私犯に関する法律は、州によって異なる。したがって、一般化することは困難だが、通常、私犯における救済は、タイトル・セブンより広範囲にわたっている。
セクハラによって生じたあらゆる経済的な損失、苦痛に対する慰謝料、懲罰金などを請求できる。

第6章 ハラスメントの救済システム

本表紙

ピンクバラセクハラの被害を受けた人々が救済を求めるシステムは、

 職場内におけるものと、職場外のものに大別できる。職場内のものとは、いわゆる苦情処理システムで、さまざまな問題を解決するために、経営者が設けたものだ。
 職場外のシステムは、大別すると三つある。第一が連邦政府の雇用平等委員会(EEOC)、第二が州政府や自治体の公正雇用委員会(FEP)、第三が裁判所だ。これらのシステムの概要と運営方法、救済措置などについて、EEOCを中心に検討していきたい。

職場内のシステム
 通常、アメリカの職場では、セクハラを容認しないことを示す社内規則を作成し、従業員に周知徹底させ、被害を受けたと感じた人々が訴えるための機関が設けられている。
 苦情処理機関と呼ばれているものが、これだ、ここに持ち込まれた訴えに対して、経営者は調査を行い、問題が明らかになれば、解雇を含めた処分と被害者の救済を行うことになる。
 これら一連のものが苦情システムである。

 苦情システムは、経営者が任意で設置する以上のものだ。すなわち、セクハラに関するEEOCのガイドラインは「セクシャル・ハラスメントが起きるものを防止するために必要な措置を取るべきだ」とのべている。
 さらに、カリフォルニア州の公正雇用住宅法は、社内規則の制定、訴えを受け付ける機関の設置、訴えに対する調査の実施、これらの社内制度の周知徹底、加害者の処分、被害者の救済を、従業員が一人以上いる事業体すべてに求める。
 しっかりとした苦情システムが存在することは、セクハラの被害者を受けた人々にとって意味があるだけではない。経営者にとっての意味もおおきい。
 すなわち、最高裁は、セクハラに対して、経営者が完全に免責される方法を示していない。

 これに対して。EEOCは、職場に苦情システムがあり、これを被害者が利用せず、セクハラが生じたことを経営者が知らなかった場合、経営責任を問うことはできない、と言う考えを示している。
 苦情システムが免罪符になるわけではないが、経営者の立場が有利にすることは確かだ。

EEOCとタイトル・セブン

 タイトル・セブンとは、前にも述べたように、1964年に成立した公民権法の第七編のことである。人種、肌の色、出身地(出身国)、性別、宗教を理由にして雇用差別を行うことを禁止した連邦法だ。
 セクシャル・ハラスメントは、タイトル・セブンの性差別の一部とみなされている。
 EEOCは、タイトル・セブンを管轄するために設立された。その後、年齢差別禁止法や障害者差別禁止法、同一賃金法なども管轄するようになった。EEOCは、どの省庁にも属さないね独立した機関である。1995年の職員は2800人余り、年間予算は2億2275万ドルとなっている。また、95年に受理した訴えの件数は、九万件にのぼっている。
 EEOCを代表する五人の委員(コミッショナー)は、大統領の指名を受け、上院の承認を経て決定される。

タイトル・セブンに基づき、EEOCに訴えることのメリットは、大別して三つに分けることが出来る。
(1)  誰でも無料で簡単に訴えを持ち込むことが出来るうえ、訴えに対してEEOC調査を行い、和解がはかられ、必要な場合は被害者に代わって提訴してくれること。

(2)  直接の被害に対する補償だけでなく、慰謝料や制裁的懲罰金も請求してくれること。なお、原告は、復職、昇進、賃金やベネフィットの補填、懲罰金、原告側弁護費用などの支払いだけでなく、社内のセクハラ対策を変更させることを求めることが出来る。

(3)  被害者が名前を伏せたまま訴え、調査を要請することを認めていること。訴えのために、職場で報復されるという懸念を持たなくてすむ。

 このうち(3)は、有名無実ではないか、と考えられるかもしれない。EEOCによって調査が行われれば、ハラスメント(セクハラ)の加害者は誰が訴えたか分かってしまうことが少なくないからだ。
 たしかに、個人と個人の間で密室状態のなかで起きたことに関しては、被害者が名前を伏せても意味がないかもしれない。しかし、不特定多数の被害者がいる場合には、匿名でも調査が加のであることは、被害者が訴えやすい環境を保証しているといえよう。
 
 しかし、タイトル・セブンは、小規模の事業体で働く人々にとって、不利な内容となっている。まず、従業員十五人以上の事業体にしか適応されない。次に、91年の法改正によって初めて認められるようになった慰謝料や制裁的超罰金の額も、従業員の人数に応じて変わってくる。すなわち、従業員十五人以上百人未満の事業体に対しては、最高五万ドル、五百一人以上の事業体に対しては最高三十万ドルとなっている。

