彼の家族を見るたびに身が切り裂かれる思いがします。「大人になろう」って頑張っているけど、彼は無神経に家族の話。どうすればいいんですか? 毎日顔を合わせる状態で、携帯の着信発信もチェックされて、私が休みの日には夜TELしてきて「一日何をしていた?」とか「浮気はするな」とか、嬉しい反面、私の人生こんなんでいいのかなって思います。

本表紙 梅田みか 著 

恋愛初心者の私が不倫なんて‥‥

私は来年二十歳になる社会人二年生です。ある日、ふと立ち寄った書店でこの本を目にし、すっかり虜になり購入しました。と、いうのも私も不倫の恋に落ちた、いわゆる愛人だったからです。

 私の彼は十二歳年上の三十二歳、職場の上司です。彼には六歳年上の美人の奥さんと一歳のかわいい男の子がいます。私たちの職場は食品を販売するお店なので、ときどき彼の家族が遊びに来ては私を苦しめます。

 付き合って一年ちょっと過ぎましたが、その間、私は何度も「もう終わりにしよう」と思いました。寂しくて辛くて耐えられなかったからです。でも決意はもろく、彼の優しさに触れると「やっぱり好き」ってズルズルと…。

 彼は気分屋さんで、ちょっと私が気に入らないことをしたり言ったりすると、すぐ口を聞いてくれなくなります。「会おう」つて約束しても「仕事が片付かない」とかドタキャンしたり、忘れた振りをします。さんざん振り回されて傷つけられたこの一年間、それでも優しく大切にしてくれるから別れられません。「カミさんより大切に思っている」とか「お前がいなきゃ」とか言ってくれるけど、「子供を愛しているから離婚はできない」と親バカも‥‥。二人でいても子供の話はするし、もううんざりです。

 どこが好きなんだろうって考えると、嫌なところばかりで、自分でも自分の気持ちが分からない状態です。職場が一緒だから、別れた後きまずくなるのも嫌だし、冷たくされるのも嫌。だから「別かれましょう」とはっきり口に出して言えません。

 彼の家族を見るたびに身が切り裂かれる思いがします。「大人になろう」って頑張っているけど、彼は無神経に家族の話。どうすればいいんですか? 毎日顔を合わせる状態で、携帯の着信発信もチェックされて、私が休みの日には夜TELしてきて「一日何をしていた?」とか「浮気はするな」とか、嬉しい反面、私の人生こんなんでいいのかなって思います。

 彼の安らぎでありたいはずなのに、彼の全てを受け入れてあげたいはずなのに、私の限界を超えるとき、全て投げ出してしまいたくなります。私はそんなに強くないのよ、そんな大人じゃないのよと、ぶつかりたくなってしまいます。

 学生時代にもともと恋愛をしたことがなかった恋愛初心者の私が、社会に出て、いきなり挑んだ恋愛が不倫だったのが、そもそも無理があったのかもしれません。
 梅田先生の作品に出会え、本当によかったです。辛い将来が待っていようと、さみしい日々が続いていようと、私は私のために今の気持ちを信じて貫きます。
           (二十歳・神奈川)

あなたの努力を幼稚な彼は一生気づきません

 二十歳のあなたと、一回りも年上の彼との不倫の恋‥‥と聞くと。まだ幼さの残る女の子と大人の男性との恋愛を想像するものです。けれど、あなたの手紙に書かれているのは、まったく逆、と言っていいのではないでしょうか。

 三十二歳で職場の上司である彼の言動は、ちょっとびっくりしてしまうくらい幼稚なものです。気分屋で、あなたをさんざん振り回した挙句、あなたの前で無神経に子供の話をする。そしてあなたがやっとの思いで「もう終わりにしよう」と決意すると「カミさんより大切」「お前がいなきゃ」などという甘い言葉で引き止める。その上、あなたの携帯の着信発信記録をチェックしたり、あなたの行動を詮索したり、「浮気はするな」などと独占欲をあらわにしている。

彼は本当にただのわがままな子供に過ぎません。二十歳の若さで、こんな身勝手な男性に翻弄されているあなたがかわいそうになってしまいます。

 それに対して、あなたの彼に対する気持ちは、大人の包容力と優しさに満ちています、あなたは彼の家族を目の当たりにする苦しみを味わいながらもきちんと仕事を続け、自分の立場も彼の立場も守ろうとし、「彼の安らぎでありたい」とさえ感じている。「恋愛初心者の私にはそもそも無理があった」とあなたは言っていますが、そんなことはありません、あなたは本当によくやっていると感心するくらいです。この恋に疲れ切ったあなたは「どこが好きなんだろうって考えると嫌なところばかり」というのもうなずけます。

 でも、彼がまったく魅力的な人ではないかというと、そんなことはないのでしょう。このようなある種の欠陥を抱えた男性というのは、一方でとてもロマンティックだったり、誰よりも優しかったり、少年のような純粋さがあったり、彼ならではの離れがたい魅力があるものです。一年の間傷つけられ、苦しんできたあなたが、それでも彼と別れられずにいるのは、その二面性があなたを強く惹きつけているからです。

 けれど、あなたがどんなに「大人になろう」と頑張っても、この恋の事情がいくかでも改善されていくとは思えません。こんな難しい役回りは二十歳のあなたには、少々荷が重過ぎるというものです。彼は完全にあなたに甘え、よりかかり、ますますわがまま放題の子供であり続けるでしょう。「彼の全てを受け入れてあげたい」などというあなたの切なる想いなど、彼には何もわかっていないのです。あなたが「大人になろう」と努力し続ける限り、彼の全てを受け入れてわがままぶりはもっとエスカレートしてくるに違いありません。

 本当なら、あなたはもっともっと恋人に甘えたい年頃、彼に対して無理に大人であろうとするのはやめて、「私はそんなに強くないのよ、大人じゃないのよ」と、いう心の叫びを、彼にぶつけみるべきなのではないでしようか。彼は今まであなたの寛容さに付け込んで、好き勝手にこの恋を楽しんできました。でも、あなたがすべてを投げ出してしまえば、彼はこれまでの態度を変えざるを得ません。その変化が、彼との関係をどんなふうに変えていくかはわかりませんが、おそらく彼のほうが投げ出してしまうでしょう。彼は、あなたにきちんとした大人の関係を築けるような男性ではないのですから。

 あなたが思い通りにならなければ、彼の心は急速にあなたから離れていきます。問題は、そこであなたの心が彼から離れるかどうかです。彼のような男性との恋愛は、非常に麻薬性が強いので断ち切るのが困難なのです。その上彼と「職場が一緒」であり、「別れたあと気まずくなるのも嫌」というあなたが、彼との決別が非常に難しい環境にある事は確かです。

 けれど、彼とこのままの関係を続けていれば、あなたは身も心もぼろぼろになってしまいます。それを考えれば、少々の犠牲を払っても、彼から完全に離れる手段を考えるべきです。自分ひとりでは無理ならば、ご両親か、信頼できる誰かの力を借りてでも、何とかしてその職場を離れることはできないでしょうか。

もちろん、簡単なことではないことは重々承知していますが、あなたの堅実さと年齢を考えれば、必ず道は開けてきます。自分自身を信じて、新たな道を切り開いていってください。あなたはそれだけの強さを持っている女性なのですから。

 CASE 4「できる限りのことをする」

 「出来る限りのことをする」「できる限りきみと一緒にいる」「できる限りつらい思いはさせない」‥‥不倫の関係を持つ男性の中で、一度もこの台詞を口にしない人は少ないのではないでしょうか。男性側が比較的真面目に不倫の恋をとらえた場合、彼女に何を言っても嘘になってしまったり傷つけてしまったりする状況で、結局この言葉しか口にできなくなる、というケースも多い。

 この言葉を聞いたあなたは、彼の優しさや誠実さや、自分のことを真剣に考えてくれている彼の愛情を感じる。そして、辛いのは自分だけじゃなく、彼もまた同じ苦しみの中にいるのだ、という共有意識を持つだろう。自分のために思って、いい加減な約束をしない彼に、感謝さえするかもしれない。

 確かにこの言葉は、不確実な約束よりも、その場限りの甘い台詞よりも、きちんと相手のことを考えた誠意のある言葉として映る。しかし、裏を返せば「できる限りのことしかできない」という宣言であって、決して自分の生活のスタンスは崩さないという姿勢も見られる。あなたが何か望んだとき、「できる限りこと」ではないのだからできない、と突っぱねることができる盾にもなりうるということだ。

 大切なのは「できる限りのことはする」と言った彼が、本当に「できる限りのことをしているか」ということ。それをきちんと見極めれば、恋の行方が見えてくる。

Letter8 愛情と仕事へのプライドに板挟みになっています

 私は二十八歳のOLです。今、二度目の不倫中です。今の私にとって「愛人の掟」はまさに教科書! 三冊とも何度も熟読させていただいています。

 今の彼は現在五三歳。勤務先の関係で知り合った、会社の社長さんです。つき合い始めたのは出会ってから半年ほど経っていて、もちろん誘ったの「掟」通り彼からです。気持ちが若いというか、少年のような心を持った人というか、とにかく見ていておぼっちゃまとして育ってきたんだろうなぁ、と思わせる人です。初めは私さえ割り切っていればおいしい部分だけで付き合えて楽しいだろうなーという、軽い気持ちで付き合い始めました。

 普段は週に一度くらい会っています。
 彼は私との関係を彼なりに大切にしてくれていると思います。二十年来行きつけのバーに連れていってくれて、ママとマスターに「大切か彼女」と紹介してくれました。デートはもっぱらそのバーで、二人でお酒を飲んでおしゃべりして楽しい時間を過ごしています。ママは「あなたはあの人が連れて来た女の人の中でいちばん若くていい子だよ。今までの女は彼のお金が目当てだったんだから」と言われました。

 それを聞いて、彼が私の欲しい物の聞き出して何でもかんでも買ってやろうとしない気持ちが少しわかったような気がしました。彼は私とお金とか体じゃなく、気持ちのつながっている純粋な恋愛がしたいのだとも思いました。旅行もできたし、食事代もホテル代も出してくれるし「いっしょにいれる間はできるだけ寂しい思いをさせないように努力するよ。楽しい思い出をいっぱいつくろうね」って言ってくれます。それで十分です。

 そんな私がこの手紙を書こうと思ったのは自分一人では解決できない悩みが発生してしまったからです。私の勤務先が運営難で事務員から社員からパート扱いにすることになり、年収がガクンと減ってしまうので、進退問題を決めるよう上司に言われたのです。

ところが、私の彼は来年うちの会長に決まっていたので「君の支えが必要だ」と言っていました。会長といえ、自分の会社の仕事もあるので、秘書的スタッフが必要なことは私もわかっています。彼の助けになるのなら薄給にも耐えようかと、考える時間が欲しいと言いました。

すると彼は「今の給料が減る分は、ビジネスと割り切って、二人の関係は別にしておれがたなんとかする。とにかく俺が会長でいるうちは君にいてほしい。その後転職したかったら、俺が探してやるよ」と言ったのです。

 お金に関しては、正直いってありがたいです。でも自分の収入全部ではないにせよ、彼にお金をもらって生活することを、自分の中でどう割り切ればいいのか‥‥。

 不倫をしている友達は、彼の援助で生活をしているうちは、「今彼とは別れられない」と思ってしまって、それがプレッシャーになると、二人の関係が今の楽しさを失ってしまうんじゃないか、と言います。確かにそうかもと思います。

 彼のことが好きなのは本当ですが、チャンスがあれば素敵な独身男性との出会いも大切にしたいと思っている”矛盾”な私の気持ちの中に、彼からお金をもらっているというプレッシャーは危険なんじゃないかと思います。

でも彼の援助を断って仕事を続けると、減給されるという屈辱と収入減の精神的ダメージがあり、彼と会えない時間をつぶすショッピングもできなくなります。かといって、二十八歳の独身女の転職はかなり難しいことです。

 方法は三つ。彼の言うように。ビジネスと割り切ってお金をいくらかもらうか、援助を断って薄給でも彼のために残るか、彼には申し訳ないけれど転職するか…‥。
ご意見をぜひぜひお聞かせください。   (二十八歳・?県)

あなたはいつでも自由であることを忘れないで

 軽い気持ちで、父親のような年齢の男性と不倫の恋をはじめたあなたが、真剣に彼を愛するようになったのは、彼の「できるだけ寂しい思いをさせない」という言葉どおりの、「できる限りのことをする」真摯な姿勢からではないでしょうか。

 あなたの言うとおり、彼はあなたとの関係を「彼なりに大切にしてくれている」のだと思います。あなたを「二十年来の行きつけのバーに連れて行ってくれた」のも、彼なりの愛情表現だったに違いありません。

けれども、そこであなたが聞かされた彼の過去の女性たち噂話などは、鵜吞みせずに話半分に聞いていた方がよさそうです。あなたを褒めるにしても前の彼女と比較してあれこれ言うような人は、もし彼に新しい恋人できたときはまた、あなたに対するのと同じように接するものだからです。バーのママの言うように、「今までの女は彼のお金が目当てだった」ということが本当なのかどうかはわかりませんが、それにあなたが大きな影響を受けてしまう事は危険なことです。


 あなたは「今までの女は彼のお金が目当てだった」から、彼は今までの彼女とはそんな付き合いをし、あなたは純粋な恋愛を望んでいる、そう思っていますが、わたしはちょっと違うような気がするのです。それは今までの彼女たちが悪いのではなく、彼自身もそういう付き合いを楽しいからやっていたのではないでしょうか。

でも、今の彼はそうではない。その変化が、あなたと出会いによって起こったのか、金にモノを言わせるような付き合いに虚しさを感じてはじめたのか、彼が年齢を重ねたせいなのか、もしかすると、彼の経済的な問題によるものかもしれません。
そのどれにしろ、あなたが今の彼の付き合い方を心から「十分」と満足しているのなら、以前の彼女たちに対抗意識を持つ必要はないのですから。

