男女が知り合って、結婚する。ひとつ家を構えて、子どもが二人くらいいて、ケンカもしながら子供を育て上げ、子どもは独立していく。そして最後は夫婦が残り、いずれはどちらかが先に死に、自分の一生を振り返ってみれば、「まあまあ幸せだったんじゃないか」と思いつつ、残ったほうも人生を閉じる。
核家族の結婚イメージは、だいたいこんなものだろう。少なくとも、私は今だにそんなイメージをもっている。そして、そんな「普通の人生」を滞りなく送れる人に対して、ある種の尊敬の念を抱いている。「普通」ほどむずかしいものはないのだから。
概念としてそう思っていたが、「本当に、普通って何? 結婚って何?」と思わされたのは、不倫関係にある人たちの取材を始めたからだ。不倫と一口にいっても、人生と同様、そのありようも千差万別。同じようで違う、考え方も恋愛の仕方も。
十年ほど不倫の取材を続けているうち、以前なら「家庭に絶対にばれないように」気を遣うのが普通だったのに、そうではない人たちが現れてきているのに気づいた。それがたった一人なら、たまたまそういう人もいるのだなと思うが、同時期に数人から似たような話を聞くと、潜在的にはもっといるのだろうなと思うようになる。
その中の一人、真優美さん(四十四歳)に話を聞くことができた。彼女は、とある専門職に就いている。夫も同じ仕事。結婚して十八年たつが、結婚してから一度もセックスしていない。そして、彼女は今、週末には別の男性とくらしている。あらましだけ見ると、「いったいどういうこと?」と思うのだが、人には歴史あり、の言葉通り、彼女にも恋愛せざるを得なかった過程、そして離婚する気になれない理由がある。
真優美さんは、ひと言でいって「美人」である。知的で色っぽくて、日本人離れした感じ、ニコール・キッドマンに似ている。そう言ったら、本人は大笑いしてたけど。
彼女は、古くから続く、厳格でありながらも情の溢れる家で育った。昭和の上流家庭という感じだろうか。親や親戚も、学者や医者など、一般的に言っても社会的地位の高い職業に就いている人たちばかり。
大学を卒業して就職し、二六歳のとき学生時代から友達だった同い年の進一郎さんと結婚、就職先からアメリカに留学させてもらえることになった。夫も別の組織に就職していたが、同様の留学申請が通って、夫婦で同じ大学に留学できた。
「結婚と同時に留学という状態でしたから、慌ただしかったですね。彼とはずっと友達だったけど、つきあったのは一年足らず。人間的にも信頼できること、仕事面で刺激し合えることが、結婚した大きな理由だったかもしれません」
堅い家でまじめに育ち、小学校から高校まで私立の女子校に通っていた彼女にとって、夫となった彼は、初めての男性だった。大学ではそれなりにモテたはずだが、やはり「結婚する相手とでなければ」という呪縛があったと話してくれた。
「彼とは、付き合い始めて半年たったところで、ようやく結ばれました。そうなって、お互い結婚を意識したんですよね。彼も勉強一筋で、超がつくくらい真面目な人だったんだと思う」
結婚前には数回、セックスの関係があった。ところが結婚してアメリカに行き、気づいたらセックスしないまま一年がたっていた。お互い環境に慣れるのが大変だったとはいえ、さすがの彼女も『これはヘンだ』と思ったらしい。
「一年たったとき、『私たちっておかしくない?』と言ったんです。でも夫は『そうお?』という感じで流しました。私は自分から誘うわけにもいかなくて、おかいなあ、ヘンだなあと思いながらも、あと一年たってしまったんですよ」
二年後、ふたりは日本に戻った。それぞれに組織に戻り。今度は仕事に忙殺される日々が始まった。
「本当に忙しくて、平日はふたりで夕食を一緒にとるなんていうのも、絶対無理な日々でしたね。ただ、週末には一緒に出かけたりもしていたし、仲が悪いわけではなかったんです。
でもふと気づいたら、三十歳間近。私は子供が欲しいと思っていたから、思いきって『子供が欲しいし、こういうのは夫婦としておかしいと思う』と言ったんです。すると夫は、もう逃げられないと思ったのか、話し合いに応じてくれました。彼の言い分としては、『仕事は忙しいけど、楽しくてたまらない。できれば仕事一筋の人生を送りたい。子供が居たら仕事が没頭できない』と。セックスは実は好きじゃないと言っていました。
それだけ聞くと、いかにもヘンな人みたいだけど、友達づき合いもそれなりにあるし、私の両親も彼のことをすごく気に入っているんです。私は一人っ子だから、特に父親なんて大喜びで、彼はひとりでも私の実家へ行って、父とお酒を飲んだりしているくらい。彼がなぜ、セックスが好きになれないのかという理由は分からなかったけれど」
