーズが始まった当初から、私がはまっているアメリカのテレビドラマ『SEX AND THE CITY』で、面白いエピソードがあった。

 主要登場人物のひとりに、サマンサという性的に奔放な女性がいる。あるとき、彼女が知りあった男性の精液は、味がおかしい。つまり、とてもまずいのだ。だが、さすがのサマンサも、それを即座に相手には言えない。彼はサマンサのフェラチオが大好きで、いつもフェラチオをしてくれとせがむ。

 サマンサは悩んだ末、仲のいい女友だちに相談する。みんなから口々に、
「精液がまずいのは、食べ物が原因じゃないの?」

 とアドバイスされたため、彼女は、彼をオーガニックレストランに連れて行く。
「体が内からきれいになるジュース」を最初に飲んだとき、彼女は店の人に「どのくらいで効く?」と尋ねる。店員は「一時間半」。彼女はにんまり。

食事を終え、彼女の家に戻ってから、ふたりはセックスに及ぶのだが、彼のペニスからじわじわ出る液は、体きれいになるジュースを飲んだにも拘わらず、相変わらず変な味がする。彼女はフェラチオを中断し、「今日はフェラをしない」と宣言。彼は焦り、彼女に懇願し続ける。

 すると彼女、「じゃあ言うけど、あなたの精液。すっごくまずいのよ」と、とうとう言ってしまう。それを信じようとしない彼に、彼女は、「そう言うんなら、自分の精液を味わってみなさいよ」と、詰め寄る。それを約束できるなら。フェラチオをしてあげる、と。彼は渋々、承諾する。

 笑いながらも、考えさせられるエピソードだ。何かあった時とき、こうやって解決策、妥協案を見出していけるのが、大人の女なのではないだろうか。何も言わないまま、ずっと我慢してフェラチオをし続けるのが、いい女とはいえないと思う。

 精液のみならず、相手の口臭、体臭などもうかつには指摘できない。生理的なこと、体のことに関しては、「言っていけない。相手のメンツをつぶすから」という意識もあるのだろう。

だが、サマンサのように、何かしら努力してみて、それでもダメで、もはや自分が我慢できないなら、やはり言うしかないのではないだろうか。もちろん言い方に気を付けながら。

 確かドラマの中のサマンサは、
「フェラは男が思っているより大変な仕事なの、だけどいい男なら話は別。一生懸命やるわ。それでも、あなたのまずくて耐えられないの」

 というような言い方をしていた。相手は嫌いなのではない自分が、テクニックの出し惜しみをしているのではない。相手のせいではないけれど、耐えられないことがあるのだ。という言い方をすれば、彼も、自分を全否定されたと受け止めることはないだろう。人が落ち込むのは、自分を全面的に否定されたときなのだから。

男の弱み(仮性包茎)にどう対処するか
 仮性包茎の男性の問題も、女性同士でよく話題になる。男性自身が、仮性包茎で、皮の間に恥垢(ちこう)がたまりやすいペニスだとわかっていれば、意識的に皮をむいて綺麗に洗うはずだ。

だが、そういう知識と意識の低い男性き、適当にしか洗わない。そうすると、たるんだ皮膚の間に常在菌が増え、異臭を放つようになる。日本人の六割が仮性包茎だといわれているから、案外、臭いペニスを我慢して咥えている女性は多いのではないだろうか。

 私の友人はあるとき、つきあっていた男性と、ホテルへ行く関係になったのだが、押し倒されて彼のペニスが異常に臭ったとき、これはダメだと観念した。

彼女が何をしたかというと、「う、気持ち悪い」と、手で口を押さえてトイレへ。しばらく出て行かなかったから、彼が心配してやってきた。

「食べ過ぎたかもしれない。ごめん、今日は帰りたい」
 と彼女、そして、彼には二度と会わなかったという。

「ペニスを見たら、仮性包茎だとわかったの。別に仮性包茎でも構わないけど、すごく臭いだったもん。それ以上は、ちょっとごめんだわ。指摘してもいいけど、自覚のない人は結局、丁寧に洗わないと思う。三十代半ばになって、そんなことが分かっていない男は、セックスも下手に決まっている!」

 彼女の語気は相当荒かった。
 確かに、その年齢まで、それに気づいていないということは、セックスそのものに対する意識も低い男性といえそうだ。

 高田仁美さん(三十三歳)は、二十代でつきあった三人が、すべて仮性包茎だったという。
「それに気づいたのは、今の彼と二年前に付き合うようになってから。今の彼は、仮性包茎じゃないんです。それまでの恋人は、みんな、皮がペニス全体に覆うような感じで、勃起すると、中身が出てきていた。

だけど今の彼は、最初からちゃんと出ているんですよね。あるとき、彼にそのことを訊ねてみたんです。そうしたら『それは仮性包茎だよ』って。彼は高校時代、サッカー部に入っていて、合宿のとき、先輩に無理やりむかれたと言っていました。

その時は痛かったけど、それからずっと、触るたびに、皮を引き下げるようにしていたんですって。今の彼のペニスは。ちっとも臭くないの。驚きましたよ、最初は。だって、私の付き合う男性は、みんな変なにおいがしもの。

当時はそれが普通なんだと思っていたけど、仮性包茎でも、セックスするときは先がちゃんと出てくるから問題はないんでしょうけど、本人がきちんと意識して、綺麗に洗わないといけませんよね」

 割礼の習慣がない日本では、今の時代でも仮性包茎は多い。そして仁美さんが言うように、仮性包茎は、勃起時にはきちんと先端が出て、セックス、射精はできるから日常生活上は問題ない。ただ、気を付けなくてはいけないのが衛生面だ。皮がペニスより長いわけだから、恥垢がたまりやすく、放っておけば、当然、悪臭がする。

そのままセックスすると、何らかの菌が、女性に感染することもある。ところが仮性包茎の男性たちは、意外と意識が低く、衛生面に細心の注意を払わないことが多いようだ。

 下手に指摘すると、本人のコンプレックスをあおる結果となりがちだから、気を付けなければいけないだろう。だが、彼と付き合っていこうと思うなら、女性たちは、きちんと洗うように言ってあげるしかないのではないか。それは衛生上、自分自身の問題でもあるから。

つづく 第10 オーガズムを感じたことがない女たち