あなたを幸せにした彼の言葉。愛情にあふれた彼のささやき。あなたを深く傷つけた彼のひと言。あなたが涙ながらに伝えた言葉。伝えられなかった心の叫び。いつもお守りのように心に持ち続けている彼からの約束。やっとの思いで口にした別れの言葉

本表紙 梅田みか 著

男のコトバでわかる真実

『新・愛人の掟』は、あなた自身と愛する彼のためにあります。

【第1章】 ●「愛人の掟」36か条
【第1条】●「いつもきれいにしていること」
      奥さんとは立場が違うことを自覚して
【第2条】●「最初の誘いは彼から」
      この恋で優位に立つ一つの方法です
【第3条】●「彼への電話は控えること」
      彼があなたを思ってかけてくるまで待って
【第4条】●「毎日会わないこと」
      毎日会ったら恋のつらさは増すばかりです
【第5条】●「デート費用は彼にまかせる」
      彼が家庭に回すお金を遣わせることに意義が
【第6条】●「自分の生活をすべて彼に明かさない」
      未知の部分が多いほど彼は追いかけてきます
【第7条】●「合鍵を渡さないこと」
      不倫の恋の敵は「なれあい」です
【第8条】●「写真はたくさん撮ろう」
      思い出をたくさんつくる楽しさを味わって
【第9条】●「手紙で気持を整理する」
      書くだけで自分の本音も見えてきます
【第10条】●「卑屈にならないこと」
       あなたの恋に自信を持ちましょう
【第11条】●「彼のやすらぎになること」
       彼を癒す優しい笑顔を武器にして
【第12条】●「彼の前で泣かない事こと」
       涙の数だけ彼の気持ちは離れていく
【第13条】●「彼を引き止めないこと」
      帰る彼もつらいことをわすれないで
【第14条】●「彼一泊するのは年に数回のイベントにすること」
      あなたの部屋以外に素敵な時間をつくって
【第15条】●「自分の不倫難度を知る」
      条件によって恋のスタイルも変わります
【第16条】●「奥さんや家庭を恨まないこと」
      彼の魅力は家庭を持っているからこそ生まれる
【第17条】●「彼の家庭にばれても何も期待せずに待つこと」
      あなたがあわてても仕方のないことです
【第18条】●「”愛してる”は彼が言うまで待って」
      最上の愛の言葉は彼には重荷になります
【第19条】●「セックスは会うたびに、が理想」
      心も体も手放せない女になりましょう
【第20条】●「避妊はきちんとすること」
       子供はふたりにとって永遠の重い十字架
【第21条】●「日曜日は彼を求めないこと」
      日曜日、彼には過ごす相手がいるのです
【第22条】●「年末年始は彼のことは考えない」
      くよくよするより自分磨きに時間を使って
【第23条】●「プレゼントは彼の行きつけの店で選ぶ」
      奥さんに疑われずに身につけてもらえます
【第24条】●「指輪をねだらないこと」
      愛情の証でも未来にはつながりません
【第25条】●「彼の生活に近づかないこと」
      彼にはあなたとは無関係の世界があるのです
【第26条】●「ほかの男性ともデートすること」
      妻子持ち相手に身辺整理は必要ありません
【第27条】●「第三の女を許してはいけない」
      あなたは常に特別な存在であるべきです
【第28条】●「公式の場にふたりで出席しないこと」
      頑張ってもあなたはステディではないのです
【第29条】●「親に打ち明けない」
      どんな親も娘の幸せを願っているのです
【第30条】●「相談する友人を選ぶこと」
      友情が壊れないように相手を選んで話して
【第31条】●「まわりの中傷に言い訳はしない」
      さらりとかわしたほうが傷つきません
【第32条】●「夫婦の真似ごとはしない」
      愛人は奥さんの代わりではありません
【第33条】●「結婚の二文字は絶対に口にしないこと」
      ふたり関係が終わってしまうきっかけに
【第34条】●「約束を信じて待たないこと」
      彼の約束が果たされる可能性は低いのです
【第35条】●「何も望まないこと」
      ただ愛することが賢い愛人の生き方
【第36条】●「不倫を終わらせるのは必ず女性であること」
      この恋の全権は女性にあるのですから

【第2章】 ●男のコトバ別にアドバイス――

男性の言葉の向こう側に、彼の本当の姿が映し出されています

 不倫の恋の場面には、様々な言葉が存在します。
 ひと言であなたを薔薇色に染める甘い言葉もあるでしょう。それを一瞬にして涙色に塗りかえてしまう悲しい言葉もあるでしょう。あなたの中に大切な宝物としていつまでも残る素敵な言葉や、何度耳にしても涙があふれてしまうつらい言葉もあるでしょう。

 あなたは彼の言葉のひとつで、幸福の絶頂にのぼりつめたり、不幸の底に突き落とされたりしているかもしれません。彼の何気ないひと言に明るい未来を見出したり、傷ついて何も見えない暗闇に沈んだりすることを繰り返しているかもしれません。

 彼の言葉は、この恋の中を歩いていくあなたにとって、それだけ重要な意味を持っているということです。けれど大切なのは、彼の言葉そのものではありません。本当に大切なのは、彼の言葉があなたに語りかけている真実なのです。

 その言葉が、真実なのか嘘なのか、事実なのか事実でないのか、本気なのか本気でないのか、心がこもっているのかいないのか、そのようなことが重要だということではありません。真実が嘘を生むこともあるし、噓でしか真実を語れないこともあります。

 彼の言葉を信じてはいけないというのではありません。彼の言葉をまず猜疑心を持ちなさいと言っているのでもありません。ただ、彼の言葉を一面的に捉えて、それ以外の一切から目を逸らしていると、彼の行動や恋の状況が見えなくなってしまいます。彼の言葉に一喜一憂し、翻弄されていると、彼の本質が見えなくなってしまいます。

「言葉よりも行動を見ろ」というのは恋だけではなくどんな事柄にも通じることですが、これを常に実行するのは思ったより難しいことです。彼を心から愛するあなたにとっては、彼の言葉をあるがままに受け止め、信じぬくほうがずっと簡単なことにちがいありません。だからこそあなたは自分のために、そして彼の為にも、言葉の裏に潜む真実をしっかり見つめなくてはなりません。彼の言葉を信じて突き進むには、この恋は危険すぎるのです。今、あなたに必要なのは、彼の言葉の向こう側に映し出される、彼の本当の姿を見極めることなのです。

 ここでは、不倫の恋の中でよく語られる男の八の言葉をテキストに、読者の方々からの手紙を紹介しながら、その言葉の持つ本当の意味を考えていきます。あなたの恋の中で語られた言葉をすべて登場させることはできませんが、そこにはっきりとした真実の姿は見えなくても、ぼんやりとしたシルエットが浮かび上がってくるはずです。そこに養われた奥行きのある目は、困難な不倫の恋の道にひと筋の明かりを灯してくれる大切な指針となるでしょう。

