フェミニストのような生き方をしようとしているけど、なかなかそうは生きられない・・‥これだと聞いている人が何のことかわからない。自分を語るとき、難しい顔になるのはそのせいだろう。なんとか落ち着ける場所がほしい。

赤バラ煌きを失った性生活は性の不一致となりセックスレス化する人多い、新たな刺激・心地よさ付与し、特許取得ソフトノーブルは避妊法としても優れ。タブー視されがちな性生活、性の不一致の悩みを改善しセックスレス夫婦になるのを防いでくれます。

12俺はフェミニストではない

本表紙

――いろいろ考えてきたけど
 フェミニストと暮らすうち、しだいに降って涌いた疑問

ピンクバラ――俺はフェミニスト? それとも違うの? ――これが私にとって答えの出ない問題でした。
 彼女は自分を語るとき、『私はフェミニストです』という。一言でどういう生き方なのか即座に伝わる。

 ところが私の場合、一瞬言葉に詰まってしまう。どう言っていいかわからない。『フェミニストのような生き方をしようとしているけど、なかなかそうは生きられない』・・‥これだと聞いている人が何のことかわからない。自分を語るとき、難しい顔になるのはそのせいだろう。なんとか落ち着ける場所がほしい。

 最近、そんな思いに終止符が打てました。
「俺はフェミニストじゃないから」と、偶然ではあるにしろ、そんな言葉を口走っていたのです。
 あれはちょうど・・‥。

 ユキはソファーに横たわりリラックスしていた。私は自作のシナリオを手に、どうして思うような作品に仕上がらないのかを考え込んでいた。
♀ どうしたの? 難しい顔して。
♂ 思うように書かれへん。
♀ どうして?
♂ それが分かっていたらもっとええ顔してる。
〈ええなあ、傍観者は。こんなに難しかったとは、フェミニズムのドラマっちゅうのが〉
♀ でも、書きたいんでしょ?
♂ そらそのために勉強してきたんやから、シナリオの。
♀ 考えて書けるものなの?
♂ うぬ?
〈考えな書かれへんやないか、ただ書きゃあええっちゅうもんちゃう。変なこと言いよるなあ〉

 このころ(1997年)、私はテレビや映画に「フェミニズムのドラマが少なすぎる」と反発してた。フェミニズムと仲良くなりだしたころから、そう感じるようになっていた。マスメディアによって今のジェンダーが再生産されていく、それが悔しい。ならば、私がシナリオを書く。

 「今のジェンダーに挑戦してやる」と、とてつもないことを思いついた。そのためにはとりあえずドラマの書き方を学ばねばと、シナリオ専門の学校に入学した。
 しかし、そんな思いだけで書けるほど甘くはなかった。

私の作品は、ことごとく酷評され、心はズタズタに追い込まれた。それまで、営業マンとして生きてきた私には、「ものを書く」ということの難しさを骨の髄まで味わねばならなかった。
 ユキの考えを聞きたかった。

♂ フェミニズムの感覚って、ぜんぜんちゃうんや、一般のドラマと。
♀ だから書きたかったんでしょ?
♂ 書いてるんよ、オレは…。
♀ だったら考えることないやん、どんどん書けば。そのうちいいもの書けるって。
♂ それはユキのやり方、オレはちゃうもん。綿密な計算が必要なんや。
〈感性で生きているんやあんたは。俺はちゃう、納得せなでけへんのゃ、何でも〉
♀ よくやるね、そんなしんどいこと。わたしはできない。
♂ ちゃうんや、オレとユキは‥‥。
♀ そうかなあ・・‥。
♂ ユキみたいに感性で生きられたら、そら楽やろけど。
♀ 楽よ、すごく。
♂ 言うやろと思た。そらそのほうがいいってわかっている、けど考えてしまう。癖や癖。
〈わかっとらんなあ、あんたは感性の人間、俺までそうなったらどうなるょ、この家は。そんなもん、考えただけでも恐ろしいやないか〉
♀ 困った癖やねえ。

〈まあ、癖ってことにしといたろ。それがどれだけ役に立っているか、ユキには分からんやろ。…癖か、ハハハ、そうしていたほうがあなたも気楽にいけるか、なるほど、オレも優しいなあ。でもちょっと考えるもんやで、後先のこと。俺がいてへんようになったらどうすんねん〉