 なぜこのような話をしたかと言うと、この問題は今あなたが直面している「自分ひとりでは解決できない悩み」に関係があるのではないかと思えたからです。彼があなたに経済的援助を申し出たとき、あなたの中には「彼にお金をもらってしまったら。今までの彼女と同じになってしまうのではないか」というような不安が生じたのではないでしょうか。あなたにとって、「純粋な恋愛」をすることが彼との関係の価値になっているからです。

 でも、あなたと彼との関係が、本当に「純粋な恋愛」なのであれば、そこに給与という形で個人的なお金が発生したからといって純粋でなくなるという訳ではないと思います。ただ、その場合に大切なのは、実際に「今の給料が減る分」だけを受け取ること。今までの給料以上のお金を貰ったら、あなたの生活レベルは彼によって引き上げられてしまうことになります。

そうなればあなたは「彼からお金をもらっているプレッシャー」に苛まれることになるでしょうし、別れたくなったらときは自由に彼と別れられない、という問題も出て来るでしょう。でも、それがどれほどの額になるか分かりませんが、彼が減った分の給料を補填してくれるというだけなら、そんな問題はないでしょう。

「生活レベルを変えない」ということは、今のあなたにとっても、誰にとっても、とても重要なことです。そしてもうひとつ、万が一、あなたが彼に個人的にお金をもらっていることが周囲に知れたとき、それに立ち向かう覚悟がお互いにあるということです。

 ただ「お金をもらう」という行為そのものを、どうしてもあなたのプライドが許さないというのであれば、もちろん受け取るべきではありません。残った二つの選択のうち「薄給でも彼のために会社に残る」という状況は、あなたにとっても彼にとっても精神的ダメージを与えることになりますから、困難でも潔く転職の道を考えるしかないでしょう。その上で今までどおり彼と付き合うかどうかはあなた自身で決めればいいことです。

 ひとつ、忘れないでほしいのは、もしこの状況で彼からいくらかのお金をもらっても、あなたが自由でなくなることはないという事です。あなたは今までどおり「独身男性との出会いも大切にしている」あなたのままでいいのです。だって彼は、そこまであなたをお金で束縛するような身勝手な男性ではないはずですから。

Letter9 別れてもどうして別れられません

 私は二十歳のフリーターをしています。高校三年生のときから伝言ダイヤルで知り合った三十四歳の人と不倫をしています。

 不倫相手とは食事をしたり、買い物を楽しんだり、遊園地に行ったり、まるで恋人同士のように会っていました。初めから結婚していることを知っていました。でも子供がいることは彼のボロでわかりました。たくさん会話している中から、わたしは薄々気づいていったのです。奥さんは二歳年下の三十二歳で、子供は一九九七年に生まれたみたいです。

 彼は私の仕事のこと、二十四歳の彼氏のこと、何でも相談にのってくれます。困ったとき、助けてくれたり、私が歯医院に勤めていたときやめることを相談したのも彼がいちばん最初でした。次の職探しもいろいろ心配してくれていました。私も会いたい、帰りたくないとわがままを言っては困らせていました。でも彼は常識ある人なので、十一時には家につくようおくってくれたり、すごくケジメのある人だなと、思っていました。

 ある日、ホテルに泊まった時とき「私はあなたの愛人だよね?」ときいてみました。彼は「親友」というのです。私は傷つきました。彼と私の間を愛人と認めたくないのはなぜなんだろう? かれは「何でも言い合える、あるとき相談にのる、そんな友達関係だよ、友達以上、恋人未満」と私に言いました。

この意味は? 彼は私を愛人というめんどうくさいものにしたくないんでしょうか? 何度も別れようとしました。でも最後の彼の一言でまたもとに戻るのです。「こんなステキな人と出会えたことは忘れない」「君が僕を忘れても、一生君のことは忘れない」とこんなふうに言われると、私は別れるのを取り消してしまうくらい燃え上がるのです。

 でも今度こそ別れようと、二十四歳の彼一筋でいこうと決めて携帯もかえました。すると彼は三日間探し続けて、結局同窓会とか嘘をついて実家の連絡先から私にTELしてきました。「君にできる限りのことをしてあげようと思っている。君には幸せになってもらいたい」と言いました。私も気持ちよくすっぱり終わらせたいのですが、なかなかうまくいきません。彼を責めると「じゃあ、どうすればいいんだよ、俺が離婚して、君とうまくやっていけるか?」と…。

 彼のことを忘れようと、二十四歳の彼と同棲を始めましたが、彼は二回ほどマンションにやってきました。Hをしました。二十四歳の彼はそのことは知っていません。でもキスの写真を見つかってケンカになりました。

 そして、家の事情で同棲を解消することになりました。三十四歳の彼の近くに戻ることになったんです。それからどうなるかは私にはわかりません。でも彼は「俺に頼らず自分の生活をするように願っています」とメールをくれました。突き放されたような気がします。

これも自分が強くなるチャンスだと思っています。でも彼のことが忘れられるか心配です。これだけいろんな意味で好きになった人は初めてです。ある時は親のように、友人のように、恋人のように…、彼の優しさ、厳しさ、力強さ、楽しさ、全部好きなんです。
            (二十歳・広島県)

もう二度と彼とは連絡をとらないで

「これだけはいろんな意味で好きになった人は初めて」と思える恋愛を、二十歳のあなたが経験したことは、本当によかったと思います。ただ、あなたは今まで、自分よりかなり年上の男性ときちんと接したことがなかったのでしょうか。それが、あなたにとって三十四歳の彼が必要以上に魅力的に思えた原因だと思います。

 彼があなたの仕事のことや、恋のことに相談に乗ってくれたり、転職の心配をしてくれたりすることに対して、あなたは彼を非常に頼りがいのある優しい人だと感じている。でも、これは客観的に見ると、彼が特別頼りがいあるとか優しいとかいう問題ではなく、三十歳を過ぎた社会人の男性で、あなたのことを憎からずと思っているのなら、誰でもやっても当たり前という範囲のことです。

ちゃんと十一時まで自宅に送ってくれる彼を、あなたは「常識ある人だな」とか「ケジメのある人だな」と捉えていますが、彼は特別常識ある人でも、ケジメのある人でもなく、ごく当たり前のことをしているにすぎません。だって、あなたを十一時に送っていかなければ、それから自分の家に帰らなければいけない彼のほうがもっと困るのですから。

 初めて年上の男性に接したあなたは、彼の当たり前の行動にすべて「大人の魅力」に見えてしまった。もちろん、それが悪いというのではありません。若い女性が、年上の男性に惹かれる理由のほとんどは、あなたと同じ視点にあるといっても過言ではないからです。問題は、彼という男性が、あなたが大人の魅力を感じるにふさわしい男性であるかかどうか、です。あなたのお手紙を読む限りでは、この男性は三十四歳にしてはずいぶん子供っぽい部分があるように見受けられます。

 まず、あなたが「私はあなたの愛人だよね?」と聞いたとき、彼はそれを認めようとせず「親友」と答えている。あなたと恋愛関係にあることは明らかなのに、あえてそこに清らかな肩書きをつけようとしているところに、彼が自分を正当化していることがうかがえます。

もしそんなつもりがなかったとしても、少なくともこの「親友」という言葉は、あなたのためでなく、彼が自分の為に口にした言葉であることは明らかです。その証拠に、あなたはこのひと言に深く傷ついていたのですから。そして、あなたが別れようという意思を見せると一転「君が僕を忘れても、一生君のことを忘れない」などという。自分を悲劇のヒーローに仕立て上げたようなことを言う。つらく悲しい思いをしているのはあなたのほうなのに、あなたの気持ちなどすっかり棚に上げて、自分の感傷に浸っている。この部分でも彼は、あなたの立場に立ってものを考えることができない自己中心的な子供でしかありません。

 その上、あなたに独身の恋人がいることを知りながら、携帯電話まで変えて去っていったあなたを執拗に追いかけている。そこで何を言うかと思えば「君にできる限りのことをしてあげようと思っている」「幸せになってもらいたい」ですって?

もし本当にかれがあなたにできる限りのことをしたいと思っているのなら、別れを決意したあなたを願っている人が、あなたと恋人が一緒に住んでいる部屋まで乗り込んできたりするはずがないではありませんか。

 彼はあなたにできる限りのことなんて何もしていません。彼が考えているのはあなたの幸せではなく、自分のしたいようにするだけ。そんな中で、彼を何とか忘れようとしたあなたの判断は正しく、とても頑張ったと思います。あたなに独身の恋人がいたことは何よりも救いです。もう二度と、彼と会ったり連絡を取ったりしてはいけません。

あなたは「彼のことが忘れられるか心配」と言っているけれど、わたしは「彼があなたのことを忘れるか心配」です。彼の「俺に頼らず自分の生活をするように願っています」などという言葉はまったくあてになりませんから。

今のあなたが彼を魅力的な大人の男性だと思うのは仕方ないことです。でも、あなたが大人の女性としてたくさんの恋をしていく中で、本当に素晴らしい、本物の「大人の男性」と出会ったとき、彼という男性を理解できるのではないかと思います。そのときにあなたは「彼の全部が好き」なあなたではなくなっているはずですよ。

CASE5 「彼氏をつくれ」

「彼氏をつくれ」「いい男を見つけて幸せになれ」‥‥既婚者の男性と付き合っている独身の女性に自分以外の恋人をつくることを薦める言葉は、とてもよく聞かれる。

 この言葉を言葉のままに受け止めて、傷ついたり、彼の愛情はもう自分にないのだと絶望的になったりすることはない。男性がこのような言葉を口にするのは、あなたへの愛情が高まり、独占欲が出てきた証拠なのだから。

 彼らは「浮気するな」などという言葉であなたへの独占欲をストレートに表現できない立場をわきまえている。できることなら独占したいが、ずっと自分の元にいたらあなたが幸せになれないとおもっているからこそ、あなたを突き放すような言葉が出て来るのである。

 もちろん、あなたが自分以外の男性など愛せるはずがないとわかっていながら「彼氏をつくれ」という彼の中には、不倫の恋をする男性特有のずるさも含まれている。でも、ずるいと言って彼を責めても仕方がない。この恋に足を踏み入れた時点ですでに彼は矛盾しているということを彼自身がきちんと認識しているかどうかだ。そのずるさにまったく自覚せずにこの言葉を口にするのはただの偽善であり、あなたへの愛情を疑う大きな要因になるのである。

Letter10 彼以外の人を好きになれるとは思えません

 梅田先生、初めまして。「愛人の掟」1,2,3読ませていただきました。
 何度読んでも涙が出てきます。不倫って、本当に辛いですね。
 彼と付き合い始めてちょうど一年になります。私は当時二十二歳、彼は三十六歳。私は病院で働いていて、彼はそこの患者さんという関係でした。

 彼を初めて見たとき「素敵な人だなぁ」って思いました。彼が通院するようになってから「飲みに行こうか」って言われて、私は「はい」って答えました。それから彼との付き合いが始まったんです。彼は警察官でした。

 仕事が終わる時間は二人とも不規則だし、会える時間はだいたい三時間くらいだけ。飲みに行って。ホテルにいくというのがいつものパターンです。彼は夜勤もあって、会えるときはそんなに多くないんです。それに、同僚とか上司にこのことがばれてしまったら、彼はクビ。だから、彼、一緒に歩いているとき、時々後ろを振り返っているんです。「同じ職場の人間に後ろからつけられているんじゃないかと思って」って言っていました。

 会う時はいつも夜なんですが、最近二回も昼間に会いました。ご飯食べて、映画を観て、手を繋いで散歩して、少しの時間だけど嬉しかった。でも、やっぱり苦しくて苦しくて辛くて一人で泣いてばかりでした。彼と一緒のときは泣かないようにしていたんですが、最近は抱きしめられているときに、優しすぎて涙がでてしまうんです。

 会うといつも優しい目で見てくれる。歩いているとき手をつないでくれる。いっぱいいっぱいキスもしてくれる。でも、彼には奥さんもいるし、子供もいる。なのに何で私と付き合っているんだろう。ずーっと一緒にいたいのにいられない。苦しすぎ。

 彼は「結婚できないからもっといい男を見つけて早く幸せになれ」って言うんだけど、こんなに彼のことが好きなのに、ほかに好きな人なんてできるわけないでしょって思っちゃいました。でも、このままじゃいけないんですよね。

 私も早く結婚して子供も欲しい。保育園のとき、親が離婚して、父の方にひきとられたんですけど、ずっと祖父母に育ててもらいました。だからかなぁ、早く幸せな家庭がほしいって、中学の頃から思っていました。それなのに結婚している人を好きになってしまってバカですよね。

 これから彼以外の人を好きになれるか心配です。でも、彼に会えて本当によかった。心からそう思います。苦しくて、辛くて、泣いてばかりの一年だったけど、彼にはたくさんの幸せをもらいました。声を聴くだけで元気になれたし、頑張れた。ありがとうの気持ちでいっぱいです。これから、もっと私も幸せになるつもりです。
 梅田先生、素敵な本をありがとうございました。
        (二十三歳・神奈川県)

彼のあなたへの精一杯の愛情だったのです

 お互い不規則な仕事の間を縫うようにして、あなたと彼はひっそりと愛を育んできました。特に彼の方は、不倫の恋をしていることがそのまま今の職を失うことにも繋がるのですから、かなりリスクの大きい恋愛だと言えるでしょう。

「会えるときはそんなに多くない」「会える時間はだいたい三時間だけ」という制約の中で、あなたが彼の愛情をしっかり確認できたのは、それだけふたりの時間を大切にしようという意識がお互いに強かったからだと思います。