CASE1「妻とはうまくいっていない」

「妻とはうまくいっていない」「妻とは冷え切った関係」「うちではほとんど口も利かない」「妻とはセックスしていない」‥‥不倫の恋がはじまるとき、そして不倫の恋が深まっていく中で、男性が実によくする台詞である。

 この言葉は、家庭の中の彼を決して知ることのできないあなたにとって、明るい未来につながるひと筋の光のように見える。あなたは彼の言葉を頼みの綱のように信じる。そして、奥さんとろくに口も利かないような彼が。わたしにはこんなに優しくしてくれる。奥さんには指一本触れないような彼が、わたしのことを情熱的に求めてくる。そう思い込むことで優越感さえ生まれてくる。あなたはそんな冷え切った家庭に居続けなくてはならない彼を、かわいそうさえ思うかもしれない。

 けれど、この言葉の裏側には、まず、あなたを喜ばせようという彼の気持ちが含まれていることを忘れてはいけない。そして、実際はどうであるかということとはまったく関係がない。あなたにとっては、それが本当であってもそうでなくても、それを確かめる術はないのだから。彼にとってこんなに簡単にあなたを喜ばせ、優越感を与え、同情をもかうこともできる便利な言葉はほかにはないのである。

 好きな人を喜ばせたいと思うのは、もちろんひとつの愛情の表れである。でも、それが結果的にあなたを長く強く苦しめるものとなるのもまた、事実なのである。

Letter1 離婚すると言っている彼。でも気になる行動もあって

  愛人の掟、読ませていただきました。なんて力強い助言なのでしょうか。どうか私の不倫の話を聞いてください。

 彼が私の勤める銀行の支店に転勤となり、同じ課で働くことになったのが出会いのきっかけでした。着任した二年半前。私は二十六歳、彼は二十九歳。彼と妻と三歳の娘がいて、あと半月で二人目の子供が生まれるという家族構成でした。私にとって彼は恋愛対象ではなく、明るくて仕事ができる人だなぁという印象だけでした。

 当時、私は付き合って二年になる同い年の彼がいました。彼はとても自分勝手なところがあり、価値観にズレを感じて別れることを考えながらもズルズルとした付き合いをしてしまっているところでした。

 彼に二人目の子供が生まれ、転勤して二ヶ月も経ったころから、彼は課のメンバーもいっしょに飲みに行こうと誘ってくれるようになり、四人ぐらいの仲間でよく飲むようになりました。そのころの彼は「妻とうまくいっていない」とよく口にしていました、そして私に同い年の彼がいることも知っていました。

 彼はリーダー的存在で、仕事の成績はいつもトップ、なのに親しみやすい明るいキャラクターで、私に気さくに話しかけてくれました。あまり人に心を開くのが得意でない私も彼とは打ち解け、尊敬の念を抱くようになったんです。また「最近キレイになったね」なんて言ってくれたり私の誕生日をおぼえてくれたりしました。

でも一対一での食事などには決して誘ってこなかったし、女性の扱いがうまいんだなと思っていました。‥‥そのころ私はすでに彼のことが好きだったようです。

 そして一年が経ったころ、私は同い年の彼から突然振られてしまいました。それを彼に告げました。彼はとても優しく力づけてくれました、そしてある日告白されたのです。「一年前からずっと好きだった。大切にしていた」と。「彼氏のいる君の重荷にはなってはいけないと思い好きだとは言わなかった。喜ぶ顔が見られればそれでいいと思っていた」と。

 一年伝えられなかった思いを彼はすべて吐き出し、本当につらかったと言い、私のために涙を流したのです。結婚については「結婚するには若すぎた。妻とは恋愛感情はなく、本当の恋愛は知らずに結婚してしまった」と。そんなに私のことを思っていてくれていたなんて‥‥私はこの恋に落ちてしまいました。それから猛烈にひかれ合いましたが、それと同時に嫉妬がふたりを襲い始めたのです。

過去のことを話したときのことです。私は前の彼の子供を堕ろしたことがあることを告げました。彼を忘れるために同じ職場の女性と短期間付き合ったことがあると告白しました。このお互いの過去が些細なことでお互いを傷つける言葉になってしまうのです。

 また彼は付き合い始めのころから「妻とは離婚する。その費用として給料はほとんど残らない。手元にまったくお金がないが、君との将来のためにはしかたがない。結婚しよう」と言っています。そのためデート代やホテル代を私が持つことも珍しくありません、私の前の彼のことを第三者から聞き出したり、私の銀行口座の明細を盗み見たり気になる行いもややあります。

 付き合い出して一年三ヶ月です。お互い別々の所に転勤になり、職場で会えなくなりました。やっと会えても私が彼に対して傷つけることを言ってしまいます。言ってはいけないことを全部言ってしまいそうになる自分が怖いです。

 常にトップを走り続ける彼は陰で限りなく努力を続けていて、私は人間として性別を超えて尊敬しています。彼を永遠に愛しつづけて、私は人間として性別を超えて尊敬しています。彼を永遠に愛してつづけることも確かです。でも今後どうしたいのか自分自身わかりません。          (二十九歳・東京都)

常に自分本位な彼の本質を見抜いて

  確かに彼は、誰よりも仕事が出来、明るく親しみやすい、素晴らしい人物なのかもしれません。けれど、あなたのお手紙を読んだ限りでは、人間としてどこか欠落した部分があるような気がしてなりません。

 まず、彼はあなたと出会った頃から、しょっちゅう「妻とうまくいっていない」という言葉を口にしています。そのとき彼は転勤してきたばかりで、家庭では二人目の子供が生まれたばかり。そんな新しい環境の中で、彼はとにかく周囲の人気を得たい一心だったのかもしれません。

だからこそ、必要以上に課のメンバーを飲みに誘い、気さくに話しかける中で、こんな台詞が出てきたのでしょう。仕事上の場面では、温かく幸せな家庭の話題よりも、うまくいっていなという話題の方が盛り上がったりすることがよくありますから。

 そして彼はあなたにも、必要以上の優しさを見せています。あなたに同い年の恋人がいる、などというプライベートなこととして入り込んだ会話をし、「最近きれいになったね」などという嬉しい言葉をかけ、誕生日まで覚えているというのは、同じ課で働く後輩の女の子に対する態度としては少々行き過ぎだとは言えないでしょうか。彼があなたを「一対一の食事などには決して誘ってこなかった」のは、そこでいきなりそんな誘いをかければあなたに警戒されることが目に見えていたからです。

 でも、それであなたの信頼を得たかれは、あなたが恋人と別れたという情報を容易につかむことができた。かれにしてみればチャンス到来、というわけです。そこで、あなたへの一年間にわたる思いを伝え、涙まで流した彼の言葉がすべて嘘であると言っているのではありません。けれど、「彼氏のいる君の重荷になってはいけないと思った」というのは、まるで、自分が独身であるかのような台詞ではありませんか。あなたに恋人がいようがいまいと、彼には奥さんと子供がいることには変わりがないのですから。