少なくとも、彼は子供を欲しいと思っていない、セックスも好きではない。仕事第一にして、たまに息抜きができればいいという生活を求めている。彼女にはそれだけが分かった。
「でも、私には私の感情がある。そう言ったら、『僕はきみのことが大好きだよ』って、大好きだということとセックスすることは、彼の中では別の話かもしれません」
人は、好きだからセックスをすることもあれば、好きでないのにセックスをすることもある。相手のことは人と好きだけど、セックスは好きになれないということもあるのかもしれない。
誕生日や結婚記念日に、彼はプレゼントを忘れたことがない。素敵なレストランを予約してくれたりもする。お正月には、いつも彼女の親や親戚と、温泉地の別荘で楽しそうに過ごしてくれる。親戚一同の中で、彼はいつも人気者だ。
「仕事の相談も、真っ先に彼にする。そういう意味では、私は彼に対して絶対的な信頼感を持っているんです。だけど、私は生身の女。そこをどう考えていいのか、ずっと悶々としていました」
正直言って、セックスしたかった。「女の歓び」が何であるか分からない自分が未熟に思えて切なかった。それでも仕事は多忙だし、考えないようにして過ごしていれば、夫とも仲良くやっていける。真優美さんは、いつしか「自分を女と意識しないようにする」の習い性になった。
こういうとき、女は悲しいなと私自身も思う。セックスする相手がいない。相手がいるのに向こうにその気がない。男なら、とりあえず風俗に行けば、手軽にさっぱりできる。
だが、女性はそうはいかない。倫理観は無視したとしても、実際、手軽に行ける風俗などない。だから自分を抑え込む。そして「性欲がない自分」を演出するしかなくなっていく。女が生きていくとき、こうした不便がつきまとう。
それでも美人なんだから、言い寄られることはあったでしょう、と私が問いかける。
「仕事がらみで男性とふたりで食事に行って、誘われたこともありました。私はお酒が好きだから、ひとりでバーに行って口説かれたこともある。それでも、決定的に夫を裏切る気にはなれませんでしたね。
やはり結婚しているのだから、よそで軽々しくそんなことをしてはいけないという気持ちが強かったんです」
ところが三十五歳のとき、彼女は恋に落ちてしまった。相手は妻子持ち、しかも外国人。仕事で年に数回、日本に出張に来るビジネスマンだった。
「仕事帰りに一杯飲んで帰ろうとホテルのバーに寄ったら、彼がいて‥‥。英語で話しかけられたので、英語で答えたら、いつの間にか話が弾んでいたんです。彼、そのホテルに泊まっていて、そのまま部屋で飲み直そうと誘われて、なぜか行っちゃったんですね。いつもだったら、そんな軽率なことはしないのに」
部屋に入ればどういうことになるか、想像はしていたが、心の隅で「本当に飲み直すだけかもしれない」とも思っていた。性的な目で男性に見られるのに慣れていなかったせいもある。また、「相手は日本人じゃないし、夫を裏切るのとはちょっと違う」という思いもあった。
それはおそらく、彼女の自分への言い訳なのだろう。自分で自分を正当化できたとき、人は意外な行動をとることもある。
九年ぶりのセックスで、彼女は燃えた。相手が「今思えば。けっこう手練れだった」せいもある。身体がよじれていくようなしびれた快感の中で、彼女はひたすらうれしくてたまらなかったという。
「先のことなんて考えもしなかった。この人と関係を続けるとか、先がどうなるとか、どうでもよかった。ただ、あの快感に浸っているだけで幸せでしたね」
そこから彼女は目が覚めてしまった。彼が日本に来たときは、毎日のように会った。彼は三ヶ月に一度、一週間ほどの予定でやってくる。その間は、メールで連絡を取り合ってた。
「あるとき、『今回は家族で行くことになった。でも君といる時間は取るから』というメールが来て、ああ、そうだった、彼は家庭を持っているんだと改めて感じたことがありました」
そのとき、彼女は彼に頼まれて、彼が仕事をしている間、有給休暇を取って家族を東京見物に連れて行ったりもしている。昨夜、あんなに激しいセックスをした男の妻子と、自分はどうしてこんなことをしているんだろう、彼はなぜこんなことをさせるんだろう、と嘆きながらも、ある種の背徳的な楽しみを味わったようだ。
「人として、してはいけないことだと分かってはいるんだけど、逃れられないことってあるんだなと思いました。私はがちがちの道徳観の中で生きて来たはずなのに、それらがすべて壊れていく。いけないと思いながらも、少しだけ自分が自由になれたような気もしたものです」
彼はこの一件で、彼女を絶対的に信頼したのだろう。次に来たとき、「ごほうび」だと言って、友達を連れてきた。男ふたりとの3Pを、彼女は初めて体験する。彼となら何でもできる。人間、そんな気持ちに酔うこともあるのは、私も理解できなくはない。