きっとあなたも彼も、この恋のことを誰にも打ち明けることなく、一緒にいるときはただお互いを大切に思い。見つめ合ってきたのでしょう。その少ない時間が、限りなく幸福に満ちている反面、彼に合えないときのあなたの辛さは想像できないほど大きいものだったでしょう。まだ二十三歳のあなたが、すべてを話し合える友達もなく、ひとりぼっちでこの恋の辛さに耐えていたかと思うと胸が痛みます。

 でも、あなたが辛いのと同じょうに、彼もまた、つらかったのではないかと思います。もちろんこのお手紙を読むだけで、彼の人間性をすべて読み取ることはできませんが、彼は家庭のことも、あなたのことも、自分の仕事のこともきちんと真剣に考えている男性ではないかという気がします。「同僚や上司にばれたクビ」という大きなリスクを背負った状態で、自分本位にあなたを振り回すわけでもなく、保身に走る事もなく、あなたの気持ちをちゃんと受け止め、愛情を表現している。これはなかなかできることではありません。そして、あなたのことを好きになればなるほど「自分と一緒にいたらあなたは幸せにはなれない」という気持ちに悩まされた末に、「離婚はできないから、いい男を見つけて早く幸せになれ」という言葉が出てきたのでしよう。

 この言葉はあなたにとって、つらく悲しい辛い言葉だったには違いありません。「こんなに彼のことが好きな人なんてできるわけないでしょ」というあなたの気持ちは痛いほどよくわかります。けれど、彼にとっては、これがあなたへの、精一杯の愛の形だったのではないでしょうか。彼だって、本当はあなたにほかの人を好きになってほしくなんかないのです。

できることなら、あなたが喜ぶことや嬉しい言葉をたくさん言ってあげたいのに、言ってあげられない自分の中の矛盾に苦しみ、あなたの将来を考えた結果がこの言葉だったのです。彼はきっといい加減なことが言えない、真面目な性格なのかもしれません。

 あなたも、そんな彼の愛情をちゃんと理解し「このままではいけない」という結論を出しています。あなたの「早く結婚して子供がほしい」という気持ちは、彼のような温かい男性と付き合うことによってさらに強くなったのではないでしょうか。

あなたは「それなのに結婚している人を好きになるなんてバカですね」といっていますが、わたしはそんなことはないと思います。かなり早くから温かい家庭を持ちたいという願望があったあなたが、あえて不倫の恋に落ちてしまったのも、わたしは偶然ではないような気がするのです。

 早くから結婚願望があった女性は、結婚を完全なる幸せな形と考え、美化し、理想化してしまう傾向があります。でも現実の結婚というのは夢と幸せに満ちているわけではありません。あまりに結婚を理想化して考えていると、そこで早々と幻滅して家庭そのものを壊してしまうことになりかねません。

あなたには、自分が結婚して家庭をつくる前に、彼という人に出会って恋をして、今までとは全く別の面から「家庭」というものを捉える機会が必要だったのではないでしょうか。
あなたが順調な恋だけしていたら、決して感じることがなかった「家庭」の側面を知る事で、あなたの中には奥行のある二つ目が生まれたのです。それは、あなたが将来家庭を持つにあたって、とても大切な拠り所になるからです。

 この恋をしたことが、あなたの結婚や幸福への遠回りになったとは思えません。今は「彼以外の人を好きになれるか心配」なのはわかりますが、あなたが心から愛せる男性が必ずどこかにいます。今のあなたの「ありがとうの気持ちでいっぱい」の心を忘れずに、もっともっと幸せになってください。あなたなら、きっと彼に負けない温かな家庭が築けるでしょう。

 Letter11 二十五歳年上の彼は私を癒してくれています

 初めまして、私は二十四歳のある高速船の客室乗務員をしているものです。
 私は約二カ月間、私の乗っている船の船長と不倫をしています。船長は四十九歳、成人した子供さんと奥さんで暮らしています。彼は私の住んでいる町とは違うところに住んでいて、仕事の都合でときとぎ会社の寮に寝泊まりしています。それが私の家のすぐ近くなので、タイミングが合うと、寮に泊って会っています。

 彼と仕事をし始めた最初のころは、彼は渋くて、口数が少なく、あまり話はできませんでした。でも日が経つにつれてだんだんお互い慣れてきて、話もしてくれるように
なったし、可愛がってくれるようになりました。

 ある日、いつものように一緒に仕事をしていたら、彼がぽつんと「今日カラオケにでも行くか」と言ってくれました。それまでもお酒も飲んだこともないし、誘ってくれたこともないので。とてもうれしかった。二人で仕事の後カラオケに行って、一緒に帰ってきて話をしていたらそういう雰囲気になって、結局彼の寮で男と女の関係になりました。

 それがきっかけとなって、私たちはできるだけタイミングを見計らっても私が彼の寮に行って、夜二時ごろ帰るという生活を十日に一度の割合でしています。会社の寮だし、私は実家なので、泊まるのは難しいんです。

 彼は私のことを「話していても疲れないし、気に入っていた」そうですが、まさかこんな関係になるとは思っていなかったそうです。私もこんな父親のように年の離れた人が恋愛対象になるなんて、意外だったし、びっくりしています。

 船長は今までかなり遊んだ経験のある人で、女好きの人だったそうですが、会社でこんな関係になったのは私が初めてだそうです。だからとても慎重に考えてくれています。

「俺との関係はお前にとって、通過点だ」とか「俺との経験で大人になってくれ、幸せになってほしい」と言い、また「彼氏をつくれ」の言葉が何だか寂しかったりしましたが、ある日船長が「お前が束縛されていると感じたらイヤになるだろう」と言ったのを聞いて、確かにそうだなあと思いました。それでまた私も船長を束縛できないということになるのです。

 彼と私は一緒にビールを飲んで、話して、セックスしたら、とてもホッとできてストレス解消になって、リラックスできると言ってくれます。私も同じ気持ちです。

 欲目かもしれませんが、彼は調子のいいことや、私に希望を持たせるようなこと、嘘を言ったりしません。「愛している」は一度だけ言いましたが、彼は私に対して、会ってホッとできるこの時間をとても大切にしてくれています。

「愛人の掟」に出会って興味深く読ませていただきましたが、読む前からその掟は自分の中である程度理解していたように思います。でもそれは彼の人間性や彼自身が私に教えてくれていたことだと思います。私たちの恋は、年がうんと離れている。彼が本当の大人だから成り立っているだと思います。

 ただ、いつまでこんな関係が続くとは思えないし(つづけたいけど)、新しい彼ができたとき、私は船長と別れるのか別れないのか、これからのことを考えると、そのときが自分の決断を迫られるときなのだろうとは思います。

 でも彼との時間は私に安らぎを与えてくれ、明日への活力をわかせてくれています。とても充実した時間になっています、仕事は不規則なのに前よりも元気です。仕事中も彼は温かな目で私を見守ってくれているのが感じられるのです。
 こんな恋愛もあるんだなぁと思っています。
          (二十四歳・?県)

きちんと別れをやり遂げてこそ彼の愛情に応えることに

「こんな父親のような年の離れた人が恋愛対象になるなんて、意外だったし、びっくりしています」。あなたの言うとおり、恋はその度に、意外な事やびっくりさせられることでいっぱいです。だからこそ、恋は楽しく、素晴らしいものなのでしょう。

 様々な恋愛は、あなたの前にいつも偶然飛び込んでくるように見えますが、あなたの成長に合わせて、その段階にふさわしい人と出会い、惹かれ、お互いの気持ちが通じあって生まれまるものです。今のあなたは、二十五歳も年上の彼と恋をする必要があったし、彼の中にもまた、娘のような若いあなたと恋に落ちる必然があったのだと思います。

 彼とあなたに与えられているのは、十日に一度の、仕事が終わってから夜更けまでほんの数時間、それでも、ふたりで共に過ごす時間は、あなたに「安らぎを与えてくれ、明日への活力をわかせてくれる」「とても充実した時間」であるし、彼にとっては「とてもホッとできて」「リラックスできる」時間です。その限られた時間を、ふたりで大切に守っている様子が、手に取るように伝わってきました。

 あなたは「読む前からその掟は自分の中にある程度理解していたように思う」と言っていますが、本当にその通りだと思います。あなたも彼も、きちんと自分の立場をわきまえ、お互いを思いやり、自分本位な行動に走ったりしていません。でも、あなた自身も「いつまでもこんな関係が続くとは思えない」と感じているように、あなたは今、この恋のいちばん幸せなときであることを忘れてはいけません。

 不倫の恋は、お互いの気持ちのバランスをとるのが非常に難しい恋愛です。今、あなたと彼の間に保たれている均衡も、いつ崩れてしまうかわからない。それはどちらかの想いが強くなりすぎてもよわくなりすぎても、どちらかの立場がほんの少し変わっただけでも、タイミングが何度かずれてしまっただけでも崩れてしまう可能性を含んでいる微妙なバランスなのです。今日のふたりの関係が、明日も同じだという保証はどこにもないのです。

 だからこそ、彼はあなたのことを必要以上に慎重に捉えているのでしょう。「俺との関係はお前にとって、通過点だ」という彼の言葉は、あなたに伝えていることでもあり、彼自身に言い聞かせている言葉でもあるのでしょう。彼はあなたに対する自分の役割を「自分との経験で大人になること」だと考え、それ以上あなたを束縛しないことを心に決めているのだと思います。だからこそ、「調子のいいことや希望を持たせることは言わない」。これはあなたの「欲目」でも何でもなく、彼の一貫した人間性をあらわしているのです。

「彼氏をつくれ」という彼の言葉も、彼のあなたを思いやる気持ちから自然に発生したものでしょう。あなたも最初は寂しく思ったりもしたけれど、彼の人間性を深く理解とていく中で、その言葉の本当の意味が見えてきたのではないでしょうか。それでも、その言葉の根底には、あなたを束縛したいという気持ちがあるし、あなたも彼を束縛したいという気持ちから逃れられることはありません。そのぎりぎりの状態で、今のバランスを何とか取り合って、彼とあなたの恋は進んでいるのです。

 これからのあなたらいちばん大切なのは、このバランスが崩れても、動揺したり、混乱したり、あまり深く悲しんだりしないことです。ふたりの関係がこの先どんな変化を見せても、この恋の自然な流れだとすんなり受け入れることです。それがあなたの危惧しているように「新しい彼ができたとき」なのかどうかはわかりませんが、どんな形であれ、そのときは必ず来るのですから。

そのときのあなたが、自分の中できちんと彼との別れを決断し、やり遂げることができたとき、あなたは本当の意味で彼の愛情に応えることができるのです。

 あなたと彼との恋から多くのものを吸収し、自分自身を輝かせてきました。「仕事は不規則なのに前よりも元気」というのは恋の素晴らしい効用のひとつです。でも、恋がパワーをくれるか、恋にパワーを奪われるか、ということもまた、すれすれの表裏一体なのです。この恋にもらったパワーを決して無駄にしないように、新しい未来に向かって歩いて下さい。

Letter12 彼との別れ‥‥今は夢を取り戻し頑張っています

 私は二十一歳の販売員です。彼は三十六歳の同じ会社の社長です。
 彼と初めて出会ったのは十九歳のとき。言いようのない胸騒ぎを感じて彼だけを目で追っていました。
 彼は奥さんや子供のことを楽しそうに話す人で、私は好きになってはいけない人と自分で言い聞かせていました。

 きっかけはお店のオープンの打ち上げのとき。彼が私の隣に座り、初めていろんな話をしたとき、もう抑えきれないほどの好きという気持ちに気づき、誘われるままホテルへ‥‥。
 彼の事務所と私の働くお店は車で五時間ほど離れています。でも彼はTELとメールは毎日欠かさず、週に一回は五時間かけて会いに来てくれました。

 彼と体の関係になったとき、彼から「家族がいちばん大事。君に本当に好きな人が現れるまで会ってほしい」と言われました。そのときは私も割り切っていたし、このままでもいいと思っていました。
 彼は私をいろいろなところに連れて行ってくれました。彼の友人の前では私は妹になり、他人になり、また存在しない人にもなり切っていました。

 彼は私の前では家族の話は一切しませんでした。彼は本当は結婚なんてしないんじゃないかと思うほど、私を大事にし、二人の時間を大切にしてくれました。仕事のときは尊敬する上司で、恋人のときは優しい男になってくれました。

 でも半年を過ぎたころからヘンな期待を抱くようになりました。「もしかしたら私のところに」と思うようになりました。
 いちばん考えてはいけないことばかり頭の中をグルグルまわり、彼にもワガママばかり言うようになりました。
 そして別れを決意しました。

 彼の財布の中に入っていた子供の写真を見たときは、子供は何も悪くないのに、私のせいで不幸にしている気がして、涙が止まりませんでした。私は小さい頃から父がいなかったので、父親という存在が、子供にとってどんなに大切かわかっているから。

でもいざ別れる決意をしても彼の声を聞くと決意がゆるぎ、涙が止まりません。毎日が辛く私は体調を崩し、十キロもやせて入院してしまいました。

 心配して見舞いに来てくれた友人にすべて打ち明けました。友人はそのときこう言ったのです。「人の幸せをこわして、人を蹴落としてまで彼を手に入れて、幸せになれるの?」私はこの言葉で自分を取り戻すことができました。
 かれに別れを告げた日、彼は何度も私に謝りました。「寂しい思いをさせてゴメン。辛い思いをさせてゴメン」と。

 一度は仕事も辞めてしまおうかと思いましたが「自分の店をもつ」という夢を取り戻し、今はその夢に向かって頑張っています! 彼のことは今も好きですが、もう前のような関係には二度となりません。彼を尊敬し、上司として見ているから。

 後悔もしていないし、こんなにも人を好きになれた自分に自信がついたし、仕事に対しても怖いものなしになっています。
 彼に最近やっと笑顔でありがとうと言えました。この先、もっとすてきな人が現れることを信じています。    (二十一歳・?県)

彼はあなたのという女性を馬鹿にしています

 あなたは彼に初めて出会った瞬間から、彼に熱烈な恋心を抱いていました。でも、あなたの前に現れた彼は「奥さんや子供のことを楽しそうに話す人」。あなたは「好きになってはいけない人」と自分に言い聞かせてはいたけれど、心にブレーキをかけるところまではいかなかった。彼と近づくきっかけが訪れたとき「抑えきれないほどの好きという気持ちに気づいた」のはあなただけではなく、彼の方もあなたの強い想いに気づいたのだと思います。

 彼は、自分がホテルに誘えばあなたが断るはずがない、という確信を持ってあなたを誘ったのでしょう。そして、あなたと「体の関係になった」直後に、「家族がいちばん大事だから、君に本当に好きな人が現れるまで会っていてほしい」とかなり割り切った気持ちを伝えています。

「そのときは私も割り切っていた」とあなたは言っていますが、この彼の言葉はあなたにとって、かなりショックだったのではないでしょうか。もちろん、甘い言葉だけでやっていける恋ではありませんが、自分からホテルに誘っておいて、初めての夜にこんな言葉を口にするなんて、何だかあなたという女性を馬鹿にしているようで、わたしはとてもいやな印象を受けました。

 週に一度、車であなたに五時間もかけて会いに来たという彼の情熱は認めますが、それ以外の彼の行動は不可解なことだらけです。あなたをいろいろなところに連れて行ってくれるのはいいけれど「彼の友人の前では私は妹になり、他人になり、また存在しない人にもなりました」というのは一体、どういうことでしょう? 