 そんな彼の傾向は、あなたとつきあいはじめたあとも続いています。それは、あなたが打ち明けた過去に対して異常な嫉妬を見せている点です。彼が既婚者であることを考えれば、あなたの過去の男性にはもちろん、現在の男性にさえ嫉妬する立場にはないことがわかるはずです。あなたの前の彼のことを第三者から聞き出す、なんてまったくあり得ないことです。その上、まるでその仕返しのように、彼は、「あなたを忘れるために」短期間同じ職場の女性と付き合ったことまであなたに告げている。こんな告白が卑劣で幼稚な発想にあることはいうまでもありません。あなたのことを「一年前からずっと好きだった」ことさえ疑ってしまいます。

 そして、彼は付き合ってすぐに結婚の約束をし「君との将来のために」「手元にまったくお金はない」といって、デート代やホテル代まであなたに支払わせ、あなたの銀行口座の明細を盗み見たりしている。

これは「気になる行動」どころではなく、彼の人間性を根底から疑わなくてはならない深刻なことです。彼の狙いが何なのか定かではありませんが、彼が常に自分本位で、あなたの事など全く考えていないことは確かです。

 彼は本当にあなたが「人間として、性別を超えて、尊敬する」ような人物なのでしょうか?
あなたが「永遠に愛し続ける」に値する人物なのでしょうか? わたしには決してそうは思えません。彼があなたにとってどんな魅力的な男性であり、仕事のために絶え間ない努力を惜しまない人であっても、あなたが結婚の約束を信じて待つような相手では決してありません。

今のあなたは、彼の口から次々に出てくる甘い言葉に耳をふさぎ、彼の行動だけをしっかりと見る事が必要です。そしても彼の行動のひとつひとつに大いに疑問を抱いて下さい。そうすれば、だんだんとすべての辻褄が合い、彼の実像がはっきりと現れてくるはずです。

 あなたにとって、彼と職場で「会えなくなったことは、非常に良かったとおもいます。彼との関係が職場やあなたに影響することがなくなったことは、とてもラッキーだったのです。その幸運に感謝と、今こそあなたは彼との付き合いを冷静に見つめ、彼に失望するべきです。あなたが「今後どうしたいのか」はそのとき自ずと見えてくるのですから。

Letter2 奥さんが実家に帰って急に不安…‥

  初めまして。こんにちは。私は今年でハタチになった大学二年生です。大学入学と同時に神奈川に来て一年と半年が経とうとしています。

 私は不倫をしています。昨日で付き合って一年になりました。周りのみんなは「その状況(不倫)でよく一年も続いたねぇ。すごい!」と言うけれど、私はそんなにすごいことだとは思いません(とても嬉しいけれど!)。だって私たち不倫だけど、普通に付き合っているのとほとんど変わらないからです。

 彼氏はことしで二十八歳になりました。美容師で店長をしている仕事熱心な人です。奥さんは彼より二コ年上で、同じ美容師です。二人は別々の美容院に勤務していて子供はいません。約一年の交際を経て結婚したそうです。

 私は彼のお客さんです。こちらに来て初めて行った美容院で出会ってから、つきあうまでは三ヶ月以上ありました。私はその美容院のモデルを何度か頼まれ、撮影の後ご飯を食べたり、たくさん話をしているうちに私の方から好きになってしまいました。

 私の態度や言動で、彼は気持ちを察し「月に一回としか会えなかったりするかもしれないし、俺、結婚しているからいろいろ我慢しなきゃならないこといっぱいあるけれど、それでもよかったら付き合ってもいいよ」と言われました。

 好きだったから付き合うことにしたけれど、この言葉にはムカっときました。「あー私は遊びなんだなー」って。ちょっと落胆したうえ、追いかけるのが好きな私はあんまり簡単に手にいってしまったことでしばらく彼に対する恋心が消えてしまい、こっちらTELも入れず、会おうといわれても友達が来ているとか嘘をつく始末でした。しかし、それが功を奏したのか、彼が私にはまっていくのが手に取るようにわかりました。
わたしの恋する気持ちも、彼と初めてHしたことによって蘇りました。

 不倫といえども、私たちは普通に付き合っているのと変わりない。でも、つらいことは正直いってたくさんあります。私はかなしみを彼の前では絶対出ないようにしていました。友達には「不倫を楽しんでいるように見える」と言われたこともあります。でも部屋でひとりになったとき、「こんなに好きなのにいつかは別れなきゃいけないんだよね。なんて私ばかり、もうやめたい」ってしょっちゅう号泣しています。

 ある日偶然彼が奥さんと一緒に出かけるとこを目撃してしまいました。彼はつき合い当初から「妻とは冷めている」と言っていました。なんか裏切られた気持ちになってしまいました。数日後「この間目撃しちゃった」と苛立ちをぶつけました。彼はただただ「ごめんね」って言いました。その後私がいつも欲しいと言っていたダイヤの指輪を買ってきました。

「いつもお前にはつらい思いばかりさせちゃってごめんね」と言ってプレゼントしてくれました。物につられた、と言われればそれまででしょうけど、きっと彼にはこれしか方法がなかったのでしょう。素直に喜んでもいいんですよね? いろんなことが引き金になって、初めて彼の前で泣いてしまいました。

「俺、離婚しようと思うんだ」と彼が何カ月前から言うようになりました。最近奥さんが置手紙に「もう身も心も疲れました」と書いて実家に帰ってしまったそうです。

実際離婚するのか‥‥と思うと正直複雑です、すべてを捨てて私のところにのしかかるプレッシャーが。どうしたらいいのか。奥さんの存在があってこそ私に対する恋心が燃えていたんじゃないかとか、奥さんと別れたところで、私が表に出られるのかとか。

 それに私は今までみたいに遊べなくなるのかな! って思います。彼と会えない時間があたらこそできた遊びがいっぱいです。彼からの電話の後に男の子たちが迎えに来てくれて朝までドライブしたり。彼が絶対帰らなきゃいけないから、それからは私の自由でした! こういう形で私の不倫の恋のいいところをみつけて、この恋を乗り越えてきたんです。

あなたがすべてを受け入れる必要はないのです

  この恋はもともと、あなたのほうが彼を好きになったことか始まりました。けれど、彼は自分が結婚していることの制約を述べ「それでもいいのなら付き合ってもいいよ」と答えた。

何て失礼な言葉でしょう。その言葉に「ムカついて」、あなたの恋心も消えてしまったのも当たり前です。けれど、あなたにとって幸か不幸かそれが「功を奏して」しまった。あなたが素っ気ない態度を続けたことが、彼の狩猟本能をくすぐってしまったのです。そこで、あなたの恋する気持ちが蘇ってしまったのは自然な成り行きだったと言えるでしょう。