相手を好きだから何でもてきるのか、セックスに目覚めてしまったから恋したと錯覚するのか、そのあたりは定かではないが、こうやって快楽に溺れる時期があったとしても不思議だとは思わない。
「ただ、私はやはり、もともとそういう嗜好がなかったんでしょうね。彼が女性を連れてきたこともあったし、四人でしたこともあったけれど、心から楽しむことはできなかった。むしろ、彼がだんだん遠い人みたいに思えてきました」
そんな関係は二年ほど続いた。その間、彼女は彼に、自分たち夫婦がセックスレスであることも相談もしている。
「セックスレスなんてことがあり得るのか、と彼は驚いていました。自分たちだったら、とっくに離婚している、と。そんなのおかしいと言われ続けて、一時期、私は本当に離婚を考えたんです。
ただ、私が離婚してって。彼が責任を取ってくれるわけじゃない。友だちにそう言われて、踏みとどまりました。ちょうど私の父が体調を崩したこともあって、夫は親身になって見舞ってくれたりしたので、別れようとも言えなかったし」
揺れ動いて揺れ動いて、彼とも切れないまま、彼女は職場近くのゴルフ練習場に通うようになった。運動は嫌いだったのだか、少しは身体を動かさないと、ストレスまみれになりそうな予感があったのだという。
そして、そこで知り合ったのが、いまの彼である勇二さんだ。週に一度、コーチについていた真優美さんだが、その他の日にもひとりで出かけて練習をしていた。その姿を見て、勇二さんが声をかけ、アドバイスをしたのがきっかけだった。実は勇二さんは、以前から彼女を見かけて気になっていたのだという。
平日の夜、あるいは土曜日に、待ち合わせるともなく顔を合わせ、一緒にゴルフ練習をして帰りにビールを飲む。そんな友達関係が一年ほど続いた。その間も、外国人の彼が来ると、ずるずると流されるように関係をもっていた。
彼は彼女を調教しようとしたらしく、鞭や縄などを仕入れては彼女に使っていた。黙って受け入れてはいたが、やはり彼女には、そういう行為に対して、ほとばしるような情熱が沸いてくることはなかった。
一方で、勇二さんとは親しさを増していく。ゆっくり人間関係を築いているという実感があった。一年経って、とうとう彼が言った。「このまま友だちでいるのは耐えられない」と。彼女は決心がつかない、待ってほしいと訴えた。それから半年後、彼女は外国人の彼とわかれをつげ、勇二さんと結ばれる。
「私は夫とセックスレスを経験して、とにかくセックスをしたい、快感を得たいと思っていたけど、実際にはセックスだけしていればいいというわけではなかったんです。どんなに激しいセックスでも満足できないものがある。勇二さんと関係を持って、これが恋愛というものなんだと生まれて初めてわかりました。
信頼している人、好きでたまらない人とセックスする楽しさは、かけがえのないものだと思うようになった。もちろん、外国人の彼とのことも後悔はしていませんが、いろいろなことを経て、ここまでたどり着いたんだと思います」
以来、六年がたつが、ここ数年、ふたりはアパートを借り、週末の拠点はそこになっている。金曜の夜にそこに「帰り」、土日は一緒に出かけたり、疲れているときはアパートでのんびり過ごしたり、日曜の夜に家庭に戻ることもあれば、月曜の朝、ふたりはそこからそれぞれ職場へ出かけることもある。いずれにせよ。ほぼ完全な二重生活だ。
「最初のうちは、夫に『今度の週末、高校時代の友だちと旅行に行く』とか『ひとりでホテルに泊まりたい』とか、いろいろ言い訳をしていたんです。でもあるとき、面倒になって、『週末の私はいないと思って』と言ったら、「うん」と言われて。
お互い都合がありますから、毎週しいうわけにはいかないけど、平均すると月に三回くらいは週末を彼と過ごしていますね。まあ、ほぼ一緒だと言っていいくらい。三ヶ月に一回くらいは一泊ですけど旅行もしています」
週末の自分はいないと思って、と言う妻。その申し出にあっさり「うん」と返す夫。これはいったい、どういう関係なんだと思う人もいるだろう。私も最初はそう思った。だが、それがふたりの関係を。むしろ安定させ、長続きさせることだとして。夫は「うん」と言ったのかもしれない。他人にはわからない、夫婦だけの歴史が、彼女にそう言わせ、夫にそう答えさせたのだろう。
真優美さんはあえて、夫の行動を探らないけれど、何かあっても不思議ではないと思っている。それ以前に、夫に女性の影くらいあってもいいのに、と思っている節もある。そうであれば、フェアだからだろう。
夫が「うん」と言ったのは、どうも苦渋の決断とは思えない。一週間、顔を会せるよりは、週の半分くらいが、自分たち夫婦の距離として適切だと思ったのか。
