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W 女とセックス

本表紙 内館牧子著

幸せな結婚生活と幸せなセックスライフは共生するか、

 女とセックス

 これに関しては、私はあまり言葉を持たない。密室の出来事は個々の問題だ。
 ただ、セックス年齢が下がっていることに関しては憂いを覚える。早く知り過ぎると、人間としてやせる。それだけは思っている。

少女たちへ イヴの夜のセックス

 それにしてもである。どうして女のセックス経験年齢がこんなに低くなったのだろう。
 一九九六年の東京都の調査によると、女子高生の三分の一が性体験があると回答している。この調査は学校を通じてやったため、教師にバレることを考え、体験があるのに「ない」と答えた生徒も多いらしい。実際には五〇パーセントから六〇パーセントの女子高生が、すでにセックスを経験しているのではないかと、書かれていた。

 高校生のうちからセックスを知ることは、これは本当に損である。損得で言うとわかりやすいと思うので言うが、絶対に損だ。
 中にはきっと、
「内館さん、何を説教たれてんのよ。私と彼は愛し合ってんだから損も得もないわよ。セックスして何が悪いのよ。愛し合っていりゃ当然のことだよ」という人があろう。

 私は若い人に説教を垂れるほどあたたかい人間じゃないし、高校生が何をしようと実は関心もない。だが、私にもしも高校生の娘がいたら、これは絶対に言う。
「セックスはもうちょっと後にしなさいよ。今やったって、何ひとつよくないから損よ」
 きっと娘は怒って言うだろう。
「なんで損なのよ。みんなやっているよ」
 ママである私は、ハッキリ言ってやる。
「アナタも彼も高校生で、とてもじゃないけどセックスで愛情表現ができるわけがないからよ。セックスっていうのは体で語る言葉だって言う事だけは、覚えておくんだわね。
どんな口で『愛している』って言っても語りきれなくて、体で語るってことよ。
十分に体で語り尽くすから、気持ちが優しくなったり、カサカサしていた心が潤ったりするのよ。高校生にそこまでいいセックスができるわけないの。悪いセックスをするくらいなら、もう少し待ちなさい」

 娘はさらにムッとして言うだろう。
「うまいこと言って。結局ママは『高校生はそういう事をしちゃいけない』って言いたいだけなのよ」
「しちゃいけないって言ったって、どうせ隠れてやるんだから、とりあえず『損よ』って教えてあげてるだけよ」
「ご親切にどうも。でも私、高校生は高校生なりに、体で語れると思っていますから」
「台風みたいに力まかせの彼と、ぶざまに頑張って何を語るのよ。言っておくけど、悪いセックスを繰り返していると淋しくなるわよ。必ず今に『彼は私の体だけが目的かしら』って悩むんだから。ま、悩むまでもないけどね。高校生の彼氏なんて、もともと体だけが目的なんだから」
「彼は違う」
「違いません。いいわよ。損を承知ならクリスマスにお泊まりしなさい」
「そ。じゃあ、そうする。ママの許可が出たんだから、堂々とお泊りするよ」
「避妊だけはちゃんとしといてよ。堕ろすことを簡単に考えないでよ」
「へえ、ありきたりのこと言うのね。女だけが体に傷を負うとか、そういうことを心配する人だったんだわ」

「うん。すごいケースを見ているからね。ママの友達、十七歳で妊娠して堕ろしたのよ。それ以来、毎年言ってたわ。『殺した子供の年齢を数えるのよ』って。毎年、毎年、『あの子が生まれていれば、今年で十歳だわ』とかって、毎年。その後、大恋愛して結婚したんだけど、堕ろした時の後遺症で子供ができない体になっていたのがわかったの。そういう中で、ずっと殺した子供の年齢を数え続けて、ノイローゼになって自殺未遂。離婚。本当の話よ。どうぞ、クリスマス、好きに過ごしなさい。じゃ、ママは仕事に行くからバイバイ」
 クリスマス当日、娘がどうするかは予測がつかない。娘が頭のいい子なら、高校生のセックスに関してだけは、損得計算をすべきだとわかるはずだ。