そんなことをあなたに強いるくらいなら、自分の友人になど一切合わせてくれないほうがましです。たとえあなたをみんなに自慢して回りたいと思っても、立場上それができない切なさに苛まれるが普通です。ここでも彼はあなたという女性を馬鹿にしているとしか思えません。

だって彼は、あなたの存在をみんなの前でないものにすることを続けていたのですから。そんな彼にひどい仕打ちを、あなたはどのように受け止めていたのでしょうか。あなたも一緒になって彼のお遊びに乗じていたとは思えません。あなたはこのときから少しずつ、この恋に傷ついていたはずです。

 その上、あなたがどうして「彼は私を大事にし、ふたりの時間を大切にしてくれた」と感じたのか不思議でなりませんが、それはふたりにしかわからないことですし、彼にはあなたが魅力を感じる要素が少なからずあったのでしょう。でも、それはあなたが、一目惚れのような状態で始まったこの恋に、彼の人間性を的確に判断する力を失っていたせいだと思います。

あなたはこのつらい恋の中で彼にわがままを言ってしまう自分を責め、「子供は何も悪くないのに私のせいで不幸にしている」とまで思い悩んでいる。けれど、誓ってもいいですが、あなたは彼の子供を不幸になど決してしていません。もしこの恋が原因で彼の子供が傷つく局面があったとしても、それはあなたのせいではなく、全面的に彼の責任です。あなたがこの恋に関して責任を感じるようなことは何ひとつありません。

 そんなあなたがたったひとりで自分を追い詰め、体まで壊してしまったなんて、本当にかわいそうでなりません。あなたが「その言葉で自分を取り戻すことができた」と言っている友達の言葉さえ、あなたにはまったく不適切な助言としか思えません。「人の幸せを壊して人を蹴落としてまで彼を手に入れて、幸せになれるの?」。

これは不倫の恋をする女性たちに、非常によく浴びせられる言葉ですが、あなたにはまるで当てはまりません。だってあなたは彼の幸せを壊していないし、誰も蹴落としていないし、彼の何をも手に入れていないのです。もちろん結果的にあなたが自分を取り戻せたのですから、それ以上何も言う事がありませんが。

あなたが彼との恋に自分からピリオドを打てたことに、ほっと胸をなでおろします。「前のような関係には二度となりません」というあなたの言葉が、本物であることを願ってやみません。絶対に、絶対にこの誓いを破らないでください! そして「彼のことは今でも好き」というあなたの気持ちが速く消え去り、「この先、もっとすてきな人が現れることを信じている」あなたが素晴らしい恋に出会えることを祈っています。

CASE6 「幸せにできない」

「幸せにできない」「幸せにしてやれない」「君の将来をこわしたくない」‥‥これらの言葉は男性が「離婚できない」前提のもとに語られている。

「幸せになれるかなれないか」というテーマとして語られることが多い。だからこそ、この「幸せにできない」というフレーズが頻繫に使われているのだろう。だから簡単に離婚を約束する男性は逆に「幸せにする」という言葉を口にする。

「幸せにできない」という言葉は、「幸せにしてやりたいけど、自分にはそれができない」という彼の切なさが伝わってくる言葉である。でも、裏を返せば「自分が結婚さえできればあなたを幸せにできる」ということでもある。これは、結婚こそが恋のゴールであり、女の幸せであり、そして女は男が幸せにしてやるものだというやや時代遅れの認識に基づいている言葉なのだ。

 けれど、不倫の恋をする女性たちの中には、結婚をゴールと思わない人もいれば、幸せは誰からもらうものではなく自分で作り出さなければならないものだと気づいている人も多いはずだ。「幸せにできない」は、一見彼の誠実さが見えているようで、実はこれさえ見せてやればあなたが何も言えなくなる最初の切り札でもある。この言葉の根底には、彼の思い上がりや自己満足が潜んでいるかも知れない。

Letter13 幸せにしてやれない‥‥でももう少し思っていたい

 私は(二十五歳)は回りのみんなから「バカ女」と呼ばれています。彼(三十三歳)と付き合いだしてもう四年にもなりますから仕方ない話ですが、今はこんな自分を結構気に入っています。

 付き合いだしたころは悪いことをしているようで、会いたくても、でも会えない、寂しくて辛くて悩んでばかりいたような気がします。でも人間って強くなるものですね。
 その寂しさとうまくつき合っていこうと思えるようになったんです。

 いちばんに会いたい、話したいと思うけれど、そこをぐっと我慢して、この話はこの人、この話はこの人と、周りの友達に聞いてもらっています。友達みんなが彼代わりという感じです。以前はこんなに会いたいのに、こんなに我慢しているのに‥‥こんな気持ちを彼にぶつけてばかりしていました。でも今は「あなたのおかげでたくさん友達と遊べるわ」と言えるようになりました。

「あなたが思っているほど私はもてない女じゃありません」みたいなこともいっちゃっています。だってくやしいじゃありませんか。こいつは俺だけだなんて言われてしまうの。彼には奥さんがいるのに私には彼ひとりだなんて…。実際は彼ひとりなんですけど、ちょっと見栄を張っちゃってます。

 彼は奥さんのことについて一切私に話しません。私も絶対に聞きません。でも一度だけ「うちのカミさん、すごいんだわ」って言ったことがあるんです。私もきっとよくできた女房なんだろうと思います。

 彼と居酒屋でバイトしているときに知り合いました。半年後、私から一度別れたのですが、その半年後に偶然再会。復活して、その三か月後、彼は十一年間つき合って同棲していた今の奥さんと結婚しました。そこで別れようと思ったのですが、結局別れられず、今に至っています。

 彼はいつも「俺はお前を幸せにいてやることはできない」って言うんです。私もそのときは強がって「あなたに幸せにしてもらおうとは思っていない」って言うんですが、奥さんに対しては「幸せにしたい、してやりたい」って思ってきっと結婚したわけですから、勝ち目はないですよ。だから無駄な抵抗はしないんです。
 とりあえずこんなふうに思えるようになったんだから、びっくりです。

 私の考え方がよいのか悪いのかわかりませんが、私は私なりにちゃんと愛人としているつもりですし、これからもしていくつもりです。卑屈にならず、私は私のできる限りで彼のことを思っていきたいと思っています。
 本当はもうそろそろやめないといけないですけれどね。私ももう二十五歳ですし。でも、でも、もう少し彼のことを思っています。 (二十五歳・愛知県)

そろそろタイムリミットが近づいていることを意識して

 二十五歳のあなたもう、不倫関係四年、若くからこの恋に踏み入れていたあなたが「寂しさとうまくつき合っていこうと思えるようになって」この恋を今まで続けて来ることができたのは、お手紙の文面からも伝わってくるあなたの気の強さや、持ち前の明るさがあったからこそなのでしょう。そして、あなたを「バカ女」と呼びながら支えてくれたお友達の力がとても大きいと思います。

 特に十代や二十代前半の若い女性がこの恋に落ちたとき、まわりにこの恋についてちゃんと話せる友人がいるか、いないかは、大きな違いです。たとえ一人でもすべてを打ち明けられる友人がいれば、この恋の辛さはいくらかでも軽減され、それがどんなに拙(つたな)い助言であっても、彼女にとってそれは大きな助けになるものです。それがあなたの場合、ひとりどころか「友達みんなが彼代わり」というのですから、これほど大きな支えは有りません。ひとりぽっちでこの恋に向き合わなくてはならない女性たちから見たら、何と羨ましい話です。

 最初のころは「寂しくて辛くて悩んでばかりいた」あなたは、そのつらさや寂しさを乗り切る方法を自分なりにあれこれ模索し、実践してきました。なかなか会えない彼に「あなたのおかげでたくさん友達と遊べるわ」とちょっとイヤミを言ってみたり、「こいつは俺だけなんて思われるのは悔しい」と彼に見栄を張ったりする少々子供じみた行為も、あなたがこの恋のつらさを乗り切っていくためには必要なことだったのです。あなたの思考はいつも前向きで、不倫の恋特有の暗さもない。どんな状況でも恋愛を楽しんでいける姿勢は、あなたならではの才能といってもいいでしょう。

 そんなあなただからこそ、彼の「幸せにできない」と言う言葉にも、涙ひとつ見せることなく「あなたにし阿保背にしてもらおうなんて思っていない」と切り返すことができたのです。あなたはただ大切なのは「彼に幸せにしてもらうこと」ではなく、「あなた自身が幸せを感じられるかどうか」なのですから。

 あなたがこれまで「卑屈にならずちゃんとと愛人」を貫いてきたことは、あなたにとっても大切な経験になったでしょう。ただ、あなたが考えなくてはいけないのはこれから先のことです。「本当はそろそろやめないといけない」と言いながら、あなたのなかにはまだ彼との別れが切実なものになっていないような気がします。「今はこんな自分が結構気に入っている」という気持ちの方が、大半を占めているのではないでしょうか。

 あなたがこの恋をしてきた二十一歳から二十五歳の四年間と、これから二十代後半にかけての四年間では、不倫の恋をする意味がまったく異なってきます。あなたが常にこの恋を前向きに明るくとらえてくることができたひとつの要因として、あなたの年齢が若かったことがあげられます、二十代前半では、まだ結婚や出産など考えなくてはならない時期までかなり猶予がありますが、二十代後半になればタイムリミットもうすぐそこ。

もちろん、若ければ不倫の恋のつらさが軽いものだと言っているのではありませんが、このまま彼と付き合っていたら一生家庭を持つことも子供を持つこともできないかもしれない、というところまで追いつめられるということではないでしょう。

 不倫の恋する女性にとって、若さはそれだけ重大な意味を持っているのです。誰にとってもそうであるように、あなたの若さも永遠ではありません。この先、彼との恋のつらさは、あなたの中で微妙に変化し、徐々に重いものになっていくはずです。「も少し彼のことを思って」いるのはかまいませんが、少しずつ彼との決別を現実のものとして考えていく必要があるのではないでしょうか。

 二十五歳のあなたは、ちょうど女性として大きな転換期を迎えています。これから三十歳までの五年間をどう過ごすかで、あなたの人生がほぼ決まっていくといっても過言ではありません。その大切な岐路に立って、もう一度彼との恋を見つめ直してくださいね。

Letter14 妻の妊娠中に私との恋をはじめた彼はひどい人?


 しかしそれにもかかわらず、私を異性として意識していたようです。それでも初めの一年半はあくまでもよき先輩、後輩の関係でした。しかし、私が進路指導などのことでパンクしそうに悩んでいるとき、支えてくれたことがきっかけで、男女の関係となりました。どちらからつき合おうと言ったのでもなく、月に一度ほど私を車で送ってくれてそのまま‥‥ということがあったという感じです。

 しかしそのうちだんだん私は仕事に関しての自信がついてきました。もちろん、この不倫のことが公になれば教師としてやっていけなくなるかもしれません。でも私は彼と結婚することなど考えてもいません。これまで努力して築いてきた人生、仕事も絶対に手放したくないから。女らしくないかも知れませんが、彼も同じだし、彼は私のそんな望みを理解してくれています。

 一度は奥さんにバレかかり、お互い抱きたい抱かれたいというのを必死でこらえたこともありました。
 そんなとき、私は学校を替わることになりました。環境が変わったことがますますふたりのその気を大きくさせたのでしょう。電話で話しているうちに、お互い会いたい気持ちが我慢できなくなってきました。

彼は「会ったらきっと抱いてしまう」私は「それならそれでいいよ」と。私の中でも自分の将来を大事にする自分と、彼に会って抱かれたい自分がいました。案の定、抱かれました。でもその直前までは彼は迷っていたようです。私の人生を振り回している・・・・と。

 彼は決断したようにはっきりこう言いました。「あなたが割り切ったつき合いにするなら、自分も楽な気持ちで会うことができる」と。「でもそれはセックスフレンドのような関係になってしまうだろう。自分の都合のいいように聞こえてしまうだろうが、あなたの幸せになるべき将来をこわしたくないんだ。あなたはそれ(割り切ったつき合い)ができる?」と。そうでなくとは辛いけど会わないというのです。
私はできると思うと答えました。

 変わっているかもしれませんが、私にとっては恋より仕事が大事なんです。彼が私と結婚した何て言っても、受け入れたくないほどなのです。

 ただ梅田さんの本を読んで気になることがひとつ。彼と私、初めてキスをしたのが、奥さんの妊娠五カ月だったということです。梅田さんの本によるとひどい人なのでしょうか?  正確にいえば、わたしに最初にアプローチをしてきたときは、まだ妊娠していませんでしたが。彼が妻の妊娠中に私との恋を始めてしまった、それだけで彼の人間性を判断できてしまうでしょうか?
      (二十四歳・?県)

この恋は終わりにしてもいいのではないですか?