 そしてはじまった彼との付き合いを、あなたは「私たちは不倫だけど普通に付き合っているのと変わらない」と強調しています。それは、彼との付き合いがそれだけ自然に、自由に進んできた証拠だと言えるでしょう。それには、彼が美容師という比較的自分の自由に時間を使える職業にあったことも大きいと思いますが、その裏側には彼の家庭に対するいい加減さも見え隠れしています。彼が家庭を本当に大切にしているのなら、あなたとの付き合いもそれだけ不自由なものになるのが当然だからです。

 だからこそ付き合い当初から繰り返される「妻とは冷めてる」という彼の言葉も、あなたにとってより信憑性のあるものとして響いたのだと思います。けれど、だからといって、その言葉が事実である、ということにはなりません。

 奥さんと仲良く出かけているところを目撃された彼は、慌ててあなたにプレゼントを贈って修復しようとしています。彼のロマンティックな贈り物は、あなたにとって何よりも嬉しいものだったに違いありません。それを素直に喜んだあなたの純粋さを誰にも責めることはできません。

あなたは「物につられた」ものでもなんでもなく、彼の気持ちそのものが嬉しかったのですから。でも、もし本当に「妻とは冷めている」なら、彼はこんなに動揺することはなかったのではないでしようか。あなたにプレゼントを贈って取り繕うよりも先に、奥さんときちんと向き合い、話し合うこともできたのではないでしょうか。

 ですから、彼の「離婚しようと思うんだ」という言葉も、そのまま信じてしまっていいのかどうか疑問です。あなたは今「実際離婚するのか‥‥と思うと正直複雑」と感じていますが、「全てを捨てて私のところにのしかかるプレッシャー」を心配するより先に、あなたは心配しなくてはならないことがたくさんあるのではないでしょうか。

 まず、彼という男性が、あなたが一緒にいて本当に幸せになるような相手なのか、ということです。彼が最初にあなたに言った言葉を思い出してください。「付き合ってもいいよ」と言われて「ムカついて」恋心が消えてしまったときのことを思い出してください。彼の本質はすべてここに表れています。これから彼とつき合い続けて行けば、必ずまた同じような彼の本質に突き当たり、あなたの恋心が消えてしまう可能性はおおいにあるのです。

そして彼が家庭に対しても常にいい加減な態度であり続けてきたという事実です。今度はあなたが彼の奥さんの立場になるとしたら、あなたは幸せでしょうか?
 
そして、ひとつ頭に入れておいてほしいのは、彼がもし本当にすべてを捨てたからといって、あなたは彼を受けいれなくてはならないわけではない、ということです。彼が奥さんと上手くいかなくなり、実家に帰るようなことになったのは(それが事実であればということですが)、すべて彼の責任であって、あなたのせいではありません。

今、彼の中には、もし奥さんを失ってもあなたがいるからいいや、というような、どちらにもいい加減なきもちがあるのかもしれません。でも、それは彼の勝手な思い込みであって、あなたは今も、これからも、自由な二十歳の女性なのです。彼が離婚してもしなくても、彼とこれからもつきあい続けるかどうかはあなたが決めればいいことなのです。

 これまでも「不倫のいいところを見つけて、この恋を乗り越えてきた」あなたなら、彼に対しても冷静な判断が下せるはずです。そして、どんな決断を見出したとしても、毅然とした態度で臨めるはずです。自由でいることは、あなたが恋するのにも最も大切なことなのです。

CASE2 「もっと早く会いたかった」

「もっと早く会いたかった」「結婚する前に出会っていれば」「子供がいなかったら」「僕たちは会うのが遅かった」…‥不倫の恋をする女性にとって、これほどロマンティックな言葉はないだろう。

 あなたはこの言葉に酔いしれ「もっと早く会っていたら」という空想に浸る。あるいはこの言葉を口にした彼自身のほうが、さらにこの言葉に酔っているのかもしれない。しかし、この言葉が何のリアリティもない夢物語であることを忘れてはいけない。

人生をリプレイしたいという願望はだれにでもあるだろう。けれど、それは誰にもできないということを誰もが知っている。あなたとの未来を語れない彼にとって、こんなに安心な夢物語はほかにはないのである。

 そして、もうひとつ考えなくてはならないのは、もし実際にあなたが奥さんよりも早く彼に出会っていたとしても、この恋は生まれていなかったのだということだ。あなたが愛したのは、結婚し、子供を持ち、それらがもたらす様々な経験によって形成された「彼」なのである。家庭という大きな責任を背負い、そこに注ぐ大きな愛を経験したことによって、あなたの愛する彼はここに存在するのである。

 この夢物語の矛盾に気づいたとき、ロマンティックな現実逃避を繰り返すことがどれほど虚しいことか、そしてこの言葉に潜む彼の本心が見えてくるのである。

 Letter3 結婚する前に出会っていればって、もう遅いってこと?

 私は二十二歳です。今の不倫相手は前の彼(不倫)の知り合いで、たまに不倫カップル同士で飲みに行っていました。
 彼は週に三~四回、泊まりに来ます。休みの前の日から次の日の夕方までずーっといます。でも私の心の中にひっかかっていることがあるんです。

 彼は前の彼女のアパートを借りているんです。家賃三万円のうち、二万円を払っています。一年契約で、来年の三月くらいまで、別れた今でも責任があると言っています。その彼女のときには奥さんに「好きな人が出来たら別れよう」三回も言ったそうです。結局別れられなくて‥‥。

 今でもその彼女とお金だけのものだけど繋がっていると思ったら、つらくてっらくて。奥さんのことよりも、前の彼女のことが気になって仕方ないんです。

 二度目の不倫で、自分の気持ちを抑えることを学びました。はまらないようにって気を付けて‥‥。でも頭で考えても恋愛していると、いつも冷静でどこか客観的な自分しかいなんです。あるとき今のうちにならって思って「別れよう」って言いました。理由を言っているうちに涙が止まらなくなりました。

「もう二十二歳だし、無駄な恋はしたくない。奥さんと別れられないのはわかっている。だから期待させるようなこと言わないで」って。彼は、来年いっぱいで他県に転勤するかもしれない、それが離婚のチャンスって言っていました。私をそこにつれていってくれるって。今はそれを心の支えにしています。

 この間、奥さんの勤め先に行って奥さんを見てきました。全然普通の人でした。彼の携帯のバッテリーの中に私のプリクラを貼っていたのですが、バレて剥がされてしまいました。手紙も読まれてしまいました。そうやって、彼の持ち物とかをチェックするのはやっぱ愛ですか?