豊かなセックスライフは幻想なのか

セックスって、ほかの何かですり替えちゃいけない
村上龍(作家) 内館さんの『義務と演技』読ませていただきました。
 何かこう、怖いんですよね、あの世界は。
内館 怖い?
村上 怖い。
内館 セックスレスの世界が怖い、ということですか?
村上 ていうか、何かを告げるとか、告げないとかいうことがね。
内館 『義務と演技』を出した後、「夫が妻とセックスをしたがらないこと」について、予想外にテレビや新聞の取材が多かったんです。世の中の夫って、こんなに妻とセックスしてないのかとこちらが驚くくらいでした。
村上 そういうところ、内館さんって、何ていうかな、市井の人、っていうのかな、普通に暮らしてる人間と同じ視線で物事を見たいって言うような思いがおありだと思うんですよね。
内館 ありますね。
村上 それで、その視線で、あんなシリアスなテーマを書かれているから、読むと、逆に考え込んじゃうんですよね。困ったな、この問題は、って。
内館 困りました?
村上 (笑いながら)困りました確かに言えていますし(笑)。いちいち、言えてるですよ。ただ、いきなりセックスレスに対する僕なりの結論みたいになっちゃいますけど、あれはね。セックスの範囲で解決しようとしても無理ですね。
内館 なぜ?
村上 だから、セックス以上に、興味あるものや面白いものを自分で持ったり、夫婦や恋人同士で持っていないと、逆にセックスが持っているような、ある種の魔力からは逃れられないんじゃないか、と思って。
内館 でもね、そこだと思うんです、テーマは。つまり、セックス以外、以上の何ものかで、すり替えちゃいけないんじゃないか、ということが大テーマというか、私の思いだったんです。だから、カウンセラーたちは、夫婦で焼き物をしたりとか、もっともっと違うコミュニケーションがあるでしょうって言うんだけども、それをそっちにすり替えちゃっていいのかって‥‥。
村上 だからね、僕が言っているのは、夫婦で焼き物をやるんじゃなくてね、人間、違う人間だから、違うことをやりたいと思うんですよ。
内館 うーん。
村上 極端な話、彼、あるいは彼女がこの世に存在しなくても生きて行けるようなものをお互いが持っていればね、たとえば奥さんがどっかに行くと言ったら快く送り出さなきゃならない。そうなって初めてお互いが必要だとわかって、セックスもできるんじゃないかな、って思ったりして。‥‥いろいろ考えちゃったんですけど、どうしたらいいんだろう、って。
内館 あのね、たとえば別にセックスがなくても、確かに夫も妻もそれぞれ好きなことがあって、それについてすっごく幸せに話して、それぞれのベッドで安らかにーに眠れる夫婦っていうのは、全然、問題ないと思うんですね。それから、セックスを家に持ち込まないで、夫も妻も外で恋人を作りましょうね、っていうことで合意してる夫婦も、それは問題ないわけ。あとは身体的に病気があって不可能というのは、それはお医者様の範疇であろう、と。だけども、そうじゃなくて、夫、あるいは妻が体のコミュニケーションを欲しがっているのに、片一方はその気になれない。でも、離婚する気は全然ないし、伴侶をとても大切に思っている。だけど、夫婦でセックスする気にだけはなれない。他のすべてで愛情表現をするから勘弁して、という夫婦における「体」というのが、一番のテーマだったんですね。
村上 (首を傾げて)うわー、どうしたらいいんですかね(笑)。
内館 わかんないです。だから、小説は結末のない形で終わらせたんですけど。
村上 さっきおっしゃった二番目の、夫婦公認で外に恋人がいるっていうのは、僕はやっぱり変態だと思う。
内館 変だと思うんですよ。だけども、これはね、いるんです。ノンフィクションみたいなのも、何冊か出てました。外に恋人がいて、それはそれでよくて、でも夫婦がお互いの死に水はお互いで取ると言ってる。ただ、私自身はそういう夫婦が一般的だとは思えませんから、全然興味はないですね。
村上 僕は自分によって相手がより幸福にあるという関係が、基本だと思うんです。恋人であろうが、親子であろうが、夫婦であろうがね。外でいい思いしてきて、じゃ、うちにいるこの人に何をすればいい? ただ、死に水を取り合うだけっていうのは、それはちょっと変態だから、置いときましょう(笑)。
内館 そういう夫婦はお互いに完結しているわけですから、いいんですよ。