実は、私は彼女と勇二さんと三人で数回、食事をしたことがある。最初に三人で会ったときは、それぞれが多少なりとも緊張していたような気がするが、それでも楽しい時間だった。そして二度目からは旧知の仲のように、いい雰囲気の中で大いに喋り、笑った。
私の前で、ふたりは特にべたべたするわけでもなく、かといって素っ気ないわけでもなく、本当にごく自然に振る舞っていた。背景をみなければ、とにかくいいカップルだと言うしかない。
勇二さんの家庭は、すでに成人した息子と妻の三人暮らし。週末、帰ってこない夫を、妻は「仕事だ」と信じているらしい。いや、正確にいえば、信じているフリをしているのだろう。毎週末、帰ってこないというのはおかしすぎる。
付き合い出して一年ほどたったころ、ふたりとも離婚して、再婚しようという話も出ていたようだが、彼は責任上、それはできないと思い直したらしい。妻から責められれば、返す刀で離婚を言い出せただろうが、妻は何も言わない。何も言わない妻を無用に傷つけることはできない、ということらしい。それぞれの夫婦が、大人の対応をしている。
「悩みがないわけじゃないんです。こういう生活をしていいのか、と良心が痛むこともある。何も知らないうちの両親は、私の夫をすごく頼りにしているし。夫も何を考えているのか分からないけど、ときどき日曜の夜、遅く帰った私を黙って迎えてくれたりする。
そういうとき、爆発しそうになるんですよ。あなたはどうして私を責めないの。一生、こんな生活でいいのって。でも何も言えない。このままなら、みんなが大人の対応をしているから、何事もなく過ごしていられる。誰かが動いたら、何もかもが変わってしまう。少なくとも私が動いてはいけない。そんな気がして」
もともと真面目な彼女のことだから、良心が痛むというのは想像に余りある。そんな状態なら、離婚してしまった方がよほどすっきりしそうな気もするが、夫や両親、そして黙ってみて見ぬふりをするほど家庭を壊したくないと考えている勇二さんの妻の心情を思えば、たしかに動いてはいけないのだろう。動くにも動けないともいえる。
夫といる必要はあるのか、と私は彼女に尋ねたことがある。
「同業だから、やはり仕事の相談がしやすいし、学生時代から知っている同志みたいな意識があるんです。同業者の集まりのとき夫も行くと気がラクだし。そういう意味では、私の公の顔は、夫と共にあるのかもしれない。でもプライベートは、彼と一緒の方が楽しいんです」
たしかに彼と一緒にいるときの彼女は、のびのびと振る舞っているように見えた。「かわいい女」でもあった。
はたから見ればそしてごく一般概念で考えれば、「こんな夫婦のありようはおかしい」と言えるかもしれない。だが、それでお互いの配偶者から文句が出ていない限り、第三者に何も言うことはできないし、実際、それぞれの配偶者を知らない私は、当事者ふたりを前にして「こういう関係があってもいいのではないか」と素直に感じてしまった。
誰かが動き出せば、当然、二組の夫婦は危うい関係になる。訴訟だの慰謝料だのという、物々しいことになる可能性は大だ。だが、今のところ、危うい橋であっても、ふたりをつなぐ命綱は強固に結ばれている。
結婚という観点でみれば、ふたりだけのことではないのだ。とつくづく思う。それぞれの親や親戚や社会的なことまで絡んでくる。結婚は、もともと社会的契約なのだから仕方がない。
一方、恋愛はとてもプライベートで、ふたりだけのことだ。結婚している者同士の恋愛は、社会的契約とは真逆に位置しているともいえる。こういう関係を批判できるのは、それぞれの配偶者だけ。真優美さんと友人関係にある私としては、彼女が女としての人生を楽しんでいることを応援していたい。
夫と一緒にいるとイライラする。だけど別れる気にはなれない。自分でさえなぜ一緒に居るのか分からない。そんな女性がいる。
私のホームページを通じて知り合った祥子さん(三十二歳)は、三年前、母親を亡くした。ガンを患っていた母が、鬱病を併発し、自殺したのだ。彼女は仕事をしながら、週の半分以上、母の病室に泊まり込んで看病していた。
病状がだいぶ落ち着き、その日は母も導眠剤ですやすやと寝ていたので、夜中にいったん自宅に戻る。久しぶりに少しゆっくりお風呂に入り、上がったところで病院から携帯電話に緊急連絡が入った。病棟の屋上から母が飛び降りたという知らせだった。
「病院に戻った時は。もう母は死んでいました。屋上に母のスリッパがきちんと揃えてあって‥‥。最後まで生真面目な人だった。いつかこんなことになるかもしれないとは思っていたけど、やはりショックでしたね。導眠剤は母の枕の下から大量に出てきました。全然飲んでいなかったようです」
お通夜だのお葬式だのと、残された家族にはやるべきことがたくさんある。だか、五歳年下の妹は、衝撃のあまり何もできない状態だった。両親は離婚しており、親族もほとんどいない。