 彼は「何で俺と結婚しなかった?」っていつも言っています。「俺が結婚する前に出会っていれば」って。それってもう遅いって意味ですよねぇ?
いくら自由だからといって、やっぱり夜TELしたいし、お休みって一緒にいたいです。明日、お昼、彼が彼の家に遊びにおいでって言っているんです。今、すごく迷っています。行って見たいんですが、行って、ショック受けないかって。悩んでいます。明日はクリスマスなんです。夜、彼とは会えません。身内の子供の誕生日に呼ばれているとかで。

 やっぱり家族と過ごすんでしょうね。いっぱいいろいろなことを想像して、苦しんでいます。未来が見られるなら見せてほしいです。
「愛人の掟」はいろんな人のいろんなつらさや共感できることが書いてあり、私だけじゃないんだって心のおもりを軽くしてくれます。
 読んでもらえただけで、心が落ち着きました。ありがとう。(二十二歳・宮崎
県)

彼のデリカシーのない行動に惑わされないで

 あなたの手紙を読んで、不思議に思ったことがあります。それは、あなたの彼への切なる想いが語られているようでいて、実は気持ちの殆どが、彼の前の恋人や彼の奥さんのほうにいってしまっているということです。

 確かに、彼と「前の彼女」の関係は奇妙なものです。別れても尚、彼女のアパートの家賃を払っているというのは、あなたでなくても気になることに違いないでしょう。彼の奥さんに「好きな人ができたら別れようと三回も言った」ほど、好きだった彼女なのですからね。現在、彼女との関係が、本当に「お金だけのもの」なのかどうかは、ちょっと疑問です。お金だけでなく、何らかの関係が続いているからこそ、彼はお金を払い続けていると思う方が自然ではないでしょうか。

 あなたもそんな不安を抱いているからこそ「奥さんのことより前の彼女のことが気になって仕方がない」のでしょう。でも、問題は、彼が彼女とどんな関係があるのかではなく、どうしてそれをあなたが知っているのか、ということです。何となく前の彼女の存在を知っている、というくらいならまだしも、あなたが彼女の家賃の詳しい内訳まで知っているというのはどういうことなのでしょうか?

 彼の方からあなたにこの事実について話したというなら、デリカシーがなさ過ぎるというものです。でも、家庭がありながら「週に三、四回もあなたのところに泊まり、休みの前日から翌日の夕方までずっと一緒にいる」という彼ですから、そういうこともあり得るのかもしれません。彼の付き合い方は、あなたにも、そして家庭に対してもデリカシーがあるとは言えませんから。

 それだけでなく、あなたの手紙の中には、本当はあなたが知らなくてもいい情報がたくさん書かれています。奥さんにばれてプリクラを剥がされたことや、手紙を読まれてしまったことを、彼はどうしてあなたに話す必要があるのでしょうか? 

きっと彼はそのようなことをいちいちあなたに報告しているのでしょう。あなたの気持ちが純粋に彼にむかっているのではなく、前の恋人や奥さんへの様々な想いに苛まれているのはそのためです。

あなたは彼の言葉から想像するふたりの女性に挟まれて、どうしていいかわからなくなってしまっているんでしょう。「奥さんが彼の持ち物をチェックするのはやっぱり愛か」なんて、本来あなたが悩まなくてはならないことではないでしょうか。

 その中でも、あなたは必死に自分を客観的に見ようとがんばっています。そして、身を切れられる想いで「奥さんと別れられないのはわかっている。だから期待させるようなことは言わないで」という冷静な判断を彼に伝えている。そんなあなたの健気な気持ちに対しても、彼は「他県に転勤するのが離婚のチャンスだからそこに連れて行ってあげる」などという「期待させるようなこと」平気で言える男なのです。

 ほかにも、彼はあなたを、奥さんと暮らす自宅に「遊びにおいで」と誘ったり、「なんで俺と結婚しなかった?」などと不用意な発言を繰り返しています。「結婚する前に出会っていれば」という言葉も、ここでは彼のデリカシーのなさを露見させるものでしかありません。あなたはその言葉が「もう遅いって意味」なのかととらえていますが、おそらく何の意味もない、彼の常套句なのではないでしょうか。

「未来が見られるのなら見せてほしい」というあなたの願いを叶えるなら、あなたの未来には彼は存在しない、ということです。あなたにはこれ以上彼の数々の言葉に翻弄されることなく、しっかりと自分自身の気持ちを見つめ直すときに来ているのです。奥さんや前の彼女への対抗意識や嫉妬で曇った視界が晴れたとき、あなたの目には彼の真実の姿が見えて来るでしょう。

 彼との恋が、あなたにとって「無駄な恋」とは思いません。あなたは「もう二十二歳」ではなく「まだ二十二歳」。二度の不倫の恋であなたが味わったつらさや涙は、あなたのこれからの恋に必ず生きてくるはずですよ。

Letter4 彼を本当に理解しているのは私なんです

 梅田さんへ。この手紙を読んでアドバイスをいただけたら本当に嬉しいです。
 私は三十四歳、小さいですが花屋を開いています。街の小さなお花屋さんといった感じで、やっと黒字といった状況ですが、毎日充実した生活をしています。

 不倫の彼(三十七)と出会ったのは、半年前のある日の閉店間際、彼が奥様への誕生日プレゼントということで、「チューリップをください!」と、季節外れのチューリップを買いに来たことがきっかけです。あいにくなかったので置いていないことを申し上げたら、何でも朝にケンカしてしまって食事もキャンセルしてしまったので、奥様のいちばん好きな花をあげたかったとのこと。彼の優しい目と誠実な態度にすごく感動し、別の花でしたが心を込めて花束を作りました。

 次の日、奥様がとても喜んでくださったと報告にいらして、そのとき改めて自己紹介をしました。それからニ、三日に一度お店に寄ってくれるようになりました。初めは世間話でしたが、奥様のお話をするときの顔がとても優しくて、あぁ愛しているんだなぁと、そんな奥様を愛する彼をいつの間にか私も好きになってしまったんです。

 ずいぶん悩みました。彼は奥様一筋のようでしたし、私も奪おうとかそんなことは考えていなかったんです。でも二カ月前に、思い切って好きだと報告しました。期待していなかったんですが、彼は「もし君にもっと早く会えていたら、君と結婚していたかもしれない」と言ってくれたんです。そのとき初めてキスしました。そしてその一週間後、奥様が旅行で留守のとき初めて一晩一緒に過ごして結ばれました。あの日は本当に女として生まれてきてよかったと思いました。

 あれから毎日、彼の朝の出勤時に駅で待っていておはようを言うのと、こちらから午前と午後TELをするのが日課です。メールも入れています。彼は日中営業で忙しいので、向こうからはかけにくいんです。あと、いつ彼が私の部屋で夕食をとりたいというか分からないのでそのために一応毎日献立の準備をしています。その後奥様が留守することはないので泊まることはありませんし、店で会うだけですが、私たちは心で結ばれているんです。

 先日彼の自宅近くまで行って、奥様をそっと見てきました。とてもきれいな人で、私も憧れてしまうような素敵な方でした。何だか彼同様、奥様のこともいとおしいという感情が沸き起こってきました。彼を取り巻くすべてのことを、私が守ってあげたいと思うようになりました。彼を大きな心で愛そうと思うのです。彼は照れ屋なので私には好きとかそういうことを言ってくれないので、私からたくさん愛情をあげようと思います。