結婚制度がセックスレスをさせる

村上 それはやっぱり、結婚の制度というのが一番大事なんでしょうね。
内館 そうなんですよ。結婚の制度が、セックスレスにならざるを得ないものじゃないかって、思ったんですね、書いてて。日常を共にする夫婦が、突然ベッドルームで我を忘れられないでしょう。
村上 この問題はほんとうに大きくて深い問題だから、いろいろ考えちゃってね。僕ね、男も女も基本的なところで言えば、性的欲求っていうのはね、大前提にあるもんじゃないと思うんですよ。みた時に発生するものだと思うんです。自分の中でポッと電気がつくように。たとえば僕なんかでも経験あるんだけど、パリ―ダカールとかのラリーで砂漠を走った時に、性的欲求ないんですよ。とにかく何時までに着かないと日が暮れたら大変だという思いがあって。それで、やっとの思いで着いて、現地で売春婦とかが通ると。あれ!?って(笑)、スケベ心が発生するのがわかるんですよ。
内館 それって、疲れた後だからじゃないですか? とことん疲れている時ってセックスしたくなるって、男はよく言う。
村上 いや、それは砂漠で車を走らせてる時に、女の裸を考えても意味がないか。
内館 ああ、何かの対象があって初めて発生するという。
村上 そういうものなのに、すべてのジャーナリズムやマスコミは、常に性的欲求があるというような前提で、ものを言っている気がするんです。だからみんな性的欲求がなきゃいけないし、常にオルガスムスがなきゃいけないし、豊かなセックスライフがなきゃいけないと錯覚しているんじゃないかと思って。
内館 だから、毎日帰って来る夫、帰ってくれば必ずいる妻には、発生しにくいものかもしれませんね。
村上 しにくいですね。ただ、集中すればできると思うんですよ。集中力があれば(笑)。
内館 だからね、ある夫は私にね、「女房とは死ぬ気でやる」と言ったんです。私はそれ、すごくショックだったんです。
村上 僕が言った集中力っていうのはそういう意味もあるけど、コンラッド・ローレンツも言っているように、要するにセックスの場合、必ず男は攻撃のシグナルが点滅しないと、できないらしいんですよ。
内館 なるほど。だから、あんまり親密になっちゃうとダメなんでしようね。
村上 たとえば人間が近親相姦をどうやって防いでいるかというと、同じ屋根の下で親子が暮らし、すっごく親密になっていくからなんですよ。そうすると、親密さと性的な欲情というのは切り離されていくようになるから。だから、親子でも別れ別れになってて、ある日出会ってそれを知らずに恋する、なんていうのもありますものね。
内館 そういう戯曲があったりしますものね。
村上 いやね、これは僕の友人の体験なんですけど、たとえばハワイなんかに行って、トローリングとかやって、カジキとか釣る日があるじゃないですか、たまたま。でっかい魚と格闘して、すっごい辛い思いをして、カジキをバーツと上げて、ドーンと甲板に横たえた瞬間「妻を抱きたい」と思った、と。
内館 (目をまん丸くして)アハハハ!
村上 何かね、自然の、原始に返ったような、狩猟でも、ハンターがダーンッとかって獲物を仕留めたりすると、やっぱりね「妻とやりたい」と思うらしいんです。
内館 それは女と、じゃなくて、妻と、なんですか。
村上 ええ、そうなんですよ。
内館 その時だけなぜ妻なんでしょう?
村上 (少し笑いながら)だから、やっぱりむかーし昔の、原始の刷り込みが残っているんじゃないですかね。魚とか肉を妻に早く持って行って、喜んでもらって、その後セックスするみたいな。
内館 石器時代みたいね。
村上 だから、そういうことって、今はあまりないですからね、都会生活では、昔はね、(両手でおいしくいただくポーズで)こうやってお給料をもらったわけでしょ。今は銀行振込だから。そう言うのもあると思いますよ。今でも、肉体労働してバカッと百万円ぐらいもらうと、何かそれを持って帰って、すき焼き食ってセックスする、というパターンもある感じがするんですけどね。
内館 だから、原始的な感じに戻るか、いかがわしい気分を起こすしかない夫婦ではセックスできないということ?
村上 自分を奮い立たせる何かがないと、やっぱり難しいんじゃないですかね。
内館 だけどそこまでしないと、カジキマグロ釣らないとそうならないって言うのはねえ(笑)。
村上 カッオじゃダメらしいんですよ、カジキですごく頑張らないと。カジキって、統計によると、五〇回に一回しか釣れないらしいから。