そんなとき、親身になって、親族以上に働いてくれたのが、夫になった彬さんだ。一つ年上の彬さんとは、長い間「知り合い」だった。
「五年ほど前、何かの飲み会で友達が連れて来たのが彼でした。年に数回、飲み会で会うことはあったけど、二人で何処かに行ったことさえない。それなのに、母が死んだという知らせを共通の友人から聞いた彼は、すぐに私に連絡をくれて、その後のいろいろなことを仕切ってくれたんです」
お葬式が終わった日の夜、初めて彼と二人だけで食事をした。食欲のない彼女のために、彼はあれこれと気を遣ってくれたという。
「両親が離婚していることもあって、私は親とは少し距離を置いたつき合いをしていたんですが、それでも母親がいなくなったショックと、もっと何かしてやれたんのではないか、特に最後の日、私が帰らなければ母は死ななかったはずだと後悔が渦巻いて。
彼はそんな私の愚痴を黙って聞いてくれました。家まで送ってくれたんですが、別れ際にぼそっと、『こんなときに不謹慎だと分かっているけど、結婚してくれないか』って。驚きましたね。
だけど、そのときの私は彼にすっかり頼り切っていたので、ああ、それもいいかもしれない、これも運命かもしれないと思っちゃったんです」
気持ちが弱っているとき、支えてくれた人はたしかに「恩人」だ。だが、それがそのまま結婚を受け入れてしまうところまで行くのは珍しい。それだけ彼女が弱っていたのか、あるいは何かを考えることすら面倒な状況だったのか、はたまた彼の気持ちに応えたいという思いが生じたのか。
祥子さんは、その日、彼を家に泊めた。そして翌日から、ほぼ同棲状態に入り、三週間後には婚姻届を出していた。
「喪中ですから、もちろん式は挙げなかったけど、届けを出したと言ったら、周りはみんなびっくりしていました。中には『お母さんが亡くなって、精神状態が普通じゃないんだから、早まらない方がいいよ』と言う友達もいましたね。
職場では旧姓が使えるんですが、私はあえて彼の名前を名乗りました。結婚したんだから、きちんと”妻”にならなければいけない、と思ったので」
二十代のころ、彼女は自分自身が、本能と感情の赴くままに恋愛をしているように周りからは見られていただろうと分析する。だから、奔放な恋愛体質の彼女が、突然の結婚となって周りは驚いたのだ、と。だが、彼女自身は、実は非常に「縛りの多い人生」を送ってきたのだと振り返る。
祥子さんの父は、家庭がありながら他にもたびたび女性を作っていた。彼女は父に連れられて、女性の家に行ったことがある。おそらく、日曜の昼下がり、愛人に会いたくなった父が、祥子さんをカモフラージュのために連れて出たのだろう。また、別の女性のときは、母が祥子さんを連れて相手の女の家に乗り込んだこともあるようだ。
「父は平然と浮気をするタイプで、ばれても動じない。母としょっちゅうヒステリックになっていましたけど、それでも別れようとはしなかった。ヘンな夫婦だなあと子供心に思いながら育ちました。私が自分がしっかりしていないと、こんな大人になってしまうと思いながら大きくなったんです」
親が反面教師となり、彼女は小さい頃から勉強に精を出し、いつでも優等生だった。色白で美形だから、誘惑も多かっただろうけど、とにかく一流大学に入り、大手企業に就職した。それまで父がどんなに浮気を繰り返していても、別れようとしなかった母が、彼女の就職を見届けると急に離婚を決意する。自分が母の人生を縛っていたのか、と彼女は心を痛めた。
仕事を手放すと、母のように離婚したくてもできない人生になる。と仕事にも必死に取り組んだ。母のように経済力を持たない女にはなるまい、父のように浮気者にはなるまい、と彼女は頑張っていた。
自分の中にふたりの血が流れていることを恐れる時期もあった。一方で、仕事のストレスを晴らすかのように激しい恋もした。噂によると、知り合いの恋人を盗ったこともあるらしい。
「それはあくまでも噂、でしょ」
彼女は苦笑いしながら言った。
「まあ、お互い独身だったら、ある意味で何でもありですよね。ただ、結婚したらそうはいかないと思ったんです。父のように浮気はしてはいけない、と。私が必死になって相手の姓を名乗ったのも、そうしないと自分が壊れそうで怖かったから」
夫は専門職に就いているが、時間的には彼女の仕事のほうが拘束時間が長い。それでも彼女は、夜中までやっているスーパーに寄って朝食の食材を買い、朝は早く起きて朝食を作った。「妻たる者がやるべきことはきちんとやる」と決めたからだ。
だが無理は続かない。三ヶ月ほどで、彼女は自ら課した「妻」という役割に、すでに疲れを感じるようになった。結婚して半年ほどたったころ、私は彼女から相談を受けたことがある。