 そのとき奥様がちょっと咳込んでいたようなので、風邪薬を用意して、何も言わずに携帯に連絡して彼に帰りに店によってくれるようにお願いしました。事情を話して彼に風邪薬を渡してあげると、彼はかなり驚いたようで、遠慮したのかなかなか受け取ってくれなかったのです。無理やり渡しました。だって奥様の風邪も治ってほしいけど、彼にうつってしまったら大変ですもの。

 親しい友人にはこの運命の恋を打ち明けました。「不倫はそんな穏やかなものではない。屈折しているというのですが、こんな恋もあってもいいですよね? 私は何かを望んだり奪おうとか考えているわけでもないし、彼や彼の家庭を不幸にはしたくないんです。
          (三十四歳・東京都)

早く現実の世界に戻ってきてください

  あなたと彼の出会いは、まるでドラマの一場面のようです。小さなお花屋さんを営むあなたのもとに「チューリップをください!」と季節外れの花を買いに飛び込んできた彼。こんな劇的な出会いが訪れたら、誰もが恋に落ちてしまいそうですね。あなたの手紙から、現実の恋愛をしているというよりは、どこかドラマの中に入り込んでしまったような印象を受けるのはそのせいでしょうか。

 あなたが彼に惹かれたのは「奥様の話をするときの顔がとても優しくて」という理由からでした。あなたが「そんな奥様を愛する彼」を、素敵な男性だと感じたのは自然なことです。でも、あなたが思い切って告白したときの「もし君にもっと早く会っていたら、君と結婚していたかもしれない」という彼の言葉で、あなたの世界は急変してしまいました。

あれほど「奥様一筋のよう」だった彼が、まだ付き合ってもいないあなたにどうしてこんな言葉を言ったのか、わたしには不思議でなりません。もし彼が、大した意味もなく軽い気持ちでこの言葉を口にしたのなら、それは彼の大きな誤算であり、罪だと言えるでしょう。
なぜならあなたはこの言葉を聞いた瞬間から、ちょっと別の次元に入り込んでしまったようです。

「もし君にもっと早く会えたら、君と結婚していたかもしれない」という彼の言葉を、あなたは「本当はわたしが彼のいちばん近くにいるべき存在なのだ」と捉えてしまったように思います。あなたは駅で待っていたり、「彼の方からはかけにくい」という理由で頻繫に電話を掛けたり「いつ彼がわたしの部屋で夕食を取りたいというか分からないので」毎日夕飯の支度までしている。このあなたの日常的な行為を、彼がどのように受け止めているのかはわかりませんが、あなたはそれらが、彼に対して行き過ぎた行為であることに気づかなくてはなりません。

「彼の自宅近くまで行って、奥様をそっと見てきた」というあなたの行動も、やはり行き過ぎたものだといえます。もちろん、彼の奥さんをこの目でみてみたい、という願望は、不倫の恋をする女性なら誰でも一度は持ったことがあるでしょう。でも、それを実行に移すか移さないかでは、天と地ほど違うのです、その上、彼に事情を話して風邪薬まで渡すなどということは、ちょっと普通では考えられないことです。

 彼がそれをなかなか受け取らなかったのは「遠慮した」のではなく、あなたの行動が彼の理解の範疇を越えているものだからです。あなたと彼が「ひと晩一緒に過ごして結ばれた」のは確かな事実かもしれませんが、だからと言って、あなたが彼のいちばん身近な存在になったわけではないのです。

 あなたの錯覚は、彼だけではなく、彼の奥さんにまで向けられています。あなたの「彼同様、奥様のこともいとおしいという感情が沸き起こってきた」という言葉には、不倫の恋をする女性たちは、妻の存在をかなわないものとして認めた上で、嫉妬や羨望や、憎しみなどの感情と戦っていくものです。

それなのにあなたは彼の奥さんへの感情は、第一夫人が第二夫人を可愛がったり気にかけたりするような奇妙な感じがするのです。あなたの中にはやはり、彼にとってあなたが一番目であり、奥さんは二番目という意識が根付いてしまったとしか考えられません。

 もう一度、彼の「もし君にもっと早く会えていたら君と結婚していたかもしれない」という言葉の意味をよく考えてみましょう。これは決して「今の奥さんよりもあなたのほうが彼にふさわしい」という意味ではありません。そして、あなたが本当に、彼の奥さんよりも先に彼と出会っていたとしても、彼はあなたと結婚していません。これは、どうしょうもない現実なのです。

今のあなたにとっていちばん大切なのは、現実をみつめ、しっかりと受け止めることです。知らず知らずのうちに別次元のドラマの世界に入り込んでしまった自分自身に早く、気づいてください。そうすれば、今のあなたのしていることが、彼の心をあなたから急速に遠ざけている行為だということがわかるはずです。あなたが彼と、あなたの言うように「心で結ばれている」のなら、あなたがこんなことをする必要はないのですから。

CAST3 「いちばん好き」

「いちばん好き」「いちばん大切」「誰よりも愛している」…‥どんな恋の中でも語られるごく普通の愛の言葉が、不倫の恋の中では特別な意味を持ってくる。

 常に自分は「二番目」であるという意識に常に苛まれている女性たちにとって、何より嬉しいのは「いちばん」という称号である。ただの「好き」とか「愛している」では決して得られない幸福がこの「いちばん」の中にあるのだ。彼が「いちばん」好きだということは、すなわち「奥さんよりも」好きだということであるからである。

 あなたは彼の「いちばん」という言葉を拠りところにして、二番目の位置にいるつらさを和らげようとする。「いちばん」の位置にいながら「いちばん」愛されていない妻よりも、自分のほうがずっと幸せだと感じる。

 ただ、忘れてはいけないのは、彼にとってあなたが「いちばん好き」と口にすることが、そんなに難しいことではない、ということだ。なぜならあなたが「いちばん」好きになったから妻と別れなければいけない、ということではない。言葉で「いちばん」になったからと言って、事態は何も変わらないのである。

 彼にとって、あなたが本当に「いちばん」であるかという真偽を追求しても、あまり意味がないだろう。そもそも、愛情に順位をつけるという自体が怪しいものだから。

Letter5 不倫だけはあり得ないと思っていました

 私は現在二十八歳。二十二歳で結婚して、二人の子供を産みましたが、二十六歳のときに離婚。子供を引き取る事ができなかったし、一年くらいは泣いて暮らしていました。

 自分で結婚した経験があったので、不倫は私には絶対あり得ないことで、不倫をしていた友達の話を聞いても、はっきりいってばっかみたいていうのが、正直な気持ちでした。愛人の自分の存在を奥さんにわからせることが、冷めきっていた夫婦にとって、どれだけ刺激を与え、絆を深めさせるかってこともわかっていたし、奥さんを加えての三人の修羅場の話を聞いても、彼女に同情すらしませんでした。

 彼に初めて会ったとき、彼は来月には結婚するという状況でした。その時点では一言も話したことはなく、私は「一目ぼれした人」という感じで、遠くからみているだけでした、彼は私の上司にあたり、私は入社から半年ほどで、やっと挨拶以外の会話もできるようになりました。