男の場合、趣味ではなく、ひとつの生き方が必要
内館 書く時にね、私はセックスレスって、正直言って、別に興味のあるテーマではなかったんですね。もちろん、テレビのワイドショーなんかでやってましたけど、その時は、妻の側がもうイヤだって話題でね。それはどっかで納得できるわけですよね。もうさんざん見慣れて、くたびれた夫が「おい」と言ったって、これ、ヤよねっていう感じで。
村上 それも怖いですけど。
内館 怖いんですけどね。
村上 『サンデー毎日』の読者には本当にじっくり読んでほしいですけどね。
内館 ところがある時、私はどうも夫の方がイヤがっているようだと気づいた。「妻は大事。別れる気はない。義務感で何とか抱いている」っていう声ばかりが耳に入るんです。その時に「そろそろやってやらないと女房がキレちゃう。キレそうになると子供に当たるんだ」って言うんですよ。
村上 恐ろしいですねえ。
内館 怖いですか。私、夫たちの心理がすごく面白いと思ったんですね。
村上 でも、子供が大きくなって、あの時殴られた原因はお父さんがセックスしなかったからだと知ったら、怒りますよね、子供は。バカバカしくて。
内館 だから、けっこう深刻ですよね。で、ある時にそういう夫の一人に「この間、妻に義務を果たすって言っていたけど、果たした?」って聞いたら、「いや、あれから二週間たつけど、まだなんだ」って。妻とコンスタントにセックスするには、どうしたらいいんでしようね。
村上 それはやっぱり、日々、科学的な努力を重ねるっていうか、体調をベストに整えて…。
内館 カジキを釣る(笑)。
村上 ええ、そういうカジキマグロを釣った興奮とは何かっていうことを考えて、それに近いことを日々行うしかないんじゃないですかね。
内館 だけど、やっぱり妻の方そういうことを望んでいるのに、自分からは言い出せないっていう女の哀しさ、私、わかるんですよね、すごく。
村上 海外ロケとかで苦労して帰ってくると、やっぱりそういう感じに近いんですよ。やぱり、家に生還してきた、っていう思いがあって。その時には何か正当な攻撃本能を持っているというか。やっぱりダラーッとしていると、何となくダメですね。
内館 帰る所に返って来た、という感じですね。
村上 しかも。決して負けないで、何とか頑張って帰って来たっていう思いがあると。
内館 そういう思いがあるから、別に性的な事がなくてもいいじゃないかって思う男の人だって、多分いっぱいいると思うんですよね。
村上 でも、すごく不思議なんですけど、努力しなくてもただ性的欲求が起きる時、それは連れ合いとか恋人に対してだけじゃなく、そのへんに歩いてる女の子にも起きるんです。
 ただそうじゃなくて、いとおしいと思ってる。たとえばいい映画を見たり、いい本を読んで、これを彼女に読ませてあげたいと思うような人に対して性的欲求が起きる時は、逆にセックス以外のことで、ものすごく興奮したりして、家に帰った時だと思うんですね。
 それが減ってるんでしょうね、こういう管理社会で、定期貯金がいっぱいあった方がいい、みたいなポリシーになっているから。逆に奥さん方が「あんな亭主じゃ」と言うのは、やっぱり夫を尊敬できる要素が減ってきているからだと思うんですよ。頑張ってるわね、って思えないんじゃないかって。
内館 それは、だって、やっぱりセクシーですもん、生還してきたという事は。
村上 セクシーなんですよ、要するに。だから、それは男の側が頑張るしかないですよね。「ただいま」っていう時に、「生還したぞ」と言っているだけじゃ、ねえ(笑)。
内館 生還という名にふさわしい仕事なり、一面を持っていられる男であればね。でも、ふだんは会社に通って、山手線に乗って生還してくるわけでしょ。そういう事に対して、色気って感じにくいですよね、妻の目には。
村上 だから、男の場合、残酷なのは、趣味的なものじゃダメなんです。何かそれが、ひとつの生き方になっていないと。
内館 女なら誰でもいいんじゃなく、生還、という限りは女房なんですか。それ、新しい女。
村上 そういう時に女買いに行くヤツはバカです(笑)。わかってくれないんだもん、知らない女は。「大変だったから」と言っても、「何がァ?」でしょう(笑)。女房なら「そうねぇ」って、わかってくれる。‥‥でも、キスとかすればだいぶ違うと思うけどな。
内館 それもしたくないっていう人が、いっぱいいるの。
村上 そういう場合は一から考え直した方がいいなあ。
内館 キスできる夫なら問題ないんですよ。
村上 何かね、自分が好きだよって事を示さないと、相手はわかんないですよね。
内館 そう。女の多くは、セックスの官能がどうとかよりも、愛情を確認したいんだと思いますね。
村上 一番いけないのは、結婚という法律で決められたことをやったんだから、もうオレがおまえを好きなのはわかるだろうっていう態度だと思うんです。
内館 そうなんですよ。でも、夫もわかないもんですか、妻に愛されているかどうか。
村上 やっぱり、表現してもらわないと分かんないでしようね。変に照れちゃったりしますけど。難しいよなあ。