「私にとっては恋より仕事が大事」。こう言い切ってしまえる自分自身を、あなたは「女らしくない」とか「変わっているかもしれません」と気にしていますが、そんなことはないと思います。
女性にとって、恋も仕事も両方、とても大事なものですから、優先順位をつけるとしたらどちらになるのかは難しい問題です。でも、「仕事より恋が大事」という人が女らしくて、「恋より仕事が大事」という人が変わっているなんて決めつけられるはずがありません。

 ただ、今はあなたの中で「恋より仕事」という明確な順序がありますが、それは揺るぎないものではなく、その時々で変化していくものではないでしょうか。二十四歳の今は「恋より仕事」でも、二十六歳や二十九歳のあなたはもしかしたら「仕事より恋」かもしれない。そんなことはあり得ないと思うかもしれませんが、絶対に変わらないものなんてないのですから。それに、そのくらいニュートラルな気持ちでいたほうが、自分で自分の考えに縛られないですむということもあります。

 あなたが「恋より仕事が大事」という明確な姿勢を持っているからでしょうか、あなたの文面からは、彼に恋焦がれるあなたの姿はほとんど見えてきません。彼のあなたへの気持ちに対してどこか他人事のようにで「結婚しているにもかかわらず私を異性として意識していたようだ」とか「その直前まで彼は迷っていたようだ」とか…彼があなたを意識したり、迷ったりしているとき、あなたはどうだったのでしょう?

あなたの中では、彼を異性として捉えるというよりも、仕事に悩んでいるあなたを支えてくれたり、助言をくれた教師の先輩としての彼の存在のほうが大きいように見受けられます。もし彼がアプローチさえしてこなければ、あなたは彼と男女の関係にならなくてもよかったかもしれません。

 それに対して、彼は「あなたの人生を振り回している」とか「割り切ったつき合いでなければ、つらいけど会わない」とか「都合のいいように聞こえて」しまわないかとか、あれこれ悩み、最後は「あなたの幸せになるべき将来を壊したくない」という決断に至っています。でも、そんな彼の切実な言葉を、あなたの前ではあまり意味を持たないようです。だってあなたは「彼が結婚したいと言っても受け入れたくないほど」なのですからね。

 ふたりの関係は、何だかとてもちぐはぐで、バランスが悪いような気がします。この先お互いが望むように割り切った大人の付き合いをしても、ふたりにとってそれが意味のあるものなのかどうか疑問です。彼が心配しているように「セックスフレンドのような」関係になるのなら、あえてこの恋を続けていかなくてもいいのではないでしようか。

だんだん仕事に関しての自信もついてきた」あなたは、もう以前のように彼の助言者として必要としていないようですし、「不倫のことが公になれば教師としてやっていけなくなるかもしれない」というのがいちばんの不安なのですから、あなたにとってこの恋はもう終わりに向かっていくものと考えたほうがいいのではないでしようか。

 最後に、「彼が妻の妊娠中に私との恋にはじめてしまった。それだけで彼の人間性を判断できてしまうのでしょうか?」というあなたの問いにこたえるとすれば、ある程度は判断できると思います。もちろん、それだけで彼が酷い人だ、とまでは言いませんが、奥さんが妊娠中だったことが、彼の心をあなたに向かわせるきっかけになったことは確かです。

妻の妊娠中にほかの女性と親しい関係を持つことは、やはり男性として許さざる行為だと、私は思います。「一度奥さんにばれかかった」あなたと彼との関係が、実際にばれなかったのは幸いでしたが、もしばれていたらそれこそ彼は「酷い人」になっていたところです。でも「バレかかる」などということが起こること自体、彼のキャパシティーのなさを感じさせます。

 でも、これもあなたにとってはあまり関係ないことなのではないですか? あなたは彼の奥さんの立場に立ってものを考えたこともないし、彼の奥さんになりたいと望んだこともないのですから。ただ、かれがあなたにとってどんなにその人間性を信じられる男性であったとしても、彼が自分の妻に対してそのような裏切りができる人間であることに変わりはないのです。

 Letter15 さよならしたのに。もう死ぬほど後悔しています 

  私は今二十七歳。二日前、彼(三十八歳)にメールで一方的にさよならしました。言葉にすると涙でいえなくなっちゃうから。きょう、彼からメールがきました。「メール、ショックでした。これからのことを考えると、これでよかったのかなと思います」と‥‥。

 彼とは会社が同じですが、違う支店のため、年一、二回の会社行事や仕事の電話で話す程度でした。六年近く片思いを続けた後の恋でした。
 初めての一年ちょっとですごく幸せでした。こんな日がくるとは思ってなかったくらい。そのころは彼しか見ませんでした。彼が結婚していようが、毎日奥さんのところへ帰っていこうが関係なかった。一緒にいられるほんのひとときだけで、幸せでいっぱいでした。

 なのに、ここ七、八カ月前から私は彼を見ていなかった。一緒にいても電話しても、彼のことではなく、その奥にある。彼に愛され守られている奥さんや子供たちのことを見ていました。

 このころから私は泣いてばかりいました。自分でも驚くくらい、声を上げて泣くようになっていました。どうにもならないことはわかっていても、彼の家族のことで頭がいっぱいになって…・。彼に迷惑かけるようことばかり言うようになっていました。

 そんな私に彼は「ゴメン、勝手なこと言っているけど、離婚はできない。考えたこともない。けど君といると楽しいし、ときめく。電話したいし、会いたくなる。今までにはない何か違う特別で大切な人です」と言ってくれました。

 現に泣いてばかりいる私に、毎日電話やメールをくれました。けど、私は掟を守れずにどんどん自滅していきました。
 ずっとそばにいたいのに壊れてしまいそうで苦しくて‥‥やっとの思いでさよならメールを送ったのに、今のほうがもっと辛いです。さよならをしてまだ三日しかたっていないけど。

 涙が止まりません。頭もお腹も痛くて、食欲もあまりありません。普通に仕事をすることすらままなりません。もうすでに後悔しています。彼の胸に帰りたいです。
 彼以外の人を好きになれる日がくるのが怖いです。もう、このままずっと一人なのかもしれない。
 違う支店とはいえ、この先、仕事や会社行事で会うことがあります。戻ってしまいそうです。でも、それじゃあ、同じことの繰り返しになるだけなんですよね。わかってはいるけど、今でも誰よりも愛している‥‥どうすることもできないくらい。彼のことを愛しています。
         (二十七歳・?県)

心から愛したら別れがつらいのは当然です

 これは「さよならしてまだ三日しかたつていない」あなたからの手紙です。それからずいぶん時が経っていますから、今のあなたの状況はどうあるのか、私には知る術もありません。あなたの「戻ってしまいそう」という不安が的中していなければいいのですが。

 六年近くの片思いを続けた末に、恋が成就したときのあなたの幸せは「すごく幸せ」などという言葉ではとても表現できないくらい素晴らしいものだったでしょう。そんなに長い間、年に一度か二度会うだけの男性をひっそりと想い続けたあなたの純粋さには、誰も敵わないのではないでしょうか。そんなあなだからこそ、普通はほんの数ヶ月で終わってしまう不倫の恋の蜜月が、一年間も続いたのだと思います。

「彼が結婚していようが、毎日奥さんのところへ帰っていこうが関係なかった」というほど、あなたが彼と一緒にいられる幸せは大きかったのです。でも、あなたの恋は、徐々に辛さを増していったのではなく、まさに幸福の絶頂から悲しみのどん底に突き落とされたような急激な変化を見せています。「彼しか見えなかった」あなたが一転して「彼を見ていなかった」状態になってしまった。あなたの視線は彼の向こう側にいる奥さんと子供たちに向かってしまった。これは、それまであなたがあまりにも彼だけを見つめていたために起こった現象です。

 多くのケースでは、不倫の恋がスタートした瞬間から、家族の存在というのはある程度頭の中にあるものです。だからあなたのような「幸せでいっぱい」という期間はとても短く、すぐに彼と一緒にいられる喜びと、彼が家族の元に帰っていくせつなさも交互に繰り返すのが日常になります。けれど、一年という長い間、あなたの中には本当に彼しか存在していなかった。あなたの心も頭も体も、生活の全てまでもが、彼一点に集中していたからこそ、その集中が何かのきっかけで一気に彼の家族へと方向を変えたのです。

 そうなれば、あなたの精神状態も生活も、すべてが一変してしまうことになります。それまで彼一色だったのが今度は「彼の家庭のことで頭がいっぱい」になり、泣き暮らす日々が続いたのです。それからあなたが本当に誰よりも辛かったことはとてもよくわかりますが、でも、そんな状態のあなたを冷たく突き放したりせず、毎日電話やメールをくれて優しくいたわってくれた彼のほうも、ずいぶん辛かったのではないでしょうか。彼にとっては、あなたから離れるよりも、そばに居続けるほうがずっとつらいことだったに違いありません。

 あなたもまた、「ずっとそばにいたいのに壊れてしまいそうで苦しい」気持ちから逃れるために、彼に「やっとの思いでさよならメールを送った」のでしょう。彼の傍に居続ける辛さに耐えるくらいなら、別れたほうが楽になれるのではないか、とあなたは苦しみの中で結論を出したのです。

でも、いざ別れを告げてみたら、前よりも苦しかった。ちっとも楽にならないし、こんなことならさよならなんて言わなければよかったと、後悔しているのでしょう。けれど、今の苦しみは、あなたが「別れたら今より楽になる」という予想が外れてしまったことが大きな要因になっていると思います。

でも、ちょっと考えてみてください。心から愛し、素晴らしい時間を共有した相手と離れることは、自分の体の一部をもぎ取られるような苦しみを伴うことです。別れを告げたからと言って、すぐに楽になったり辛さが和らいだり、すっきりして前向きに歩いて行けるはずがありません。あなたが「今のほうがもっと辛い」と思うのは当たり前なことです。

 ただ、ひとつ確かなことは、あなたがもう二度と彼と元に戻らなければ、今より辛くてなるということは絶対にない、ということです。長い目で見れば、やはりあなたにとっては、彼と離れるよりも、彼の傍に居続けるほうが辛いことは明らかです。今のあなたに必要なのは、かれとの決別をしっかり胸に刻み、本来のあなたを取り戻すこと。大丈夫。あなたは決して「これからもずっとひとり」ではありません。きちんと自分から別れを遂げ、この恋を立派に乗り越えたあなたは必ず輝く未来と幸せな恋が待っています。

CASE7 「一緒になろう」

 「一緒になろう」「結婚しよう」「離婚してきみと一緒になる」‥‥不倫の恋をする女性たちが夢見、憧れる続ける言葉はほかにはないだろう。

 彼の口からこの言葉を聞いた女性たちはみなその幸せに有頂天になり、灰色だった世界は一気に薔薇色に変わり、急に目の前が開けた彼との未来に酔いしれる。長い間、彼と「一緒になれない」現実の中で苦悩してきたのだから、この言葉を冷静に受け止めろというほうが無理なのだ。

 けれど、その彼女たちの天にものぼるほど気持ちがずっと続くことは非常に少ない。彼の離婚が順調に進み、この言葉どおり、「一緒になる」日が来ることは滅多にないからだ。でも、だからといって、彼の言葉がすべて嘘だったとか、彼の気持ちがいい加減だったとか、信じていたあなたを裏切ったということにはならない。この言葉が彼の本心からでた願望であることは間違いない。でも、願望を口にするのと、実際に行動するのとでは、天と地ほどの違いがあることを忘れてはいけない。

 けれどそんなことは、あなたもとっくに気づいているのだろう。気付いているからこそ、彼の言葉と行動の矛盾に目を伏せ、この言葉を「確かな約束」として信じようとするのかもしれない。大切なのは、彼の言葉信じたい、と願う自分とどう向き合っていくか、ということなのである。

Letter16 彼だけを信じてついていきます

 一つ年上の妻子ある人と恋愛関係になって、もうすぐ一年になる二十九歳です。彼と私は出版社の編集者とその部下という関係でした。

私は転職組だったので、入社は二十六歳のとき。でもかれはそのとき二十七歳の若さですが編集長のキャリア。一つしか違わないなんて思えない考え方と実力を持っている人でした。

 どうしてもマスコミの仕事がしたくて転職したのに、やる気ばかりが空回りして、悪戦苦闘の毎日。使えない社員、いつの間にかそんなレッテルが貼られていました。
 そんな仕事のしりぬぐいを、入社当時から彼はずっとしてくれていました。彼が周囲からいろいろ言われていたのは知っていました。が、彼はわたしの意欲、チームプレィという考え方、その他もろもろの面から私を見て「育てる価値のある人材なんだ」と説得してくれていたんです。だからその分私にはスパルタでした。

 そんな彼も、当時は私に対して仕事仲間以上の感情はなかったようです。
 一年経って仕事ができないのは相変わらずでした。夜中までの仕事、彼氏もできず、たまの休みは洗濯と掃除で終わる。色気のない生活を彼にとがめられていたほどです。「明日は何をするんだ?」「彼氏ができたか?」周囲はそんなやりとりを父親のようだと言っていました。