 彼は新婚、奥さんは妊娠中で、まさかこうなるとは思っていなかったのに、普段通りのふざけた会話から、彼からのデートの申し込み、その日から今日まで合わなかった日は数える程度しかないくらいになってしまいました。

 同じDNAを持っていると思えるくらい、彼の考えていること、悩んでいること、彼の立場の辛さが手に取るようにわかるのです。彼も同様のようです。お互い言葉にしなくても、相手がどんな気持ちでいるのか痛いほどよくわかります。

 結婚生活がどんなものか、離婚する決意するのはどういう時か私もわかるので、責めていません。出会うのが遅かったなんて思っていないし、今が楽しめなくちゃ不倫という危険な恋をしている意味がないって思っています。結婚に失敗しているので、結婚に対する夢もありません。

ただ、不倫は初めての経験だったので、恋愛に関する本を買いまくりこの辛さをどうやってのりこえるのか悩んだ時期はありました。そんなとき「愛人の掟」に出会って本当に嬉しかったです。不倫の悩みってみんな同じってわかっただけで、すごくホッしました。

 彼は「今まで出会った女の中でお前が一だし、お前以上の女にはもう出会えないだろう」と言ってくれるし、私もそう思います。

 でも彼には彼の時間、私には私の時間があるってことも言ってあるし、彼との恋愛に疲れたときには楽な恋愛を選ぶとも言ってあります。ただ、今は誰よりも彼を愛しているから、体中で愛を表現しています。帰りも会ったときも笑顔。イベントは手料理でおもてなし。今の関係を壊したくないので、奥さんにばれないよう、一度も電話はしたことないし、もちろん怪しまれるような行動は一切していません。

 今、二人か愛し合っている現実だけ見つめて、過去も未来も考えていません。別れはそのときが来ればそうなるものだし、先を考えても仕方がないので、今彼と過ごせる時間を大切に、二人の心に刻んでいきたいと思います。  (二十八歳・栃木県)

 もっと自分の感情に素直になってもいいと思います

 二十二歳で結婚し、ふたりの子供を産んだあなたが、今自分のお子さんと一緒に暮らせないのはどんなに辛いことでしょう。あなたの悲しみは、「一年泣いて暮らした」くらいでは決して消えない、深い悲しみだと察します。そんなあなたが、もう一度恋に胸を焦がすことができたのは、本当に素晴らしいことだと思います。

あなたは何があってもくじけることなく、前に進んでいくともポジティブな女性なのでしょう。これが不倫の恋ではなく、あなたがもう一度幸せな家庭を持つチャンスであったなら‥‥とちょっと残念な気もします。

 あなたの中には、結婚に敗れた経験が深く根を下ろしています。「愛人の自分の存在を奥さんにわからせることが、冷めきっていた夫婦にどれだけ刺激を与え、絆を深めさせるか」というあなたの見解にはどきっとさせられました。

「結婚生活がどんなものか、離婚を決意するのはどういうときかわかる」あなただからこそ、自分が愛人の立場になった今も、暗雲に離婚を迫ったり妻の座に嫉妬することもなく「今が楽しめなくちゃ」というスタンスを取り続けていられるのでしょう。今のあなたが彼にとって、非常につき合いやすい、ものわかりのいい相手である事は間違いありません。「同じDNAを持っていると思えるくらい」わかりあえる、というのも、お互いの相性の問題だけでなく、あなたのものわかりのよさがあってのことだと思います。
あなたは彼にとって貴重な存在であり、「今まで出会った女の中でお前がいちばん」「お前以上の女にはもう出会えないだろう」という言葉を、彼の実感から出てきたものだと言えます。

 ただ、あなたが「わかっている」と言い切る結婚にも、いろいろな形があることを忘れてはいけません。愛人の存在が刺激になり、絆を深める夫婦ももちろんあるとは思いますが、これはあくまでもあなたの経験に基づいて一面的な考え。そうでない夫婦も沢山いるわけですし、あなたの見解がそのまま一般論になるわけではないということを認めなくてはなりません。

 あなたはもっともっと、不倫の恋をシニカルな目で捉えていました。「私には絶対あり得ないこと」として信じて疑わなかった不倫の恋に自ら足を踏み入れたとき、あなたはかなり動揺したでしょう。その動揺を打ち消すために、「ほかの不倫の恋をする女性たちと自分は違うのだ」という意思を必要以上に強固にしてしまったのではないでしょうか。

本当は彼女たちと同じょうに泣いたり、彼との未来を望んだり、離婚しない彼を責めたりしたいのに、そうしない自分に価値を見出すことで何とか彼とのスタンスを保っているのではないでしょうか。

「過去も未来も考えていません」「今彼と過ごす時間を大切に」「別れはそのときが来ればそうなる」という、あなたの考え方は非常に立派なものです。そこだけ見れば、あなたは誰よりもこの恋から自立しているように見えます。けれど、本当にこれがあなたの本心なのでしょうか? 

あなたはその完璧すぎる姿勢を保つために、毎日精一杯強がっていなければいけないのではないですか? わたしには、「結婚に失敗しているので、結婚に対する夢もありません」と言っているあなたが、本当は誰よりもあたたかい家庭を欲しているような気がしてなりません。

 あなたには、もっと素直ら自分の感情をさらけ出せる場所が必要なのではないでしょうか。彼に対してだけではなく、すべてを打ち明けられる友人や、信頼できる人間関係を持つことも含めてです。形だけの自立を急ぎ過ぎて、自分の中の自然な欲求を封じ込め、彼と中途半端な距離を持ち続けていると、あなたの心は想像以上に彼に強く依存し、別れが来てもそれを受け入れられないということになりかねません。

自分の中の俗っぽい願望や弱い部分をすべて認めるのは勇気がいることです。でも、弱さを認めなければ、本当の強さは生まれないのです。

 あなたが変われば、彼との関係も自ずと変化を見せてくるはずです。「今まで出会った女の中でお前がいちばん」という彼の言葉が本当なら、彼はあなたの涙だってきちんと受け止めて違う強さが生まれているはずです。その中で彼との均衡が崩れたとしても、あなたの中には今までとはまったく違う強さが生まれているはずです。その強さは、あなたが将来幸せを手にするための、大きな手助けなってくれるのですから。

Letter6 ホテルの中でしか会えない二人だけど…‥

 初めまして。私は十九歳の女の子です。私には十六歳年上で三十五歳の彼がいます。付き合ってもうすぐ一年としています。

 私は一年半ぐらい水商売をしていて、そのときにお店で出会いました。最初会ったときから、他のお客さんにはなかったドキドキを感じたのを覚えています。でも左手には指輪が‥‥。何度かお店に来るうちに私のTEL番号を教えて。もうこのときにはすごく好きでした。すごく‥‥。

 TELかかってきて毎回誘われたけど半年はガマンしました。それは彼が結婚していたこともあるし、「俺は嫁さんがいちばん大切だし、家庭は壊せない」って言っていたから。あともうひとつ。不倫なのに遠距離でもあるんです。まぁ、同じ九州ですが。