EEOCへの訴えと調査権限

 EEOCへの訴えは、セクハラの被害を受けた本人または代理人が行うことができる。訴えは、全米各地にあるEEOCのどのオフィスに対しても行ってよいことになっている。しかし、通常、被害者の居住地に近いところで行うことになる。訴えは、直接EEOCのオフィスを訪れなくとも、郵送でも可能だ。訴えるにあたり、記載しなければならないことは、次の四点である。
(1)  訴えを行う人または代理人の氏名、住所、電話番号。
(2)  加害者の氏名、住所。(わかる場合のみ)。
(3)  ハラスメントを受けた日時やその状況に関する簡単な説明。
(4)  ハラスメントを受けた事業体の従業員数。
訴えは、セクハラを受けてから百八十日ないしは三百日以内に、EEOCへ行わなければならない。これを過ぎると、原則として時効とみなされ、救済を求めることはできない。
訴えの期間が百八十日と三百日に分かれるのは、州法との関連によるものである。
 訴えを受け取ると、加害者や経営者に訴えがなされたことを通知することになる。この通知は、訴えを受けたのち十日以内に行われる。訴えられた人々や企業は、通常、EEOCに反論を寄せる。訴えに対して調査を行う。調査にあたり、EEOCは、召喚状を発行する権限がある。

 これにより、経営者をはじめとした証人喚問を行ったり、人事関係や議事録などを含めた証拠の提出を求めることが出来る。

 調査の結果、訴えに十分な根拠があると判断した場合。EEOCは、原告の意見を聞いたうえで。原告に、被告の双方に和解を勧告する。原告が訴えを取り下げる代わりに、被告が一定の保証を行うという形で、和解が成立する。
 もちろん、EEOCは、和解を強制することはできない。したがって、和解に到達できないこともある。この場合、EEOCは裁判に訴えるか、原告に提訴認可状を発行し、原告による民事訴訟を認めることになる。

 なお、原告による民事訴訟を認めると書いたが、タイトル・セブンに基づく訴えに関しては、まずEEOCに訴え出なければならないことになっている。
 原告が訴えを行ってから百八十日以内に調査が完了しなかった場合や、訴えに根拠がないとEEOCが判断した場合にも、原告は民事訴訟に訴えることができる。
 原告は、提訴認可状を受けてから原則として九十日以内に民事訴訟を起こさなければならない。

州機関と裁判所の対応

 セクハラに対する州政府や自治体の公正雇用委員会(FRP)の対応は、基本的にEEOCの場合と同様である。
 しかし、州や自治体の規定は、それぞれかなり異なっている。一部の州や自治体の法律は、連邦法より適応される事業体の範囲が広いなどの被害者にとってメリットがある。
 半面、慰謝料や制裁的超罰金を認めていないところも存在する。
 EEOCから提訴認可状を受け取り、タイトル・セブンに基づく民事訴訟を起こす以外にも、セクハラの被害者が裁判に訴える方法はある。雇用差別を禁止している法律でなく、いわゆるコモン・ローにおける私犯(民法上の不法行為)に基づく措置だ。
 私犯による訴えは、通常、四つのケースに該当する。
(1)  威圧、すなわち他者に危害を加えられる恐れを感じさせる意図的な行為。
(2)  殴打、すなわち意図的な行為により相手を傷つけること。
(3)  精神的な苦痛を無視したり、意図的に加えること。
(4)  悪意ある解雇
私犯に関する法律は、州によって異なる。したがって、一般化することは困難だが、通常、私犯における救済は、タイトル・セブンより広範囲にわたっている。
セクハラによって生じたあらゆる経済的な損失、苦痛に対する慰謝料、懲罰金などを請求できる。
 これまで、陪審員裁判でセクハラの被害者(一人)に、総額七百十万ドルの補償を認める票決が出されたケースもある。なお、このケースは、判事により金額が三百五十万ドルに減額され、現在も。
 控訴審で争われている。
 タイトル・セブンと異なり、まずEEOCに訴える必要がないというのも、私犯の特徴だ。
 また、従業員の人数も無関係である。時効についても、通常、一年から三年とタイトル・セブンより長くなっている。
 ただし、セクハラを辞めるように求めたり、社内規則を改善させることなどはできない、さらに、復職や昇進を求めることは認められていない、このため、訴えようとする人は、被害を受けてから経過した時間や、どんな救済措置を望んでいるかなどを検討したうえで、どのような法的措置が妥当なのかを判断することになる。
  続く 第7章 ハラスメントと連邦法

煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレスになる人も多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。