 そのころから彼の気持ちに変化が表れたようです。「男をつくるんだったら、俺のほうがいいぞ。なんなら俺とつき合うか?」こんなことばかり言うようになりました。でも仕事は相変わらず忙しかったので、尊敬心が薄れるというようなことはなかったのです。でも、だんだん彼に惹かれていく自分の気持ちに苦しむようになりました。好きという気持ちに歯止めかけなければと必死でした。でもだめでした。

ある日、たまたま会社に遅くまで残っていたとき、彼に抱きしめられました。もう押さえはききませんでした。堰を切ったように彼の胸に飛び込んだんです。

そういう関係になって、仕事の面以外を見る機会が増えてますます好きになりました。とにかく好き、それしかなかった。言いたいことを言い合って、話し合って、相手のことを思い合って、こんなに人を好きになれるのかって、自分でも驚くほどでした。‥‥そして彼に大事な話があると言われたのが、三ヶ月目ぐらいのことです。

「一緒になりたいと思っている。本気だから。つき合い始めてからすぐにそう思った。だから君の気持ちを聞かせてほしい」
言葉に詰まって何をどう言えばいいのかわかりませんでした。でも、やっぱり、正直言うと嬉しかった。彼から「面白いよ。俺が進めるのもなんだけど」と言われて梅田さんの本を読んだのは、ちょうどこのころだと思います。

掟の中で私が守れていることは少ない気がします。合鍵渡してあるし、何しているかすぐ連絡するし、彼の前ですぐ泣くし。
でもかれに言われました。「俺は隠し事は一切してないし、嘘もつけないし、思ったことは全部言っている。嬉しいことも腹が立つことも、悲しいことも、感情を全部ぶつけている。お前に対してもヘンな駆け引きはしたくない。だから俺にはお前を全部見せてほしい」

 先日彼が「年内までに(奥さんと)話し合いを持つから」と、初めて言いました。「ことがうまく進まないのは承知している。それにこれから大変なことになると思うけど、信じてついてきてほしい。もう俺は決めているから」

 梅田さんの言う不倫適齢期を大幅に過ぎてしまった私は、もしかしたら本当に立ち直れないようなことになってしまうかもしれません。でも自分の気持ちに忠実にそして彼だけを信じてついていきます。
    (二十九歳・?県)

彼は信頼できる人。慎重に行動してこそ未来が  

 あなたが彼に出会ったのは二十六歳のときです。仕事を持つ女性にとってこの年齢は、もう若いからといって許されることもなくなり、かといって確固たるキャリアがあるわけではない。いちばん中途半端できつい時期だと言えます。その頃彼があなたの意欲や資質を評価してくれ、力になってくれたことは、何よりも支えになったことでしょう。

 仕事をこなすのに精一杯だったあなたは、恋人をつくる余裕もなかったようですが、彼の気持ちの変化を知っても「尊敬心が薄れることはなかった」のは、仕事が忙しかったからではなく、あなたも少しずつ彼を男性と見ていたからだと思います。仕事を通じて育まれた信頼関係が、恋愛関係へと変わっていったのは、ふたりにとってある意味、とても自然なことだったのかもしれません。

 彼に抱きしめられたとき、あなたの心はブレーキをかけていた分、加速度を増して彼に向かっていったのです。長く仕事のパートナーを続けてきたふたりが恋愛関係になった場合、多かれ少なかれ相手に幻滅したり、会社でのスタンスがとりにくくなったりして、あっという間にうまくいかなくなったりしまうことがあります。

でも、あなたと彼はそんなことはなかった。「仕事の面以外を見る機会が増えてからもますます好きになった」というあなたと彼は、きっと、仕事だけでなく、人と人としての相性がよかったのでしょう。そして、ふたりの関係がうまくいったのは、あなたが大人だったからです。

 ふたりがじっくりと信頼関係を築いてきたように、彼の「一緒になりたいと思っている。本気だから」という言葉も、彼がじっくり考えた末に出てきた言葉だと思います。彼の行動には、彼の言葉が本物であることを裏付けるいくつかのポイントがあります。

 きず、付き合って三ヶ月というスピードで、彼がこの言葉をあなたに伝えたということ。不倫の恋に落ちて三ヶ月で離婚を考えない人は、三年たっても、十年たっても考えないものなんです。この三ヶ月という目安が証明しているように、離婚する気持ちさえ本物ならば、決意するまでにそんなに時間はかからないということなのです。次に、彼が何かの感情の勢いでこの言葉を口にしたのではなく、あなたにきちんと「大事な話がある」と言って切り出していること。

これは、彼にとってはものすごく勇気がいることですし、彼がそれだけの覚悟で決意を伝えてようとしていることが分かります。そしてもうひとつ、彼は自分が一方的な意思を押し付けているのではなく、自分はこう思っているけれど「きみの気持ちを聞かせてほしい」とあなたの意思を尊重していること。これは当たり前のことのようですが、ただの独占欲からこの言葉を口にする男性はこんな思いやりを持つ余裕はありません。きちんとした大人の良識を持った男性だからこそできることなのです。

 彼は信頼に足りる人物ですし、あなたもこの言葉に有頂天になったりせず、冷静、とまではいかなくても真摯に受け止めてています。わたしはあなたもがこの恋愛に希望を持ってもいいのではないかと思います。でも、それだけ信じられる要素が揃っているあなたでもあっても、この言葉は確かな約束と信じて待ち続けることは危険だということを忘れてはいけません。彼が実際に離婚届けを提出するまでは、本当にどんなハプニングが起こるかわからないのです。いくら彼が本気で離婚を進めていこうとしても、彼の力ではどうにもならない壁にぶつかって断念せざるを得ないという結果もじゅうぶん考えられるのです。

 あなたは「彼だけを信じてついていく」だけではなく、このような事態も頭に入れておかなくてはなりません。そのためにも、あなたの中に「ここまでは待つ」というような期限を設けてはどうでしょう。

もちろん、それはあなたの心の中でだけの期限であって、彼に突きつけるための期限ではありません。そして、その期限が来るまでは、あなたの方から離婚の進み具合を尋ねたり、結婚について触れることは一切やめること。そして、その期限が過ぎたらすっぱりと諦めることです。あなたが彼の約束にすがらないことこそが、ふたりの本来に近づく鍵になるのですから。

Letter17 二度の中絶、このまま一生愛人をしていくべき?

 私はことし三十二歳になります。彼はことしで三十八歳です。出会いからもうすぐ五年。いろいろなことがありました。

 私は美容院の店長、彼は自営業の二代目です。出会いは町内のお祭りでした。前夜祭の日は話していて楽しかったというだけでしたが、二日目の夜、三日目の夜になるにつれてとても気になる存在に変わりました。三日目の夜は二人きりになる時間がもて、初めて車の中で手をつなぎ、キスしてしまいました。そして四日目、打ち上げの後、初めて関係を持ってしまいました。

 それからポケベルで連絡を取るようになり、週に一、二度食事に行ったり、ドライブしたり、半年くらい経つうちに、私の部屋にいることが多くなりました。今では毎晩、私が仕事から帰ってきてから朝方まで一緒です。

 同じ町内なので、私たちのことを知っている人は多少います。年に四回ほどある町内の行事ではたいてい一緒にいることが多いから。でもみんな最近は暗黙の了解で何も言わなくなりました。彼の奥さんのことも知っているので複雑だと思いますが。

 つき合い始めて一年が過ぎたころ、妊娠してしまいました。彼は初めはとても喜んでくれましたが、冷静に考え出産は無理という結論を出しました。私は悩みましたが「今は無理だけど二人の状態がしっかりしたら‥‥君が三十歳になったときには離婚して一緒になれる状態にするから」と彼に言われました。そして中絶しました。

 同じころ彼は奥さんに離婚を持ち掛けられました。もともとうまくいっていなかった二人なのです。二人の中では離婚を決意したようですが、彼の両親の大反対を受け、「離婚するなら、家を出て行け! 仕事も町内の活動もすべて止めてしまえ!」と言われ、彼はそれまで全人格をかけて行ってきたことを捨てることはできず。離婚はなくなってしまいました。

 その後、彼の女性問題でも悩みました。私の後輩に連絡を取っていたりしたようなのです。問い詰めてやめさせ、後輩も職場をやめていきました。しかし、またほかの女性と車で一緒のところを目撃、慌てて車は走り去っていきました。後から弁解にきましたが、ただ車の中で話をしていただけというのです。どちらのときも朝まで話し合い、別れようという事になるのですが、結局また、連絡を互いとってしまうんです。

 そして、約束が果たされぬまま私が三十歳になった日から一か月半ほど過ぎたころ、私はまた、妊娠してしまいました。泣きました。一人で育てていくことも考えましたが、彼がどうしても許してくれませんでした。結局二度目の中絶。産婦人科の先生に𠮟られました。

「あと一年で小学校のPTAの任期が終わるから、それまでは何とかする」と彼は言いました。その期限ももうすぐです。万が一、離婚できなくて決着がつかなかったら‥‥彼のこともここではっきりさせておいたほうがいいのか、この先このまま彼とずっと一緒にいたほうがいいのか、半々の気持ちです。今のままなら、彼とも一緒にお祭りには出られるし、お酒を飲みに行ったりすることはできるんです。でも社会的には認めてもらえないので、罪悪感や寂しさ、すごくあるんですよね。

 一生愛人で、ちゃんと愛人している人っているんでしょうか。 (三十一歳・?県)

彼の約束が守られることは永遠にありませ 

 「出会いからもうすぐ五年。いろいろなことがありました」というあなたの言葉どおり、あなたと彼の間には、本当にいろいろな事が起こっています。その中をくぐり抜けてここまで彼との不倫の恋を続けてきたあなたの精神力にまず驚かされました。

 まず、ふたりの恋は、「同じ町内」という、不倫の恋をするには最悪の環境ではじまっています。それなのに、お祭りの打ち上げのあとで関係を持ったり、週に何度も食事やドライブをしたり、半年後には「私の部屋にいることが多くなった」という、普通では考えられないような大胆な付き合い方をしています。この状況から見て、「知っている人は多少います」などという程度ではなく、ふたりの関係はもう町中に知れ渡っているのではないでしょうか。

そして一年後にあなたは妊娠。「彼は初めとても喜んでくれた」とありますが、この状況であなたの妊娠を一瞬でも手放しで喜べた人は、一体どんな神経の持ち主なのでしょう?結局「冷静になって考え」彼はあなたに中絶することを望み「君が三十歳になったときは離婚して一緒になれる状態にする」という、これ以上不確実な約束はないというくらいの言葉であなたを慰めています。

これが彼なりのいたわりの言葉なのだとしたら、彼はよほど思慮の浅い男性なのでしょう。それからの、結果的には暗礁に乗り上げた彼の家庭の離婚劇も、彼ではなく奥さんから切り出したものだと言うのですから、それだけでも彼の言葉が、その場をおさめるためだけのものだったことがよくわかります。

「その後、彼の女性問題でも悩みました」‥‥もうここまで来ると、呆れてものが言えないといったところでしょう。それもあなたの後輩に手を出せそうとしたというのですから、これはもう、彼の人間性を疑うにじゅうぶんな出来事です。その上、あなたが割って入れば、またすぐに別の女性と親しい関係を持っている。

さすがのあなたもこのときばかりは彼との別れ話に臨んでいますが、このときあなたがどうしてもっと最後まで彼との決別をやり遂げなかったのか、残念でなりません。ここで彼とちゃんと別れていれば、あなたの傷はもっと少なくすんだのに、それでも、この時点でもう、あなたはさんざん傷つけられていたのですから。

 彼の約束が果たされないままあなたが三十歳を迎えたのは当然の結果だと言えます。それだけでももうじゅうぶんなのに、彼はあなたをまた妊娠、中絶という最悪の状況に追い込んでいます。「ひとりで育てていくことも考えましたが彼がどうしても許してくれなかった」のは、あなたにとって不幸中の幸いだったと思います。

もちろん、彼はあなたのことを考えてそれを許さなかったわけではないと思いますが。そして今度は「あと一年で小学校のPTAの任期が終わるから、それまで何とかする」ですか。あなたは本当に、こんな約束を信じているのですか? 「万が一、離婚できなくて決着がつかなかったら」というあなたの不安は、不安の観点が違うとしか言いようがありません。

彼が約束を守って離婚する可能性こそ「万が一」もないのです。彼はあなた傍にいる限り、毎回ある程度の期間をくぎって不確実な約束を何度でもし続けるでしょう、そしてその約束はただの一度も守られることはありません。

「一生愛人で、ちゃんと愛人してる人っているんでしょうか」というあなたの質問には、もちろんといる、と答える事が出来ます。でも、そのような状況で素晴らしい人生を送っている女性はみな、恋愛を心から楽しむだけの豊かな人間性と、お互いの立場をわきまえたスタンスを持ち、すべての面で彼に寄りかかることなく自立している人たちばかりです。

彼女たちは決して社会的に認められていないことを寂しく思ったり、果たされない約束を待ち続けたり、愛人という立場に卑屈になったりしません、それは彼女たちが自分で選んだ人生だからです。ひとりで生きる覚悟を持っている人だけが、ふたりで生きていくことができるのです。

 わたしには、あなたがこのような生き方に向いているとは決して思えません。そして、彼という男性も、あなたが人生を賭ける価値のある人物とは到底思えません。もう一度、彼との五年間をじっくり見つめ直してください。彼の言葉と行動をひとつひとつ思い出してみてください。あなたは本当に、彼と一緒になって幸せになれると思いますか?