「夫とのセックスが苦痛だ」
と。彼女に言わせれば、夫がとにかく「下手」なのだという。独身時代のことを考えれば、自分がセックス嫌いだとは思えない。下手な夫をどうしたらいいのか。
彼女の夫は実は超エリートである。ひょっとしたら、女性は彼女が初めてだったのかもしれない。超エリートで生きてきた三十歳にもなる男に、今さらセックスが下手だからなんとかしろ、うまくなれというのは無理なのではなかろうか。
ところが彼女はあきらめきれなかった。どこをどうされたら自分が感じるのか、彼に徹底的に教え込んだ。超エリートだから、教えればすぐにできるようにはなる。しかし、セックスは技術のみならず、感性の問題が大きい。
「教えた通りにしかできない。パターンでしか動けない。セックスの楽しさって、そういうものじゃないのに」
さらに一ヶ月ほどたったころ、彼女は嘆き、それからしばらくは荒れていた。買ったばかりのテレビに、夫のパソコンを投げつけてどちらも壊した。さらにウィークリーマンションへと家出をする。
二週間ほどひとりになって、彼女はまた自宅へと戻った。夫はにこやかに迎えてくれたという。テレビも、夫のパソコンも、もちろん新しくなっていた。それ以来、彼女はときどき、家出をしてひとりになる、という行動を繰り返している。夫は怒ったりしないのかと問うと、いつでも「平常心」なのだそうだ。
「あの人は、自分が決めたことはやり通すタイプなんだと思うんです。だから、私と結婚して一生、添い遂げると決めた以上、絶対に別れないと思う」
夫とのセックスに満足できない祥子さんだったが、不思議なことに浮気はしなかった。セックスだけ、他で満足させてもいいんじゃないのと気軽に言ってみたことがあるが、彼女は「それだけはできない」といっていた。一度そうしたら、自分はとんでもない方向へ行ってしまうのではないかと恐れていた。
それなのに、結婚して一年半が経った頃、彼女は恋に落ちたという。相手にも恋人がいた。その恋人は、そもそも友人関係にあった彼に、祥子さん自身が紹介した相手だった。
自分が離婚する気などさらさらないのに、彼に恋人がいることが、どうしても我慢できなくなっていく。しかも「間抜けな話だけど、その彼女は私の友だちでもあるわけ」だから、苛立ちは募っていった。
ある日、外で別の女友だちと待ち合わせをしているとき、突然、不安感に襲われる。彼に恋人がいる、彼にとって自分はいちばんではないという思いが、恐怖感に近いものとなっていた。涙がとめどなくあふれ、人々が通り過ぎる街なかで、彼女は号泣した。
「誰かにはまると、辛い思いをする。こんな思いはしたくない。恋なんてしたくない」
強烈にそう思った。そして、その彼とはきっぱり別れる。その半年後。結婚して二年がたったとき、彼女は結婚式をとりおこなった。それもまた、自分自身への戒めだったのだという。
「この人と結婚したことを自分で確認するために、式を挙げたほうがいいかなあと思って」
それはまた、縛られていた自分への決別だったのかもしれない。式を挙げたのを機に、彼女は外に男を作るようになった。だが、「恋」ではない。
付き合っているかもしれないし、好きという気持ちもあるけれど、「相手にはまってしまう恋」ではない、と彼女は言う。一年ほどで五人の男とつきあった。セックスが合って、一緒にいて楽しければいいだけ。
「突然、すべてのタガが外れたんですよね。妻とはこうあるべし、という気持ちが、あの”はまってしまった”恋愛で吹き飛んでしまつた。相手にのめり込まなければ、それは恋愛でないし、恋愛でないのだから、夫への裏切りでもない。
そういうふうに考えたら、急にラクになった。だから付き合う相手にも何も求めない。何も聞かない。『忙しい』と言われたら、忙しいんだと言葉通りに受け取る。そういうとき、恋愛していると『本当は忙しいわけではなくて、私のことが嫌いになったのかもしれない、他にも女が居るのかもしれない』と疑って苦しくなるでしょ。
そういう考え方を一切やめたんです。相手に女が居ようが居まいが関係ない。そうなったら、結婚も、他の男との関係も、あまり悩まなくなりました」
それは屁理屈だということを、彼女自身が一番よく分かっているのだと思う。だが、自分がラクになれる着地点を見つけた彼女は、旺盛に男性と関係を持ち始める。
「周りを見渡せば男はいくらでも居るんですよね。たぶん、私はこの先、どんなに年をとっても、男には不自由しないと思う」
もともと美形で、男をそそるタイプだから、たしかにまだまだモテるだろう。まだ関係は持っていないが、キープしている男は三人ほどいると彼女は言った。傲慢に聞こえるかもしれないが、実際にはそんなことはなく、私には。むしろどこか痛々しいような、彼女自身が不完全燃焼の人生にうんざりしているような感じがしてならなかった。