♂ ほっといてくれ、オレはそれで満足しているんよ。
♀ でも、シナリオには向いているかもしれないね。
♂ えつ?
〈そうか、そう思うんか。嬉しいこと言ってくれるじゃないか。ほんまはメッチャいいもん書いてるんやで。ただな、・・・・だれもいいって言ってくれへんだけやねん〉
♂ そうか、向いているか。
♀ そんな気がする。
〈はあ? 気がする? 気がするねエ・・‥。他にないんか他に、俺には才能があるとか何とか〉
♂ それだけ?
♀ そうよ。
♂ 何やそれ‥‥、誉めてくれるんちゃううの?
♀ 何を褒めるの?
♂ ‥‥。
 いつもこの調子。励ましているのか、けなしているのかよく分からない。だが、悪気のないことだけは解る。

これまで暮らして来て、感性に従って行動している女だとだいたい理解している。そう思えるまでずいぶん時間はかかった。が、それが分かってからは。いちいち言葉の意味を気にせずにいられるようになってきた。なにせ、そう感じたからそう言ってるだけのこと、こちらは言葉を素直に受け取ればいい。手にしていたシナリオをテーブルに投げ出した。何だあれやこれや考えてのがバカくさくなってきた。
「一杯飲むか」

 そう言って缶ビールをグラスに注いだ。
 ユキはカウンセリング以外にも、いろんな講師を引き受けている。講演の内容は「女性の自立」や「女性心理」に関するもの。ふと、そんな講座のことが頭によぎった。
♂ ユキの言う通りかもしれんなあ。
♀ なにが?
♂ ユキ、講座の時も、大筋だけ考えてるの。ほとんど出たとこ勝負って感じでいくんか。
♀ そんなことはないよ、ちゃんと下調べしてるよ。
♂ だって、今日何しょう、って言つてるんやんか、講座に行くとき。
♀ たしかに…。
♂ ほら、そうやろ。講座でさえ感性だけでやってしまうんやから。そういうの傍で見ているからなあ・・‥。
♀ 考えてもあんまり役に立たないよ。
♂ そんなもん?
♀ だと思う。
 なんと、いけしゃあしゃあとそんなこと言うではないか。考える苦労はどうなる。が、あまりらもアッケカランとされれば、こちらがおかしいことを言っているのかと自分を疑ってしまう…。
〈うぬー シナリオも考えて書くもんちゃうのか‥‥、ひょっとしてオレ、偉い間違いをしてたんか〉
♀ 基本は大事よ、しつかりマスターしないと。でも、それだけではいいもの書けないんじゃない。
♂ うん、書かれへん。
♀ シナリオのこと、わたしは良く知らないけど、講座に関して言うと、感性の方がいいみたいよ。
♂ ほう、なんで?
♀ わたしは、受講生と一緒に作り上げていく講座が好き。
♂ 一緒に作る?
♀ 何ができ上がるかわからないけど、みんなの個性や考え方、生き方が、その場に溢れかえるの。だからすごく楽しい。
♂ へえ―。
♀ すごいエネルギーが飛び交うの、そのどれもがみんな真実なの、教えられることいっぱいあるよ。
♂ じゃあハプニングもあるわけか。
♀ あるある。
♂ 大変やんか、それやったら。
♀ でも、そこからみんなで考えていける。それは必要なことなのよ。
♂ どうして?
♀ だれかが、『そんなおかしい』って諮問するよね。たくさんいれば当然考えの違いがでる。結局、それって生き方からきていることにつながるから。
〈生き方が…‥、そういや、俺とユキの生き方違っていた時、そうじゃない、それはおかしいってばかり言っていた〉
♂ そうか、作り上げていくのかみんなで。講座のシナリオは決まっていないのか。
♀ だから大筋だけ決めるの。
♂ それでか‥‥。

〈あああっ、答えは受講生が自分で考えて出すってことか‥‥と言うことは・・・・ハッー 考えてから書くんやなくて、書いているうちに考えがまとまっていくということか〉

♂ わかった、オレもシナリオ、どんどん書けばいいのか。
♀ そうだと思うよ。
♂ どんなことでもいいから書いて、それをフェミニズムの視点ならこうなっていく、つまり書き換えるってことやな、できてから。
♀ さあ、それはわからない。
♂ なんで? 結果を考えてするより、その過程を楽しむってことちゃうんか。