 私の中で好きな気持ちと自分でわざわざ苦しい恋愛をしなくても、という気持ちがあったんです。でも半年くらいしたら好きというのが大きくなって‥‥。それでいってしまいました。「二番目でもいいから」と…。

 私の場合、会いたいときに会えるわけではありません。仕事でこっちにきたときしか会えないのです。しかも彼の泊まっているホテルに行って、彼は社長さんだから、二人でお昼外でデートなんて無理。もうすぐ一年というのに、二人で食事したこともないんです。何回か一時間ぐらいドライブしただけ。後はホテルでHして、まったりして、明るくなる前に帰らなきゃいけないんです。

 最初はそれでもよかったんですが、時間が経てばわがままになっていくもの。「私は出張ヘルスじゃない!」って文句ばっかり。彼の立場も分かるんです。それなのに‥‥。

 携帯番号だって、付き合う半年ぐらい経ってやっと教えてもらいました。周りの人は「それって都合のいい女じゃん」って言っていました。その通り! 自分でもわかってました。それなのに好きな気持ちは大きくなるばかり。

 それでも彼といる時間は私にとってかけがえのないもので、すごく大事にしていました。私といる時間だけでも彼の中で一番になりたくて、もう二番なんていやでした。辛くて苦しかった、そんなとき彼に「お前が一番だよ。心の中と頭の中じゃお前だけ」って言われたんです。すごく嬉しかった。「でも奥さんが一番って言ったじゃん」ってきいたら、「初めはそうだった。今はそんな気持ちはないから」って。涙がたくさん出ました。初めて好きになってよかったって思いました。つらいことばかりじゃないって。

 それからいっときはよかったんです。でも怖いですね。彼のこと全部が欲しくなってしまって‥‥」「離婚できないの?」ってきいたんです。そしたら「会社の社長をやっている俺の立場もあるし、奥さんの病気のこともあるし、無理だな」って。「じゃあ、奥さんに愛情はあるの?」って聞いたら「…あるんだろうなぁ」って‥‥。

 悲しみのどん底に一気に落ちていきました。別れようかとも思いました。でもそれでももっともっと彼ことを見ていたいと思ったんです。今は奥さんのことなんか考えるんじゃなくて、私たちの会える日のことを考えて仕事もエンジョイしています。
やっぱり男は彼だけですけど、てきとうーに遊んでいます。

「愛人の掟」に書いてあった辛いのは私一人じゃないとわかります。私より彼のほうが辛いと思うから。いつも自分のせいで辛い寂しい思いをさせているんだなぁて言うんです。「お互い気持ちは一緒だから」って言ってくれている彼を信じます。嘘をつかない彼だから。結婚とか無理だと思うけど、彼に出会えて、彼を愛して、彼に愛されて、私は幸せです。
           (十九歳・?県)

あなたは彼と対等な恋愛。

 あなたはまだ十九歳.まずその若さに驚きました。もっと驚いたのは、あなたがいつも非常に冷静で、的確な判断をしていることです。あなたは実年齢よりもずっと大人っぽい女性なのでしょうか。

 まず、とても好きな彼に誘われても「わざわざ苦しい恋愛をしなくても」と半年間ブレーキをかけたこと。これは、あなたにとっても彼にとっても、とても重要な半年間だったでしょう。あなたが自分の気持ちを確認し、覚悟を決めるまでかかったこの時期で、彼の気持ちをちょっとした遊び心から本気に近いところまで引き上げることができたんですから。あなたの「ガマンする」という判断がなかったら、あなたは彼と今のような恋愛関係には至らなかったに違いありません。

 そして、もうひとつあなたに驚かされるのは、三十五歳の彼とまったく対等に恋愛をしていることです。もちろん、あなたと彼の関係を表面的に捉えれば、対等であるはずがありません。あなたは彼の仕事の都合に合わせてホテルの部屋の中でしか会えず、こちらからは連絡をとることさえままならない。「それって都合のいい女じゃん」と周囲の人が言うのも当然でしょう。

でも、あなたはそれに意固地になって反論するのではなく「その通り! 自分でもわかっていました」と素直に受け止めている。その上で「彼といる時間は私にとってかけがえのないもの」と自信をもって言えるあなたは、世間で言われる都合のいい女」などとはまったく違います。

卑屈になってもおかしくないこの状況で、彼と対等にやり合っているあなたの姿には、微笑ましい感じさえします。ときには彼に「出張ヘルスじゃない!」などという感情をぶつけても、あなたの中に暗い影はまったく感じられません。これはあなたの恋の特長であり、生まれ持った素晴らしい才能だと言えるでしょう。

「離婚できないの?」というあなたの問いに、彼がきちんと真面目に答えていることからも、あなたと彼が対等に向き合っていることが分かります。普通なら、適当に受け流すか、甘い言葉を並べて誤魔化してもよかった場面で、彼は離婚できない理由をはっきりとあなたに伝え、奥さんに愛情があることも認めています。

この彼の言動は、あなたを傷つけているように見えて、あなたへの深い愛情が流れています。あなたがこの言葉によって「悲しみのどん底に一気に落ちる」ことをわかりながら、彼はあなたのためにこの言葉を口にしないわけにはいかなかった。彼にとってあなたが適当に遊んですぐに捨ててしまえる「都合のいい女」だったら、わざわざこんな辛いことを口にする必要などないのですから。

 ですから、「お前がいちばんだよ。心の中と頭の中はお前だけ」という彼の言葉は、素直に信じてもいいような気がします。「嫁さんがいちばん大切」と言っていた彼の心をここまで引き上げたのはあなたの持つ天性の明るさと素直さ、そして若さの割に大人びた性格なのですから。最初から「二番目でもいいから」と言って付き合い始めたあなたにとって、彼の「お前がいちばん」という言葉は、天にものぼるほど嬉しい言葉だったのでしょう。そのあとであなたが「彼のことを全部欲しくなってしまった」のも仕方ないことです。

 離婚できない彼を理解したあなたは、別れを考えた結果「それでももっともっと彼を見てみたい」という判断に行き着いています。このあなたの判断に、今もう少し従って見てもいいのではないでしようか。もちろん、あなたはいつか彼とお別れをしなければいけないでしょう。でも彼はあなたにきっとたくさんのものを与えてくれるはずです。

冷静で、深い判断力をもつあなたが今、別れを決断しなかったのは、まだあなたが彼をひつようとしているからなのかもしれません。あなたがこの恋と決別するときは、きっと何の未練もなく笑顔で彼を「卒業」していくときです。

 あなたの場合、彼と自由に会えないことがかえってあなたを自由にさせているように思えます。彼と今のスタンスを守りながら、自由に仕事や恋を楽しんでください。彼ととう大人の男性との対等な恋愛は、あなたをさらに成長させ、魅力的な女性にしてくれるでしょう。
つづく Letter7 恋愛初心者の私が不倫なんて‥‥
 私は来年二十歳になる社会人二年生です