「夫とのセックスには満足していないけど、向こうが誘ってくれば、なるべく付き合うようにはしています。それが同居している夫婦の最低限のルールだと思うから。他の男のことは、夫には一切気づいていないと思います」
気づかれたり疑われたりしたら困るのだろうが、まったく露ほどにも疑わない、その夫の鈍感さにも、ひょっとしたら彼女は苛立っているのではないだろうか。
日曜の夜、夫ふたりで彼女の作ったパスタ料理を食べながら、夫が「美味しいね」と言った瞬間、キレたことがあると彼女は語った。フォークを放り投げ、皿を夫に投げつけた。何もかも嫌になり、そのまま荷物をまとめて家出し、ホテルに泊まった。翌日、自宅に戻ると、家はきれいに片付いていたという。彼女は、荷物をまとめ直して、ウィークリーマンションへと向かった。
そういうときの夫は、決してすぐに彼女に連絡をとってこない。ほとぼりが冷めたのを見計らって、「何か美味しいものでも食べに行かない?」とメールを寄越す。夫としては、多少、情緒不安定な彼女を見守っていくのは自分の義務だと思っているのかもしれない。
もちろん、彼女への愛情も強いのだろう。だが、彼女は、なぜ夫と一緒に居るのか。
あるとき、彼女と会って、こういう夫婦の話を聞き、夜半に家に戻ると彼女から電話が来たことがあった。どうやら一緒に食べた生牡蠣に当たったらしい。私は何ともなかったので、あまりひどかったら我慢しないで救急車を呼んで病院に行き、点滴を打ってもらった方がいいと話した。
翌朝、彼女から連絡が来て、やはり救急車を呼んだとのことだった、ひとりで行ったというので、夫はどうしていたのかと聞いたら、「こういうときに夫が一緒に来ると、ろくなことはないと経験上、わかっているの」と言うつれない返事だった。
しかし彼女はお腹を壊したわかったとき、真っ先に、今付き合っている男にメールをし、さらに別の男ふたりにメールしたのだという。三人とも「すぐに行ってあげる」と言ってくれたものの、夫がいたのでそれは遠慮した、とか。そして最終的には、夫には「来ないでいいから」とひとりで救急車に乗ったのだ。
「夫が来ても、何の役にも立たないんです。たぶん、おろおろするだけで、こっちが気を遣ってしまう。母の通夜や葬式のときは、とてもしっかり働いてくれたんだけど、結婚してから見てみると、突発的なことには実はまったく対応できない。もしかしたら、実はそれほど働いていなかったのかも。
ただひたすら、私を気遣ってくれていただけだったのに、私がすごく気働きしてくれたように勘違いしたのかなあ、と今になると思うんですよ。当時の記憶があんまりないので‥‥」
この一件で、私は彼女が本当は何を求めているのかを見失った。彼女は、なぜ夫と一緒にいるのか。もっと深いところで、彼女の心の中に、自分でもどうしようもない「何か」があるのではないだろうか。
人の心の奥に迫っていくのは、実は私自身も怖い。相手が、本当は考えなくてもいいようなことまで考えてしまうだろうし、掘り起こさなくてもいい潜在意識を刺激してしまう可能性もある。それに対して、私は責任を取れるのだろうかという思いが常にある。
それでも、タイミングを見計らって、自分が体力的に弱っているとき、夫に頼れないというのはどういうことなのか、寂しくないのかと祥子さんに聞いてみる。
彼女はしばらく悩んだあげく、
「自分でも分からない。私はどうして夫婦でいるんでしょう」
と困惑したような表情をみせた。
「彼、理系の複雑な仕事をしているんですが、それに対しては敬意をもっています。私には絶対できないことだから。もうひとつ、それでも私が別れない理由は、父が彼を気に入っているからかもしれない。
うちの父は、本当に変わった人で、やりたいように思うように生きている。母と離婚してからも、私はときどき父に会っているんです。昔は大嫌いだったんだけど、大人になってからは、なんだか父とはいい友達関係みたいになっていて、特に、ボーイフレンドができると、父には必ず紹介していた。
父はその場で調子よく、ボーイフレンドに接してくれるんだけど、後で必ず難癖をつけるんですね。父が難癖付けずに誉めたのは、夫になった彼だけ。私は父に対して複雑な思いをもって育ったけれど、今は親だという風には考えていません。ただ、『女好きな男の先達』として、ときどき意見を求めたくなることがあるんです」
少しだけ、何かが腑に落ちた。彼女にとって、女好きイコール女性経験豊富な父は、ひょっとしたら男の理想でもあるのかもしれない。だが、それは父として、夫としては許せないことでもある。
