広場恐怖症で外に出るのが怖い
スーザンとテッドの場合
スーザン、四十歳、広場恐怖症です。テッドや友人たちと外出するも嫌だというので、言い争いになってしまいます。けれども実は、妻をサポートしない非協力的な夫が、スーザンの悩みの原因でした。
スーザン(四十歳)は自分の悩みをこんなふうに訴え始めました。
「私は広場恐怖症(アゴラフォビア)なんです。ちょっとした用足しのために外に出るのにも怖くて行けないんです。
テッドや私友人たち週末に出かけたいと思うんですけど、それにも行けないんです。
私にかまわず、独りでテッドに行ったらいいじゃないってテッドに言うんですけど、独りで行った時に、そのたびに、私が行かないことを理由を作って、?を言わなきゃならないのが嫌だと言うんです。
こんな具合ですから、このことで、いつも私たちは言い争うのです」
「この問題で、だれか専門家に相談に行ったことがありますか」
「ええ、もう七ヶ月ぐらい、カウンセラーのところへ行っています」
「で、どんなことを話すんですか?」
「これまでは、私が子供時代にあった恐怖心についてです。それと、私と母との関係のことも話します」
「そうですか‥‥。でまた、どうして、私に相談する気になったんですか?」
「つまり、恐怖心がちっともよくならないものですから。むしろ、悪くなっていると思うんです」
このように訴えるスーザンの悩み、その症状、テッドとの関係と生活の様子、これまでのカウンセリングの内容などに、私は耳を傾けたのです。
聞いた内容から判断すると、スーザンの過去の経験に焦点を合わせたカウンセリングはあまり効果がなかったことも明白でした。
さらに、スーザンの話に耳を傾けているうちに、広場恐怖症の原因と思われるものも明らかになったのです。
彼女が、ストアに所領の買い出しに行く時の話のことを語り始めたときに、そのヒントを与えられました。
「食料の買い出しのためにストアに行くのが大変なんですよ。私が行きつけているストアは家から二マイルくらいの処にあるんですけど、そこに行くにはハイウェイの上を通っているブリッジを渡らなきゃならないんです。
それが嫌なもんですから、遠回りするわけです。けっきょく、五マイルぐらいドライブすれば、ブリッジを渡らなくてもストアに行けるというわけです」
「それで、そのブリッジを渡ると、どうなるんですか?」
「パニック状態になっちゃうんです。ブリッジの下を見ると、下には私をサポートしてくれるものが何にもないでしょ。そんなところに落ちたらと思ったら、怖くなって動けなくなっちゃうんです」
「私をサポートしてくれるものが何もない」
という彼女の言葉を聞いたときに、夫のテッドとの関係を分析的に思い起こしてみたのです。
というのは、これまでのいくつかの研究のデータによると、広場恐怖症に悩む女性には、妻をサポートしない非協力的な夫がいることが明らかにされているのを知っていたからです。まさにスーザンのケースはそれに該当すると思えたからです。
夫のサポートを得ていないことに対する不満が、将来に対する彼女の不安を生んでいるわけです。
そして、その不安の心が、ブリッジを怖くて渡れないという状況に転換されているのです。
スーザンの夫は、家事の手伝いなど一切しません。心を開いて自分の気持ちをスーザンに打ち明けることもほとんどしたこともありません。
また、彼女の悩みにも無神経な態度を示します。「遠回りしなきゃならないと思うなら、そうするより仕方がないじゃないか」といった態度で彼女に対応するのです。
テッドは、基本的にはナイスガイなんですが、ことスーザンの悩みへの対応の仕方は、非常に不健康です。
「私がこんな状態になったのはテッドのせいじゃないんですよ。それに、これは私の問題で、彼との問題じゃないと思いますわ」
テッドを弁護する必要を感じたのか、スーザンはこう言います。
「私も、まったく同感ですよ! 自分の問題でなく、他人の問題だと思ったりしたら、自分にはそのことをどうすることもできずにいつまでも悩むことになりますからね。
しかし、テッドがあなたをサポートしてくれないことが、あなたの恐怖症(フォビア)の原因となっているとしたら、その問題は、あなたが独りで取り組むよりも、テッドと二人で取り組んだ方が解決しやすいと思いますがね」
「夫になにをすればよろしいのでしょうか?」