女がセックスに求めるもの

 対談 奈良林祥(やすし)一九一九年生まれ東京医学専門学校卒。医学博士、わが国初の結婚カウンセリングクリニックを開設

飽きないように努力する。それが結婚

奈良林 『義務と演技』読ませていただきました。この本を持って、僕の所に相談に来た女性もいました。本の中に夫がセックスをしてくれないことに悩む、みさきさんという人物が登場しますが、「私もこのみさきさんと同じだ」と。
内館 やはり、セックスレスの相談は多いですか?
奈良林 カルテをご覧なったらびっくりしますよ。この(九六年)九月、十月と、月に四十人の相談者すべてが夫のセックスレスが原因。
内館 私の周辺でも、男の人たちが妻を回避するという声がすごく聞こえてくる。妻は大事である、夫婦仲も悪くない、でもセックスだけは勘弁してほしい――。セックスレスには妻サイドの拒絶もあるんでしょうけど、私の耳に入って来るのは、夫側が回避するというケースばかり。しかも、これ以上、妻を放っておくとキレると予想された時に「義務」で抱くという。それが、この小説を書くきっかけにもなったわけですが。
奈良林 そもそも、そういう人たちは、本来のセックスレスに悩む人達に対して、無礼だと僕は思っているんです。というのも性科学的に言えば、セックスレスというのは、とても気の毒な、そして治すのが難しい問題なんです。それを僕は”原発性”のセックスレスというふうに区別してるんですけど、幼児期にもう決まっているんですね。
内館 セックスレスになることが? 幼児期に?
奈良林 ええ。それで大人になってセックスをしたいと思っても、女の人の前に出ると手も足も出なくなる。自分でもどうしてだかわからない。いわゆる深層心理的な問題になっているわけです。
内館 でも、それは本来的であっても、やはり特殊ですよ。
奈良林 僕が憂鬱になるのは、今、世の中に多いのが、そういうセックスレスじゃなくて、疑似性セックスレスばかりだからなんです。つまり、性欲はあって、性機能も正常。だけど妻との性行為を営もうとしない、あるいは、「仕事とセックスは家庭に持ち込もうとしない」と豪語して、愛人がいたり、セックス産業の顧客であったり‥‥。
内館 そこなんです。なぜ結婚すると、夫は妻とセックスしたがらなくなるのか。その心理に、私は非常に興味を持つんですね。それは小説の中でも書きましたけど、幸せな結婚生活と幸せなセックスライフは共生するか――ということも深く関わることですが。
奈良林 結婚カウンセリングを始めて四十年になりますが、この仕事を通じて感じるのは、この国は何て結婚に不真面目なんだろう、ということです。こんないい加減な結婚をしている状況で、結婚とよき性なんて両立しっこない。
内館 不真面目――と言いますと。
奈良林 たとえばアメリカだと、セックススキャンダルがある政治家は、議会で拒否されて、絶対にいいポストには就けませんね。それが、この国では妾二人持って、それを恥じらうこともなく、堂々と総理大臣が務まったわけでしょう。そういうことがまかり通ってる国に住んでいる庶民が、結婚を真面目に考えることなんか、そもそもできない。内館さんのご本の中にも出てきますけど、日本では十日に一度、ちゃんと妻とセックスする夫は、「立派な人」であっても、「いい動物」ではなく、友人たちからはバカにされるだけで、何の得もない。
内館 確かに、愛人とはセックスできるけど、妻とはできないなんて、非常に不真面目な結婚ですよね。
奈良林 家庭の外で性行為をすること自体は、刺激的であり、面白いでしょうね。でも、面白いに決まっていることをやって、何が偉い。面白いことがやりにくい結婚生活の中で面白く性を生きてこそ、男ですよ。
内館 不真面目を承知で申し上げますが、先生は特殊かもしれない(笑)。
奈良林 男と女というのは、実は結婚した時から飽きる方向にしか向かって行かない。いくら好きだからと言って、三百六十五日、すき焼き食わされたら、誰だって飽きます。そんなことは初めからわかり切ったことで、飽きたくなかったら、二人で飽きないように努力し続ける。それが結婚というものです。
 そんな努力なんてイヤだという人間が結婚するなんて、結婚に対する冒涜だと思う。たとえば性行為をする時に、今晩は俺、どこで欲情しようかなあ。そういえば女房のタレ目に惹かれたんだよなあ。じゃ、目を見て欲情しようか、とかね。それが声であってもいい。性行為ってドラマです。男と女はそのドラマを演じるアクターとアクトレスなんです。「でも先生、それでも燃えません」と言う人もいるけれど、妻の目を見ながら、それが自分の好きな女優さんの顔とダブったっていいんです。心の中で性欲が揺さぶられれば、ペニスは立つことになってるんだから。