Letter18 決定的な言葉を彼からもらっています

 私は二十三歳、彼は三十一歳、不倫になって四ヶ月ほどです。私たちは二人とも同じ職場に勤務しています。職場というのは学校、つまり、私たちは教員なんです。

 彼と出会ったのは私が大学を卒業してすぐ赴任した学校でのことでした。
 最初の三、四ヶ月は私自身が慣れていなくて、周りが見えなかったため、彼のことは全くといっていいほど知りませんでした。ですが二学期にいり、だんだんと余裕がでてきたとき「いいなぁ」と思ったのが彼なんです。男っぽくてがっちり、明るくて社交的で、笑顔がカワイイ、お世辞抜きで仕事ができる。あげたらきりがないですけど、つまりは私の好みだったってことです。

 その時点で、すぐに奥さんがいることは知りました。私は父が不倫していたという過去があり、自分は絶対に不倫はしないと心に誓っていました。誰も幸福になれない恋なんてする意味がない、そう思っていました。でも理性で抑えられるものではなかったようです。

 彼の姿を見たり話したりするたびにどんどん彼のことが好きになっていく、そんな自分に気が付いたのはちょうど、クリスマスのころでした。

 その頃には彼とメール交換をしたり、携帯の機種を同じにしたりして距離が縮まっていたので、せっかく好きになったのに告白もしないで諦めたら、自分を責めることになると思い、あるとき思い切って彼に私をどう思っているか聞きました。びっくりするかと思っていましたが、意外にも彼は「俺は好きだよ」と言ってくれたのです!

 でも幸せだったのはほんの三日間ぐらいで、あとはいつも奥さんに対する罪悪感、彼への愛情が増えて行くことへの不安感、ばれないか、週末はどう過ごせばいいのか、悩んで悩んでばかりいました。体を壊しました。血を吐いたり…。でも彼とは別れられません。

 彼には決定的な言葉を貰っています。「一緒になろう」「どんなことがあっても別れたくない」「二人が幸せになれると思っているから」…。

 私もその言葉を鵜吞みにしているわけではありません。言葉と行動に起こすのではだいぶ差があることもわかっています。

 でも、今は彼の言葉を信じたい。職場で私たちの関係がばれつつある今、それでもリスクを冒して私と付き合っていこうとする、彼の心を信じたいのです。それだけの行動を彼はしてくれているので。
 これから先どうなるかわかりませんが、彼を信じてついていこうと思います。これは私が決めたこと、私はそれでいいのです。   (二十三歳・?県)

彼のどの言葉も「決定的な言葉」ではありません

「幸せだったのはほんとうに三日間」、それ以外は「悩んで悩んで、悩んでばかり」というあなたの恋がどれだけの苦悩に満ちていたかは想像もつきません。そんなあなたが「彼とは別れられません」というひとつの結論に至るまでには、どれだけの葛藤があったのでしょうか。

 あなたと彼は同じ職場で働く同僚であり、しかも倫理や道徳が最も重じられる学校の先生。不倫のリスクが大きい状況がずらりと揃っています。でも、彼のことを「いいなあ」と思いはじめた頃から、彼に告白するまでのあなたは本当に楽しそうで、何だか学生時代のクラスメートを好きになった時のような初々しさに包まれています。ふたりがもし仲のいい同僚のままでいられたら、あなたは苦しい恋に苛まれることもなく、毎日楽しくいきいきと仕事をしていくことができたのに、と思わずにはいられません。けれど、こんなことはあなただって、何度となく考えたことでしょう。それでも「理性で抑えられるものではない」踏みとどまることができないのがこの恋の難しさであり、素晴らしさであるのだと思います。

 あなたの恋をさらに苦しくしたのは、過去に「父が不倫していた」という経験も大きいと思います。あなたのような心の傷を持つ女性の殆どは、不倫を悪として育ち、やはりあなたのように「不倫はしないと心に誓って」生きていくのです。その深く根付いた既成概念は、実際に不倫の恋をしたからといってそう簡単に消え去るようなものではありません。

だから、自らの不倫の恋をしながら、不倫の恋こそ悪だと思い続け、ほかの女性たちよりもずっと大きな罪悪感を抱える事になるのです。そして、その罪悪感は相手の奥さんや家庭に向けられるだけでなく、それ以上に自分自身に対して向かっていってしまうのです。あなたが恋の辛さのいちばん最初にあげているように、あなたがいちばん悩み、苛まれたのはこの罪悪感だったのではないでしょうか。

 長い間、不倫の恋をいけないと封じ込めてきたあなただからこそ、「彼とは別れられない」という決断を自分に下したとき、半ば開き直りととれるような「これは私が決めたこと、私はそれでいいのです」という強い姿勢に逆転してしまったのです。

あなたは、自分自身に「私はそれでいいのだ」と強く言い聞かせていなければ、自分の中の罪悪感と戦っていけないのです。あなたが体を壊したり血を吐いたりするまでに追いつめられてしまったのは、常にぎりぎりの精神状態で頑張っていなければこの恋を続けていけなかったからです。この恋は周囲の状況だけでなく、あなた自身にとってもリスクの大きい恋だったのです。

 今、あなたの心をかろうじて支えているのは彼の言葉です。「一緒になろう」「どんなことがあって別れたくない」「ふたりが幸せになれると思っているから」という彼の言葉が、どんなシチューションで語られたのかはわかりません。彼がどんな気持ちでこの言葉を口にしたのかもわかりません。でも、ここでの問題は彼の言葉を信じるに値するものかどうかということではなく、あなたがそれ「決定的な言葉」だと受け止めていることにあります。

あなたは「その言葉を鵜吞みしているわけではない」「言葉と行動に起こすのはだいぶ差があることもよくわかっている」と言いながら、「彼には決定的な言葉を貰っている」と言い切っている。ここにあなたの苦しい矛盾があるのです。

 結論から言えば、今まで彼が口にしたどの言葉も「決定的な言葉」ではありません。これから彼が口にするどんな言葉も「決定的な言葉」ではありません。あなたは彼に決定な言葉を貰ったわけではないのだ。ということをしっかりと心に刻んでください。そうでなければ、もし彼の本意でなくとも、この「決定的な言葉」があなたを裏切る結果になったとき、あなたは本当に壊れてしまいます。

今、あなたの恋は「職場でばれかかっている」という厳しい局面を迎えています。その中で「リスクを犯してまで私とつき合っていこうとする」彼を信じたい、とあなたは言っていますが、あなた自身が壊れてしまったら、恋も仕事もすべて終わりだということを忘れてはいけません。この恋はあなたにとって、もちろんかけがえのない大切なものです。でも、もっともっと、何よりも大切なのは、あなた自身なのですから。

CASE8 「別れたくない」 

CASE8 「別れたくない」
「別れたくない」「離れられない」「もう一度やり直したい」‥‥つらくて苦しい恋の中で、女性たちが必死で別れを決断し、それを実行に移したとき、それをすんなりとは受け入れられない男性が多いのには驚かされるほどある。

 不倫の恋はどちらかというと、男性が彼女を何とか手に入れようとしているというよりは、女性のほうが彼を自分のものにしたいと願う気持ちの方が上回るものである。ところが、実際に女性の方から別れを告げ、去っていった瞬間、その立場はまったく逆転してしまう。彼は「別れたくない」と執拗に復縁を迫り、時には涙を流しあなたが必要であることを切に訴えるかもしれない。

別れを決意したとはいえ、彼への愛情がなくなったわけではないのだから、あなたがせっかくの決意を無にしてしまうことは仕方がないことだ。けれど「別れたくない」と言って戻ってくる彼が、あなたとの確かな未来を持ってくるわけではない。ふたりを取り巻く状況は何ひとつ変わらないままだということを忘れてはいけない。

 あなたが別れを決意した途端、彼の独占欲はどこまでも膨れ上がる。あなたの幸せを考えれば、自分が早く彼女の前から姿を消すべきだ、ということは彼自身がいちばんよくわかっている。でもどうにもならない。問題は、そんな彼のどうにもならない気持ちをあなたはどう受け止めていくか、ということなのである。

Letter19 彼の深い愛情がこころにしみています

 私は現在二十一歳、彼は二十九歳です。私たちの関係は約一年半ぐらい続いています。彼は私が学生時代やっていたバイト先の社員でした。初めて彼を見たとき、一目惚れに近い気持ちになりましたが、すぐに彼が既婚者で子供いることを知り、残念だなと思いながらしばらくはアルバイトと上司という立場で仕事をしていました。

 ただ、私の中では彼の考え方や人間性にどんどん惹かれていってしまう自分と、結婚している人なんだから無理と抑えている自分がいて、その葛藤がありました。そして彼は私のそんな気持ちに気づいていました。

 ある日、奥さんのいない日に彼の家に行くことになり、その日のうちに男と女の関係になってしまいました。そのときの私は、彼も私のことを好きだったという喜びでいっぱいで、不倫と言う関係に入ってしまいました。

 私は彼に会いたい一心で、彼の家の近くに越して就職しました。しかし仕事がハードで時間的にもきつく、彼にも会えず、彼に対して不満を並べ体力も精神状態もギリギリのところまできてしまいました。そして私は元カレに頼ってしまったのです。元カレは不倫を止めろと。‥‥そして私は不倫の彼に別れ話をもちかけたのです。

 彼は数日後、私の家にきました。「お前の存在がこんなに大きくなっているとは思わなかった。飯も食えない。俺は別れたくない。でも俺の存在がお前を不幸にしているのなら別れたほうがいいのかとも思う」とやせた体で言いました。そして三つの提案をしてきました。このまま別れる、やり直す、五年間待ってくれたら離婚して一緒になる、というものです。

 驚きました。離婚する気がないと言っていた彼なのに。でも耐えられなくなっていた私は彼を突き放しました。それからの彼は生きる気力をなくしてしまったかのようで、本気で手首を切ろうともしたのです。奥さんにも存在もばれてしまいました。

 結局私との関係は奥さんに内緒で元に戻りました。奥さんは別居を申し出てきました。ただ彼は家のローンもあり、別居して二世帯を養うことが出来ないと、給料のいい仕事に移ることになりました。別居は確実に春にスタートします。でも彼は「離婚するかどうかはわからない。離婚してくれと言う気もないし、そんなことを言える立場じゃない」。つまり別居はするけれど、その後のことは奥さん次第ということです。

 私は何とかして彼に離婚に踏み切ってほしいと思うようになりました。そして、いちばんやってはいけないこと、彼の子供さえできれば…という事を考えるようになってしまったんです。そして授かりました。彼は私の考えにショックを受けました。どうするかは自分で決めるようにと言いました。‥‥私はお金も心構えもなかったことから、堕ろすことにしたんです。

 彼は手術の間、手を握っていてくれました。私はやってはいけないことをしてしまってから、やっと彼の愛情を理解できたんです。彼は子供のことは一生背負って生きていくはずです。「俺はこのことは一生人殺しをしたと思って生きていく」と言っていたから‥‥。そして手術代もお姉さんから借金して用意してくれたんです。

 彼はいずれ奥さんに私とまだ続いていること、子供のことを話すでしょう。
 彼のことを考えたら私は彼の前からいなくなるべき。でも私は彼と離れることができないし、彼もそれをわかっています。今度のことで私も彼もとても辛い思いをしました。これからどうなるのか。梅田さんの本にもう少し早く出会っていたら、こんなバカな事はしなかったと思います。気持ちを分かってくれる人がいるんだってわかっただけで、本当にうれしかった。

独占欲と愛情を履き違えないで

  あなたの手紙からいちばん強く受けた印象は、この恋は、あなたの「ひと目惚れに近い気持ち」ではじまって、あなたが彼に「どんどん惹かれて」いったことで今日まで続いてきたのだ、ということです。

 彼とはじめて結ばれたとき、あなたは「彼のことが好きだったという喜びでいっぱい」だったことがありますが、このときの彼が「あなたのことが好きだった」とはどうしても思えません。彼はあなたが自分に好意を抱いていることに気づいて、まんざらでもない程度の軽い気持ちであなたと関係をはじめたことは明らかです。

もちろん、不倫の恋がはじまったとき、女性側と男性側でその想いにかなり温度差があることは、ある程度仕方がないことですが、それにしても、いきなり奥さんのいな日にあなたを自宅に呼ぶなどという彼の行動は、あまりに安易で常識外れだとしか言いようがありません。彼のしたことはどこからどう見ても誠意のない、あなたの純粋な気持ちを踏みにじった行為です。

 けれど、恋の熱に浮かされているあなたには、彼のことなど何も見えていなかったのです。あなたは「彼に会いたい一心」で、彼の家の近くに引っ越し、就職し、生活のすべてを彼中心にしてしまいました。当時二十歳にもならないあなたの若さあってこそできたことと思いますが、そのあなたの真剣な想いなど、彼は何一つわかっていなかったのではないでしょうか。そんな彼との恋愛に疲れ切ったあなたが、元の恋人に頼ってしまったのは当然のことですし、間違った判断ではなかったと思います。元の恋人の力を借りたといえ、それだけ愛している彼に別れを告げることができたのは立派です。

 でも、そんなあなたの必死の決断さえ、彼は台無しにしてしまいました。「お前の存在がこんなにおおきくなっているとは思わなかった」「飯も食えない。俺は別れたくない」…彼は、あなたを失ってはじめて、あなたの存在の大きさに気づいたようなことを言っていますが、それは単純に昨日まで傍に在ったものが無くなった喪失感に堪えられなくなっただけの話です。

あんなに熱烈に自分に向いていたあなたの心が、自分から離れていってしまうのが嫌だという、本当に自分本位な独占欲を露にしただけなのです。そして、それでも突き放すあなたを引き止めるためなら手段を選ばない。誓ってもいいですが、彼が「本気で」自殺や離婚を考えたことなど一度もなかったことは明らかです。

ここであなたが最後まで彼を突き放すことができなかったのが残念でなりません。ここで終わっていれば、あなたが「彼の子供さえできなければ」などというところまで追いつめられることはなかったのですから。

 もちろん、あなたの行動が軽率でなかったとは言いません。いくらあなたが「子供さえできれば」と考えたとしても、彼があなたのことを考えてきちんと避妊するようなまともな男性だったら、あなたの願望は実現していないのです。「彼は私の考えにショックを受けた」などと被害者ぶった挙句、まだ若く、「お金も心構えない」あなたに「自分で決めるように」などと責任放棄している。