「何ができるかは、あなたが彼に教えてあげなきゃなりませんが、その前に、自分は何をしなきゃならないのか、何をして欲しいかが、はっきりしないとダメですよね。
そこで、まず、あなたの恐怖症を心理学的に治療しながら、夫に協力できることを教えてあげるんですね。そして、夫の非協力的な態度と対決する話し合いをすることが必要だと思いますよ」
〈感受性の段階的減少法〉
そこで、スーザンに、広場恐怖症のよい治療法として認められている方法の概略を説明してあげたのです。
〈感受性の段階的減少法〉と呼ばれるもので段階的に恐怖を和らげる方法ですが、数週間、もしくは数カ月つづけると効果があることが証明されているものです。
つまり、比較的に恐怖心がすくないことか始めて、徐々により強い恐怖の対象に移行するといったステップを踏んで、最終的に恐怖心を克服できるようになるわけです。
どんなふうにするのか、一例を示しましょう。たとえば、独身のあなたが好きな男性が乗馬が趣味だと仮定します。あなたも乗馬を習いたいのですが、馬が怖いので困っていると仮定しましょう。
こんな場合のあなたの馬に対する恐怖心を克服するやり方を記します。
まず、次に示すような例にならい、心の中で馬との対応の仕方を考えてみます。そして、恐怖心の強さの順に従って段階的に配列します。
・昔のロイ・ロジャーズの映画の中に出てくる利口な、すてきなシリガーという名前の馬を頭の中に描く。
・馬小屋から三十メートルぐらいの所に立ち、やさしそうな馬を見る。
・あなたの友人が乗っている、おとなしい馬のそばに立つ。
・おとなしい馬の体に触れ、そっと叩く。
・おとなしい馬に乗る。
・おとなしい馬に乗り、前に進む。
これらの段階のうち、いちばんやさしいことから始めて、一番難しいこと(怖いこと)に徐々に進めるようになることが目的です。
そこで、まず初めに、ロイ・ロジャーズの映画の中に出てくるトリガーを頭の中に描きます。(映画見たことない人は、ビデオを借りてみて下さい)その場合に、リラックスすることが大切ですが、もし、リラックスして、その馬を見たり、頭に描くことができなければ、次のステップに進めません。
各ステップごとに、恐怖心を克服するための自己暗示をします。
「信頼できる人の助けを借りながら、ゆっくり、少しずつ学んでいけば、怪我なんかすることなく馬に乗れるようになる」って。
これは必ずそうしなければならないということではないのですが、理想を言えば、あなたが一つのそれぞれのステップにおいて、あなたに助けとなるように励まし、手を借してもらうのです。
たとえが、「私が乗る馬は、みんなおとなしい馬なんだ」などといった励ましの言葉を言ってもらいます。
このような方法を順に追ってやっていけば、おそらく早い人は、二、三日で、どうにか乗馬が出来るようになります。
もちろん、その人の恐怖心の強さによって時間のかかり具合は変わります。
段階的に恐怖心を和らげるという、この方法は
、実際に悩んでいる状況に応用できます。
広場恐怖症だけでなく、もっと複雑な原因による恐怖症にも効果があると考えられています。
たとえば、ハイスクールの時代に経験した被拒絶感の結果、他人が怖くて、人の前に出られないといったような恐怖症などにも応用できます。
かといって、過去における葛藤経験のすべてを解決しなければならないというわけではありません。また、それを願って叶えられるものでもありません。
このような段階的に恐怖心を和らげる方法は自分だけでやっても効果があるのですが、セラピストの指導のもとでやれば、より多くの効果を期待できます。
とくに、自分独りでやっていて、途中で問題を感じたら、直ちに専門家の助けを求めた方がよろしいでしょう。
スーザンの場合はどうしたかと言いますと、初めから専門家の助けを借りてやることにしました。
この段階的方法を実践しながら、同時に子ども時代から鬱積していた怒りの感情のしこりも解くという作業をしたのです。
テッドも協力しました。とくに、スーザンの悩みをけなしたり、無関心な態度で接するようなことをしないように努めたのです。また、段階的方法の実践の過程で、スーザンをサポートすることを惜しみませんでした。スーザンが、ブリッジを渡ってストアに行けるようになったのは言うまでもありません。
つづく
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