自然が与えてくれたのが性行為

内館 目と声でメークドラマできるならいいんです。でも、妻に対しては、そういう努力をすることさえもイヤだという男の人の方が、マジョリティーだと思うんです。
奈良林 日本中、そうかもしれない。デンマークにテレビの取材で行った時、日本のディレクターが、「今晩、夕飯をご一緒して、もう少しお話をうかがわせていただけないでしょうか」と言ったんです。そしたら向こうのプロデューサーが、「この国では、夕飯は必ず家族そろって取ることになっているので、取材は明日にしてください」と。つまり、地球上には、そうやって一生懸命、結婚を保とうとしている国が現にあるわけですよ。どうして日本だけがその努力をしなくていいのか。
内館 本当ですね。
奈良林 僕、ラグビーが大好きなんです。ラグビーって、厳しいルールがあって、それを徹底的に守るでしょう。結婚というのは、つまりはラガーになることだと思っているんですよ。
内館 ええ。ただ、またも不真面目を承知で申し上げますが、家に帰って妻の顔を見ながらゴハン食べてばかりいても、そりゃ夫は面白くないですよ(笑)。
奈良林 もひとつ。日本人は結婚いう大きなコンテナがあって、その中に二人がちんまり納まっていれば、中の状態がどうあれ、それを結婚している、結婚が保たれていると言う訳です。ところがヨーロッパやアメリカでは、結婚というコンテナを二人で支えているものだと思っている。だから、どちらかがズッコケたらコンテナは支えられなくなって、結婚もズッコケる。どうやってもダメだという時、彼らは潔く離婚しますから、当然、離婚は多い。それから言うと、日本で離婚が少ないのはインチキの証拠なんです。
内館 セックスの話に戻ると、夫婦が二人とも、別にセックスはしたくない、一緒の趣味を持ったりして、お互いコミュニケーションできればそれでいい、という夫婦は問題ないと思うんですね。それから、これは現実に私の知り合いにもいるんですけど、夫も妻も外に愛人がいて、家には一切セックスを持ち込まないし、それを許容し合っている。別の形でのコミュニケーションはあるし、先に死んだ方の骨は拾いましょうという話もできている夫婦も「どうぞ、ご自由に」という感じ。問題なのは、夫の側は妻とのセックスはイヤだけど、妻の側はして欲しくないケース。セックスしたい妻からすれば、夫がバラの花を買ってこようが、温泉に連れていってくれようが、ほかのことでは代替になりませんね。
奈良林 ならないです。
内館 じゃあ、夫婦にセックスがなくて、妻は要求することもできずにいたとします。じっとガマンで、夫がその気になってくれない時期が長く続いたして、妻の体に悪しき影響って出るものですか?
奈良林 出ます。ただ、この頃はたいていの方が、働いたり、何かしてらっしゃいますね。性欲というのはしょせん二次的な本能で、満たされないといって死ぬようなものではないから、何かほかに自分が意味を認める事をやっていればまだいいんです。危険なのは、何もそういうもののない人。家庭だけに閉じこもっている、いわゆる専業主婦の方とかね。性の欲望がありながら満たされないと、多くの場合、子育てでごまかす。だけど、そういうことでは誤魔化しきれず、追い詰められれば、結局、体がいうことをきかなくなって、心身症やノイローゼになったり、酷い場合には、鬱になったりするケースもあるんです。
内館 でも、仕事とセックスというのは別物だと思うんです。いくら仕事という自分のアイデンティティをちゃんと置く場所があったとしても、その満たされた方とは違うでしょう。
奈良林 おっしゃる通りです。人間が生きる社会にはいろいろな規則があるし、会社には社則があり、学校には校則がある。だから親は子供に躾をする。つまり人間は、いつも心によそ行きのフォーマルスーツを着せられているんですよ。ジャイアンツが負けてザマミロと思ってても、部長がジャイアンツファンなら、「残念でしたね。あの時元木が一本打っていればねえ」なんて、ゴマすらなきゃならない。つまり、生きていく自体、疲れるんです。そこで、時には心のフォーマルスーツを脱ぎ捨てて、お互い素っ裸になって、本能の赴くままにじゃれあっちゃえ、と自然が与えてくれたのが性行為。
内館 そうなると、人間にとってのセックスは大変に大きい問題ですね。
奈良林 そうですよ。僕も内館さんも、今はよそゆきの顔。素顔が出るのは性行為の時だけなんです。しかもそれは、親も知らない、子供も知らない、夫婦だけが知っている顔なんです。それを自分たちは分かち合っているんだという自負心。それが、夫婦を保たせていくひとつの力にもなるんです。