〈何を考えてるんや、そういうことを言ったじゃないか。出てきたことに焦点を当ててそこからまた一体感がふくらむって。そういうこととちゃうんか、あなたのやり方〉

♂ その場その場に応じたやり方があるってことやろ。それに気づくためには、初めから全部を組み立てるより、枠組みだけの方がいい。そういうことやろ。
♀ それはそう、せっかく盛り上がっているもの、無理に変えたくないから。
♂ オレもそういう風に書けばいいんや。大筋だけで、あとは感性のままペンを走らす。うん、そうすればフェミニズムのドラマは書ける。
〈そうか、簡単なことや、考えすぎたんや、普段通りのまま、感性にまかせて書きゃいいんや〉
 ようやく謎が解けた、これまでどうしてもうまく書けなかったフェミニズムの視点からのドラマ、それは頭で考えて書いていたからだと納得した。嬉しくなった。ビールがうまい。
♂ そうか、フェミニズム、フェミニズムって意識しすぎてたわ。そうじゃなく、自然に書けばいいんやなあ、感性に任せて。
♀ う〜ん、どうやろ。むつかしいかもしれないねえ。
♂ そら難しい。でも今わかったから。感性で書くわ、なんとかなりそうな気がしてきた、
♀ そうかなあ?
♂ 大丈夫や、だてにフェミニズムと仲良しになっていない。ポイントはちゃんとわかってる、感性もある。
♀ だからむつかしいって思うの。
♂ えっ、どういうこと?
♀ その感性ってのが問題。
♂ 何が言いたい?
〈俺の感性があかんちゅうんか。あんたは感性でやれて、俺は感性が鈍いから無理って言いたいんか〉
♂ そんな言い方、失礼ちゃうか。
♀ そうかなあ・・‥。
♂ そうや、さっきの言い方、なんかオレには感性がないみたいやんか。
♀ そんなこと思ってないよ。
〈思っていないて、そんなニュアンス含んでる。俺には分かる〉
♂ なら、難しいことなんてないやんか。フェミニストと二十数年暮らしてきたんやで、フェミニズムのドラマが書かれへんのよ、このオレに。
♀ 書けると思うよ、あなたにしか書けないものもあると。
♂ うん。
 思わず顔がほころんだ。
〈俺のこれまでの苦労、ちゃんとわかっとる。そうや、男がフェミニズムと仲良しになる、それって大変なんやぞ〉
♀ でも、感性じゃ書けないよ、たぶん。
♂ ・・‥。
 言っている意味がわからない。
〈いったい何を言いたい?〉
♀ 女が男から受ける抑圧、感じられる?
♂ えつ?
♀ 女に課せられるダブルスタンダード、あなたは感じた?
〈何を言ってるんや、俺は男やで、そんなもん感じることできるわけないやないか〉
♂ そら無理や、女ちゃうもん。

〈想像してるだけ、だからフェミニストたちがどんな思いでこれまでガンバつてきたかなんて、想像の世界でしかない。だいいちフェミニストちゃうんねんからわかるわけがないやろが…‥???・‥あれ? 何かおかしい・・・・ハッ、そうや俺はフェミニストちゃうんかったんや〉

 驚いた、こうもはっきり自分がフェミニズムじゃないという気持ちになったのは初めてだった。でも、以前のように、寂しや、そうありたい。というような気持は湧かなかった。むしろ清々しい。

♂ オレ、えらい間違いをしていた。
♀ どういうふうに?
♂ フェミニストやと思っていた。
♀ 違うって前から言っているでしょ。
♂ うん、けどそう思いたかった。
♀ ・・‥。
♂ オレはフェミニストと一緒に暮らしていた、そういうことなんやなあ。それ以外の何者でもなかったんや。
 見れば、優しくにっこりと笑っている。
♀ だから、それがあなたの書けることね。
♂ うぬー

つづく 第二部 私が妻を理解できるようになるまで
1●恋愛結婚の数年後――学びはじめた妻の変化を受け入れられず