父に対しての複雑な思いが、そのまま夫に向いている可能性もあるのかもしれない。夫は彼女を、ときとして父のように大きな愛情で包んではいる。だが、彼女はそれを信じ切れず。さまざまなことをして彼を無意識のうちに試してしまう。
ああでもない、こうでもないとふたりで話していると、彼女は突然、自分は人を愛せないんだと吐き出すように言った。
「たとえば、私が『結婚後、はまってしまった男』がいると言ったでしょう? 彼とのことに懲りて、もう恋なんかしないと決めた、と。でもきっと、私は彼が自分だけのものにならないことにいら立っていただけで、恋していたわけじゃないと思うんです。
そうやって振り返ってみると、私は人を好きになること、そのものが全然わかっていない。気が合うとか、一緒にいて楽しいとか、セックスが合うとか、そういうことは分かるんだけど、好きってどういうこと? と思う。人の気持ちというものを信じていないのかもしれない」
何を信じているの、と私は小声で聞いた。
「お金ですね。うちの父は、事業をお輿しては成功したり失敗したりを繰り返していて、私が中学校くらいのときは、すごく貧乏だったんです。給食費も払えないこともありました。
他の女には貢いでも、母にお金を持ってこなかったのかもしれない。貧乏は嫌いだ、自分が何をしてもお金を稼がなくては、と私はいつも思っていた。信じられるのはお金だけ。心の底に、それがこびりついているんです」
だから彼女は、会社勤めのほかに、いくつかの副業を立ち上げる準備をしている。そのための協力者もすべて男性だ。自分から憎からずと思っている男たちをうまく利用して、会社からお金をもらう立場ではなく、
自らが金を生むようにして生きたいとはっきり言った。恋愛を語るより、「金を生む」ことを語る彼女の方が、なぜか生き生きしていて歯切れもいい。
男に金をもらって事業をしたいとは思わない。それどころか、男には食事を奢ってもらうのさえ苦手だという。だが、男心を利用して人脈づくりをしたり、より事業立ち上げに近づけるように協力してくれる人を増やすことに対しては、非常に積極的だ。
私は「女」を武器にする女性を、羨望をもって眺めて来た。武器にできるだけの器量があるなら、それをうまく利用して、のし上がっていけばいい。彼女のやり方は、まさに天賦の才なのではないだろうか。
金持ちの男に金を出させるのではなく、肉体を武器にするわけでもなく、相手の自分への恋心をうまくくすぐって協力させながら、自分の力を試していこうとしているだけなのだから、「女」の使い方も合理的である。
それにしても、金以外は実は何も心から信じていない、という彼女の発言を、どう考えたらいいのだろう、と私はまた迷ってしまう。そのまま受け止めていいのか、さらに心の奥を探った方がいいのか。
父親への複雑な思い、父が気に入った人だからという夫への思い、そして何より「信じられるのはお金だけだ」と言い切ったこと。そして、彼女の夫は、妻がそれほどまでに金に執着していることを知っているのだろうか。
私の戸惑いをいち早く察して、彼女は笑いながらこんな話をした。
「夫は私のそういう気持ち、知らないと思います。夫はけっこうお坊ちゃんだから、経済的なもんで惨めな思いをしたことはないはず。今付き合っている男は、すごく変わっているんですよ。自分で商売していて、相当儲けているくせに、今どき六畳一間の風呂もない木造アパートに住んでる。
あるとき、彼の部屋のベッドにいるとき。私、ベッドの下に携帯を落としてしまったんですね。手が探っていたら、何か別の物が当たって‥‥。
引っ張り出してみたら、札束だったんです。彼、ベッドの下の奥の方に札束をいくつも隠していた。私、それを見たとき、自分と同じ匂いを持っていると思ったのは、間違いじゃなかったと感じたんです」
多少強引な商売をするところも含めて、彼女は彼のありように、自分を重ね合わせている。超エリートでおっとりした夫とは、まったく違う野性味のある男、苦労しながら、金だけを信じて這い上がってきたような男。
おそらく、彼女自身が、その二面性を自分の中に感じているはずだ。だから性的な意味も含めて、夫だけでは物足りないのだろう。しかし、たぶん、彼とだけずっと一緒に居たら、彼女の中にある「優等生的」な部分は満たされない。
「私の理想を言えば、私が外で他の男とセックスすることを夫が認めてくれること。まあ、そんなのは無理でしょうし、認められたらそれはそれで腹が立つかもしれませんけど」
彼女自身、薄々は分かっているのかもしれない。今あるものに満足しない自分の体質を。非常にしっかりしている面を持っていながら、ときどき制御しきれない自分自身のエネルギーをもてあましているのが見え隠れする。そんな彼女が、これからどうやって夫を始め、男たちと関わっていくのか、私も見続けていきたい気持ちになっている。
つづく 第五 ひとりになるのが怖い