日本の男たちは女を知らなさ過ぎる

内館 セックスレスであるということは、離婚の一つの原因になりますね、
奈良林 なります。日本というのは人権がやたらと安っぽい国だからあまり問題にしないけど、性をも共有するというのは、結婚した時の契約事項に含まれているはずです。それなのに、さしたる理由もなく、セックスしないというのは契約違反であり、相手の人権人格を無視している行為です。
内館 妻が拒否する場合、非常にイヤな言い方ですけど、夫の側は外で性欲を処理することはできるわけです。その一方で、夫に拒否された妻たちは性欲を処理することさえ難しい。ホストクラブとか、男の人をお金で買うとかは、非常に希有な例だと思いますし。
奈良林 本当に、男は卑怯で自分勝手なことばかりやっているわけでしょう。こんな機会だか言わせていただくんだけど、思い切って、それこそ内館さんも含めて、日本でリーダー的な立場にある方々が立ち上がって、「「女よ、外で男遊びをしよう」「男がやることを女がやってどこが悪いんだ」と実際に行動を起こすなんてどうでしょう。これは戦いだから、真面目にやってほしいんですけど。そういうことをされたら、どれだけ自分の心が痛むか、男はそこで初めて気が付くでしょう。
内館 これまで、こういうセックスレスの問題があまり大きく噴出してこなかったと言うのは、女たちが性について声高には語らなかったというのと、結婚生活も長くなれば、セックスしなくなったり、夫が外に愛人を作っても、こんなもんだろうと考えてたからだと思うんですね。そして、私は子供と家を守るために頑張らなくちゃいけない、とすり替えてた。
 もうひとつ、これは男の人も狡いんですけど、自分に愛人がいても、「キミは妻だから特別」と言って、その「特別」という言葉に、妻たちも納得していたんですね。「僕が最後に帰って来るのは、キミのところだ」という美味しい言葉を信じ、気位高く、ピシッしていようと。だけど、その「特別」というのを、これちょっと狡いよと、ここにきて女たちが気づき始めたんじゃないでしょうか。そうなると、結婚なんてバカバカしい。性的なことがあるだけ愛人でいる方が得だ、という発想にもつながってしまいます。
奈良林 日本の多くの男には、「結婚してタダでやらせてくれる女とセックスなんかするバカがどこにいる」みたいなセリフも出てきますね。これは、日本では今でも性行為、あるいは性の中心は男で、俺の満足のために女がいるんだっていう考えが強いからなんです。そういう”俺中心”の考えでいたら、性行為は飽きるに決まっている。女房とのセックスに飽きたと言うけど、それ、自分のセックスに飽きているんです。つまり男がやることと言えば、常に、興奮・勃起・射精・満足。終わり。これ、「興勃射満終(コーボツシャマンシュウ)」って言うんですけど(笑)。
内館 はァ…‥(笑)。
奈良林 男は性行為する前からこれがわかっている。新幹線に乗って、「一週間出張してたから、東京に帰ったら、女房を抱いてやろう」って、窓から浜名湖なんか眺めながら思っている時に‥‥。
内館 うなぎパイなんて買って(笑)。
奈良林「今晩は俺、女房で興勃射満終か」と(笑)。そんな夫に対し、女の性はいつも変化があって、しかも完成することがないんです。ホルモンの流れ方にしても、いっときとして同じということがない。排卵の時、排卵の前後、そしてメンスの時で、女の人の感覚はまったく違います。男はバカだから、バストを可愛がってやれば、いつでも嬉しがると思っている。ところが生理が近づくと、黄体ホルモンが増えて、バストをいじられるのがイヤになるという女性もいる。つまり女の人って、今晩こうだから、明日もこうだろうって、絶対にありえないんですよ。日本の男は女をよく知っているみたいな顔をするけれど、それは男の発想における女を知っているだけ。高浜虚子の言葉に、「深は新に通ずる」っていうのがあって、僕の好きな言葉の一つなんですけど、一人の女の人を突き詰めていくと、どんどん新しくなるんです。パターンというものがなくて、その時になって見なきゃわからない。「出たとこ勝負のその時払い」なんです(笑)。
内館 そういうところ、上手にアピールする方法を、女も考えなくちゃいけませんね。