その後も「手術の間手を握ってくれていた」「手術代も用意してくれた」などとあなたはどこまでも彼を好意的に捉えていますが、こんな場面でちょっと優しくするぐらいのことは、本当に誰にでもできます。これが彼の愛情などと思わないでください。彼があなたの本物の愛情を持っているなら、あなたはこんな辛い場面さえ知らずにすんだのですから。

 この恋は、最初から最後まで、あなたひとりの強い愛情で成り立っているのです。「いずれ奥さんに私と子供のことを話すでしょう」というあなたの確信はどこから生まれているのかわかりませんが、この先彼が自分から行動を起こすことなど何ひとつないでしょう。もし彼が離婚することがあったら、それは彼の意志ではなく、奥さんに捨てられてあなたのところに逃げ込んでくる形しかありません。

そんなことになる前に大急ぎであなたは彼の元から離れなければなりません。「彼のことを考えたら私は彼の前からいなくなるべき」ではなく、あなたのことを考えたら彼があなたの前からいなくなるべき、なのです。

Letter20 どうせ私は野良猫でしかないのです

 みかさん、初めまして。みかさんの本に助けられている私です。
 私は三十三歳になる主婦です。不倫をして四年目です。それまで不倫はドラマの世界のこと、私には関係ないことと思っていました。

 彼は私の子供が通っている病院の先生(四十六歳)です。子供を病院に連れていくたび、いろいろ私に話をきいてくるようになったのです。年齢から携帯の番号まで。からかっているんだと相手にしませんでした。彼からは携帯番号を知らされてはいましたが、かけもしませんでした。

 そんなことから三ヶ月ほど経ったころ、病院に行くと「なんで電話してこないの?」と言われて。からかっているんでしょうと言うと、彼はまじめに私の顔をみているのです。おまけに子供が見ている前でキスをせがむんです。何を考えているんだろうと思いました、初めは。

 何日か経って、私から電話しました。すると食事でも、というのです。それがホテルでした。
 私、ホテルでなんて初めてでした。この十年浮気なんてしたことなかったし、子供といつも一緒だったから。彼は私を抱きしめてくれました。でもそのときは震えていました。
 彼とは週一回のペースで会ってHしています。主人とはセックスレスです。

 ただ初めの二年くらいは彼がホテル代を出していましたが、ローンがあるので、ここ一年くらいは私が出しています。私と一緒にいるときに携帯の電源を切ってくれません。だから奥さんと何か話しているのが大体見当がついてしまいます。必ずといっていいほどかかって来るので。

 けれど彼はこのごろ「俺はいつかお前に捨てられるのかな」と口にします。「別れたくない」というようなことも。捨てる事ができたら、私は悩んだりしません。私は彼のことが大好きなんです。できることならそばにいてほしいのです。

 私は奥さんと子供に嫉妬しています。彼は「お前といる時間のほうが長い」と言っていますが、時間が来るとちゃんと家に帰ってしまいます。奥さんと子供はいつでも彼のそばにいられるのです。

 なんで彼を好きになってしまったんでしょうか。どうしてわたしのそばにいてくれないの? 彼は私の体あればいいの? Hができればいいの? 私にとってあなたって何なの?
 私は外の女なんです。奥さんは家に飼われている猫。私は野良猫でしかないのです。
いっそ別れてしまえたらどんなに楽になれるでしょう。 (三十三歳・?県)

ふたりのつき合いは単なる浮気にしかすぎません 

「何で彼を好きになってしまったんでしょうか」。わたしは今、あなたと同じ気持ちです。あなたが恋に落ちてしまったのは、まるで訳の分からないうちに嵐に巻き込まれてしまったようなものだったのではないでしょうか。

 彼はきっと、あなたがこれまでの人生で出会ったどんな男性とも違う、はじめてのタイプだったのでしょう。診療中に、携帯電話の番号を聞いてきたり、子供の前でキスしようとしたり、初めてのデートでいきなりホテルに連れていくなど、彼のアプローチはあまりにも非常識かつ傲慢で、何だか胸が悪くなるような思いがしました。けれど、この彼の行動の失礼さ、大胆さこそが、あなたにとっては新鮮であり、心をとらえてしまったのです。

十年間、安定した家庭で安定した暮らしを送ってきたあなたにとって、彼の持つ危険さが、何よりも甘く、魅力的だったのかもしれません。

 そしてあなたとご主人がセックスレスの関係にあることも、あなたを彼との恋に走らせた大きな要因になっていると思います。夫婦間のセックスレスは、特に女性にとってとても深刻な問題です。あなたは大切な愛情確認の場を失った上に、女性として愛される喜びを奪われてしまったのですから。

あなたが彼に急速に惹かれていったのは、あなたの女性として満たされない部分を、彼が埋めてくれたということが大きかったのではないでしようか。あなたと彼との関係の中で、セックスが大きな位置を占めているのは当然のことなのです。

 結婚して主婦となった女性が、性的欲求を家庭の外に求めることは、頭ごなしにいけないとは言い切れない、とても難しい問題です。それがあなたにとっても快い遊びであり、今まで以上に家庭を大切にすることができ、いきいきと日々を送れるようになり、女性としての輝きを取り戻す、という範囲のことであればそれほど問題はないと思いますが、あなたの場合はこの域を越えてしまっていると言わざるを得ません。

あなたはまるで独身女性のように「奥さんと子供に嫉妬」し、彼がずっとそばにいてくれないことを悲しみ、彼が自分の家に帰っていくことに寂しさを覚えています。あなたはまた、ご主人とお子さんの存在があり、帰る家があるということを忘れているかのようです。

 あなたがそこまで大切に思っているか彼との関係のなかにも、疑問に思うことがたくさんあります。初めの二年は彼が出していたホテル代も「ここ一年くらいは私が出している」彼のほうからあなたを誘って関係を持っておいて、とんでもない話です。その理由が「ローンがあるから」ですって? まさしく釣った魚に餌はやらないということでしょうか。

 そしてあなたの前で平気で奥さんと電話をする。かれはアプローチしてきたときと変わらない失礼な態度をあなたにとり続けています。かれは「いつかお前にすてられるのかな」などとあまえていますが、彼はあなたから離れていくことなど絶対にないと踏んでいるからこそ、こんな言葉を口できるのです。

「別れたくない」という言葉も、ふたりの関係にあまり関係にあまり意味がないようなきがします。そもそもふたりのつき合いは、別れる、別れない、ということが語られるところまで進んでいないのです。

 ちょっと考えてみてください、あなたが彼と二人きりの時間をつくるために払っているホテル代は、いったいどこから捻出しているのでしょう? おそらくあなたのご主人が、働いて稼いだお金です。そこに罪悪感を感じなさいと言っているわけではありません。ただ、あなたは常に、ご主人とお子さんのいる家庭で守られているのだということを忘れてはいけません。

彼との関係をこれからもずっと続けていくのなら、あなたはすべてを捨てる覚悟が必要なのです。けれど、彼はあなたからそんなリスキーな覚悟をするような価値のある男性ではありません。あなたと彼との関係は、不倫の恋とよぶにふさわしくない、ただの浮気です。

「彼は私の体あればいいの?」「私にとってあなたは何なの?」などということを考えている時間があるのなら、あなたの愛するお子さんのことを考えてください。あなたは「野良猫」なんかではないではありませんか。あなたはあなたのいるべき場所があるのですから。

Letter21 彼からの別れ話が、結局彼の一言で元のさやに 

 私は三十二歳の独身の社会人で、初めて不倫の恋をしたのが十八歳のときでした。就職先の上司で三十代半ばの人、私は女子高だったので年上の男性の優しさに一気に落ちていったのです。でも最後は気持ちも冷め、三、四年で別れました。

 それから年下ともつき合いましたが、去年の夏に知り合った、十六歳年上の四十八歳の人と付き合うようになりました。

 一度つらい思いをしているのに、大人の包容力や体の相性でまた惹かれてしまったんです。自分でもよく分からないのですが、小さいころ、父に愛人がいたりしてコミュニケーション不足で、とても寂しい毎日でした。だからほかの父と子の関係とかとても羨ましかったんです。温かい家庭‥‥。

 今思うとも父親の温かさのようなものを、年上=妻子ある人に何か求めているのかと。本当にこの男性のことが好きなのか、時々そう思います。今は父も亡くなりましたし、本当に独りぼっち。その寂しさから逃れるために付き合っているのか‥‥。

 今の人は最初から結婚しているのを知っていて始まりました。私は何も望まないタイプ。ブランド品買ってとか、奥さんと別れてとか、結婚してなんて口が裂けても求めません。

 わりとまめに携帯に連絡とれたり、突然会いたいと言っても会えたりするし、外泊も結構しているのです。それが寂しさを増すことになるのですが。帰り際はやはり、「まだ帰りたくない」と言ってしまうこともありました。最近はそんなこともなくなりましたが、よく考えてみるとTELするのは私のほうがほとんど。「今度かかってくるまで待つぞ」そう自分に言い聞かせてみても、すぐ声が聞きたくなって携帯をならしてしまいます。

 一度彼から別れ話が出ました。「今のうちだったらまだ大丈夫。これ以上付き合ったら、もっとすきになっていってしまう」。その言葉に溢れる涙をこらえながら「うん、わかった。そうしよう」そう答えました。

 でも彼の「やっぱり離れられない」で結局元に戻り、今に至っています。彼の言葉を突っぱねることはどうしてもできませんでした。

 でもこれからは気持ちの中で割り切って、生活のすべてが彼一色になってしまわないよう自分の時間も大切にして、別の男性にも目を向けてやっていこうと思います。
 何でも相談できる友人もいます。アドバイスもしてくれます、何より、この本に出会えてうれしく思います。        (三十二歳・千葉県)

とことんぶつかり合ってみるのもひとつの方法です 


 あなたが彼の「大人の包容力や体の相性に惹かれた」というのもおそらくそのとおりだと思いますし「年上=妻子ある人に父親の温かさのようなものを求めた」というのも適確な見方だと思います。あなたがそんな風に自分を捉られることができるのは、小さい頃経験したお父さんとの悲しい過去の状況をも、客観的にみられる証拠です。あなたはどんなに寂しい毎日の中からもちゃんと大切なものを見つけながら成長してきたのです。

 そんなあなたが「私は何も望まないタイプ」というのですから、本当にそうなのでしょう。あなたの彼も、そんなあなたの存在を愛しく思っているからこそ、あなたがしょっちゅう携帯電話を鳴らしても、突然会いたいと言っても、「まだ帰りたくない」と引き止めても、自分のできる限り応えてあげたいと思うのです。彼はあなたの言うとおり、大人の包容力を持ち合わせた男性なのでしょう。

 一度、彼のほうから別れ話を切り出しているというのも、あなたを大切に思う彼の迷った末の決断だったのだと思います。「今のうちだったらまだ大丈夫。これ以上付き合ったら、もっと好きになってしまう」というのは、彼自身の気持ちであり、あなたの気持ちでもあったのでしょう。それがわかっていたからこそ、あなたも彼の別れ話に必要以上に感情的になることなく、辛いながらも受け入れる事が出来たのです。

 けれど、それだけお互いに自分の立場を自覚し、お互いを思いやるあなたと彼の大人の関係の中でさえ、そこですっぱり終わりにすることはできなかった。自分から別れ話を切り出しておいて、また「やっぱり離れたくない」と言って戻ってくるなんて、ただの自分勝手な男性じゃないか、という考え方もあるとおもいますが、この場合、わたしはそう思いません。彼の言葉と行動が証明しているのは、それがどちらもいい加減な気持ちではなかったこと、そして、それだけ不倫の恋と決別するのは難しい、ということなのです。

 一度別れを決意しながら、あなたは彼がまた元に戻ってしまったのは、お互いまだこの恋を卒業する時期に来ていなかったからではないでしょうか。「これ以上つき合ったら、もっと好きになってしまう」というところで何度別れ話をしても、また何度でも元に戻ってしまうでしょう。ふたりが別れる時は、お互いに「もっと好きに」なった後なのかもしれません。

 あなたと彼が、本当に離れるためには、一度この恋にどっぷり浸かることが必要なのではないでしょうか。これ以上いくと危険だからと途中で引き返すことを続けていると、いつまでもお互い未練を残したままの状態を続けていくことになります。今中途半端なところで切り離してしまったら、あなたは別れてからも尚、彼を思い続けてしまう、という事になりかねません。そして、また「父親の温かさ」を求めて別の不倫の恋に落ちてしまうことだってじゅうぶんに考えられるのです。

 あなたは、自分でも分析しているように、幼い頃に堪能し切れなかった父親の愛情を恋愛に求める傾向があり。けれど、あなたがこれから大人の恋愛をしていくためには、どこかでこの想いを卒業しなくてはなりません。そのためには、あなたは幼い頃に満たされなかった想いを、今、彼に思いきり満たしてもらう必要があるのです。

恋だけでなく、仕事でも趣味でも、遊びでも、もうそこに思い残すことはない、というくらいどっぷり浸かってみると、そのあとはかえってすっぱりやめられたり、適度なスタンスを持てるようになったりするものです。もちろん、この恋にどっぷり浸かることは危険なことはありますが「父親の温かさ」を求めるには、あなたにとって彼はこれ以上ない最高の相手なのですから。

 今、あなたは彼との付き合いを続けながらも、自分の中に新しい視点や前向きな心を育てつつあります。この恋の中であなたが彼から受けたたくさんの愛情は、あなたを、本当の大人の女性へと成長させてくれるでしょう。
 
つづく 
【第3章】 ●陥りがちな恋のフレーズ~心の声を乗り越えるために
 
あなたの心の声に答える21のヒントが、ここにあります