よき人間関係があってこそ成り立つ

奈良林 それから、セックスしない言い訳として、男はよく「疲れてるもんはしょうがないんだ」と言います。僕は疲れたから、疲れているなりの方法で、なぜやらないのかと思う。
内館 ここ、ゴチック文字にしていただきたい(笑)。先生、それがテーマです。
奈良林 疲れている時は、「今日は疲れているから六〇パーセントでいい?」って、あっさりと白状して、別の夜に華々しくやればいい。それに、どんなに疲れていると言っても、あの満員電車で通勤する力のある人が、奥さんとキスするくらいのことが出来ないわけないでしょう。
内館 でも私が知っている男性によると、妻とディーブキスするのさえ恥ずかしいそうで、この「恥ずかしさ」がセックスレスの根ではないかと思うんです。
奈良林 それは、あまりに間を開けるからですよ。性行為っていうのは、ついさっきはオシッコが出たようなところが、世界でいちばん立派な魅力的なところみたいに思えちゃって、こともあろうに、そこに口をつけたりもする。すごくクレージーなことでしょう。続けていれば、それはちっとも苦にならない。間が空くから、その行為に入りづらくなるんです。
内館 その間を開けないというのがむずかしい。そうならないためにはどうしたらいいか、そこに多くの妻たちは悩んでいると思うんです。
奈良林 男というものは変なところに律義というか、性行為というのは性器を結合しなきゃいけないと思っている。でも女の人は、抱かれて眠るだけだって、何もされないよりいい。
内館 そうなんですよ。
奈良林 だから間が空いちゃったという場合には、プレジャーリング悦び合いという事ですが、やれる範囲でのことで、じゃれ合えばいいんです。
内館 そういう意味では、完璧に肉体言語ですよね。
奈良林 そう。メークドラマなんですから、どうせなら楽しいドラマを(笑)。
内館 でもどうなんでしょう、恋人であれ妻であれ、女性がセックスについて言うのは、とても難しいことだと思うんですね。何年か前にヒットしたドラマの中で、若い女の子が恋人に向かって、「セックスしようよ!」ってストレートに言う台詞があって、非常に話題になりましたけど、多くの場合、女の側から誘ったり、イニシアティブをとることに、「はしたないじゃないか」という自制心みたいなものがどうしても働くわけです。
奈良林 性というものをもっと人間の問題として位置付けて考えれば、話せるんじゃないですか。そして、よき人間関係がある時、よき性行為が成り立つ。ただし、人間関係が途絶えてる時は、どんなことしたってダメですね。
内館 夫婦の日常生活というのは、子供たちを育てたり、ローンのことを考えたり、魚屋さんだったら明日は何を仕入れるかみたいなことも話したり、生きていくために雑多なことがあって、そこを二人で突き進んでいかなくちゃいけない。そういう暮らしをずっと積み重ねていって、お互いにメンタルなコミュニケーションができるということは、とても幸せな結婚ではありますよね。ただ、そういう共闘の姿勢がしっかりできてしまった時、さっきまで、「あんた、明日の仕入れはカツオ何尾で‥‥」「あいよッ」ってやってたのが、ベッドルームに入って、突然、じゃれ合えるのか、とも思うんです。妻とそういうことをするのが「恥ずかしい」と男の人が言うのを聞いた時、じゃれあいすらあり得ないことを、私は何か納得できるんですよ。
奈良林 その人のパーソナリティーの問題も絡んできますけど、そうやって、じゃれあえないというのは、それこそ幼い時からの情緒的な面の成長の仕方にもよります。今の人たちは表現力が貧しいし、会話を楽しむとか、そういうことも生活の中になじんでいない。だから、性行為の世界に没入していくことも下手なんですね、
内館 夫婦がセックスについて、きちんと向かい合って話すことで、少しずつ状況を変えることはできるのでしょうか。
奈良林 結婚したての頃から心がければ、できるんじゃないでしょうか。まだ気持ちがウキウキしている時だと、そういう会話もしやすいし、その後も夫に違和感なく話せるムードが作れますから。ただ残念なことに、結婚してかなりたってから、相手を情緒的に反応が鋭い人間に変えることは、非常に難しいかもしれません。
内館 だけど、少なくとも悩んでいるよりは、ちゃんと相手に伝えた方がいいですね、それでも変わらなくて、「女がそんなことを口にだすなんて」と言われたら、その時は別れることも考えてもいいわけですし。だけど、性的なことはダメだけれど、ほかでは愛情を感じる。離婚もしたくないという場合、妻たちはどう対処したらいいんでしょう。
奈良林 僕はよく、「実らない恋をしようよ」と言うんです。恋をすると、人間の性エネルギーはスクランブルされて、それが前に進んでいこうとか、社会的な活動の原動力になる。だから、誰かを泣かせたり、悩ませたりしない程度の恋心は、いつも燃やしていた方がいい。セックスレスで悩む妻たちは、切ない方法かも知れませんけれど。
内館 その通りですが、恋になんてなかなか恵まれないのが現実です。それこそ奥さんたちから、「どこでそんな男と知り合うのよ」っていうのが絶対出てくると思うんです。だからせめて、ただ家の中にいるより、少しは身の周りもかまって、綺麗にして、香水のひと吹きでもして外にでかけようか、という方が前向きですね。恋をするに値するような相手に会えるかどうかはともかくして、異性とは少なくとも出会えるでしょう。
奈良林 それにして、女の人はこういう我慢をさせるというのは、まだまだ日本では男の姓教育が足りないんですね。僕は四十年間、初歩的なことを飽きずに繰り返し言い続けてきたんですけど、それがいまだに変わらないんですから。もうダメな国ねぇ、ほんと。
内館 でも、『義務と演技』を読んだ男性からの反応もたくさんありましてね。たとえば、妻が可哀想だと思って。二年六カ月ぶりに抱きました。寒いからパジャマの上だけは着ていたけどとか、五分間だったとか(笑)。世紀末的な状況ではありますが、夫婦円満のためにそうしようと思う気持ちが男の人にもあるということは、かすかな救いでした。
つづく X 女とエレガンス